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今年度も無事に訓練を修了することができました。
訓練生のみなさん、おめでとうございます。1年間、本当にお疲れさまでした。
ご家族の皆さまにも、ご協力を賜りました。心よりお祝い申し上げます。
これからも、怪我もなく健やかに活躍されることを、心より祈念しております。
令和元年度の建築科就職率は100パーセントとなりました。
16名中、14名が工務店等の建築関連企業で内定をいただきました。
求人、企業見学、インターンシップ等々、ご協力いただきました企業の皆様にも、厚く御礼申し上げます。
技能検定は、6名が受験し3名が合格いたしました。
全国平均を上回る結果とはなりましたが、悔いの残る結果となりました。
次年度こそは全員合格できるよう、指導・練習方法を工夫してまいります。
建築科では、1月末に二級技能検定を受験し、今年度は6名が挑戦しました。受験者の皆様、本当にお疲れ様でした。合格発表が待ち遠しいものです。
さて、模擬家屋の建築施工実習では構造材の墨付け・加工・建方が終わり、無事に上棟を迎えることができました。
木をひとつ切って取り付けるだけでも、長さ、向き、釘やビスなどの取り付け方法と理由などなど、実物で実践してみなければわからないことがたくさんあったことでしょう。
修了までもう少しです。実際に施工して分かるものも多く、様々な失敗も貴重な経験になることも職業訓練の成果です。
社寺建築専攻では「一間社流造」のお社が完成しました。
訓練生に感想を聞いてみたところ、
などの声を聞くことができました。
先日、現場見学させていただいた工務店の親方は、「楽しめる」「一人前の大工になりたい」という意識が、苦難を乗り越える手がかりになるとおっしゃっていました。
さて、日本伝統建築の代表ともいえるような「社寺建築・堂宮大工」の世界ですが、ここでも部材加工の自動化が次々と更新され続けています。誰もがその多くの技術を図書やインターネットでも簡単に知ることができます。趣味でつくられる方もおられます。
しかし、仕事は趣味ではありません。住宅にも言えますが、お寺や神社はその地域や檀家の方々にとっては、生活や文化に関わる特別な建築物です。
今年度は社寺建築を専攻している4名のうち3名が宮大工の見習いとして就職することが決まりました。
技術だけではなく、自信を含め、多くの方々の「おもい」を大切にできる宮大工になってくれることを願っています。
明けましておめでとうございます。
本年も建築科をよろしくお願いいたします。
さて、冬休みも終わり、訓練が再開されました。模擬家屋の墨付けと加工が着々と進んでおります。
模擬家屋の加工訓練では、角のみやルーターといった電気工具も使用します。現に、大工さんは手道具だけを使うわけではありません。電気工具類を安全で上手に扱う技術は必要不可欠です。
また、今では見かけなくなりつつある「ちょうな」という道具も使用します。今回は、丸太梁を「はつる(欠き取る)」ために、訓練生全員が経験しました。その後、電気カンナできれいに削りました。
丸太梁とは、字のごとく「丸太状の梁・横架材」のことを意味します。効率よく加重に耐えるために、自然の曲がりを活かすように配置します。曲がった木材でも、基準となる芯墨、水平、垂直、通りなどを正確に印し、正確に加工できれば部材として活かすことができます。基準を知ることは、新築工事だけでなく、リフォームにも大いに役立ちます。
また、本年度の模擬家屋には「反り屋根」が採用されています。反りを原寸図に描き、型をとって加工しました。
無事に上棟が迎えられるよう、引き続き安全に訓練を進めたいと思います。
模擬家屋の建築模型が完成しました。
屋根の形状は寄棟と切妻で、下屋には反り隅木の配される仕様となっています。
製図を印刷したプリントでは二次元的にしか理解できませんが、模型を作製したことで、立体的にも理解できるようになります。
注文していた材料が届きました。今年度の主要な樹種は、ヒノキとベイマツです。丸太梁にはマツの木が配される予定です。
原寸大の材料は、継手や仕口の加工訓練をするための小さな練習材料よりも重くなります。二人、あるいは大勢で運ぶ作業も今後増えてきます。事故や怪我のないように、安全に取り組みたいと思います。
墨付けの準備として、尺杖(しゃくづえ)、間竿(けんざお)、などと呼ばれる「大工専用のものさし」も作製しています。
墨付けとは、部材同士が交わる接合部の加工をするための線や印を書きこむことです。すべての部材をコンベックスやメジャー、スケールなどで長さを計測して墨付けをすると、ミスが多くなります。
そのため、大工専用のものさしをつくることで、数値の読み間違えなどを防ぐことができます。
ミスを防ぎ効率化をはかるための工夫をすることは、良い仕事のために絶対に必要なので、業務や訓練にも応用してほしいものです。
建築科では、模擬的に住宅の計画、設計、施工の訓練を実施しています。今まで学んだ基礎を活かして、訓練生自らが模擬家屋を建築します。
今は計画と設計が終わり、材料も発注したところで、10分の1スケールの模型を作製しているところです。
10分の1であっても、構造はほぼ同じなので、模型を作製することで、立体構造の理解が進みます。また、計画や設計時点でのミスに気づくことができます。そして、とても楽しい時間です。訓練生は和気あいあいと和やかな雰囲気で学んでくれています。
小さい部材なので継手や仕口は一部簡略化していますが、部材に通り芯や水平を求める基礎的な工程も、実物同様に行います。しっかりと丁寧に取り組んで、模擬家屋の建築が円滑に進むように指導しています。
社寺建築訓練では、加工の済んだ材料が組み立てられ、一間社流造の形が見えてきました。
訓練生が加工し、鉋仕上げをした部材が次々に組みあがっていきます。1ミリの隙間もあけることなく、ぴったりとおさめるには、精度の高い加工技術が必要になります。下の画像では「反り台かんな」を使用して、破風と呼ばれる部材の上端を削って、反りを形成しています。
加工精度が低いと、組み立てることも難しくなり、強度まで落ちる上に、余計な手間までかかってしまいます。
加工精度を高めるためには、手道具や木工機械類の調整や扱いも慣れていなければなりませんが、すべては経験しなければ上達しません。
訓練では、大工未経験者がプロレベルの完成度を目指しています。前もって現場で起こり得る失敗を経験することは、マイナスを防ぐ「ミスの回避力」として多いに役に立つことでしょう。
建築物の魅力は、竣工後に感じられるように設計されていますが、施工中には、ものづくりに携わる人にしか見えない美しさがたくさんあります。例えば、屋根が葺かれる前には、垂木の影も見られたり、古建築の屋根裏などでは、古い道具の施工跡も見られたり、仕事をしているといろんな魅力を感じられるようになるものです。
また、綺麗で無駄の無い仕事ができる職人さんは、見えないところも手を抜かない方が多いものです。
そのような大工見習いを養成できるように、指導員も綺麗で無駄の無い指導に努めてまいります。
社寺建築専攻訓練では、原寸図の作成も終わり、講師の先生の墨付けに沿って、加工が始まりました。お社やお寺の特長ともいえる「丸柱」の加工は、工場での機械加工ができるため、角材や丸太から削り出すことは少なくなっているそうです。本校建築科では、角材から丸柱を削り出すので、円の取り方や内丸鉋(台と刃が円に合わせた形状)の使い方などを学ぶことができます。
構造的にも住宅とは異なるところもありますが、多くの部材は住宅と共通した役割を持っています。しかし、同様の役割をもつ部材であっても、名称が異なる部材が多く登場します。例えば、下の画像(左と中)は垂木の掛かる部材ですが、社寺建築においては「丸桁」(がぎょう)と呼ばれ、垂木においては、飛燕垂木、地垂木、枝外垂木、野垂木などがあります。
私も現役生時代には、社寺建築を専攻していましたが、参考書を見るだけでなく、原寸図を描き、部材を加工することで、すんなりと覚えられました。
また、社寺建築において彫刻は欠かせない装飾要素であり、これらも訓練生の手によって加工されます。木の繊維によって刃を入れる方向を考えて彫刻しなければなりません。ほんの小さな彫刻であっても、見極めが大切です。
上の画像(左)は羽目板(壁板)という部材の鉋削り仕上げをしているところです。木は湿度によって変形してしまう特性があるので、板材は曲がってしまうと、鉋で仕上げにくくなってしまうことがあります。時間の経過とともに仕上げにくくなるので、効率的な手順、確かな準備、加工の速さが求められる上に、綺麗に仕上げなくてはならないのです。
住宅は住むための建築ですが、社寺建築は「魅せる」という要素も大きいため、たくさんの部材が人目に付く化粧部材となります。社寺建築の訓練は腕を上げるチャンスが多いので、技能を存分に習得できるように指導しています。
建築科のメインともいえる「模擬家屋建築」の訓練がスタートしました。社寺建築も同様に、本年度の前半で学んできた基礎技能を応用して、さらなる理解と習得を目指しています。
本校建築科では、模擬家屋の建築について、訓練生が自主的に計画します。今まで学んできた内容を盛り込むことと、建築面積と建物の高さ以外には特に指定しません。
この計画・設計を通して、住宅建築における材料の標準的な規格寸法や、配置、構造、納まりなどなど、実務と同じ工程やスケールで実践的に学ぶことができます。また、グループワークであるため協調性が養われ、仲間の知らないことまでが自分の知識として得られます。
わたしたち指導員も、無事に上棟を迎えられるよう、たくさんの学びが得られるよう、また、楽しく取り組めるように精一杯サポートしていきます。
建築科では、基本訓練の制作課題として、「四方転び踏み台」を作製しています。
四方転びとは、柱が垂直ではなく、上に行くほど建物の内側に傾いており、神社の手水舎や鐘楼堂などの柱に用いられる様式の一つです。ちなみに、現在の二級技能検定の課題となっています。
作製手順や評価も、検定課題と同じ内容で行っており、まずは製図からスタートです。
この課題の製図は、部材の墨付けのために行うもので、「展開図」を描く必要があります。柱の四方面、木口(断面)を一枚の用紙に描き、柱の側面に接合される横架材(貫など)の切り角度などを求めることができます。
この四方転びの特長は、柱を正方形ではなく、ひし形に形成する必要があることです。その工程を「くせとり」と呼んでいます。大工が扱う多くの部材が、正方形や長方形をしており、かんなでひし形を形成するという工程は少ないと思われます。また、このくせとりの精度が悪いと、あらゆる部材の納まりに悪影響を及ぼします。製図や加工において、手元の0.5mmのズレが、先のほうでは十倍以上ものズレになることもあるほどです。
機械を使えば簡単なことではありますが、手道具を上手に扱えるほうが、できる大工仕事が多くなり、手道具でしか加工できないところにも対応できます。また、技能検定を受検すると、繰り返しの練習により、加工技術と作業能率が圧倒的に向上します。
経験の少ない訓練生にとっては、一年間で一番難しい課題とも言えるほどの難度ではありますが、向上心をもって取り組めるようにサポートしてまいります。
建築科では、二学期から、模擬家屋建築専攻と社寺建築専攻に分かれて訓練を実施しています。
先日、社寺建築の「一間社流造」の建立にむけて訓練が始まりました。
一間社流造(いっけんしゃながれづくり)の一間社とは、社前に配される柱が一本(柱間が一つ)という意味で、四本あれば三間社となります。流造とは、切妻屋根で平入り(桁側に正面がある)の様式を意味します。
社寺建築と模擬家屋建築の基本技能は共通しますが、社寺建築には、一般住宅には用いられない様式や道具、特殊な工程が必要となります。
そのひとつに、原寸図の作製があります。原寸図とは、字の如く、原寸大の製図のことです。一般家屋の建築で作製することは多くありませんが、社寺建築では必須の工程です。
原寸図は、社寺建築の特長のひとつである、屋根の反りに関わる部材の正確な寸法を求めるために作製します。原寸図を作製し、原寸図通りの型板を作製し、型板を材料にあてて、型板通りに加工することで、原寸図で描いた通りの形状が建物として現れます。
社寺建築に限られたことではありませんが、計画から完成までの工程を丁寧に取り組まなければ、完成に近づくにつれて、歪みは増していくものです。原寸図の作製や加工を通して、良い失敗を繰り返し、腕を磨いてほしいものです。
建築科では、訓練の課題として「隅木(すみぎ)」の模型を作製します。この隅木とは、屋根の角部に配される部材のことで、入母屋や寄棟とよばれる屋根の角部の稜線を形成しています。片流れや切妻(きりつま)の屋根に比べると、やや複雑な立体構造の理解が必要になります。
この隅木の墨付けに活躍する道具が、「さしがね」です。さしがねは、長さを測り、直角を求めるだけではなく、勾配に対応した斜線を、部材に印すために使うものです。大工は、飛鳥時代よりさしがねを駆使して、寺院や宮社、住宅などの様々な建築物を建ててきました。いわば、日本をつくってきた尊い知恵と道具でもあり、その延長に私たちの文化や暮らしがあることは、本当に有り難いことです。
また、大工といえば、一般的には肉体労働を想像される方も多いと思いますが、実は数学的な理解力がなければ、要領がつかめず応用ができません。例えば、図面を見る際にも単位換算が必要ですし、立体図形の理解も必要です。しかし、決して難しいものではありません。理解できない理由は、過去に、数学の基礎知識を学び逃したことによるものが多いと感じます。数学が苦手でも大丈夫です。一緒に学び直しましょう。
大工にこだわらず、建築、ものづくりに興味がある方、お気軽に見学に来てください。
建築科では、平成29年度より、建築関連分野の理解や交流を目的に、京都府立大学の生命環境学部の学生と、様々な連携事業に取り組み、数々の木工作品を制作してきました。その一環として、本年度も南丹市美山町にある大野演習林で校外学習を行いました。
演習林では講義を開催していただき、伐採見学と製材体験をさせていただきました。
自分達が訓練で扱う材木や、近い将来扱うことになる材木が、どのようにして材料になっているのか。大工として知っておくことは、良い仕事をする上でとても重要なことです。
この経験を訓練や仕事にも活かして、より良い結果へつなげられるようにサポートしてまいります。
また、代表4名の訓練生は学舎での合宿に参加しました。
合宿では、本年度の製作物のデザインを協議しました。学生や訓練生からは、様々な提案が飛び出し、それぞれの価値観や意見に触れあうことができました。また、前年度までは自分達の希望するものを制作していましたが、本年度は「依頼主」がおられます。いわば、お客様の要望に沿いながらも、事業のテーマのもとに自分達も納得できるものを造形するという課題も追加されています。
学校教育や専門校(訓練校)では、その学びの先にある「人との繋がり」にまで触れることは多くありません。企業訪問をする中で、工務店の親方さんからも「お客さんがいるイメージができていない」というお言葉を頂戴することもありました。この取り組みは、現場では当たり前の意識を、実践的に得られる機会でもあり、とても効果的です。
このほかにも、バーベキューや川遊び、夜には花火などをして和気あいあいと過ごしました。学生や院生、先生方や職員の皆様のおかげで、楽しく学習することができました。訓練生や学生のみなさんが、いつか誰かに喜んでもらえる仕事をしていることを想像すると、指導にも力が入ります。
今後も、本事業の進捗をお知らせいたしますので、どうぞお楽しみに。
日露青年交流センター(詳しくはこちらhttps://www.jrex.or.jp/)による、2019年度日露青年交流事業として、建築科の5名の訓練生が、京都府・レニングラード州職業訓練交流プログラムに参加し、ロシアへ渡航し文化交流をしてきました。
レニングラード州では、SIEFL(経済財政法科技術大学)の教授や職員の皆様の案内によって、ロシア木造建築の講義、宮殿や教会、美術館や美術大学の視察見学、また建築専門学校の学生らとの交流が行われ、大変貴重な学びを得ることができました。
レニングラード州では、2×4の現代的な建築様式も見かけましたが、古くは丸太組み構法が主流であったそうです。教会や住宅も丸太組みで建てられているものが保存されており、その内装もまた木材による施工となっておりました。日本も同じように木をつかった建築物がありますが、気候風土や価値観が違えば、様式もかわることがわかり、参加した訓練生も、改めて日本木造建築について興味が深まったようです。
サンクトペテルブルクは旧ロシア帝国の首都であり、美術館や美術大学があるだけでなく、街そのものが美術品の宝箱のようでした。日本の木造建築も美術的要素が強く、これから大工になる訓練生にとっては、大変貴重で刺激的な毎日を過ごせたようです。
また、ガッチナ市にある、建築デザインの専門学校の学生と交流をしました。
日本からは、鉋について紹介をし、地元の木材を使い、ロシア人学生に体験をしていただきました。実際に、鉋削りをした木材に触れていただくと、そのなめらかさに大変驚かれていました。
デザイン設計のワークショップでは、ロシア人学生と訓練生をグループ分けし、一つの課題製作に取り組みました。グループ内で国籍が違えば、もちろん言葉も通じず、片言の英語やスマホで翻訳しながら楽しく交流することができました。
最終日には、SIEFLから、本プロジェクトの修了証書をいただき、無事に帰国することができました。
この経験や学びは、引率した指導員である私を含めて、今後の木造建築と人材の養成に活かしていきたいと思っております。
建築科では、毎年7月末に3級技能検定に挑戦しております。
3級技能検定に合格することで、年度内2級技能検定の受験資格を得ることができます。
3級技能検定の課題は、隅木という屋根の隅角部に配される部材の模型の作製です。この隅木という部材への墨付けには、大工技能の基礎がたくさん含まれています。全員合格を目指して練習しています。
当校では、6月16日(日曜)に体験入校を実施しました。
今回は、建築科では折りたたみ式のイスの作製を体験していただきました。ホームセンターなどでも販売されていますが、実際に、自らノコギリやカンナをつかって綺麗につくるのは簡単ではありません。
体験では、カンナで木を削る心地よさや、ノコギリで綺麗に切ることの重要性など、楽しさと難しさを体感していただけたと思います。今後も体験入校を予定【8月6日(火曜)、10月6日(日曜)】しておりますので、ご興味のある方は、どうぞご参加ください。
6月に入り、刃物砥ぎも習得し、いよいよ「加工」の訓練が始まりました。
加工訓練では、軸組構法や伝統構法などの木造建築には欠かせない基本的な「継手(つぎて)・仕口(しくち)」を製作します。やっとイメージしていた大工らしい訓練ができるとあって、意欲的に取り組んでいます。
継手とは、木材と木材を同方向に繋ぎ合わせて、長さを得るための接合方法です。仕口とは、木材が直交する部分の接合方法です。継手や仕口には、たくさんの種類があり、たとえば「平ほぞさし」は、土台と柱を繋ぐ仕口で、「大入蟻仕口(おおいれありしくち)」は、土台と土台を直交して繋ぐための仕口です。加工風景を動画にまとめましたので、どうぞご覧ください。
加工の訓練で重要なことは、まず、道具の安全な使用法を覚えることです。安全な使用法を指導しますが、焦りや不注意、軽薄な意識も改めるように指導します。
また、加工の訓練では「木のクセ」を見極めるように指導しています。木は自然素材であり、その形状は様々で、向きや繊維の方向を確認して、適所に使う必要があります。そのような、個々の木が持つ特質に配慮せずに加工すると、割れや歪みの原因となり、ひいては建物の強度にも影響します。
また、特質を見極めることと道具を扱う技術はセットで「技能」だと考えています。技能は一足飛びに上達することはないので、質の良い失敗をたくさん経験して、探求し、成功につなげて欲しいと思います。
当校では、京都ジョブパークから講師を招いて、社会人基礎力を身につける研修や、就活に関する講習会などを開催しています。
先日、建築科では「基本マナー講習」を受講しました。スーツの着方、髪型、お辞儀の角度、言葉使いや電話応対などなど、当然のように必要とされる社会人としてのマナーを教えていただきました。社会人としてのマナーがなければ、技能や個性を活かすチャンスにも恵まれないことでしょう。信頼される職業人はマナーも良く、礼儀もわきまえています。訓練生にもぜひ身につけて欲しいものです。
建築科では、7月末に、建築大工の技能検定3級を受験するための練習が始まりました。昨年度から課題が変更になり、「隅木」と呼ばれる部材が含まれるようになりました。以前の課題よりも、立体理解や加工の難度がやや上がりましたが、合格すれば、年度末に2級を受験することができます。
専門校であれば、練習する時間をしっかり確保できますが、仕事をしながらでは、十分に時間を確保できません。是非とも在学中に2級まで取得して欲しいものです。
今年も、全員合格を目指して頑張ります!
建築科では、野外訓練として「竹中大工道具館」に行ってきました。
通常訓練とは違い、お互いに意見を交換しながら、和気あいあいと勉強することができました。
普段、見かける多くの建築物は「完成」していますが、資料館では「過程」が紹介されているので、訓練生にとっては、大工の仕事に触れられる貴重な体験になります。また、宮大工や数寄屋大工といった、専門に特化した大工の仕事の紹介や展示もあり、自分達の「やりたいこと」も少しはハッキリとしたのではないでしょうか。今年度は、「水車大工」に関する特別展示もあり、興味を持って楽しく学習していました。
小さなお子さんを含む、若い方々が、それぞれが住む地域の中で、大工などの「職人」の仕事に触れる機会はかなり少なくなったようです。予備知識や実体験もないまま、数ある職種の中から安易に「大工」を選んでも、続かないだけでなく、楽しむセンスまで削がれてしまうことでしょう。
その点、建築科には、木工が好きな指導員と、同じ希望や悩みを抱く訓練生がいて、大工の仕事に触れることができます。体験や見学は大歓迎ですので、まずはお気軽にお電話ください。
5月の10連休も明け、また「砥ぎもん」です。例年、大変さが身にしみてくる頃ですが、皆、志が高いようで、意見交換をするなど、切磋琢磨する様子が見えます。
最近、いくつかの企業を訪問させていただき、現場の生の声を拝聴しております。その中でも、「砥ぎもん」がある程度習得できていることは、企業にとっても「助かる」との声を頂いており、即戦力となっているようです。今後も、効果的な訓練の指導に努めてまいります。
また、学科やCADの基本操作演習なども本格化してきました。なるべくわかりやすく、実務に効果的で、興味の持てる講義をするように努めています。前年度に建てた模擬家屋を題材にして「木質構造」の講義を行いました。教科書ではなく、実例に触れることができるのは、建築科ならではです。
大工の世界には「見習い」という修業の時期があります。読んで字の如く「見て習う」です。就職すれば作業があり、見合った賃金が支払われるという仕事もありますが、職人世界においても就職はゴールではなく、修業のスタートです。現場以外では養われにくい「仕事観」を実際の現場に見合うものに改めるために、今後も現場に近い訓練を実施してまいります。
当校では4月12日に入校式が行われ、建築科では16名が入校しました。訓練生のみなさん、ご家族の皆様、また企業の皆々様、今年度も建築科をどうぞよろしくお願いいたします。
建築科では、オリエンテーションや各種手続きも滞りなく終え、早速、購入した手道具を配りました。私自身も自分の道具を手にした時の興奮は今でも覚えています。もう大工になったかのようにさえ思ったものです。
さて、初めに行う実技実習は、今年ももちろん「刃物砥ぎ(鉋、鑿)」です。業界では「砥ぎもん」と呼ばれる重要な過程です。
まずは練習用の刃を、使えるような形状に砥ぐことができれば、自分達が購入した鉋の刃を砥ぎます。しかし、一朝一夕には上達できない作業です。大工になったかのように思った私はすぐに出鼻を挫かれたのを覚えています。一週間の訓練は約28時間ありますが、そのうちの20時間ほどが「かんな刃砥ぎ」の訓練です。のみまで砥ぎ終えるのに、一か月ほどかかり、それでもプロから言わせれば「とりあえず使える」程度です。
簡単ではない上に、理屈では上達しません。体得するためには、培ってきた忍耐力と集中力とコツをつかむセンスが必要で、それが上達と切れ味につながります。指導員にアドバイスを求めるだけでなく、上手くいかない理由や工夫を共有するなど、良いコミュニケーションも上達に繋がっています。就職すれば、これほど時間をかけて砥ぎもんに取り組むことはできません。基礎中の基礎であり、できなければ仕事もできません。できるまで頑張ってもらいます。即戦力になる「砥ぎもん」の研鑽を積めるように、より良い指導に努めてまいります。
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