人権口コミ講座174
災害と人権
横浜市立大学名誉教授
初川 満
災害とは
災害を引き起こす原因としての現象と、発生する結果としての災害は、区別が必要です。
災害の危険性は、地震の強度、津波の高さ、雨量などの科学的客観的基準に基づく深刻度と、社会的、経済的、文化的な主観的基準に頼った許容度の認識により評価されます。さらに、災害そのものは、自然災害か人為災害を問わず、その及ぼす被害という人間の価値基準により主に測られることから、その危険性は社会的評価を必然的に伴います。そして、社会の諸要因が被害を増大させる社会の脆弱(ぜいじゃく)性を作り出すことから、災害は発生した危難とその社会の脆弱性の相互作用の結果として考えるべきであり、社会的要因が災害自体の許容度を左右すると言えるでしょう。
災害による人権侵害
災害により引き起こされる人権侵害も、その社会の制度や政策といった人為的要因により軽減も悪化もします。
災害は人々に均(ひと)しく危難を及ぼすものとはいえ、生じる被害は各人の能力や社会的立場により異なり得ます。危害が及ぼすインパクトは、影響を受ける人々の社会的要因により異なり得るからです。例えば、災害による社会的ネットワークや支援システムの崩壊は、女性、幼児、障害者、高齢者あるいは外国人といったいわゆる災害弱者に、より重大かつ深刻な影響を与えます。災害発生以前に存在した社会的脆弱性は、災害の衝撃により悪化し、これらの人々は、災害に伴う危害についても差別的扱いを受けやすいのです。
災害は、既存の社会的不平等を白日の下に曝(さら)すと同時に拡大させることから、社会的産物とすら言うことができるのです。
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