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社会で活躍するひとからのメッセージ3 やまもとそうへいさん(えがおのいっぽ 音声読み上げ)

 

やまもとそうへいさん(39歳)

  • 京都市出身
  • 大阪府立高校教諭
  • 英語で教鞭をとり、日々生徒を指導
  • 神戸大学卒業

 

府立高校で英語教師として教鞭を執っておられる、やまもとそうへいさん。生まれつき全盲という障害がありますが、「光くらいはわかるんですよ」と、気さくにインタビューに応じていただきました。

 

自身の居場所を切り開く

全盲の私は幼い頃からあいあい教室に通っていましたが、就学後は、近所にお住まいの全盲の方が、ボランティアで週1回程度自宅に来てくださいました。点字や読み書きを教えてもらったんですが、一人で何でもこなされるこの方の存在は自分にとって大きな刺激となりました。

小学校から高校までは普通校に通いました。当時は、受け入れる学校側もまだ不慣れな時代で、「登下校の安全確保は自分でしてください。教科書も点字は用意できません。」というような、視覚障害者が普通学校に行くことが難しい時代でした。

小学校低学年までは授業の進捗もそう速くないので筆記は墨字で、レーズライターを使いました。教科書などの読み物はライトハウスのボランティアさんに科目毎にチームを組んでいただき、点訳をお願いしました。ただ、さすがに小学校4、5年の頃になると、授業のスピードも速くなり、書く量も増えたので完全に点字に移行しました。

中学、高校では点字の先生に付いていただき、テストや配布プリントは点訳していただきました。ただ、視覚に障害のある自分の将来の姿はなかなか具現化できない状況でした。

 

初めての自立生活(大学時代)

大学進学へは、さしあたり受験が大きな壁となりますが、一般の塾に通えない私を、高校の先生方が熱心にサポートしてくださいました。

私が教師を目指したのは、あの時親身になって時間も惜しまず助けていただいた先生方の姿があったからだと思います。

大学時代は実家を離れ、大学の近くで下宿生活をしました。当初、買い物やご飯の用意など、全て自分でしていたので、買い物で商品が見えないために、買った後で、昨日と同じコンビニ弁当だったなんてこともありました。(笑い)

何日かして友人から、近隣のコンビニやスーパーで店員さんが買い物をサポートしてくれる事を教わり、パッと世界が広がりました。お店の方に協力頂くことで、買い物のバリエーションが格段に広がり、生活面では快適に過ごせました。

 

就職への道のり

就職先を考えるにあたり、多くの人からは「視覚の障害を活かせる仕事は福祉分野ですか」と言われましたが、自分自身ではピンときませんでした。

視覚障害を活かせる仕事は福祉分野だけじゃない。視覚障害の事がまだまだ知られていない分野に行った方が良いだろうと。障害者に対して偏見を持っていない、なるべく若い世代と関われる職業はと考え、子どもを相手にする教員という職種を考えるようになりました。私自身、進学で色々励まし、助けてもらった高校の教師の道へ進みました。

 

教師として「強み」を生かす

生徒や保護者は高校に入学して、「さあこれから授業を受けるぞ」という時に、白い杖をついた教師の私を見て、「あの人、授業や学級運営がちゃんとできるのかな?」と率直に思うと思うんです。私からすると、そこが狙いです。授業で私が教室に入ると「一体どうやって授業をするんだろう?」とすごく授業に興味を持つ。実はその事で学びの準備ができているんです。

私の授業は、黒板にチョークで字を書きません。パソコンに打ち込み、スクリーンに投影して授業をしています。また、毎日の学級日誌は、日直が私に、直接日誌を読み聞かせるまでが仕事になっています。生徒の気持ちを直接私が耳で受け止めながら、生徒ひとりひとりと会話を必然的に自然とすることができ、より直接的に生徒の思いに触れることができるんです。

プリントの配付なども生徒がしてくれます。廊下で物を落としても「先生、ホームルームで配るプリント、落としたよ」と、いつ使う何を落としたか、説明付きで拾ってくれます。避難訓練の際も、障害のある私がどう避難すべきかを気遣ってくれます。

私に障害があるが故に、自然とインクルーシブな教育ができるのです。

 

子どもたちへ伝えたい事

私と関わってくれた子どもたちには「こうあるべき」という考え方の枠を払って、将来、色んな事で例え行き詰まる事があったとしても、私の事を思い出して欲しいんです。「そう言えばあの先生の授業や学級運営はほかの先生と違うやり方だったけど、ちゃんと出来ていたなあ」って。

そういう考え方の切り替えを、自然としていた私との経験を、今後の生きるヒントとして欲しい。そんな事を願っています。

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健康福祉部家庭支援課 家庭支援総合センター

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