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個別労働関係紛争に係るあっせんの利用例

労働者からの申請

事業主からの申請

職場での人間関係の問題などを理由として解雇された事例

概要

労働者Aは、顧客対応に問題があり職場の調和を乱すおそれがあることを理由に解雇された。Aは「解雇の本当の理由は、業務改善について上司に意見したことではないか。そうであれば、不当な理由による解雇であり、解雇は無効である。」として復職を求めてあっせん申請した。

結果

(あっせん3回/解決まで約4.5か月)

Aの復職を頑なに拒み続ける事業主に対して、あっせん員が、労働契約法では合理的な理由がない解雇は無効とされているが、事業主は顧客対応について十分な注意・指導を行っておらず、職場の調和を乱すおそれがあるだけでは合理的な理由とはいえないことを指摘して譲歩を促したところ、事業主は金銭による解決を希望したため、金額を調整し、双方が合意して解決した。

<参考>

労働契約法

(解雇)

第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

有期労働契約の期間の途中に能力不足を理由として解雇された事例

概要

契約社員Bは、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の期間の途中に、ミスが多く指導しても改善が見込めないとの理由で退職勧奨され、応じなかったところ解雇された。Bは契約期間の途中の解雇は受け入れられないとして、期間満了までの賃金相当額の解決金を求めてあっせん申請した。

結果

(あっせん1回/解決まで約1.5か月)

あっせん員が事業主に、有期労働契約の労働者は、労働契約法により、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間の途中で解雇できないとされ、雇用期間の定めのない正社員よりも解雇の事由が厳しく判断されること、能力不足と判断する場合は労働者への指導が十分であったかが問われることを説明した上で、あっせんでの解決を促したところ、事業主は金銭解決に応じる意向を示したため、あっせん員が解決金の額を調整し、双方が合意して解決した。

<参考>

労働契約法

(契約期間中の解雇等)

第17条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

2 略

何度も契約更新されている労働者が就業規則違反で雇止めされた事例

概要

パート労働者Cは、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)を8回更新されていたが、業務中の行為が就業規則違反であることを理由として雇止めされた。Cは、問題とされた行為は以前から黙認されており、これを理由とする突然の雇止めは不当であるとして、雇用継続を求めてあっせん申請した。

結果

(あっせん1回/解決まで約2か月)

事業主は、Cには就業規則違反とした行為以外に勤務態度にも問題があったため、雇止めは妥当であると主張した。あっせん員は事業主に、労働契約法では有期労働契約を何回も更新している場合の雇止めは、解雇の場合と同様に、客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要とされていることを説明した。その上で、事業主の問題点として、Cに対して事前に警告せずに雇止めしたこと、就業規則違反であってもこれまで黙認していた行為を理由として雇止めしたことを指摘したところ、事業主は金銭解決を希望し、Cもこれを受け入れ、解決した。

<参考>

労働契約法

(有期労働契約の更新等)

第19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

退職金が大幅に減額された事例

概要

労働者Dは、上司の指示などをパワハラととらえ人事担当に相談したが、Dが期待する対応ではなかったことから体調不良となり、精神的に大きな負担を受けたことを理由として退職した。事業主が自己都合退職扱いとして退職金を大幅に減額したため、Dは減額分の支払いを求めてあっせん申請した。

結果

(あっせん1回/解決まで約2か月)

事業主は、社内規程に従って退職金を支払ったまでであると主張したが、あっせん員から事業主に、退職金の規程は退職理由による支給額の差があまりにも大きく、事業主からDへ退職金についての説明も不足していたことを指摘したところ、事業主は、退職金額は変更できないがDの心情に配慮して功労金を支払う考えを示した。Dは自己都合退職扱いとされたことについては不満を示したが、事業主が功労金を支払うことで責任の一端を認めたものと受け止め、提案を受け入れ解決した。

降格とそれに伴う減給をされた事例

概要

労働者Eは、数年にわたって降格による減給が繰り返されたところに、さらなる降格とそれに伴う減給を実施されたため、これ以上の減給は生活に支障を来たすとして減給撤回を求めてあっせん申請した。

結果

(あっせん3回/解決まで約3.5か月)

事業主は、Eの職責に応じて減給したものと説明したが、あっせん員が、労働契約法により労働者の合意なしに労働条件の不利益変更はできないことを説明し、給与額についてはEの将来への懸念が払拭できるようなものにする必要があることを指摘した上で、他の従業員との均衡を考慮して、緩やかな減給となる方法を提案したところ、双方が受け入れ、解決した。

<参考>

労働契約法

(労働契約の内容の変更)

第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

昇進・昇給が抑制された事例

概要

労働者Fは、昇進・昇給の年数要件を満たし、重要な業務を担当しているにもかかわらず他の従業員に比べ昇進・昇給を抑制されているとして、その理由の説明と昇進・昇給の回復を求めてあっせん申請した。

結果

(あっせん1回/解決まで約1.5か月)

事業主は、Fの専門職としての技能が昇進・昇給の基準に達していないことをFに説明したが聞き入れなかったと主張した。あっせん員は、事業主の昇進・昇給の基準が明確でなかったことが一因でFの納得が得られなかったことを指摘した上で、労使間の信頼醸成のためのコミュニケーションの方法について助言し、昇進・昇給について上司と部下の定期的面談の実施を提案したところ、双方がこれを受け入れ、解決した。

パワハラを受けたことを事業主に相談したところ雇止めされた事例

概要

上司からパワハラを受けた契約社員Gは、会社の相談窓口に相談したが、Gには事実確認をしないまま「調査の結果、パワハラはなかった」とされ、雇用期間満了時に人員充足を理由に雇止めされた。Gは以前に長期契約を打診されていたことから、パワハラ相談をしたことが雇止めの本当の理由であると考え、謝罪と慰謝料の支払いを求めてあっせん申請した。

結果

(解決/あっせん1回/解決まで約1.5か月)

事業主は、雇止めはパワハラ相談とは無関係であると主張したが、あっせん員が事業主に、パワハラの調査記録がほとんどなく、パワハラがなかったと判断するには不十分であることを説明し、パワハラ相談をしたことが雇止めの理由と判断されれば、労働施策総合推進法で禁止する不利益な取扱いに該当することを指摘してあっせんでの解決を促したところ、事業主は金銭解決に応じる姿勢を示し、Gも金額について歩み寄ったため解決した。

<参考>

労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)

(雇用管理上の措置等)

第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3~6 略

解雇した労働者から補償を求められた事例

概要

事業主は、運転手である労働者Hが、試用期間中に複数回の交通事故を起こし、本採用後も反省がみられないことから解雇した。Hから「事故は試用期間中であり、本採用後の解雇理由としては合理性がない」として再三抗議があり、事業主は早期解決を図りたいとしてあっせん申請した。

結果

(あっせん1回/解決まで約1.5か月)

Hは事業主に対し、離職を受け入れる条件として、不当解雇に対する謝罪と解決金を求めた。事業主もこれに応じるとしたが、解決金の額に開きがあったため、あっせん員が事業主の解雇の基準が明確ではないことを指摘し、解決金の額について譲歩を引き出したところ、合意に至り、解決した。

解雇した労働者から逸失利益の支払いを求められた事例

概要

事業主は、労働者Iが担当する業務を廃止したため解雇したが、Iから不当解雇であるとして逸失利益の支払いを求められたため、あっせん申請した。

結果

(あっせん1回/解決まで約0.5か月)

あっせん員から事業主に対し、業務縮小による整理解雇の妥当性は、裁判例によれば、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、労使間の協議の4要素について総合的に判断されることを説明した上で、Iについては配置転換等の解雇回避に十分努めたとは言い難い点を指摘し、また、Iには逸失利益の請求根拠があいまいである点を指摘した。その上で、双方に譲歩を求めたところ応じたため、解決金の額を調整し、解決した。

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