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HiLung株式会社(京都企業紹介)

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ヒトiPS肺細胞で「すべての人に健やかな呼吸を」HiLung株式会社

(掲載日:令和5年9月1日 聞き手・文 ものづくり振興課 石飛)

HiLung画像1

HiLung画像2「iPS細胞由来の気道上皮細胞」

ヒトiPS肺細胞で呼吸器感染症・疾患の創薬支援等に挑む

京大発のiPSベンチャーHiLung株式会社(外部リンク)(京都市左京区)の山本代表取締役にお話を伺いました。

まずは、起業の背景を教えてください。

山本)私は、肺分野の呼吸器内科医で、肺にかかる病気で苦しむ患者さんを多く診察してきました。
肺炎・肺がんなどの呼吸器感染症・疾患は日本の主要な死亡原因の1つであり、また、その医療費も年間2兆円を超えるなど、重大な社会課題となっており、新たな治療方法の開発に貢献したいと思い起業しました。

現在も医師と経営者を兼務されていると伺いました。また、肺は臓器の中でも大きく、極めて複雑な構造をしていると聞いたことがあります。

山本)そうです。他の臓器と比較しても肺は複雑です。また、呼吸器感染症・疾患の治療には有効な薬が少なく、非常に難しい領域です。難易度が高いからこそ、あえて挑戦したいと思いました。

次に、貴社の概要を教えてください。

山本)京都発の世界に誇るiPS細胞技術を活用し、「ヒトの肺に近い細胞」を製造しています。通常、肺の病気を研究するには患者さんの肺細胞や組織を用いる、あるいはヒトとは異なる部分が多いマウスなどの実験動物を利用するくらいしか方法がなく、品質や供給の安定性に課題があります。
しかし、私たちは実験室で製造し様々な加工が可能な「iPS肺細胞」を、ヒトの肺の病気を研究したり、治療薬の効果を試験管の中で予測したりできる、とても精巧かつ汎用性の高い「ミクロンサイズのシミュレーター」として世界でも先駆けて応用・事業化しました。

肺にかかる治療薬の開発や空気環境の評価など、多方面で実用化が期待!

貴社の技術は、どのようなことに活用できるのでしょうか。

山本)例えば、世界的流行を起こしうるウイルスの研究や、創薬開発において、既に私たちの提供する「iPS肺細胞」が活用され始めています。それだけに留まらず、将来的には肺の再生医療分野で移植用として弊社の肺細胞が使われる日が来ればよいなと思って研究開発を続けています。
また、環境分野では、タバコの煙や排気ガスなど、私たちが日常的に肺に吸い込んでいる環境公害物質などの評価についても関心を頂く機会が増えており、「人にとって安全な空気環境の評価」等に役立てることができるのではないかと考えています。裏を返せば「製品の安全性評価」等にも活用可能で、環境分野に関心の高い欧州などを中心に海外からも関心を持っていただいております。

死亡率の高い肺の難病の創薬にも当社技術が期待

創薬支援ではどういったことに取り組まれているのでしょうか?

山本)この分野に特化することで蓄積した専門知識をもとに、多彩な方法で細胞を使った解析を行うことが出来ます。その中でも、肺の複雑な構造を再現した「オルガノイド」と呼ばれる、いわば試験管の中で作ったミニ臓器のようなものを使って、肺の難病である「肺線維症」の創薬にも取り組んでいます。
このプロジェクトは、大企業のUBE株式会社様と共同で取り組んでいますが、最近同プロジェクトで開発している将来の新薬候補が、米国で「希少疾病医薬品指定」を受けるといった進展もあり、弊社の技術がグローバルに患者さんの治療に貢献する日が来ると信じて頑張っております。(外部リンク)

空気環境の評価や製品の安全性評価等にも活用可能

凄いですね。環境分野ではどういったことに取り組まれているのでしょうか?

山本)空気環境の評価では、下記の図のような評価システムを使うことを想定していますが、理論上無限に増えるiPS細胞を使う利点を活かして「安定的かつ繰り返し量産可能」であるのが弊社細胞の強みの一つです。ありがたいことに、当初ターゲットとしていた医薬品業界以外からも商談依頼が増加しています。

「環境公害物質を評価するイメージ」
HiLung画像3

多方面において社会的意義が大きい取り組みですね。また、実験動物の削減などにも繋がるのも良いですね。
最近、ニュースにもなっていましたが、タイヤと道路の摩擦により排出される粉じん等を評価し、化学物質を減らしていこうといった動きは、時代の最先端をいく取り組みのようですね。

当社の肺細胞は、ヒトの肺で起こる現象を再現可能

そのほか、貴社の強みはどういった点でしょうか。

山本)長年、肺の研究をしてきたノウハウが弊社にはあり、弊社の肺細胞モデルは人間の生体環境を模している為、実用的である点です。
京都大学で世界に先駆けて確立された肺細胞を作る基盤技術を活用しており、大変強固な土台を持っていると自負しています。また、iPS肺細胞を実用化しているのは世界的にも稀で、現状では競合優位性を保つことが出来ていると考えております。

ヒトの身体に近い肺細胞を作製したことが凄いですね。動物実験で効果があっても、人間では効果がないこともありますよね。その動物実験すら肺細胞で代替しようとする等、貴社の取り組みは、社会課題の解決につながる取り組みばかりで素晴らしいですね。

山本)支援いただいた補助金(※)等も活用し、これらの事業に取り組んだ結果、日本のみならず、海外からのニーズも頂くようになっており、京都発の技術を世界に広げていこうという意気込みで事業を進めております。

良かったです。最後に今後の展望をお聞かせください。

山本) HiLung社は、このような高機能なiPS肺細胞の製造という新しいタイプの”ものづくり”を通して、日本そして世界の人々が「気持ちよく呼吸できる未来」に貢献していきたいと考えています。

多方面で活躍が期待されますね。今後の展開が楽しみですね!

(※)活用いただいた補助金
「令和4年度スマートシティ推進スタートアップ支援補助金」では様々な活用のベースとなる肺細胞モデルを製造。
「令和4年度共創型ものづくり等支援事業補助金」では、感染症の研究・創薬ツールを製品化(主な対象疾患は、新型コロナ、インフルエンザウイルス等)

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

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