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植物園よもやま話(2012)

キンモクセイの2度咲き(平成24年10月19日)

キンモクセイの開花にはピークが2度あるようで、それを「2度咲き」と呼んでいます。
平年ではキンモクセイの開花は9月下旬から10月中旬が開花期ですが、その年の気候により開花日が前後します。京都府立植物園ボランティア「なからぎの会」の木本開花調査グループでは、平成8年からサクラ、ツバキなどの樹木約300個体の開花調査を継続して実施しています。
その調査の中で、キンモクセイの開花日のもっとも早い年で9月19日、遅い年で10月11日で、開花終了日はそれぞれ10月1日と10月30日になっています。開花期間については最短で12日、最長で35日で、平均すると開花期間は18.6日という記録です。
はっきりとした「2度咲き」が記録されているのは1996年と2009年ですが、開花期間が長いければ、開花のピークが2度あることはよくあることです。その原因についてははっきりしたことはわかりませんが、開花が早い年に寒波などの影響で開花が一旦、止まってしまい、そのあと温暖な日が続くと再度開花がスタートするのではないかと思われます。
今年は開花期間がすでに20日を越しており、1度たくさんの落花がありましたが、2度目の見頃をむかえています。

 キンモクセイの蕾の写真 満開のキンモクセイの写真

(写真左)1度目の開花の花がら(茶色)と2度目の蕾がでてきているところ (写真右)2度目のピークがきたキンモクセイ 

レバノンスギの球果(平成24年9月7日)

今年は園内針葉樹林内にあるレバノンスギ(Cedrus libani マツ科)に球果が多数ついています。スギと名がつきますが、マツ科の植物で近縁のヒマラヤスギよりも短い2から3センチの葉がつきます。

レバノンスギの写真 レバノンスギの球果の写真

現在、球果は緑色ですが、早く成熟したものから褐色に変化しており、11月にはバラバラなってに落ちます。残念ながら球果は樹高15メートル以上のところについているため、目線で果実を望むことはできません。写真のものは高所作業車の上から撮影したものです。

上向きにつく球果の写真 バラバラになった球果の写真

(写真左)上向きにつく球果。左上の白いものは観覧温室の屋根
(写真右)バラバラになった球果と翼のついた種子

レバノンスギはレバノン、トルコ南西部の山地に生育する針葉樹ですが、伐採などの影響により現地では絶滅が危惧されています。

当園の個体は、平成2年(1990年)の台風で倒木したこともあって、後継樹を増やす必要があります。平成18年(2006年)に球果ができたときに播種しましたが、未発芽でした。今回の種子はかなり成熟しているので期待できるかもしれません。

葉っぱの拓本(平成24年7月14日)

植物のことを知るには、まず名前を覚えるということが大切です。図鑑を見て、知っていたつもりでも、いざ実物を見ると何という名前の植物かわからないということはよくあります。逆に図鑑で調べるのにも名前を知らないと調べることもできません。
植物の名前を知るには、植物園で調べることができますが、調べた植物を記憶するには、標本をはじめ、葉や幹の様子をスケッチや写真を撮るなどの方法があります。
当園で開催している教育プログラム「私の好きな木」の活動のひとつ「サイエンスアプローチ」では様々な体験を行っており、今回は葉の拓本に挑戦しました。

葉の拓本作業の写真 葉の拓本の写真

まずは各自、葉のスケッチを行い、特徴をとらえます。その後、葉を使って、色鉛筆やクレパスで紙の上からこすっていくと、葉脈が浮き出すことができます。また、葉に直接、絵の具をつけて紙の上からこすると拓本ができます。

葉の拓本の写真 葉の拓本の写真

葉の形、幹の模様、葉脈の走り方を覚えるのことは、ひとの顔を覚えるのと同じようなことで、自然観察がさらに楽しくなること間違いなしです。

なお、植物園内では通常、葉の採取や拓本などはできませんので、「私の好きな木」や植物採集会など行ってください。

(写真提供  私の好きな木事務局 水口保氏)

稀少野生生物の保全(平成24年5月17日)  

当園では、京都府域のにおける生物多様性の保全を図るため、「京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例」による指定希少植物(フクジュソウ、オグラコウホネ、オオキンレイカなど7種)やキブネダイオウなどの絶滅が危惧される植物の生息地外保全拠点施設として指定されています。

京都府保全回復事業計画により、地域ごとに系統的に保全を行うため、生息地の地域や保全団体、研究機関と連携し、保全株の栽培管理や遺伝子データの整理を今後とも進めて行く予定です。

 フクジュソウ自生地にて葉を採取している写真

写真は、自生地にてフクジュソウの遺伝子データを取るための葉の採取を行っているところです(条例に基づく希少野生生物保全取締員に任命された植物園職員が採取を行っております。)。

早咲きのサクラ(平成24年3月29日)

早咲きのサクラには、カンヒザクラ(Cerasus campanulata 寒緋桜)とカラミザクラ(Cerasus pseudocerasus  唐実桜)のどちらかが交配種となった品種がたくさんあります。今年は、寒い日が多かったせいか、早咲きの品種のいくつかはまだ観察できるものもあります。

カンヒザクラの写真 
カンヒザクラ 

オカメの写真 カワヅザクラの写真

オカメ(写真左)とカワヅザクラ(写真右)

カンヒザクラ系統の品種としては「オカメ」(カンヒザクラとマメザクラの交配種)、「カンザクラ(寒桜)」(カンヒザクラとヤマザクラ、「カワヅザクラ(河津桜)」(カンヒザクラとオオシマザクラ)、「シュゼンジカンザクラ(修善寺寒桜)」(カンヒザクラとオオシマザクラ)などが当園に植栽しています。

一方、カラミザクラから作出された系統のものに、「ケイオウザクラ(啓翁桜)」(カンヒザクラとカラミザクラ)、「トウカイザクラ(東海桜)」(カラミザクラ系)、「ホソイザクラ(細井桜)」(カラミザクラとソメイヨシノ)などがあります。 

カラミザクラの写真 カラミザクラの気根の写真

カラミザクラ(写真左)と幹からでる気根(写真右)。
カラミザクラの幹からは気根がよく出る。発根性がよいため、取り木や挿し木がしやすい。

 

  

 ケイオウザクラ (写真左)とトウカイザクラ(写真右)

早咲きの品種につづいてソメイヨシノなどサトザクラやヤマザクラがまもなく開花し、これから春本番の季節を迎えることになります。

エアースコップで土壌改良(平成24年2月15日)

 植物園の桜林では、老木、古木になってきた個体に著しい樹勢衰退や枯損が目立ちはじめてきました。このため、園の技術者をはじめ学識経験者や樹木医らと協同し、衰退原因の調査と樹勢回復のための処方検討を進め、平成19年度から5カ年計画で『桜林再生プロジェクト』として事業を実施してきました。
本年度はこの取り組みの最終年度で、場所は観覧温室前のソメイヨシノ古木が中心のエリアを対象として、植物園としては初めて『エアースコップ掘削工法』を用いての土壌改良作業を進めています。
エアースコップ写真
サクラに限らず、樹木の樹勢衰退の大きな要因は根系の生育不良にあります。植物園の桜林でも長年の来園者の観察による踏圧によって根系伸長範囲の土壌が締め固められ、樹木の根に空気や水がうまく供給できない条件となっていました。また、このことにより弱った樹木個体のなかには、ナラタケモドキ病や根頭癌腫病、材質腐朽などの病害が発生していました。
今回採用した「エアースコップ掘削工法」は、圧縮空気を利用することによって埋設物を傷つけることなく掘削が可能な工法で、埋蔵文化財の発掘調査などで利用される技術ですが、この【地中に埋まっているものを傷つけない】という特性が、樹木治療目的の土壌改良に適することから大きな効果が期待できます。

この取り組みの成果で、園の桜が元気に回復してくれることを目標とするとともに、府内各所で樹勢衰退や枯損が心配される他の桜の回復のヒントになれば、と期待しています。

来春からの元気回復したサクラの様子をお楽しみに。 

寒くても大丈夫(平成24年1月29日)

1月の後半に入ってから寒波の影響で、京都府の山間部では大雪になっています。京都市内では本日の最高気温5度という寒い日でした。それでもテレビのニュースでは、沖縄県で行われているサクラ祭でカンヒザクラの満開の様子が紹介されていて、春の訪れを告げていました。

オキナワウラジロガシ(Quercus miyagii)は鹿児島県奄美大島から沖縄県に自生するブナ科の植物で、国内最大級のドングリをつくります。当園でも野外での栽培が可能で、細長い芽鱗(がりん)に包まれた冬芽をもちますが、当園での観察では春以外に、秋にも芽を出すことがあります。

オキナワウラジロガシの写真

 そのため、霜が降りると秋以降に伸長した枝は上の写真のように枯れてしまいます。ただし、すべての芽が伸長するわけでなく、下の方の芽は休眠しており、寒い京都の地でも枯れることはありません。
毎年、このような霜害を受けながらも、徐々に生長して2メートルほどになったので、昨年、鉢から外して園内に植栽を行いました。

ハナガガシの写真 アカガシの写真

ハナガガシ(Q.hondae 葉長樫、写真左)とアカガシ(Q.acuta 写真右)

大芝生地南側の樹林帯では、オキナワウラジロガシのほか、ハナガカシ、アカガシ、ウラジロガシを新たに植栽したため、日本に自生する常緑のQuercus属10種を1箇所で観察ができます。まだ小さな弱々しい苗ですがこれからが楽しみです。

お問い合わせ

文化生活部文化生活総務課 植物園

京都市左京区下鴨半木町

ファックス:075-701-0142