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植物園よもやま話(2008)

京の残り福(平成20年12月20日)

紅葉する残り福の写真 フウの紅葉の写真

本日は小春日和で、比叡山もきれいに展望できます。こんなによい天気は今年最後かもしれません。
「残り物には福がある」といいますが、大芝生地からは、最も遅くに紅葉する樹木を望むことができます。
左の写真の左側は、フウ(マンサク科)で中国中南部、台湾の亜熱帯の高山に自生する落葉樹です。当園には、数本のフウの木がありますが、落葉時期、紅葉の色合いなどに個体差があり、植物生態園南端に植栽のこの個体は、もっとも遅く紅葉します。ここ数日の好天で若干、赤みが強くなったようです。
中村前園長がこの木を見るたびに、「京の残り福だな。」と語っていたことを思い出します。
フウの右の樹木は、ヌマスギ(落羽松、スギ科)で赤褐色の葉がなんともしぶい樹木です。
今年もあとわずかですが、この「残り福」にあやかって、来年はさらに飛躍の年に! 

山が燃える(平成20年12月6日)

「山が燃える~」とは、カラオケなどでよく歌われる歌詞に出てくることばですが、先日来、府民の方から「山が燃えているように見えるのはどうしてか?」といった質問が、当園の園芸相談(水曜と日曜に行っています。)に何件かあったようです。

北山の紅葉の写真

京都府の山々は1000メートル級の高い山こそありませんが、古くから薪炭や林業などの利用が行われていた関係もあり、コナラやクヌギ、ミズナラなどの落葉広葉樹が多く自生しています。
これらナラ類の紅葉は、条件により黄色から紅色のバリエーションがあって大変美しくなります。「山が燃えている」というのは、これらの木々を間近にみられる里山の秋を表現されて、おっしゃたものと思います。写真は植物園北西の賀茂川にかかる北山橋から撮影した北山の紅葉です。
紅葉シーズンも終盤ですが、里山の紅葉が長く見られるのは、コナラ類の葉は落葉しにくいという特性があるからです。そのため、長いものでは春の芽出しまで葉が着いていることもあります(葉が冬芽を保護しているという説などがあります。)。 

京都由来の植物その12(平成20年11月20日)

植物園の紅葉もピークを迎えましたが、やはり主役はタカオカエデ(イロハモミジAcer palmatum カエデ科)ではないでしょうか。
このカエデは、紅葉の名所として有名な京都・高雄に由来し、この地域に多く自生したことからついた名前です。

タカオカエデの紅葉の写真 タカオカエデの写真

紅葉が美しくなる条件としては、 1.気温の低下と寒暖の差 2.紫外線(標高が高いほど紫外線が強く、空気がきれい) 3.木の個性(個体差) 4.湿度(適度な湿度)などが考えられますが、清滝渓谷沿いの高雄の地は1から4の条件を満たしています。東日本のダイナミックな紅葉とは対照的に、北山杉や松などと混在するタカオカエデの紅葉は日本画のような風景です。

タカオカエデの写真

葉の切れ込みが「いろはにほへと」と七つ数えられることから、イロハモミジと呼ばれますが、この名の方が一般には通っています。

ガス漏れではありません(平成20年11月17日)

ここ数日の冷え込みで、園内も一段と色づいてきました。
今朝、くすのき並木を通ったときのこと、ふとガスの臭いがしました。一瞬、「アレッ?」と思いましたが、「ああ、ここにあったんや」。
そうです。ハマヒサカキ(Eurya emarginata ツバキ科、くすのき並木及び植物生態園に植栽)が開花していました。

ハマヒサカキの写真

この樹木は、暖地の海岸に生育していますが、植え込みなどにも使われる低木で、晩秋にやや下向きに白い小さな花を咲かせます。

ハマヒサカキの雄花の写真 ハマヒサカキの雌花の写真

左の写真が雄花(直径約5ミリ)、右の写真が雌花で、雌雄別株になります。雌花は雄花に比べ少し小さめですが、すぐに黒い果実をつけます。
このガス臭ですが、一瞬匂いますが、次に花に鼻を近づけても臭いを感じにくく、知らないと「ガスが漏れているのでは」と思われるかもしれません。インターネットで調べるとやはりこの花の臭いで、過去にガス漏れ騒ぎが起こっているようです。
同属のヒサカキ(Eurya japonica)は3月から4月が開花期ですので区別がつきますが、開花の時期のガス臭は、このハマヒサカキの方がよりホンマモンに似ています。

並木は三代目(平成20年11月7日)

久しぶりの雨で植物園の樹木もいきいきしているように見えます。当園のシンボルロードであるケヤキ並木の紅葉が美しくなってきました。

ケヤキ並木の紅葉の写真

夏期の干ばつで早くから葉を落としていたので、心配していましたが、10月以降の適度な降雨や種子を多くつけなかったこともあり、なんとかきれいに葉が色づいてきました。
ところで、このケヤキ並木は植物園開設以来三代目になることをご存じでしょうか?
初代は「アメリカキササゲ」でしたが、樹形が乱れるということで、一旦、シリブカガシに替えられたあと、1939年(昭和14年)に現在のケヤキ並木がつくられました。苗木は1935年(昭和10年)に、植物園創設時に多額の寄付をいただいた三井家の土地(京都市左京区下鴨)に生えていたもので、譲り受けた30センチほどの実生苗(約70本)は、樹齢70年以上の大木に育っています。

駐車場から見たケヤキ並木の写真

下の写真は、ケヤキ並木を植物園の駐車場から撮影したものですが、よく日の当たる東側(京都府立大学グラウンド側、上の写真では左側。)から紅葉が美しくなっています。
ケヤキ並木の紅葉の見頃は11月中旬頃までです。

まっすぐに伸びます(平成20年10月21日)

広葉樹のイメージとしては幹が曲がっていたり、株立ちの樹形を思い浮かべますが、まっすぐ上に成長する広葉樹が植物生態園にあります。今年は赤い果実が豊作の年です。

まっすぐ伸びるタマミズキの写真 タマミズキの樹皮の写真

 タマミズキ(Irex micrococca モチノキ科)は幹がまっすぐ上空に向かって成長し高木になる樹木です。そのため、森林では葉よりもむしろ幹や果実で「発見」する樹木のひとつです。
樹皮(写真右上)には皮膚呼吸の役割をする皮目(ひもく)が多く、三角形の葉痕(ようこん:葉が落ちた痕)が残ります。

タマミズキの黄葉とヒヨドリの写真

冬になると府民の方から「今頃、紅葉している木があるけど、何の木?」という問い合わせがありますが、冬枯れした山腹の中からニョキっと1本、一際赤く目立つのは、たいていタマミズキです。落葉したあとも赤い果実がぎっしり残っていることが多く、遠目には紅葉に見えることがあります。京都市東山あたりでもよく見かけることがあります。
この赤い果実は鳥にはあまり美味ではないのでしょうか。植物園では、遅い時期まで果実が残っています。写真下は植物生態園のタマミズキの黄葉と果実を捕食しているヒヨドリです(2006年12月11日撮影、写真提供、河内静子氏)。 

落ち葉しぐれ(平成20年10月11日)

雨で濡れた針葉樹林の写真 テーダマツの球果と葉の写真

「北山時雨」というには少し時期が早いと思いますが、未明から降ったりやんだりで、針葉樹林はしっとりとしています。こんな日は、落ち葉が雨に濡れて茶色の絨毯を敷いたような感じで、ひときわ冴えて見えます。
今年の夏は乾燥が激しかったため、針葉樹林内の松葉の落葉が特に多いようです。その多くは3葉のテーダマツ(Pinus taeda)で、日本のクロマツ(2葉)の葉に比べ長くてしっかりした葉です。マツの葉には草などの発芽を抑制する物質を含んでいるので、このエリアは年間を通して除草をすることがありません。当園ではさまざまな落ち葉を堆肥に利用していますが、マツなどの針葉樹の葉はできるだけ混入しないようにしています。

京都由来の植物その11(平成20年9月28日)

ウバタマの写真 ヒオウギの花の写真

ヒオウギの花(写真右、本年7月30日撮影)を祇園祭の時期に生ける習慣が京都にあるため、この花を「祇園祭の花」と呼ぶこともあります。ヒオウギの扇状の葉を「檜扇」に見立てた名前と考えられますが、「檜扇」とは、官位のある人が手に持つ笏(しゃく)の代わりに用いた扇であることから、祭神を迎えるに際し、格調の高かさを感じさせる花材です。
植物生態園および宿根草・有用植物園では、ヒオウギの果実が割れ始め、「烏羽玉(うばたま)」または「ぬばたま」と呼ばれる種子を見ることができます。万葉集などでは、夜や黒、夢などにかかる枕詞として「うばたま、ぬばたま」が用いられます。古人の目にも止まったヒオウギの種子は宝石のような黒い輝きがあります。「うばたま」の名は京銘菓としても有名です。

京都由来の植物その10(平成20年9月23日)

オミナエシは秋の七草では唯一、黄色の花で、ススキなどとともに秋の風情を感じさせてくれる女性的なやさしい花です。名前の語源はいろいろな説がありますが、「オミナ」は「女(娘)」であり、美しい女性にたとえられます。源氏物語や枕草子にも登場するなど、古くから愛でられている美しい花です。
京都府八幡市の松花堂があるところは小字名を「女郎花(おみなえし)」といいます。平安時代に八幡の男山に住む小野頼風とその恋人の悲恋の物語に由来があり、恋のもつれから、山吹重ねの衣をぬぎすてた女が川に身を投げたあとに咲いた黄色い花がオミナエシでした。現在、女郎花塚が同地に残っています。
オミナエシの写真 オトコエシの写真 

写真は植物生態園に咲くオミナエシ(写真左)とオトコエシ(写真右)です。オトコエシはオミナエシに対して、姿が男性的なところからついた名前です。花は白く、茎や葉には毛が多く全体的にがっしりした感じです。写真は少しひ弱そうなオトコエシですが、なかなか同じ場所に定着せず、種子や地下茎で移動して、気に入った場所で生育する性質がある多年草です。
参考資料
八幡市観光協会ホームページ
松花堂庭園・美術館ホームページ

京都由来の植物その9(平成20年9月18日)

フジバカマは古くは蘭または蘭草と書き、薬草として古い時代に中国から渡ってきたとされます。源氏物語が書かれた千年前には香草として各地で栽培されていたようです。フジバカマの葉を乾燥させると桜餅に似た香りがします。平安時代の貴婦人はこの葉を匂い袋にいれていたそうですが、現代の香水のように圧倒的の香りがないところに高貴さを感じます。
先日、一人のお客様に「フジバカマとヒヨドリバナの違いがわからんのや。」と言われましたので、少し説明させてもらいます。

フジバカマの花の写真 3深裂したフジバカマの葉の写真

上の写真2枚は、フジバカマですが、葉を見てもらうと3つに裂けた葉があります。葉は少しつるっとした皮革質です。京都周辺でもかつては、川べりに自生していましたが、今は絶滅危惧種に指定されているように、自然ではめったにみかけることはありません。

 

一方、ヒヨドリバナ(下の写真2枚)はやや乾いた山野に自生し、今でも秋の野原を歩くとよく見かけます。花の構造はフジバカマと同じですが、葉はフジバカマのように3深裂せず、比較的薄く、ざらついた感じがします。
今では、フジバカマは園芸店で、手に入れることが可能ですが、植物生態園で展示しているフジバカマは、昭和40年代に京都の保津峡に自生していた個体を増殖したものです。 

秋に咲き秋に実る(平成20年8月30日)

前線の影響で今週はよく雨が降りました。本日も朝から雨が降っています。極端な豪雨と渇水で、今年の夏も水遣りには苦労しました。
植物園会館前のシリブカガシ

シリブカガシ(Lithocarpus glabra)は、ブナ科の仲間としては珍しく、秋に花が咲きます。植物園会館前にはシリブカガシの大木があり、黄褐色の花が樹冠を覆っています。花の近くでは大きく成長したドングリが見えます。シリブカガシのドングリは2年目の秋に成熟します。同属のマテバシイ(Lithocarpus edulis)は春に開花して翌年の秋にドングリが成熟します。

 シリブカガシの花とドングリ

結実枝には完全にドングリにならず、シイナで終わるものもたくさんあります。1年の月日を費やし、強い遺伝子をもった個体を選抜しているのかもしれません。
ドングリが熟し黒色になると、植物園会館前では大量にドングリが落下しますので、ドングリのお尻を見てください。深く凹んでいるので、この名があります。西日本に分布しますが、京都市の西部あたりが東限になります。

「ポイゾン・プラント」とされた木 (平成20年8月15日)

本日8月15日は63回目の終戦記念日になります。植物園の歴史の中で、終戦の年の昭和20年(1945年)から昭和32年(1957)年の間は、連合軍の家族住宅用地(下写真は現在の大芝生地付近)として接収されていた時期があり、多くの樹木が伐採され(約2万5千本の植物が四分の一に減少しました。)、廃園同様に荒廃していたということです。当時の様子を物語る話がありますのでご紹介します。
接収時の連合軍の住宅の写真

接収当時、植物園に残った貴重な植物を孤軍奮闘し管理していた麓技師(のちの第4代園長)は、米軍の子供の日頃のいたずらに手を焼いていたそうです。ある日、子供が木登りをしていたハゼノキにかぶれてしまい、将校婦人が顔色を変えて怒鳴り込んできたそうです。将校婦人は木の伐採を要求しましたが、麓技師も引かず「よろしいお切りなさい。しかし、この木が悪いのではない、かぶれる木に登った子供の方が悪いのだから、木の補償金を払って切りなさい。」と木の補償を求めたそうです。将校婦人は顔を真っ赤に して「どこにでもある、そんな木にお金は払えない」というと、麓技師は「そうではありません。あの木はこの園に植えられて、何十年も大切に育てられていた木です。すくすくと育っていて、三百ドルでも安いぐらいです。」というと将校婦人はプリプリして帰っていきました。後日、麓技師がその木に行ってみると幹の周りに金網で囲いがしてあり、赤い字で「ポイゾン・プラント(有毒植物)」と標示がしてあったそうです。
ハゼノキの写真 ハゼノキの葉の写真

現在、植物園の樹木は多くの先輩の努力により、約5万5千本に回復しております。ポイゾン・プラントと標示されたハゼノキがどの木かはわかりませんが、植物生態園外周部には 90年生はあると思われるハゼノキが数本(上の写真)あり、秋になると美しい紅葉を見せてくれます。
(参考図書) 花と緑の記録 美也古豆本 第七輯 京都府立植物園の50年 駒敏郎   

京都由来の植物その8(平成20年8月2日)

「第49回朝顔展(8月5日(火曜)まで。早朝6時30分からの開園です。)」が始まりました。昨日金曜の夕刊紙1面に朝顔展の風景写真が掲載されたことと、土曜日ということも重なり早朝から大盛況です。

いま、宿根草・有用植物園ではセンノウ(Lychnis bungeana ’Senno’ ナデシコ科)の花が咲いています。 

中国伝来の植物で、古い文献や図集には出てくるセンノウですが、京都において室町から江戸時代にかけて茶花として珍重され、かなり普及していた植物であったようです。京都ではいつのまにか姿を消していまったセンノウですが、地名や伝承などは残っています。お盆に行われる、五山の送り火のひとつに「鳥居」がありますが、その山中には「仙翁寺」があったとされます。また、化野念仏寺付近の地名は「嵯峨鳥居本仙翁町」という地名が現在もあり、センノウとの関連があることがわかります。かつて中国から渡ってきた「仙翁」という仙人が薬草をお寺で栽培していたなど、諸説あるようですがはっきりした伝来の時期などは、いまでも謎になっています。

センノウが島根県にて栽培されているという情報から、苗が研究用に数カ所の植物園に譲渡されました。当園には、元京都大学の村田源先生の紹介により、1997年に譲渡され、京都に里帰りしています。島根県に残っていたのは、おそらく、江戸時代の松江藩主で茶人の松平不昧公の影響と考えられます。

センノウの写真 

愚中周及(西暦1323から1409年)の丱余集(こうよしゅう)にセンノウの詩があります。「仙翁噴火返花魂  直予朝陽争化元・・・」(仙翁が火を噴いて、花魂となって蘇り、灼熱の太陽とその炎をきそう。)とあるように、太陽の炎を連想する花であります。大変美しい花にもかかわらず、途絶えてしまったのは、三倍体のため種子では繁殖できなかったことや栽培が難しいということが理由にあります。当園において、保存継承していかなければならない植物のひとつです。

フシグロセンノウの写真

「センノウ」と名のつく植物はほかにもありますが、上の写真は植物生態園で植栽のフシグロセンノウ(Lychnis miqueliana ナデシコ科)という日本に自生する種類です。日本の花とは思えないほど朱色の美しい花です。京都でも少し山道を入ると見かけることができますが、最近ではめっきりその数が、減りました。 

参考資料

村田源 「京都園芸」第93集、第95集 京都園芸倶楽部
芳澤勝弘「室町文化と仙翁花」(花園大学国際禅学研究所)

京都由来の植物その7(平成20年7月20日)

梅雨も明けて、本日は気温36度の真夏日。植物園の木立にはいると少し涼しくなりホッとします。樹冠(じゅかん)が直射日光を遮り、樹木の根が地下の冷たい水を吸い上げているからです。
植物生態園では、秋の七草のひとつキキョウが咲いています。
この花は、丹波地方を治めた戦国武将明智光秀の家紋になっていることでも有名です。光秀は本能寺の変で主君織田信長を討ったため、逆臣とされていますが、居城のあった京都府亀岡市や福知山市では城下町の整備や治水などを行った名君とされ、亀岡市では「亀岡光秀まつり」が行われており、福知山市では「福知山音頭」や「市の花」にもキキョウが使われていることからもその遺徳が偲ばれます。

植物生態園の咲くキキョウの写真 キキョウ野生種の写真
環境省の絶滅危惧種にも指定されているキキョウですが、園芸品種として多くのものが作出されています。園芸品種は早咲き系のものが多く、7月初旬には咲き出しますが、植物生態園に少しだけ植栽している野生由来の個体はまだ蕾の状態(写真上右)です。かつては自生のキキョウを「盆花」としてよく使われたことに納得できます。

雄性期初期のキキョウの写真 雌性期のキキョウの写真
キキョウの花をよく観察すると雄性期(写真左)と雌性期(写真右)がありますが、雌性期になると雌しべの先が5裂し、他の花の花粉を受けるようになります。ちなみに光秀の紋は雄性期の初期に雌しべを包んでいた雄しべが花粉を出して開いた状態(雌しべが5裂する前)の花に見えます。

ハスの「双頭蓮(そうとうれん)」、当園初。(平成20年7月10日)

「一つの茎から、二つの蕾が出てるわ、けったいなハスやねえ。」・・・吉兆の現れとして、古事記の時代から珍重されている「双頭蓮(そうとうれん)」です。

ソウトウレンの写真

一茎に二つの蕾が着いた「双頭蓮(そうとうれん)」は、突然変異等で花の着き方、形態に異常を生じたものであり、品種名ではありません。変異を誘発する原因は水域の富栄養化等ではないかと考えられています。

そういえば、振り返ると、本年は、葉の勢いを抑えて花がよく見えるよう、春から窒素肥料控えめで栽培してきました。ところが、6月中旬頃に、葉色が薄くやや株のボリュームが不足していたため、6月20日頃に追肥(油粕主体の固形肥料)を施しました。・・・それが効いたのか、別の原因かは定かではありませんが、当園では、初めて観察された現象です。ハスの花の開花期間は短く、7月8日から3日間です。

 白い巨大キノコを案内(平成20年7月5日)

朝、園長から「大芝生地入り口のキノコ調べといてくれ。」と言われ、キノコとは意外なことだなと思いつつ、大芝生地に行ってみました。すると30センチ近くはある巨大な白いキノコが4本も上がっているではありませんか!梅雨の季節には植物園では、さまざまなキノコが出現しますが、このキノコははじめて見るキノコでした(写真左)。
本日は「土曜日ミニミニガイド」の当番の日でしたので、さっそく、このキノコを見てもらおうと案内しました。このキノコ見たとたん、みなさん携帯のカメラなどで撮影されておられました(写真右)。

オオシロカラカサタケの写真 土曜ミニミニガイドの写真

ミニミニガイドの時点では、このキノコの正確な名前がわからなかったので、案内のみとさせていただきましたが、キノコに詳しい関西菌類談話会の方に尋ねたところ、「オオシロカラカサタケ(ハラタケ科)」であることがわかりました。もともとは熱帯地域のキノコで、草地によく発生し、食べると腹痛やおう吐などを起こす毒キノコということです。現在、近畿から北陸あたりまで生息域を北上させているということでした。キノコの分野でも温暖化の影響が現れているのでしょう。

意外な犯人(平成20年7月2日)

朝、現場を大急ぎで一巡します(できないときもありますが…)。北山門のワイルドガーデンでのこと。担当している技術職員と会話。
「園長、これなんや思う?誰の仕業と思う?」。
「うぁおっ、どないしたん、なんで落ってんのん(落ちているの)?」。
「これ、カラスやで、カラスが突っつきよったんや。こんなんで遊んどんにゃ。」
なんとマァ、これから大きくなるところの「ヒョウタン」と「オモチャカボチャ」でした。見事に突つかれていました。
カラスは、イタズラのつもりなのか遊んでいる気分なのか、白色のラベルを突きまくってボロボロにするわ、チューリップの球根をほじくり出すわ、ミニトマトを食べるわなど、植物を見せる立場から言わせると大いなる敵です。
今日の場合、「ヒョウタントンネル」の内側に実った(その場所で見ていただきたいので、職員が人工授粉をして実らせた)果実をものの見事に攻撃していました。
こちらからの反撃の手段は、透明の釣り糸を張ること、紐をぶら下げておくこと、などでしばらく様子を見ることとします。
植物園の栽培技術は、意外や意外、こんな戦いもしています。
攻防戦がはじまりました。
さて、結果はいかに!

 ヒョウタントンネルの写真 被害を受けた植物の写真

ヒョウタントンネル(写真左)と被害を受けた植物(写真右、ヒョウタン(左)とオモチャカボチャ(右))

初夏を彩る三種の木(平成20年6月26日)

初夏に咲く三種の花の写真 

植物生態園のほぼ中央には通称「琵琶湖池」という池があります。なぜ「琵琶湖池」という名前なのか。植物生態園は南入口から北入口に向かうかたちで、日本列島の南方から北方に分布する植物を植栽するように計画しており、その位置関係で、この池をほぼ中央に配している訳です(池の形も琵琶湖に似ています。)。
この「琵琶湖池」にも、3年ほど前からウキクサが一面に繁茂するようになり、本日、午後から池内の除草を行いました。これも温暖化が影響しているのかもしれません。
ふと空を見上げると、初夏を彩る3種類の花が、梅雨の晴れ間からスポットライトが当たるように咲いていました。
手前から、ネムノキ(マメ科)、アカメガシワ(トウダイグサ科)、モクゲンジ(ムクロジ科)の三種です。

モクゲンジの花の写真

モクゲンジはかなり高木になっており、花を目線で見ることは不可能ですが、黄色い花が琵琶湖池周辺から望むことができます(写真の左下はアカメガシワの花です。)。

雨に冴えるスギゴケ(平成20年6月20日)

 紅葉池周辺の苔の写真

昨日は小雨の中でしたが、植物園ボランティア「なからぎの会」のメンバーに紅葉池周辺のスギゴケの手入れをやってもらいました。本日は朝から梅雨空で雨が降りましたが、こんな日は苔が大変美しく見えます。きのうがんばってもらったおかげだと思います。園内のさまざまなシーンでボランティアの方にかかわってもらっています。

苔の手入れ中の写真 参加メンバーの写真

除草や落ち葉掻きなどの作業をしてもらいました(写真左)。苔の手入れに参加したメンバー(写真右)。

いまでは幻の花(平成20年6月11日) 

今日、植物生態園でササユリが咲きました。来園者には大変人気のある植物のひとつで、植物生態園でもっと増やしていきたいと思っています。かつては京都周辺の野山ではごく身近なユリであったはずですが、いまでは山を歩いてもめったにお目にかからなくなりました。自然植生の変化、野生鳥獣による捕食や人による採集などが原因だと考えられます。植物園でしか見ることができない花ではなく、いつか野山で普通に見られる花であってほしいものです。

ササユリの写真 

可憐さが人気のササユリ(植物生態園にて) 

オランウータンの世界的権威とアフリカからの来園(平成20年6月7日)

本日はアフリカの赤道直下にあるガボン共和国のガボン熱帯生態研究所長(ガボン植物園長)ルドヴィック・ゴク・バナク博士とオランウータン研究の世界的権威である山極壽一京都大学教授が植物園を訪問され、松谷園長が観覧温室などを案内しました。

タイサンボク前での写真 観覧温室前にて記念撮影の写真

 (写真左)開花中のタイサンボクについて、「来園者に目線で花を観察してもらうよう工夫をしています。」と松谷園長。(写真右)観覧温室前にて記念撮影。左からバナク博士、松谷園長、山極教授。

京都由来の植物その6(平成20年6月2日)

植物園では、降ったりやんだりの一日でしたが、近畿地方も本日、梅雨入りということです。
「東おとこに京おんな」とよく似た言葉で、「江戸紫に京鹿子」という言葉があります。「紫」は高貴な色とされ、武蔵野方面ではムラサキの根(紫根、しこん)を原料とし、昔から紫染めが盛んだったようです。「京鹿子」は京都で行われている京絞りの代表、鹿子絞りのことで、子鹿の斑点のような模様から名前がきております。江戸時代の有名なものとして、このふたつがたとえられています。
植物生態園では、ムラサキと花を「京鹿子」の模様に見立てたキョウガノコが咲き出しています。

ムラサキの写真 キョウガノコの写真

ムラサキ(写真左)は、京都府福知山市にある天藤(あまとう)製薬株式会社が栽培された苗を提供いただいき植栽しています(植物生態園以外にも宿根草・有用植物園、植物園会館玄関前にも展示しています。)。植物園の西方、京都市北区には「紫野」という地名がありますが、古い時代にムラサキが自生していたか、栽培されていたことが推測されます。また、源氏物語の作者である紫式部のお墓も同地にはあります。ムラサキは京都府では絶滅寸前種に指定されており、自生地の消滅が懸念されております。植物園では、以前から栽培を続けておりますが、結構「気むずかしい」部類に入るのでは、と思います。キョウガノコ(写真右)は、シモツケソウの園芸品種とされるもので、紅紫色の細かな花がついている様はまさに、「京鹿子」の気品を感じさせます。 

『きまぐれ園だより』にのってる植物はコレです。(平成20年5月22日)

きまぐれ園だよりの写真

園長がおススメする植物を、園長自らが手書きで作成しています『きまぐれ園だより』。いま目玉の植物やその場所がわかり、面白いコメント、手書きの味も加わり、多くの来園者の皆様からご愛顧頂いています。

このたび、宿根草・有用植物園において、園だより記載の植物の場所をわかりやすくするために、また、よりスムーズにたどり着いて頂くため、写真のような「指さしマーク」(別名:ゴッドハンド(←自称))を該当植物前の通路付近に試験的に設置しました。この指さす手の絵も園長手書きによるものです。ごつごつした手の甲、手袋せずに作業して荒れてヒリヒリと痛そうな指の背に、これまた味あり! お目当ての植物をお探しの際は、どうぞこのゴッドハンドにご注目ください。(※現在、宿根草・有用植物園のみで試験的に設置しています。)

紅葉の美しい木は新緑も美しい(平成20年5月19日)

サクラの開花やゴールデンウィークも終わり、いまは遠足や写生のシーズンに入り、植物園もすこし落ち着いた感じがします。ゴールデンウィーク前後がもっとも樹木の芽吹きが盛んでしたが、冬枯れのイメージがまだ目に残っているため、樹林の中は葉が茂って、逆に暗く思うことがあります。芽吹きも樹種によって特徴があり、赤色やうぶ毛が多くて白色のものや黄緑色のものなどさまざまでしたが、今年芽吹いた葉もほぼ緑色の葉に固まりつつあります。
新緑を観察していると、紅葉の美しい木は新緑も美しいことが多いようです。葉が薄いため緑色のセロファン紙のように太陽光を透すからだと思います。また、クスノキのように常緑樹でも葉が入れ替わり、葉の表面につやがあるものも新緑が大変美しく見えます。

ケヤキ並木の新緑の写真 紅葉池の新緑の写真

ケヤキ並木(写真左)と紅葉池のイロハモミジ(写真右)

東山の新緑(平成20年5月16日)

植物園の正門側は北大路通に面していますが、いま北大路橋の改良工事がされております。橋の上からは、北方向には五山の送り火の船形方面、南東側に東山や大文字山の如意ヶ岳を望むことができ、四季の移ろいを感じることができるポイントのひとつです。いま、東山の山麓ではシイ・カシ類の芽出しと開花の時期で山が黄金色に輝いて見えます。東山の植生が落葉樹から常緑樹主体にかわりつつあるという新聞記事を目にすることが増えました。戦前戦後の荒れた山地からすると緑が豊かになった反面、東山のまばゆい新緑や紅葉などの風情がなくなるといった意見など賛否両論があります。東山だけでなく植生が遷移すること自体は自然の営みなのですが、松枯れや最近ではカシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害に加え、人と森との関わりが少なくなったことなどが影響しているものと思われます。

北大路橋から望む東山の風景写真 北大路橋から望む大文字山の風景写真

北大路橋から望む東山(写真左)と大文字山(写真右)  

消えたクマガイソウ(平成20年5月5日)

4月30日午後に植物生態園に植栽してありましたクマガイソウ(Cypripedium japonicum ラン科)の盗難がありました。
日本の野生植物をできるだけ自然に近い姿で展示するのが植物生態園のコンセプトであり、植物を学ぶ人だけでなく、山には行けなくなったお年寄りや車椅子の方でも森の中を散策している雰囲気を味わってもらえるよう工夫しています。植物生態園には1年をとおして、花だけでなく冬枯れの姿さえ楽しみにされている方がたくさんおられる反面、株の盗掘や枝等の採取が絶えないのが現状です。絶滅危惧種に指定されている植物でも、バックヤードでの保存だけにとどまらず公開することを前提にする以上、このようなことが起こらない努力も必要だと痛感します。

盗掘にあったクマガイソウの植栽地の写真

 盗掘にあったクマガイソウの植栽地

京都由来の植物その5(平成20年4月24日)

ウラシマソウの写真 ウラシマソウの付属体の写真

助けた亀に連れられて竜宮城にいく、昔話の「浦島太郎」は必ず釣り竿を持っています。植物生態園に植栽のウラシマソウ(Arisaema urashima サトイモ科)は花序の先から糸(付属体)を伸ばします。ウラシマソウの名は、この糸を浦島太郎の釣り糸に見立てています。
浦島太郎の伝説は日本各地にありますが、丹後半島の京都府与謝郡伊根町には浦島太郎を祀った浦島神社があります。また、「丹後国風土記」に記述の浦嶋子が浦島太郎の原型といわれており、この浦嶋子は、海で大きな亀を釣り上げます。ウラシマソウは一見食虫植物のように見えますが、そうではなく、この付属体を地面に着けて虫を登らせ、受粉をさせます。浦島太郎は箱を開けてしまい老人になってしまいますが、ウラシマソウは株の栄養状態が良くなると、雄株から雌株に性転換します。

京都由来の植物その4(平成20年4月18日)

本日、大芝生地でツバメが飛来しているのを確認。その近くで、白く咲いているサクラが「市原虎の尾」です。園内のサクラも後半戦になりましたが、これから見頃のサクラもあります。「市原」は京都市左京区にあり、そこに原木があったということでついた京都由来のサクラです。花の付き方に特徴があり、長枝にたくさんつく短枝が特徴的で、その先に40枚前後の花弁をつけます。まさに虎の尾のようです。つぼみはピンクで咲くにつれ白くなります。少しですが高貴な香りがあります。京都にゆかりのあるサクラ品種は多くありますが、ぜひウオッチングしていただきたい品種です。

イチハラトラノオの短枝の写真 イチハラトラノオの花の写真

源氏物語の植物その1(平成20年4月17日)

ショウブの写真

少し先の話になりますが、五月五日は端午の節句、そして別名で「菖蒲(しょうぶ)の節句」と呼ばれています。菖蒲の根茎を入れたお風呂「菖蒲湯」は、日本の風物としてすっかり定着しており、芳香を楽しんだり、薬湯として利用されています。また古くさかのぼると、古代中国で菖蒲酒を薬用とした記録や、日本書紀(7世紀頃)にも薬草として利用していた事が伺える記述があります。ところで、あまり知られていないのが、「菖蒲はサトイモ科の植物」という事です。写真のようなサトイモ科特有の肉穂花序の花を咲かせます。よくアヤメ科の花菖蒲(はなしょうぶ)と混同されますが、葉の形が菖蒲に似ているため、後から花菖蒲の名がつけられたそうです。源氏物語では、21帖の乙女(おとめ)と25帖の蛍(ほたる)で、この菖蒲が登場します。宿根草・有用植物園で展示しております。

京都由来の植物その3(平成20年4月11日)

ラショウモンカズラの写真 ラショウモンカズラの群落の写真

「羅生門」とは、「羅城門」のことで、都の中央を南北に通る朱雀大路の南門にあたります。この門の名前がつく植物の花がいま植物生態園北入口付近で見頃を迎えています。「ラショウモンカズラ Meehania urticifolia シソ科」は京都府内の林内でも、たまに見かけることができる植物で、つる性の茎(走出枝)を伸ばして生息域を拡げるため「カズラ」という名がついています。源頼光の家来である渡辺綱が羅生門で切り取った鬼の腕に花の形を見立てた名前です。鬼とは似つかない美しい花冠を眺めていると、鬼の腕がニューと伸びてきそうな感じにとらわれる、魅惑的な花です。以前の担当者が4株のラショウモンカズラを植え付けたものが、いまでは写真右のような大きな群落になりました。

(4月18日追記)
ラショウモンカズラを観察されている写真

植物生態園では、珍しく黄色い歓声が聞こえてきました。ラショウモンカズラをみんなで探しているとのこと。なんと羅生門の近くにある保育園から遠足でこの花を見に来てくれたようです。感激!の一言。ちびっこながらも、地域にある名前に愛着をもっていることが、見ていてよくわかりました。小雨の中、本当にありがとうございました。また、来てくださいね。

目に眩しいルリ色(平成20年4月4日)

本日、ソメイヨシノとチューリップ「レッドエンペラー」も満開の状態。ピンクと赤の色彩に酔いしれそうになる中、一際地味な存在ながらも、目に眩しいルリ色を発している花があります。辞典には、「ルリ色」とは、紫色を帯びた濃い青色とありますが、ルリ色の花は、植物全体からみると少数派です。

ルリハコベの写真 ヤマルリソウの写真

植物生態園内の池付近の海浜ゾーンにあるルリハコベ(Anagallis arvensis サクラソウ科、写真左)は日本の植物にはあまりない強烈なルリ色の花です。初めて見る方は驚かれること間違いなしです。よく見ると花の中心は紅色で、葯は黄色。直径1センチほどですが、目に眩しい小さな花です。1年草のため、毎年、担当者が種まきから育てています。同じく植物生態園北入口(西の梅林の向かい側)付近に植栽のヤマルリソウ(Omphalodes japonica ムラサキ科、写真右)も、名前の中に「ルリ」が入っています。春に山を歩いていて、この花に出会うと疲れもなくなるほど、美しい花です。花弁の中心はルリ色が濃くなっています。これからもルリ色の花をつける植物を増やしていきたいと思っております。(N)

しっかりと主張してます(平成20年3月29日)

桜の開花前線も通過し、園内のソメイヨシノも開花しました。ぎこちなかったウグイスの鳴き方も上手になり、植物園は春の雰囲気いっぱいです。いま、サクラやモクレンの花のように目立つ花ではありませんが、しっかりと自己主張している花があります。その一部ですが、いま見ることのできる花をご紹介します。

ハナノキの写真 ハナノキの雄花の写真

ハナノキ(Acer pycnanthum カエデ科、しゃくやく園東側)は紅葉も美しい樹木ですが、葉の展開より先に花が咲くため木が赤く染まります。右の写真は落下した雄花です。お早めにどうぞ。 

シダレヤナギの写真 シダレヤナギの雄花序の写真

シダレヤナギ(Salix babylonica ヤナギ科 北山門広場)は葉の展開と同時に開花しています。黄緑色のため、遠目には咲いていることに気がつきにくい花です。右は雄花序の写真です。ケムシのように見えますが、実際はそんなことはありません。

カツラの写真 カツラの雄花の写真

カツラ(Cercidiphyllum japonicum カツラ科 つばき園) 遠目にはハナノキによく似た感じですが、花はよく見ると違います。右は雄花の写真で、触れると花粉をたくさん出し、風媒花だと気がつきます。水車小屋北側には植物園で一番高い木(約32メートル、正門から見て桜林の後ろに見える高い木です。)のカツラの雌木があります。

春を告げる黄色い花木(平成20年3月21日)

先週放映されましたNHK「趣味の園芸」で当園松谷園長が出演した内容が表記の題でしたが、当園で、この時期に咲く花木も黄色い花がとても多いです。岡本省吾氏の著書「木の花・木の実」(カラーブックス、保育社)には2月から3月に開花する花木22種のうち10種(45%)が黄色い花という調査結果が載っています。黄色い花木が咲き出すと植物園では、多くの植物が次から次へと咲き、1年でもっとも目の離せない季節です。ソメイヨシノなどのサクラが咲くまでのあいだは春への期待と陽気でこころが浮き足立ってきます。

 

サンシュユ(写真左、大芝生地北側ほか)、ヒュウガミズキ(写真右、しゃくやく園西側)

クロモジの写真 アテツマンサクとダンコウバイの写真

クロモジ(写真左、植物生態園)、アテツマンサクとダンコウバイ(写真右、植物生態園)アテツマンサクは萼片も黄色いのが特徴です。

キブシの写真 ミツマタの写真

キブシ(写真左、植物生態園)、ミツマタ(写真右、あじさい園ほか) 

NHK「趣味の園芸」の取材がありました。(平成20年3月1日)

NHK「趣味の園芸」に松谷園長が出演します。「春を告げる黄色の花木」というテーマでサンシュユの植え付けを当園にて実際にやりました。放送は教育テレビにて3月9日(日曜)午前8時30分から8時55分と再放送の3月14日(金曜)午後1時35分から2時までの2回です。ぜひご覧ください。また「趣味の園芸」テキスト3月号にもその内容が詳しく載っておりますので、そちらもぜひ手にとってご覧下さい。

園長の案内風景の写真 早春の草花展を案内されている写真

園長の案内風景の撮影もありました。場所は今注目の「早春の草花展」(3月20日まで)です。

雪の日のあと(平成20年2月11日)

雪だるまとこどもの写真 大芝生地の雪だるまの写真

2月9日は非番でしたが、朝から雪が降り出し、植物園でも5センチほどの積雪になりました。樹木などに大きな被害はなかったようで、ひと安心。11日に植物園に出勤してみますと予想していたとおり、雪だるまがあちらこちらにありました。京都の市街地ではめったに雪が積もらないので、子どもたち(大人も?)が楽しそうに雪合戦などの雪あそびを繰り広げていた姿が目に浮かびます。 

実が無くなったナナミノキの写真 果実がたわわにつくナナミノキの写真

 驚いたのは野鳥の早業です。盆栽・鉢物展示場向かい側にあるナナミノキ(モチノキ科)の果実がすっかりと無くなっていました。2月8日の夕方に見たときは木が赤くみえるほどいっぱい付いていました(右の写真は1月4日撮影)。雪で山のえさ場がなくなったのでしょうか。一度この早業を目撃したいものです。(N)

祈願成就 (平成20年2月1日)

「園長さんときまぐれ散歩」では園内のいろいろな場所を巡ります。先日この場所に来ますと、何度も植物園にお越しいただいている方から「いや~はじめてやわ、知らんかったわー。」とのお声有り。広い植物園、案外知られていない場所がこの「半木(ナカラギ)神社」です。

半木神社祠の写真由緒、歴史などは祠の前にある説明をご覧ください。もともとの名はこの地に御神木が流れ着いたから流木(ナガレギ)神社、と言われたそうですが、この場所、地図を眺めますと、世界遺産の上賀茂神社と下鴨神社の正に真ん中に位置しています。丁度半分です。流木のナガレが、半分のナカラに転訛したのでしょうか。さてこの半木神社、もちろん植物園の守護神なのですが、元はといえば京都絹織物発祥の地から織物業の守り神。それが最近、恋愛成就や合格祈願など若い人たちの間で、密かなブームになっているとのウワサを耳にします。実際、私も伊丹市の喫茶店内で流れてきたFMラジオからこのような話を聞きました。何故だろうと考えるに、京都府立植物園は、12,000種類もの途方もなく多くの植物を保有しています。これは日本で一番、正に、トップです。これらのほとんどの植物はいずれ花が咲きますし、うまく受粉すれば結実つまり、実が成ります。待ち望んできたことが、いずれは花が咲き、多くの果実が実る、これが長年の思いが実るに通じ、恋愛成就、試験合格につながったのではないでしょうか。気のせいか、最近、園内では若いカップルが増えてきたようにも思いますし、結婚式の後の記念写真に当園をご利用いただく新郎・新婦の姿をよく目にします。本当にありがたいと思っています。
記念撮影に来園した新郎新婦の写真 

その昔、デートで植物園を利用したアベック(今ではなつかしい言葉)は別れる、との伝説があったのですが、嫉妬とやっかみからでた話ではないのかなと邪推しますがいかがでしょうか。
 今、西からの参道は工事のため入れませんが、南あるいは北からは入れます。心落ち着け邪念を払い、祈願。(園長筆)

サルビアの花期から思うこと(平成20年1月29日)

サルビアゲスネリフロラの写真

写真の花は、サルビアの一種、メキシコ原産の「サルビア・ゲスネリフロラ」です。1月28日に宿根草有用植物園で撮影しました。このサルビアは、他の多くのサルビア種に比べて「開花(花芽分化)に必要な日照時間の短さ」を特に強く要求するため、日本での開花は初冬以降になります。ところが、長時間の低温(摂氏約3度以下)に遭遇すると、蕾の生長、開花ができません。このため、ここ京都では、「花期が非常に短い(11月中下旬に開花、12月のうちに冬枯れ)」、あるいは早く寒波が訪れた場合などは「花が咲かない」サルビアでした。ところが今季は年が明け1月下旬となった今もなお蕾と花が見られます。大変珍しいことです。昨冬も比較的長く開花しました。短絡的に、地球温暖化の影響?と考えるのは早計かもしれません。気温の年次変動や土壌条件など他の様々な要因も考えられます。はたまた植物が耐寒性を獲得したのかも…。いずれにしても、従来の花期から考えると希有な現象であることは確かです。

 霊峰比叡山と龍爪樹(平成20年1月25日)

雪景色の比叡山と龍爪樹の写真 雪がつもった龍爪樹の写真

1月25日の朝はうっすらとした雪景色になり、朝日で白く輝いた比叡山が現れました。大芝生地の龍爪樹(りゅうそうじゅ:シダレエンジュ)の枝にも雪が積もり、龍が爪を立てて天に昇る姿がよくわかります。樹木の形を観察するにはやはり冬です。この木は昭和9年(1934年)に菊池園長(第二代)が中国園芸視察旅行から持ち帰られたものを当園で増やしたものです。当時の園長談によりますと龍爪樹は縁起の良い木とされ中国北部の豪族の中庭にはこれを鉢植えにして並べる習慣があるということです。

年中咲いている植物(平成20年1月14日)

植物園は年末年始(12月28日から1月4日まで)のみお休みですが、それに合わせるかのように、ほぼ年中花が咲いている植物が、温室の中にあります。それがツンベルギア・マイソレンシスです。温室の中は年間を通じて最低気温18度以上に保たれているのですが、花芽分化のための温度がもう少し高いのでしょうか、12月下旬から1月上旬までは花芽がない時期があります。それ以外の時期は常に咲いています。咲いていると言っても盛りはあるようで、3月から5月頃のたくさん下がった花序は見ごたえがあります。今年は1月5日には花序がもう下がっていました。植物園としては本当にありがたい花です。

ツンベルギアマイソレンシス写真

逆に年末年始の休みのころにピークを迎える花があります。それがカエンカズラです。こちらは年末年始に咲いてしまうということで、一等地の場所から少し目立たない場所に移植したところ、12月中にピークを迎えることが多くなりました。植物でも人事異動で発奮して業績を上げたりするのでしょうか。

カエンカズラ写真

千両万両有りどおし(平成20年1月4日)

新年あけましておめでとうございます。今年も植物園をよろしくお願いいたします。本年は地球温暖化防止京都議定書CO2排出量6パーセント削減の約束期間が始まる年です。6パーセントのうちの半分以上(3.9パーセント)が森林による吸収、すなわち植物が受け持つことになっております。これから植物園の役割もますます大きくなってくるものと思われます。
さて、始まりには縁起物がつきものです。植物にはたくさん幸福につながる名前をもったものがあります。また、厳寒期にも凛とした存在の「松竹梅」は「歳寒の三友」と呼ばれ、正月飾りなどにはなくてはなりません。この時期、赤い「実をつける」植物は、子孫繁栄、商売繁盛、豊年満作とつながるため、昔から大変な人気があります。ナンテンの木が「難を転ずる」という意味合いがあるように、縁起を担ぐ言葉として「千両万両有りどおし」があります。千両(センリョウ、センリョウ科)、万両(マンリョウ、ヤブコウジ科)、有りどおし(アリドオシ、アカネ科)と赤い実のなる縁起物の樹木の語呂合わせです。そのほか百両(カラタチバナ、ヤブコウジ科)、十両(ヤブコウジ、ヤブコウジ科)、一両(アリドオシ、アカネ科)があります。これらの植物は植物生態園に植栽してありますので、ぜひご覧いただきたいと思います。赤い実は野鳥の冬場の糧としても貴重で、鳥によって種子が運ばれ子孫を増やしています。種子が広く運ばれるように、どうか皆様に幸運が訪れますように。

 センリョウの写真 

センリョウ(実は上向きにつきます。林内の半日陰を好みます。)

マンリョウの写真

マンリョウ(江戸時代から品種改良がされ、斑入りなど多くの園芸品種があります。)

アリドオシの写真

アリドオシ(枝には鋭い棘があります。名前は蟻を突き刺す棘をもつという意味とこの木の下は痛くて蟻ぐらいしか通れないという意味があるようです。ちなみにツルアリドオシはアカネ科の棘のない草本植物です。残念ながら現在展示していません。)

カラタチバナの写真 

カラタチバナ(本種も江戸時代に大流行しています。日本国内以外にも中国、台湾に自生します。「唐橘」と書きます。)

ヤブコウジの写真

ヤブコウジ(明治時代に大変な流行があった古典植物のひとつです。植物生態園には全体に毛が多いツルコウジもあります。)

お問い合わせ

文化生活部文化生活総務課 植物園

京都市左京区下鴨半木町

ファックス:075-701-0142