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京都府の産業支援について


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目次

2020年代、地球・社会・経済の最適化と心を照らす付加価値産業の創出を目指す—

全世界を巻き込んだパンデミックによって、仏教やギリシア哲学が誕生した3,000年前の枢軸時代、フランス革命や産業革命が起こった近代に次ぐ、第3の意識革命が人類に起きていると言われています。人々の行動や価値観が変化し、気候変動や貧困など世界の積年の構造的課題が顕在化する中で、共感やアハ・モーメント(熱狂)が世界を動かす時代となりました。

足下を見つめれば、世界的シェアを誇る電子部品を生み出すグローバル企業、そのマザーマシンの部品づくりを支える中小企業の存在が象徴する「精緻さ」という京都のものづくりの強みが、世界的なデジタル化の波によって大きく脅かされています。また、インフラが整い便利な社会を構築してきた日本がスマートテクノロジー分野で後塵を拝しているのはやむを得ませんが、極めて多くの自殺者数をはじめ、介護や運輸、教育など目の前の「隣人」が抱える困難を解決できぬ間に、世界ではテクノロジーを駆使して、家庭や個人の中にも入り込んで問題解決の挑戦が進められており、日本の強みであったはずの「きめ細やかさ」を活かすべき分野においても遅れをとりつつあるのです。

既に、石油などのエネルギー資源、ものづくりの原材料、人々の食料など多くの資源を他国からも導入して、生産、消費を行ってきた従来の日本の産業システムを見直すべく、四季折々の豊かな自然に多く残されている未解明の機能と最先端のバイオテクノロジーの組み合わせにより、自然由来のゼロカーボン原材料を用いる地産地消型産業システムや、文化芸術が培ってきた創造性やおもてなし等の心(メンタル)と、自動運転や自律ロボット等のサイバー・フィジカルシステムの融合により、全体調和と快適性を両立する産業システムの創出等に取り掛かっています。しかし、地球・社会・経済の全体調和を図り、人々の心の中にまで明るい未来を照らすパーソナライゼーションという究極の付加価値産業を生み出していくには、抜本的な変革が不可欠です。

そこで、アート、メディアコンテンツ、ゼロ・エミッションテクノロジーなど京都の強みを活かす推進力となる「拠点」を整備し、それを軸に、(1)京都が育んできた人真似をしない経営精神を受け継ぐ、クリエイション力(創造性)の高い起業家等の「人材」の集積促進、(2)技術・製品(精緻さ)の差別化が困難になる中で、AI・IoTなどのDXを用いて、それらを支える哲学やストーリー、設計力や生産技術・現場カイゼン力などのオリジナルのノウハウを活かすプロセスエコノミーに対応できる「企業」体制の構築支援、(3)文化芸術や最先端研究、伝統産業からハイテク産業に至る多彩な産業等のイノベーション(新結合)によって高付加価値を生み出す「連携」支援、(4)概念実証や機能を明確に認識できる試作品づくりから新サービスの創出までを産学公が一体となって徹底的に行う「共創社会」の創出を図るエコシステムを形成することで、京都経済を支え、世界をよりよい場所にする一助を担ってまいります。

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世界のエコシステム

果樹園が広がり学生の就職先が乏しい地域であったため、起業を推奨したスタンフォード大学ターマン教授の教え子が1932年にヒューレット・パッカードを設立、さらにはトランジスタの発明でノーベル賞を受賞した1人ウィリアム・ショックリーが1956年に半導体研究所を設立したのがその起源と言われ、19世紀のゴールドラッシュ以来の「一発屋DNA」を軸に、Yコンビネーター500スターアップなどの、いわば起業の「受験塾」と言える「アクセラレーター」という新たな機関をも生み出したシリコンバレー。1999年の巨大なインキュベーションCICの設立を皮切りに、たった20年足らずでバイオやロボットの世界的な集積地となったボストン。香港の加工貿易を支える製造拠点から、北京オリンピックの頃を境に人件費高騰による空洞化に対応するようにIT、金融、バイオ、エネルギーなどの新産業拠点に様変わりしたシンセン。

言わずと知れた世界的なスタートアップの街ですが、今や、どこかの中心地が世界をリードする時代は過ぎ、世界中で異なる文化や技術の融合を原動力にイノベーションが生まれています。

教育機関としても技術の導入先としても軍隊の果たす役割が大きなイスラエル。USBメモリーの発明や、自動運転の肝となる画像認識チップを手掛けてインテルに買収されたモービルアイが有名です。ライドシェアサービスの普及に当たり、職を失いかねないタクシードライバーに自社株を配ることで、彼らが積極的に顧客を呼び込む仕組みを生み出すといった大胆な発想と行動力のあるスタートアップ企業も存在感を発揮しています。

「2000年問題」でITのアウトソーシング先として一躍有名になったインド。今やグーグルやマイクロソフトのCEOも輩出し、特に2014年発足のモディ政権がスタートアップ政策を打ち出すとともに、旧高額紙幣の廃止に伴う混乱を契機にキャッシュレスを推し進めるなど、先進国が一歩ずつ歩んできた進歩の段階を一気に飛び越える「リープフロッグ」を起こしやすい環境にあります。BtoCが多い中国と比べ企業向けのBtoBのスタートアップ企業が多い一方、ハイエンドでかつ安価な医療ビジネスも生まれているそうです。

アルベルト・アインシュタインが生まれ、欧州最大のフラインホーファー研究所が本部を構えるドイツ。世界三大発明の一つ「活版印刷」だけでなく「コンピュータ」も生み出した発明の国であり、芸術家が集まる街の強みを発揮し、製品のUXデザインに定評があります。日本と同様ハードウェアに強みを有する国ですが、ベルリンは年間500社のスタートアップが生まれているそう。マイクロアントレプレナー、ライドシェアやゼロエミッションなど循環型経済に関するもの、ブロックチェーンなどのITビジネスに関するものが多いのが特徴。「アートの街」「テクノ」「クラブ」のイメージが強く、世界最大のハッカー集団「カオス・コンピュータ・クラブ」に象徴されるような、近代資本主義の歪みやGAFAMの「情報の中央集権主義」への反発心など、アンダーグラウンドな雰囲気が若者を魅了しており、25%が外国籍、6割が宗教登録をしていないといったように多様な集積がその原動力となっています。

京都の先輩スタートアップ

一方、京都においても、今やグローバルで活躍する多くのスタートアップ企業を輩出してきました。

1869年(明治2年)、明治維新による東京遷都に危機感を覚えた京都の人々は教育と科学技術による産業振興を行いました。町衆が私財を投じることで小学校を創設、京都府においても、1870年の舎密局(せいみきょく:舎密はオランダ語で「化学」)のほか、博物館、女紅場、画学校、外国語学校、貧民授産所などを次々と設立するとともに、灌漑、上下水道、精米水車、水運、防火、世界で二番目の水力発電による工業振興を目的とする琵琶湖疎水建設(この電力によって、京都・伏見間で日本初の電気鉄道開業)や、京都商工会議所創設、第4回内国勧業博覧会開催などを進めました。舎密局では、陶磁器、ガラス製造などの理化学、印刷技術等を学生に教え、その中には、1875年(明治8年)に島津製作所を創業した初代島津源蔵氏もいました。

  • 株式会社島津製作所
    1875年、教育用理化学器械製造で創業。現在は、分析・計測機器(光吸収分析装置、環境測定機器など)、医用機器(デジタルX線システム、医用画像機器PET・CTスキャナシステム、超音波診断システム)、産業機器(半導体製造装置等の油圧機器、携帯電話等に使用する成膜装置)など。
  • 株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション
    X線写真撮影に成功した島津製作所の2代目島津源蔵氏が、1895年に日本初の鉛蓄電池を製造したのが起源(GSは「Genzo Shimazu」のイニシャル)。現在、産業用電池、自動車電池、電力貯蔵用電池、燃料電池、特殊電池など。特に自動車・二輪車用の鉛蓄電池のシェアは国内トップ、世界でも第2位
  • 株式会社任天堂
    1889年に花札の製造・販売からスタート。戦後、トランプ、玩具、ゲームメーカーへと変遷。
  • オムロン株式会社
    1933年創業で、レントゲン写真撮影用のタイマー、家庭用電子血圧計などを開発していました。戦後の高度経済成長下、鉄道の混雑が大きな社会問題になる中で、世界に先駆けて自動改札機などを開発。現在、制御機器・ファクトリーオートメーションシステム事業、電子部品事業、車載電装部品事業、健康医療機器事業、社会システム事業等を展開。

 

戦後、京都でも食糧増産などの国土復興に向けた取組が進められましたが、国家レベルでは、戦災復興でインフラが整備され始めたこと、1950年勃発の朝鮮戦争による特需で得た外貨を元手にした設備投資による生産増大、労働組合をバックにした賃金上昇による購買力増大がかみ合って、1956年度から1973年度まで実質GDP増減率が平均9%を超える「高度成長期」が始まりました。この間、1964年開通の東海道新幹線1965年全線開通の名神高速道路などのインフラ整備、1964年開催の東京オリンピック1970年開催の大阪万博などの特需もあって、神武景気(神武天皇即位以来の好景気という意/31ケ月)、岩戸景気(神武天皇よりさらに遡って、天照大神が天の岩戸に隠れて以来の好景気という意、42ケ月)、いざなぎ景気(いざなぎとは、日本神話で、天つ神の命をうけ日本列島をつくったとされる男神/57ケ月)といった好景気が続き、1960年から10年間で所得を2倍にするという所得倍増計画が7年間という短期間で達成されました。資源や食料を輸入に頼る中、主な輸出品目は繊維・織物関係であったものの、インフラ整備、特需、所得増大等を背景に、鉄鋼・造船・化学などの重化学工業や、三種の神器(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)、3C(カラーテレビ、クーラー、自動車)などの耐久消費財市場を担う電機産業自動車産業が大きく伸び、1968年には、西ドイツを抜きGDPベースで世界第2位となりました。一方で、公害や環境破壊、東京一極集中による地方の過疎化、大企業と中小企業の二重構造が進み、1956年下請代金支払遅延等防止法1963年中小企業基本法1970年下請企業振興法が制定されました。

  • 株式会社村田製作所
    1944年創業。当時の数少ない娯楽だったラジオの温度補償用に使われた円筒形の磁気コンデンサを製造。現在は、セラミックが持つ優れた高周波特性を持ち、小型で大容量を実現できる積層セラミックコンデンサーで世界一。その他、表面波フィルタ、MEMS センサ(加速度センサ)など。
  • 株式会社堀場製作所
    創業者の堀場雅夫氏は学生時代に原子核物理を研究していたものの、GHQによって原子核の研究を禁止されてしまったため、1945年、コンデンサー事業で創業。現在、自動車計測システム機器、環境・プロセスシステム機器、医用システム機器、半導体システム機器、科学システム機器等の事業を展開し、特に、エンジン排ガス測定・分析装置(分子の赤外線吸収を利用した計測方法で成分検出する仕組みなど)分野で世界トップシェア
  • ローム株式会社
    創業者の佐藤研一郎が、大学在学時に考案した「炭素皮膜抵抗」の特許を元に1958年創業。現在は様々な機能を顧客の要望に応じてカスタマイズする「カスタムLSI」が主力で、国内の集積回路のトップシェアを誇る。また、高速動作、低抵抗、高温動作によってエネルギーロスの大幅削減をもたらすSiCにも注力。
  • 京セラ株式会社
    1959年、ファインセラミックス製造業として設立。現在の事業領域は、さらに情報機器、半導体部品、電子デバイス、太陽光発電、医療、ヘルスケア関連に及ぶ。

 

1973年の固定相場制から変動相場制への移行に伴う為替差損による輸出産業の大打撃、同年10月の第4次中東戦争を発端とする中東産油国の原油輸出制限に伴うオイルショック(原油価格の大幅上昇)による総需要抑制政策などの結果、1974年には実質GDPが戦後初のマイナスとなり、1974年度から1990年度まで実質GDP増減率約4%の「安定成長期」へと移行しました。税収不足により1975年度から赤字国債が発行され恒常的な財政赤字が始まりましたが、産業界は、そうした危機を乗り越えるため、工場の海外移転、経営の合理化・省エネ、素材産業や重厚長大産業からエレクトロニクスなどのハイテク産業への構造転換を進めました。京都においては、1978年の提言を皮切りに関西文化学術研究都市、1981年に京都縦貫自動車道の建設がスタートしています。
しかし、1985年のプラザ合意に伴う急激な円高で、工場の一層の海外移転が進み、産業の空洞化が生じる一方、政府・日銀は、円高対策(金利の安い円から他の通貨への変換による円安を促す)と、内需拡大(低金利で資金を借りて設備投資を促す)のための低金利政策を採った結果、資金が設備投資だけでなく、株式や土地投機にも使われバブル経済が発生しました。またこの頃、行政改革の一環で、1989年の消費税導入、国鉄や電電公社の民営化が行われました。

  • 日本電産株式会社
    1973年設立。スマートフォン、PC、車などの様々な用途に使われる精密小型モータで世界を席巻。
    永守氏自身、創業間もない頃に、取引先の不渡りで何度も倒産の危機に見舞われた経験から、不動産や設備も半分はキャッシュで払っても残りは分割払でキャッシュを残すなど、キャッシュフローを重視。「売値は市場で、原価は自社で」と、徹底したコストダウンとともに、顧客離れや競合登場を許さない売値設定も追求。
    当時は新興ベンチャーというだけで相手にしてくれない日本から、飛び込んだ米国で品質を見極めて大手が取引に応じてくれた経験もあって、世界中に事業を残し社会に貢献する夢とロマンのため、「企業価値の向上」を最大の目標にした「企業成長」が真骨頂。経営環境が安定している時には踊り場と捉え、危機の時にこそ常に各業界のトップメーカーを取引先に見据えてチャレンジをするというのも理に適う(そういう時には金融機関、取引先も融資先・新規取引先が少ない)。半分は自力で、もう半分はM&Aで、時間をかけてジグソーパズルのように事業ポートフォリオを埋めていく。さらには現地法人で稼いだ分は現地で再投資して現地に貢献しながら、為替差損対策としても常にグループ全体で債権債務のバランスをとる。
    16歳から株式投資を行い、自らも同社最大の個人株主である永守氏は、株主にも長期的視点を説く。2021年3月期の連結売上は京セラを上回り、2020年代のEV、さらには2050年のロボット社会を見据えている。2023年には社名をNidecにする予定。

 

1989年に日銀が行った金融引締め(金利の段階的な引き上げ)、1990年に政府が行った総量規制(土地関連融資の抑制)というバブル経済抑制策をきっかけに、バブルが崩壊。途中、米国中心に起こったインターネット・バブル(2001年の世界同時多発テロもあって崩壊)、いざなみ景気(いざなぎの妻、いざなみから命名/戦後最長の73ケ月)、アベノミクスによる好景気(71ケ月)もあったものの、現在に至るまで実質GDPは漸増で推移しています。この間、1999年に経営革新や経営基盤の強化等の基本方針を盛り込む中小企業基本法改正が行われ、2013年制定の小規模企業活性化法2014年制定の小規模企業振興基本法に先んじて、京都府においても、2007年に中小企業・小規模企業を総合的に応援する中小企業応援条例を制定し、2008年のリーマン・ショック2011年の東日本大震災2020年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大などが起こる中で、各種施策を展開してまいりました。

地球・社会・経済の構造的課題の解決のために

そして現在、パンデミックを契機に、地球・社会・経済の各分野における積年の構造的課題が大きく顕在化しています。

  • ゼロ・エミッションなどの新技術開発、世界の変化への対応の問題。既に再生可能エネルギーの方が安い国もありますが、国際再生可能エネルギー機関、2050年には、再生エネルギーの占める割合が、発電で8割を、燃料等も加えた一次エネルギーでは7割を超えると予測されています。2100年には、日本の人口は7,500万人と予測され、中国も2050年には人口が減少し始め、世界の人口の半分弱がアフリカにいるという時代になっていると言われます。こうした時代を見越した技術やビジネスモデルの開発を行っていく必要があります。
  • 気候変動問題。世界の自然災害損失額は、東日本大震災のあった2011年の4500億ドル、アメリカを2つの巨大なハリケーンが襲った2017年の3500億ドルなど近年増加の一途を辿っています。
  • プラスチック問題。プラスチック自体は、有害化学物質ではなく(生物に化学的な害はない)、分解による副生物を発生させるリスクも小さいが、それ故に、長期に亘って残ることが問題となっており、マクロプラスチックがそれを飲み込む生物を死に至らせる問題、食物連鎖を通じて人間の体内にまで入り込んでくる問題等が指摘されています。特に日本では、試算によると、再生プラスチック素材に生まれ変わるのは24%、そのうち国内でリサイクルされたものは9%と大変低く、生分解性の素材に変えていかねばなりません。
  • 水不足問題。地球の14億キロ立法メートルの水のうち、人類が水資源として利用できる淡水は2.5%にあたる3,500万キロ立法メートルで、さらに南極の氷や地下水等を除くと、わずか0.01%、10万キロ立法メートルしかなく、こうした真水の利用率において、日本等は砂漠地帯の次に高いと言われています。しかも、ものづくりの原材料、人々の食料などを多く輸入していることから、現地での真水の利用を考慮した「バーチャルウォーター」の輸入は、世界最大の年間804億tに及んでいます。海水の淡水化技術として、エネルギー資源が豊富なアラブ等では蒸留方式がとられていますが、エネルギーを使わない逆浸透方式に注目が集まっています。
  • 食料不足問題。日本は、2005年に先進国の中で最も早く人口減少が始まりましたが、1950年には30億人弱であった地球の人口は、現在78億人に達し、国連の2019年発表データによれば、2050年に97億人、2100年に109億人に推移するとされています。こうした人口増加を支えてきたのが「食料増産」です。1961年と2017年を比較すると、世界の生産量は、食糧(主食の穀物)で3.4倍に、野菜で5.5倍、果物で4.3倍に伸びています。食料増産を図る手法の1つは、成長のために根から窒素を吸収する植物のためにアンモニア(窒素化合物)を大量生産する「ハーバー・ボッシュ法」による「化学肥料」、「農薬」、「品種改良」などの「収量増加技術の発達」ですが、エネルギーの大量消費等の弊害が指摘されており、スマートアグリなどのテクノロジーや、生産者の所得に配慮したフェアトレード等が注目されています。もう1つは、「生産面積の増加」です。アメリカやヨーロッパ諸国に比べアラブ諸国や日本等は食料自給率が低く、日本はカロリーベースで1960年の79%から最近は37%(生産額ベースでは66%)になっているのは、米からパン、野菜から肉食・乳製品へと消費の拡大の影響も大きく、今後、発展途上国でも、穀物・野菜中心から肉食・乳製品へのシフトが考えられます。しかし、家畜の飼料としての大豆栽培のためにブラジルの熱帯雨林が、食用油、スナック菓子、洗剤等の原料としてパーム油栽培のために東南アジアの熱帯雨林が、多く伐採されるなど森林破壊の問題が生じており、肉食をやめる「ビーガン」や、人工肉の開発等の動きが起こってきています。
  • 魚介類乱獲問題。2017年時点で21,000tに及ぶ世界全体の魚介類生産量の内、漁船漁業による生産量は1990年頃から9,000万t程度で横ばいであるものの、繁殖数や成魚になる年数等を加味した漁獲してもよい限界量「最大持続生産量」を上回る乱獲状態の種は、1975年の10%から最近は33%に上昇し、同量を下回り余裕のある種は40%から10%以下に減少しています。一方、中国を中心に養殖が漁船漁業を上回るまでに大きく伸びているものの、その飼料としては結局大量の魚粉を用いています。
  • 感染症問題。北里柴三郎は1894年にペストの病原菌を発見し、狂犬病やインフルエンザではワクチン開発の源となる血清開発で大きな功績を残し、野口英世は1910年代に梅毒や黄熱の病原体研究で国際的な成果を残しましたが、ペスト、マラリア、AIDS、コロナウイルスなど未だワクチンが開発されていないものも多くあります。近年では、2000年代初頭のSARSコロナウイルスの「重症急性呼吸器症候群(SARS)」、2009年の「新型インフルエンザウイルス」、2012年の「中東呼吸器症候群(MERS)」などが相次いで発生し、今回の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」も未だ解決していません。
  • 介護現場の問題。必要とされる介護従事者245万人に対し、現実は183万人(施設職員153万人、訪問ヘルパー30万人/2015年度)。グループホームでは3人の利用者に対し職員1人、24時間対応なら3人必要であるものの、実際はそうはいきません。同居家族だけの世話には限界があり(韓国では家族介護者にヘルパー資格を与え、ヘルパー間の交流・支援を実施)、外国人材には日本語の壁が課題です。
    問題の背景の1つには、厳しい業務であるにもかかわらず給料が低いということがあります。例えば、介護従事者の74%が利用者やその家族からのパワハラ、セクハラ被害にあっているという調査結果があり(日本介護クラフトユニオン)、認識の低い利用者はもちろんのこと、自身の力量不足かと悩む介護従事者(ヘルパーは直行直帰も多く相談機会が少ない)、利用者から契約を打ち切られる恐れで消極的になる介護経営者、人手不足、給料が安い、仕事がきついなどの介護現場へのマイナスイメージを有する世間の目など悪循環が起こっているのかもしれません。韓国では「産業安全保健法」に感情労働(相手の気持ちを優先して自分の感情をコントロールしなければならない働き方)者への保護条項が盛り込まれましたが、日本でもテクノロジーを駆使した「見守り」などが必要なのかもしれません。
    2つ目として、様々な人と関わりやりがいのある仕事ですが、制度上の不都合も指摘されます。介護保険制度(1~3割の自己負担)で認められなかった、掃除やペットの世話、電球の取り替え、外出先への送迎、散歩同行や墓参り、同居家族分の調理や洗濯などが、混合介護により全額自己負担の保険外サービスでは対応可能となりましたが、同居家族分の調理や洗濯は、利用者本人と家族分を分けねばなりません。また、ヘルパーが行う「身体介護」と「生活援助」のうち、後者は60分から45分に時間短縮されたり、病院への付き添いにおいても病院内は介護保険対象外となっているなどの弊害もあるそうです。こうした制度の隙間を埋めるものが、2025年を目途に自治体に移行される「地域包括ケアシステム」で、地域内のボランティアやNPO、商店等の新しいサービスが期待されています。
  • トラック物流問題。1990年施行「物流2法」の規制緩和に伴う競争激化(過積載・長時間労働(現在は働き方改革により4時間走行30分休憩など))、荷主第一主義(ドライバーの荷役作業負担)、2003年のリミッター装着規制に伴う90km速度規制、EC普及に伴う需要の増大、これらに伴って「過酷で給料が安い」というイメージが定着したことによる人手不足(50歳以上が4割以上という高齢化、ドライバーは就労ビザ対象外)という様々な問題を抱えています。

ESGについては、2004年に国連環境計画・金融イニシアティブが最初に提唱し、2006年に国連責任投資原則(PRI)に盛り込まれ、将来を見据えて運用されるべき世界の年金基金の中でも最大である、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GOIF)も2016年にPRIに署名したように、2020年時点で全世界35兆ドルにまで成長していますが、特に、リーマンショックを起爆剤としてヨーロッパがリードする形で進み、

  • 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年国連サミット採択)で、SDGs(持続可能な開発目標)17ゴール・169ターゲットが定められ(16平和、17連携、10人・国平等、5ジェンダー平等、1貧困、2飢餓、3健康福祉、13気候変動、12作る・使う責任、7エネルギー、14海、15陸、8働き・経済成長、9産業・技術革新、11まちづくり、6水・トイレ、4教育)、
  • 日本においても、「第5次環境基本計画」(2018年閣議決定)にて環境・社会・経済の総合向上、地域資源活用ビジネス、生活の質を高める新たな成長が謳われているところであり、京都においても、京都府環境を守り育てる条例(1995年)、京都府環境基本計画(第1次1995年、第2次2010年、第3次2020年)など推進してきたところです。

古来、食文化、織物産業をはじめ自然と共生した豊かな文化・産業を育んできたものの、石油資源を中心とした近代産業の波の地球規模での拡大に飲まれ、また、政治の中心地であるだけでなく町衆による高度な自治が培われてきたものの、少子高齢・人口減少社会に突入した現代においては地域コミュニティの弱体化、社会の担い手の不足が課題となっている中で、こうした地球・社会・経済のリスクの克服、その全体最適化、持続的発展に寄与する技術や産業の創出を図るためには、柔軟な発想を有するスタートアップ企業の集積が必要です。

世界観を描き、4つの「ない」を克服せよ

しかし、ナスダックの時価総額の中央値が500億円だとすると、東証マザーズは50億円。未上場企業への年間投資額は、米国20兆円(エンジェル2.5兆円)に対し、日本3,000億円(同200億円)評価額10億ドル以上のユニコーン企業数は、米国300社弱、中国100社超に対し、日本は10社強(外部リンク)(ユンコーンになるまでにかかる時間は、1998年創業のGoogleは8年、2004年創業のFacbookは5年、Uberはわずか2年と年々スピード化)。日本の開業率は5.0%(京都4.3%)、廃業率は7.6%(京都7.4%)(2016年経済センサスから便宜上算出した数字であり、支店等の開設廃止も含むため、起業・廃業の実態とはややかけ離れています)。このように世界と水を開けられています。
スタートアップ企業に必要なものは何か?何よりもまず、人々を魅了する「世界観(ピクチャー・ビジョン=問題意識と解決アイデア」。次に、ベンチャーキャピタル(VC)等の投資獲得の面で重要な「市場規模」。そして、「独自の洞察」、すなわち、具体的なユースシーン、局地戦で勝てる市場獲得戦略(ランチェスター戦略)、他者との協業のために求められる強み(比較優位の原則)。さらには、「ビジネスモデル(マネタイズ)」「チーム(デザイン、プロダクト開発力等)」。
世界を一変させるような「創造的破壊」ほど「既知(気づいている)の未知(理解できていない)」「未知の未知(気づきも理解もしてない)」など未踏の領域へのアプローチを試みるため、一般の中小企業とは異なる課題を抱えるスタートアップ企業からよく挙がるのが「資金がない」「販路が拡大しない」「人材がいない」「開発場所・機材がない」の4つの「ない」。実際、大学発スタートアップ企業ですら、VCが最大の投資者になっているのはわずか4%とも言われます(2019年度経済産業省大学発ベンチャー実態調査)。しかし、起業前の段階でその事業の将来性をしっかり検討できていたのかということに収斂されるのではないでしょうか。
例えば「資金」。投資するVCの視点では、将来どのくらいの企業価値(バリュエーション)でエグジットできるかが重要です。なぜなら、VC自身も機関投資家から資金調達をしてファンドを立ち上げており、その取り分がエグジットの際に投資金額を上回った分のうちの2割程度(管理報酬年2%×10年)に過ぎないからです。従って、将来のバリュエーションを見極めた上で、研究(魔の川)や起業のためのシードマネー、開発(死の谷)・事業化(ダーウィンの海)のためのシリーズA、競争(顧客拡大)のためのシリーズB、安定経営のためのシリーズCなど各ステージの必要資金等を逆算していくことになります。その算定方法にはDCF(割引キャッシュフロー)によるもの、PER(株価収益率)によるもの、売上額に一定倍率(5倍など)を掛けるものなど国や業界によって様々です。例えば医療機器では、薬事対応、販売対応などが必要なため、スタートアップ企業では難しい黒字化も、体制の整った大企業に買収されればすぐに実現できる事情などから、海外ではPERで無理に黒字化を目指すよりも売上倍率での算定が通例となっています。

  • エンジェル:シード期、小型資金、意思決定速い、人脈活用など多様な支援あり得る
  • VC:アーリー期以降、中型大型資金、リターン最優先、財務以外の支援が乏しい(VCの資金は長期的固定費に、短期の運転資金は借入で。)
  • CVC:ミドル期以降、大企業とのシナジー

あるいは「販路」。そもそも努力して売るのでなく、黙っていても売れる「セクシーな商品」を目指さなければなりません。なぜなら、先の資金調達の実情のとおり、市場の分析が不十分な「販売リスク」のある案件は論外だからです。VCがリスクを負えるのは、「開発リスク」だけで、それとても、例えば医療機器でクラス4の開発リスクの高い製品の場合には、大きなリターンが見込めないと資金調達が難しいのです。たしかに、ニーズドリブン(マーケットイン)で顕在需要に対応する医療機器等と違って、創薬その他多くのスタートアップ企業が目指す、アンメットニーズ(ウォンツ)、潜在需要を具現化するテクノロジープッシュの分野では、「創造的破壊=発明(潜在需要×解決策(アイデア×テクノロジー))×社会普及」の公式からも分かるように、「偶然性」が付きまといますので、ネットワーキングパーティーのような出会いの場を増やすことがエコシステムとして重要です。しかし、何よりも、早い段階で市場規模を見定めねばなりません。ライフサイエンス分野であれば、「命までの距離」が遠いテーマを解決する商品ほど、価格が低くマーケティングや販売戦略の重要性も増すものの、技術、薬事、保険償還、ビジネスモデル、特許などの「解決策(アイデア×テクノロジー)」の検討の前に、病態の深掘(発生機序の解明)、市場分析(セグメント別ユーザー数)、ステークホルダー分析(ユーザーの満足度)という市場の吟味・評価を徹底的に行わねばなりません。

世界に伍するスタートアップ・エコシステム

そこで、「(1)アイデアや技術を持つ起業家」「(2)リスクを見越した適切な指導を行える先輩起業家、リスクのある中で投資する投資家」「(3)スタートアップ企業のプロダクトを使い、買収し、または人材を供給する地域企業」のトライアングル(エコシステム)を充実させることが必要であると考え、まず最初にオール京都・京阪神体勢の整備に取り掛かりました。

  • 2018年に、起業家等の産業人材の育成や産学公連携、重要な社会課題であるスマート社会の形成のためのオール京都のハブ機能として「一般社団法人京都知恵産業創造の森(外部リンク)」を設立
  • 2019年に、交流機能「オープンイノベーションカフェKOIN」(外部リンク)、連携支援機能(40以上の多様な経済団体が集積)、人材育成・ビジネス創出機能(20以上の会議室等、年間6,000件(時間利用率3割程度)・68,000人来場で推移)を有するオール京都の産業支援拠点として「京都経済センター(外部リンク)」を開設
  • 2020年に、オール京都体制をさらに拡充するため府内各地の約30の支援機関で「京都スタートアップ・エコシステム推進協議会」、オール京阪神体制として「大阪・京都・ひょうご神戸コンソーシアム」をそれぞれ立ち上げ、国の「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」におけるグローバル拠点都市の選定を受け(2024年までのKPI:スタートアップ企業166社(大学発96、VISA15)、ユニコーン1社(ちなみに、持続的成長と社会貢献を目指すのが「ゼブラ」))、施策の相互乗り入れや情報発信の強化

 

その上で「(1)アイデアや技術を持つ起業家」の輩出・育成を図るため、2020年度から「起業するなら京都」プロジェクトをスタートしました。

  • ピッチ会・プログラム等の年間開催回数(京都全体、2020年度):150件(知恵森36、京大32、KRP26など)、参加者:延3,700名
    2021年度も、研究者向けにはJST「社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型」事業(京大など京阪神14大学の研究者を対象とした事業化資金(1,000万円×26件(うち京大4件))など、学生向けには「マンスリーディスカッション」(毎月第3水曜開催)、「イノベーターズライブラリ」など、社会人向けには「大企業アクセラレーションプログラム」(3社参加)など実施中
  • コワーキング(京都全体):57カ所、インキュベーション(京都全体):22カ所(500区画以上)
    KOINの利用:2019年のオープン以来の累計で35,500人超 (2021年度は10月末時点で3,200人。5月・9月の閉鎖のほか、座席数を半分に縮小しておりコロナ前の半分(6~700名/月)で推移するも、オンライン参加可能なイベント20回以上のほか、スタートアップ「壁打相談」等50件以上など交流拠点としての機能を維持)
  • ものづくり振興課関連補助金(スタートアップ企業採択):2020年度35件(2021年度50件)
  • その他、例年、京都商工会議所の創業相談7~800件、各商工会等の創業セミナー7~80回

その結果、

 

続いて「(2)リスクを見越した適切な指導を行える先輩起業家、リスクのある中で投資する投資家」の集積を図るため、2021年度から「世界に伍するスタートアップ支援事業」をスタートしました。

その結果

  • 投資家等ネットワーク:50機関以上
  • 資金調達総額:100億円以上(2020年度、民間調査)
  • 時価総額100億円超のスタートアップ企業数:5社(民間調査)

次なる「(3)スタートアップ企業のプロダクトを使い、買収し、または人材を供給する地域企業」との連携促進については、社会課題のシーズ・ニーズマッチング等に取り組んでいます。

リーマン・ショック後、米国東海岸では大企業を辞めて起業するケースが増えたように、今回のコロナ禍は、大企業より事業転換の点で小回りが利くこと、シリコンバレーや東京等ともリモートで繋がれると分かったこと、さらには金余りであることから、スタートアップにチャンスが到来しています。府外から京都に拠点を移すスタートアップ企業、支援者も散見されるようになり、新たな支援団体も立ち上がるなど徐々に「集積が集積を呼ぶ」状況が生まれつつありますが、シリコンバレーで約4万社、パリ、ベルリン、ボストンで各約4千社というスタートアップ企業数には依然遠く及びません。「最先端研究(0→1)、起業家(1→10)、事業会社(10→)」という一連の事業化・産業化フローの幅を更に広げることが重要であると考え、京都の大企業、ものづくり中小企業、研究機関等が得意とするゼロ・エミッションテクノロジー等の拠点形成など、取組を一層強化してまいります。

 

京都のスタートアップ支援の取組状況(PDF:298KB)

施策

事業承継・人材支援

 京都起業・承継ナビオール・京都の支援情報ポータルサイト 事業承継税制金融支援 batonz

事業継続・創生支援センターによる京都式第三者承継マッチング

既に日本の経営者の平均年齢は60歳を超え(京都府は60.1歳)(外部リンク)60歳代の経営者の約5割、70歳代の約4割が後継者不在(外部リンク)という状況です(帝国データバンク調)。

京都府では、2013(平成25)年度から、金融機関等を含めたオール京都体制(現在、ネットワーク会議)の下、M&A支援をそのスタートする事業承継・引継ぎ支援センター(京都商工会議所)と、独自に全国に先駆け中小企業事業継続・創生支援センター(外部リンク)」を創設し、「事業承継」の支援、その中でも最も困難な問題と言える後継者不在企業への「後継者マッチング」に取り組んでまいりました

  • 「事業承継」は、単に企業の経営上の問題だけでなく、経営者とその家族、親族との相続税その他の財産問題、人間関係上の問題など課題は幅広く、業務改善や社内統制などの経営支援から税務、財務、法務等の専門知識まで幅広いサポートが必要であり、これまで金融機関、商工会・商工会議所等とも協力し、累計で11,000件を超える相談、7,300社・者を超える事業承継診断を行ってまいりました。
  • 「後継者マッチング」については、そもそも後継者不在情報が取引や資金獲得上の信用失墜の恐れから表面化しにくいため、後継者不在企業を探すことも、後継者候補を探すこともいずれも容易ではありませんが、当日まで企業名を伏せて行うマッチングイベント「未来ミーティング」の開催や、インターネットによる後継者募集企業情報の発信(外部リンク)などによって、累計175件のマッチングを実現してまいりました。しかも、経営者を突如交代するものでなく、後継候補者を入社させ、育成してから交代する「京都式」第三者承継として、幹部候補人材も含めた幅広い人材マッチングを行っています。

2021年度から副業・兼業人材のマッチングにも着手し、既に活用依頼50件以上、成約15件以上に上ります。製造業・サービス業を中心に多岐に渡る業種の企業から依頼があり、東京等のWebデザイナーやコンサルタント等を使って、通販サイト制作や教育のAI化、旅館の経営改善を進める例をはじめ、ECサイト構築や業務のデジタル化のほか、マーケティングや薬事の専門相談など多岐に亘る業務で利用されています。

事業引継ぎ支援補助金による事業承継型M&A支援

一方、府内事業所数は113,774(2016年経済センサス)でありますが、対2012年比率は96.5%で、もっとも大きく減少しているのは製造業89.1%です。エリア別内訳では、京都市内70,637(対2012年比率96.2%、同製造業88.4%)、山城21,882(99.0%、96.5%)、南丹5,194(97.1%、95.3%)、中丹9,066(97.1%、91.3%)、丹後6,995(90.7%、81.8%)となっており、事業所数減少の最大要因は繊維工業の減少と見込まれます。

こうした中、新型コロナウイルス感染症による経済への打撃によって、廃業の増加を懸念するところです(2020年の府内休廃業・解散790件(前年比114.6%)、倒産253件(前年比105.4%)。特に京都は観光業の打撃を背景に2021年1-9月も前年同期を超える814件の休廃業・解散が発生しています。東京商工リサーチ調)。廃業時の従業員数の平均は約3名弱、往時で6名弱の小規模企業が大半であり、9割以上の経営者が後継者を探さないという状況(外部リンク)です(日本政策金融公庫調)。こうした実態から、廃業による周囲への影響が少ないケースが多いとも言われる一方、従業員の雇用の場の確保や、地域経済やサプライチェーンにとって貴重な財産である培われてきた技術・サービスの引継ぎは重要な課題です(2021年10月末時点で、承継診断2,220件のうち廃業意思16件(うち1件廃業))。

そこで本府では、今年度(2021年度)から、「中小企業事業引継ぎ支援補助金(外部リンク)」を創設し、本来、景気後退期など買い手企業の買収意欲が弱い時期はM&Aは進みにくいものですが、コロナの影響を受ける厳しい状況の中にあっても、事業譲渡や廃業・縮小等の意向を持つ府内中小企業を引き継ぐ中小企業を応援するための補助制度を開始しました(4件。その他申請相談中)

  • M&Aで実際に取引が成立するのは、相談案件、売買プラットフォームの登録案件のうち、せいぜい数%~1、2割と言われています。成長市場・高利益率の業種は当然ですが、継続的に売上がたつストック型ビジネス、規模のメリットが働きやすくて寡占化が進んでいない業種、あるいは人手不足の業種など、比較的サービス業やIT関連が向いているのに対し、設備投資が大きく、ニッチ部品を扱うケースも多い製造業は特に難しいとも言われます。そこで、規模のメリット(同業種)範囲のメリット(異業種)を活かせる「買い手企業」などに繋いでいくことが重要です。
  • また、特に中小企業のM&Aは、敵対的買収や乗っ取りといったものではなく友好的なものである一方、会計書類が公開で会計監査もなく、内部統制も十分ではない、あるいは属人的な要素が強い故に買収後に社員が辞めるケースがあるなど、容易ではありません。そこで、「売り手企業」は、逆に以上の内部統制をしっかりしておくことが重要です(2020年に、国内でも「表明保証保険」が登場)。

「親族承継」と「第三者承継・M&A」の企業評価の違い

事業承継は「経営(代表者)の承継」(親族承継や第三者承継)、「所有(株式)の承継」(MBO(経営陣による買収)やM&A)のほか、中小企業の場合は「代表者個人資産(会社に提供しているもの)の承継」が絡まり合いながら、売り手(企業)、買い手(後継者・企業)間で取引を行っていくこととなりますが、その価格の非公表性や算定ノウハウ不足などが第三者承継・M&Aの難しさの要因の1つです。

  • 親族間における非上場株式の評価」については、その例外として租税公平主義の見地から、租税負担を回避する取引は認められておらず、同族株主の有無や個人・法人の別などによる細かな計算方法が税務基準で定められています。
  • 「純然たる第三者」の場合は「契約自由の原則」どおり、当事者間での合意による価格となります。M&Aの場合は、時価純資産額(コストアプローチ)、類似事例額(マーケットアプローチ)、将来収益額(インカムアプローチ)など様々な理論がありますが、中小企業の場合は、「時価純資産額+営業権(営業または経常利益×数年分(業種による))」が目安とされるケースが多いです(最近は、事業引継ぎにもAIの活用による効率的な手法(外部リンク)も登場)。
  • なお、MBOの場合には、資力を補填するためファンドを活用されるケースもあります。GP(無限責任組合員=運営者)は、LP(有限責任組合員=投資家)の協力を得てファンド(投資事業有限責任組合等)を組成し、キャピタルコールと言って、投資案件ごとにSPC(特別目的会社)を設立して、ファンド出資とLBOローン(金融機関借入)を行い実行します。

なお、非上場会社の株式等取得に係る贈与税・相続税の納税猶予を行う「事業承継税制」について、事前確認は2018年以降の累計で250件超(年50件以上)、認定は2009年以降の累計で140件超(近年は年2~30件)の活用があり、中長期的に事業承継の準備を進める契機になっています。

中小企業事業継続・創生支援センターの取組(PDF:269KB)

事業承継施策

人材支援施策

子ども・学生向けセミナー等レポート(一部)

戦略・知財支援

京都企業紹介(業種別) 京都企業紹介(五十音順)

POSTコロナ時代、ローコスト新事業展開又は付加価値向上

5G脱炭素関連技術の実用化の加速、コロナによる巣ごもり需要の増加を背景にした法人税収の増加により、2020年度の国の税収は過去最高を更新する見込み(60.8兆円)ですが、そもそも利益計上法人は法人数全体の約3割にとどまり、残る7割が欠損法人である(外部リンク)日本の実情を反映するかのように、2020年度の国内総生産GDPの対前年比(実質/速報値)マイナス4.6%となり、リーマンショックが起きた08年度のマイナス3.6%を上回り、比較可能な1995年度以降で最大の下落となってしまいました(雇用調整助成金の利用もリーマンショック時の4倍に)。そもそも日本は、長きにわたり

  • 付加価値が上がらない一人当たりGDPが米国で127.6千ドルなのに対し、日本はG7諸国中最低の77.8千ドル(2019年)で、1995年頃から横ばいです。何より深刻なのは、これまで世界的シェアを誇る電子部品を生み出すグローバル企業、そのマザーマシンの部品づくりを支える中小企業の存在が象徴する「精緻さ」が京都の強みでしたが、AI、IoTなどのDXによってナノレベルの加工も機械が実現し、職人技に取って代わるようになっています。
  • 賃金が上がらない:付加価値が上がらない要因の一つが、宿泊・飲食や医療・福祉分野を中心とした非正規雇用の増加です。これによって、女性の年齢階層別労働人口比率の「M字カーブ」が消滅するなど、女性の社会進出が進んだ面もありますが、1997年を100とした場合、2016年でスウェーデンが138.4、フランスが126.4、米国が115.3なのに対し、日本は89.7と大きく下回っており、2020年も平均給与は433万円と前年より下回っています。

このような状況の中で、現在、

  • エネルギー・原材料価格が高騰している:原油や鉄等は、基本的に需要が高いものである一方、脱炭素の流れを受けて投資(産出)が抑制され、投機筋も絡むなどして高騰基調が続いています。原油に関しては、OPECの原油産出の抑制に対し、米国等でシェールオイル・ガス(地下深くのシェール層に閉じ込められたままの石油・天然ガス)の開発が進められていますが、レアメタル(経済産業省指定31元素)、レアアース(バッテリーに使われるコバルト、永久磁石に使われるネオジム、レーザーに使われるYAGなど世界標準17元素。一般にマグマで生成され、N核軌道(原子の内側からK,L,Mの順)に電子の「空席」がありつつ外側のO核に電子があるもの)はもちろんのこと、鉄は過去数十年において経験したことのない価格上昇をしています。
  • 部材が不足している:半導体を代表に、プリント基板の部品やワイヤーハーネスなど様々な部品が不足しています。半導体は、近年の自動車への搭載点数の急増に加え、ゲームなどのコロナ需要の増加の影響がありましょうし、安い部材は、何十年にもわたり生産拠点を移してきた東南アジアがコロナ禍であることなど、様々な要因が絡まり合っています。

このように大変厳しい状況を打開するためには、販管費が少ないか(技術力で勝負できているか)、原価の中でも特に材料費が少ないか(外注加工費は内製化に転換できるが、材料は自社で内製できないものであれば合理化の余地が少ない)チェックを行うとともに、「エネルギー・原材料価格の上昇」に対して、「ローコストでの新事業展開(省コスト化)又は付加価値向上(価格転嫁)」、それによって「物価上昇を上回る賃金上昇」を図り、「景気向上」を実現する好循環を生み出していかねばなりません。

芽吹いてきた事業変革のスタイル

ローコストでの新事業展開(省コスト化)又は付加価値向上(価格転嫁)のヒントは、コロナ禍の中での取組にもありました。

2020年度・2021年度(10月末)において、(公財)京都産業21では、13,000件・8,000件の相談対応、400件・350件弱の受発注のあっせんを行い、ものづくり振興課関連の補助金では、887件・956件、3,811社・3731社、約26億5,000万円・約21億円5,000蔓延の支援を行なってまいりました。その中には、感染症対策の新商品・サービスに参入された例のほか、和装から和菓子その他幅広い商品卸・プロデュースに拡大された例店舗販売から輸出等に軸足を移された例製造業でありながら工作機プログラミングAIのサブスクサービスを始められる例などの「広義の事業転換」、工場でのリモートワークを図ろうとする例などの「工程変革」に関するものも多く含まれています。また、新たな事業に挑戦する企業を応援する「知恵の経営」が累計241件(2008年度~)、「元気印」認定が386件(2007年度~)、チャレンジ・バイ認定が158件(2007年度~)に及ぶとともに、チャレンジ・バイによる販路開拓(2015年度~)も累計100件近い商品、総購入額1億円超を達成するなど、厳しい中でも前向きな挑戦をする姿も見られる1年でありました。

  • 新型コロナウイルス感染症対策技術結集補助金
    超高速PCR装置の開発、密アラートと購買行動促進リテールメディアの同時実現、など
  • ものづくり中小企業等経営変革緊急補助金
    金属加工業が眼鏡フレームのオーダーメイド・オンライン販売の開始、生地整理加工業が制菌加工の開始
  • 小規模企業等経営基盤強化支援補助金
    職人による菓子づくりや紙器づくりの自動化、通販に挑戦する飲食店チェーンのセントラルキッチン導入、コロナ禍で楽しむ双方向性お菓子(可食プリンタ)開発、など
  • 京都エコノミック・ガーデニング支援強化補助金
    5G半導体用の新素材開発、食のSDGsとして外葉を有効活用する食品開発、各地に導入する自動機のリモートメンテナンスシステムの開発、など
  • 次世代地域産業推進補助金
    AI企業と医療関係者らでCT画像の超高速ノイズ除去システムの開発、AI企業と漁業関係者らで良好漁場情報提供システムの開発、など
  • 企業連携型ビジネス構築補助金
    映画館とeスポーツ主宰企業の連携による新たな映画館の役割の模索、など
  • 中小企業共同型ものづくり支援補助金
    同業他社のためのセントラル・スーツオーダーメイド工房、人材の不足するCAD工程の受注サービス、など
  • 「産学公の森」推進補助金
    2021年度30件の内訳:フードテック・スマートアグリ6件(ゲノム編集魚によるタンパク質危機対応など)、脱炭素5件(CO2由来の材料製造など)、コロナ対策5件(抗ウイルス加工など)、少子高齢化3件(悪徳商法対策AIなど)、医療健康3件(がん免疫療法開発など)、POSTコロナものづくり3件(汎用ロボットピッキングなど)、ICT教育(リモート・オープンキャンパスなど)、スマートシティ2件(世界の物流スピードアップと道路インフラ維持コスト軽減のための走行車重量測定システムの量産化など)

プロセスエコノミー(ノウハウのビジネス化)とイノベーション(新結合)

1つ目のローコストでの新事業展開(省コスト化)とは、技術・製品(精緻さ)の差別化が困難になる中で、それらを支える哲学やストーリー、設計力や生産技術・現場カイゼン力などのオリジナルのノウハウをDX等と組み合すことで限界コストを抑えながら新事業展開を展開するプロセスエコノミーです。

  • プログラミング力×AI(ブラックボックス化)を、サブスクで展開
  • 設計力×3DCADのシェアリングで、設計力シェアリングサービス展開
  • 寿司職人×冷凍技術で、寿司のオンライン販売
  • 熟練手術医×5G・8K技術で、他の病院を助けるオンライン診療

もう1つの付加価値向上(価格転嫁)とは、文化芸術や最先端研究、伝統産業からハイテク産業に至る多彩な企業等どうしの強みのイノベーション(新結合)による高付加価値化です。

  • ガラケーは「技術の高度化」に走り敗北し、スマホは「組み合わせ」(特に様々なアプリを自由に乗せられる点が良かった)で勝利

文芸理の融合

こうしたプロセスエコノミー(ノウハウのビジネス化)、イノベーション(新結合)を実現するには、文芸理など多角的な視点によるプロデュースが必要です。

1つ目の「文」とは「戦略」を徹底的に考えることです。生魚を敬遠するアメリカで、明太子を「タラの卵」ではなく「ハカタ スパイシーキャビア」と言い方を変えて成功したそうです。こうしたキャッチコピーを生むためのストックを日頃から集めておく、自社の資源に関係あることないこと掛け合わす、自社の資源の魅力を徹底的に数珠繋ぎで表していく、真似を複数掛け合わす、ターゲットをずらす、相反する2つを同時に解決する、自分・周囲・社会全てにとって良い策を考える、分解してあるいは比較して深層にある答を探す、何より考える時間を長く確保すること、そうすることで「価値」を生み出せるはずです。

  • 知財戦略
    イノベーションのためには、「競争法(独占禁止法等)」「特許(技術の占有)」「標準化(技術の開放)」が均衡を持って行われる必要があります。特に、オープンイノベーションにおける知財戦略は、「方法」は「秘匿(ブラックボックス化)」して守り、「原理(効能)」は「特許化(オープン化)」して信頼性を高め、「インターフェース」は「標準化(普及)」して市場拡大を図るというのが目安ではないでしょうか。
    「特許化」に関しては、新型コロナウイルス感染症が地球規模で蔓延し、経済に大きな打撃を受けた2020年においても、国際特許出願件数は対前年比4%増と過去最高を更新するなど、世界中で留まるところを知りません(近年の特許出願:世界300万件超、日本約30万件(国際出願約5万件)、京都約1万件)。
    技術の普及には、従来技術との比較優位性、既存行動との適合性、分かりやすさ、試用可能性、可視性の5つが重要だと言われるように(E・ロジャーズ)、単純化・統一化により互換性を確保する「標準化」は、産業革命を起こした蒸気機関、紡績機等においても既に採り入れられてきました。しかし、市場競争の結果として生まれた事実上の標準「デファクトスタンダード」においては、自社のみの努力で実現でき、技術は非公開であるため、利益に直結するものの、通常の「標準」は、その取扱いは諸刃の剣でもあり戦略が重要となってきます。供給者側には「参入が容易(「すり合わせ」から共通規格の既存部品の組み合わせで済む「モジュラー化」が進むため)」「開発・製造コストダウン」「市場拡大(ネットワーク外部性、スイッチングコストによるロックイン(顧客囲い込み))」と、かつての日本、現在の新興国のように、安く作れる者にとってはメリットがありますが、「技術漏洩(参入障壁減少。モジュラー化で共通規格の部品さえ作れれば参入可))「差別化困難・非標準品市場開発困難」「販売価格低下」といったデメリットがあります。一方、需要者側にとっても「調達互換性拡大」「調達コストダウン」「調達量・品質の安定」というメリットと、「製品選択肢の減少」「購入品へのロックイン」というデメリットが並立しています。従って、供給側の戦略としては、シェアを落としてでも市場全体を拡大する戦略、あわせてユニット化する標準化していない部品で差別化を図る戦略(標準化の周辺に特許を配置する戦略)、自社規格を公的標準化することでライバルの参入を抑止する戦略(コンデンサーメーカーでは、これによってセットメーカーへの提案型ビジネスを展開し、回路モジュールまで設計)、他社と調整して技術を統合するのではなく、互いの技術それぞれを標準規格とするマルチスタンダード戦略などが、需要側の戦略としては、競合他社より調達コストを下げるなら一定の範囲のみ(例えば日本のみ)で標準化を行う戦略などが考えられます。なお、標準化の手法は、製品標準化の場合は、様々な製品の平均をとるなどなされますが、特に検査標準化の場合は、その方法で測ると、性能差があることは一目瞭然だが、なぜその性能差が実現できているのか、どこをキャッチアップできるのかは分からない試験方法であるべきと言えます。
    標準化の中でも、一般に認められている団体によって認証される「デジュール標準」。世界三大標準化機関:IEC(国際電気標準会議)、ITU(国際電気通信連合)、ISO(国際標準化機構ISO9000シリーズ(品質マネジメントシステム)、ISO14000シリーズ(環境マネジメントシステム)等)によるもののほか、製品安全4法(電気用品安全法、ガス事業法、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律、消費生活製品安全法)、CEマーキング法(EU地域に販売される指定の製品の適合性評価。自主宣言と第三者認証がある)、CCC法(中国における製品第三者認証制度)、JISマーク表示制度(本来強制力はないが法律で引用されるケースも多い。2005年改正以降、民間認証機関による製品認証制度)、地域団体商標(加入自由な組合が組合員に使わせるもので、産地・販売地、原材料など一般的な用語で登録可能)など様々なものがありますが、主に供給側と需要側の間に立って「信頼性を高める」ものです(地域団体商標と合わせて独自の地域ブランドで差別化を図る取組も行われることがあります(今治タオルなど))。一方、SIAAマーク(抗菌加工製品。持続性試験後の抗菌活性値が無加工品と比べて増殖割合1%以下の場合に「抗菌加工品」と呼ぶ。JIS化、ISO22196でも「KOHKIN」の記載あり)など「差別化を図る」ための認証もあります。標準化しようとする技術の中に特許が存在する「標準必須特許」に関しては、パテントポリシーが標準化団体で決められていたり(特許の排除、無償提供等)、終焉しつつあると言われますがパテントプールが特許の一括管理したりといった仕組みがあります(クアルコムのように対象技術の製造部門は売却して、特許ライセンス料だけで収益を上げる例も)。欧州は認証ビジネスが盛んで、ジュネーブに本社を置き、従業員8万人、世界140カ国に展開しているSGSなどの認証機関が数多く存在します。
  • 「ビジネスモデル」の例
    大量の双方向の送金者を抱えることで実送金を抑え送金手数料を激安にするもの、語学学習者に任すことで企業向けに翻訳を激安にするもののほか、衣装だけでなく道具、振る舞い方の指導も含めたパーティー対応一式サブスクや、VRで様々な世界を巡る高付加価値型のフィットネスなどがありましょう。
    中でも中国の漫画アプリ「快看漫画」。スマホ縦スクロールに合わせてコマ送りを構成しただけでなく、書物やPCに比べて閲覧時間が短くなったことを踏まえ、フルカラー化、ストーリー転換のスピード化(テーマを女性に絞りドラマチック性を追求)や、若者がスマホを使う夜9時配信など、徹底した「スマホ最適化」を図るだけでなく、視聴者の閲覧履歴から監督、俳優、ストーリーの組み合わせを最適化してコンテンツ制作を行うネットフリックスを模倣して、データから判断してヒットしそうなテーマの選択・変更、ユーザーに応じたタイトル画像の表示などの「レコメンド制作」も採り入れています。さらに、売れっ子になる前の漫画家をサポートするため、マネージャーやプロデューサーを付けるとともに、SNSの交流を通じた若手漫画家のタレント化など「漫画家支援」も行っています。将来は、消費しやすい漫画が知識・情報伝達のメインツールとなり、知財の源泉になる時代を目指しているとのことです。
    日本のスタートアップ企業においても、「自分の声」の大量データを学習したAIが、スマホ等で打った文章を「自分の声」に変換して読み上げるサービス(外部リンク)を、破格の価格で提供するサービスを始めています。これにより、声優の収録なしにアニメが作れたり、障がいで声が出なくなった方も「声」を出せたり、素晴らしい活用がなされています。
  • プラットフォームの例
    GAFAMが典型で、有名な宿泊施設に変えた自宅(付加価値の創出)と宿を探す人を結びつけるもの、P2Pでの金銭の貸し借りを同じ母校の先輩後輩を結びつけるもの、リフォームしたい人と内装業者を直接結びつけるものなど、欧米を中心に事例を挙げれば枚挙に暇がありませんが、中国企業の躍進も目が離せません。
    施術後の「リカバリー」にこそ不安が最大になっていることを見い出して、「整形日記」を開始。仲間内での情報交換からスタートし、やがて一般公開に広げ、価格も実力も分かりにくかった美容整形業界において、データから口コミ評判の高い病院を紹介するサービス、患者とマッチングするサービスで収益を得ています。
    あるいは「シャオミ」。中国でもアンドロイドOSがスマホに多く搭載されていますが、サービスは規制されてきたこともあって、ユーザーを集めて毎週アップデートを行うことで、採用される喜びによってますます意見が提供される好循環を生み出し、モバイルバッテリーをはじめヒット商品を生み出しています。
    または、オンライン英会話「VIPKID」。北米ネイティブで優秀な人材を用いた「教育の質」を追求することで、ユーザーだけでなく、教師人材にとってもステイタスとなり10万人を超える人材が登録しています。
    プラットフォーム研究の権威、MITのマイケル・クスマノ教授の研究によると、プラットフォーム企業は非プラットフォーム企業の約半分の従業員数で同程度の売上を達成し、営業利益率や企業価値はビジネスモデル型の2倍に及ぶそうですが、一方でヒットするのはごく一握りです。徹底した「人間性の追求」を行うためのリベラルアーツ(幅広い文化力)が求められているのではないでしょうか。

2つ目の「芸」とは「価値」を活かすことです。府内事業所数113,774(2016年経済センサス)の業種別内訳は、建設業約8,500製造業約13,500(繊維工業約4,400、機械金属・樹脂約4,000、食料飲料等製造約1,300)、情報通信業約1,000運輸業約2,000卸小売約29,000(小売約21,000)、金融・不動産約9,000宿泊・飲食約15,200医療福祉約8,700サービス約26,000などとなっています。すなわち、京都には、歴史・文化を土台に、こうした伝統産業、ハイテク産業、コンテンツ産業など、他地域には類を見ないほど多種多様な産業が重層的に存立しており、こうした京都ならではの基盤の上に立って、それぞれが有する有形無形の価値(産業実用的価値、文化的価値、共感的価値、環境価値など)を組み合わせるなどして活かすことです。

3つ目の「理」とは「DX」です。経験に頼り過ぎずデータをしっかり分析することはもちろん、ビジネスモデルに活かすことが重要です。既に世界人口78億人のうち半数超がインターネットにアクセスしていると推計されています(2018年時点)。そして、デジタル経済の特徴は、複製・流通など「限界費用の安さ」、プラットフォームの乗換コストがかかることによる「ロックイン効果」、利用者増が利便性を拡大し更なる増加を招く「ネットワーク外部性」によって、GAFAMのような勝者がますます勝者となる点にあります。それ故、「物理層」のアマゾンAWSなどのIaaS(インストラクチャー・アズ・ア・サービス)をはじめ、「ミドルウェア層」にもマイクロソフトAZUREなどのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)が存在しますが、中小企業やスタートアップ企業は「アプリケーション層」のSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)を中心に展開することになりましょう。プラットフォーム企業は、APIを公開し、オープン・クローズ戦略を展開していますが、売り手と買い手の間の信頼リスクを引き下げる基盤でもあるため(例えば、発注時に資金を預かり、完了時に支払うなど)、中小企業・スタートアップ企業は、その信用の上で、個別の課題解決サービスを創出する、あるいは、自社の商品・テクノロジーにセンサーを組み込んだ「ユニット化」によってデータを収集することで、多展開を図るセミプラットフォーマーになる(服や掃除機、自動車のタイヤにセンサーが組み込まれています。)などといった戦略が考えられます。

企業情報

施策

(認定等)
 専門家派遣等)
(融資)

販路開拓支援

京都商談ナビ チャレンジ・バイ中小企業新技術開発応援制度 福祉・医療商品導入補助福祉施設・病院等の皆様へ

街はショウルーム・メンテナンスセンター

買い物はインターネット、という時代。パソコンのウェブカメラ越しに店員さんが商品説明をし、顧客は気に入ればインターネットサイトで購入するという取組が始まっているように、リアル店舗は商品展示場として、消費者からではなく出品企業からお金を取る形に姿を変えるかもしれません。商品並べはAI(外部リンク)ロボット(外部リンク)が自動で行い、3D計測機で身体のサイズを採寸し、AIが自動で商品を提案するといった取組(外部リンク)も始まっており、京都の街もショウルームと化し、京都観光に新たな要素が加わるかもしれません。
その代わり、限界コストが限りなくゼロに近い「サブスク」を活用することで、京都の得意とするニッチな商品群でロングテールを容易に実現できる時代を迎えるとともに、リアル店舗や街の電気工事業等は、貸出品のメンテナンス・リカバリーセンターとしての機能を発揮するかもしれません。
また、既に自動車や家電、アパレルや薬などの分野でマスカスタマイゼーションの足音が聞こえてきており、モノの流れと逆に情報の流れは川下から川上へのデマンドチェーンを構成し、サプライチェーンは素材、パーツ、色などの「組み合わせ」、さらには3Dプリンタによる「単品」で対応するためには、物流のシェアリングが効果的です。

こうした時代になれば、ものづくり企業は、作り手としての本業に集中できる、すなわち、サブスクなどの新しい活用形態の中でユーザーに求められているユニークな企画・設計、高度な研究開発、優れたUXデザインなど真価を発揮する時代になるのではないでしょうか。

1次情報を活かしたものづくり

事業者が店舗規模を維持できる自治体の人口規模のボーダーラインは、郵便局は600人、コンビニは2,200人~3,800人、喫茶店は1,400人~6,500人、介護老人保健施設は9,500人~2万2,500人、一般病院は1万7,500人~2万2,500人と言われています(国土交通省「市町村人口規模別の施設の立地確率」2020年)。
もちろん、現在の買い物は、ショウルームでの「発見系」よりも「目的系」が大半です。買う物が決まっている客(ZMOT=Zero Moment Of Truth)は一直線に売り場に向かうだけであり、広告宣伝は意味をなしません。CMは「認知」までで、「間違えたくない」という心理を突いた「デジタルシェルフ」や「レビュー」が「判断材料」となるのです。2021年1月時点で世界全体では、Facebook25億人、Youtube20億人、Instagram10億人、TikTok8億人、Twitter4億人のアクティブユーザーがいます。そして、レビューは、買う前だけでなく、買った後のものも重要であり、パッケージの工夫による「開封の儀」など、買ってから始まる顧客体験を演出することも必要となってきます。アメリカではソーシャル映画鑑賞等が興こっていますが、今後は、趣味のつながりなどへの働きかけ(将来はVRで集まるなど)が鍵となってきそうです。

一方、こうしたEコマースに勝てるのは小商圏ビジネスかもしれません。コロナ禍でAmazonよりも、ウォルマート(大量仕入で安い)の方が、店舗に取りに行けば早いということで、より伸びたとも言われています。自宅を倉庫代わりにするフランチャイジーを集め、より早く商品を提供するサービスを始めた大学生のスタートアップ企業が登場したり、Eコマースが伸びる中国でもデジタルと融合した出店ブームが起こったりといったことを耳にします。生活者は「モノ」ではなく「目的」を買っているのであって、こうした1次情報を得る機会は重要です。

なお、Eコマースにおいても、日用品に強いAmazon、ギフトに強い楽天などの大手は、「目的系」の利用が多いでしょうが、ヘルスケアや贈り物など分野を特定した「パーティカルコマース」を対象とするスタートアップ企業も登場してきており、「発見」して楽しむ場として期待できます。

今後、マスマーケティング、その上層にD2C(メーカーが直接個人に販売)、更に最上層にはP2C(個人発D2C)が君臨してくる時代、インフルエンサーと一緒にものを作る、あるいは企業自身の哲学・ストーリーを磨くことが成功の近道かもしれません。

2021年度
2020年度

設備投資、税の優遇

エンジェル税制

不動産取得税軽減

固定資産税軽減

その他

補助金

2021年度(募集中)

2021年度(募集終了)

2020年度(2021年度も実施するもの除く)

その他支援機関等

産業別メニュー

特区・産学公連携

宇宙の原理を活かす

「無(「ゆらぎ」のある状態)」から1cm角スケールへの「インフレーション」。その膨張エネルギーによって「ビッグバン」が発生。そのエネルギーで「物質(電子、クオークなどの素粒子)」「反物質(異なる電荷を持つ陽電子などの素粒子)」、さらにはそれらの衝突で光子が生まれるとともに、膨張の拡大に伴う冷却による「素粒子結合」で陽子、中性子が誕生・・・。
現在半径470億光年の広がりをもつ宇宙が138億年前に誕生した「1秒間」に起こった出来事です。3分後に「陽子・中性子結合」によって水素やヘリウムの原子核が、38万年後に水素とヘリウムの原子が生まれました。やがて星の重力による核融合でヘリウムより大きな軽元素が、中性子星の合体によって鉄より大きな重元素が生まれました。
こうした光子(アインシュタインがノーベル賞を受賞したのは、これ以上分割できない光の最小単位を示した「光量子仮説」)、電子、陽子、中性子や原子などの「量子」。今のコンピュータに入っている1辺数cmのCPUに、10nmサイズのトランジスタ(1秒間に10億回ON/OFFの切り替えが可能)が10億個程度入っていますが、例えば原子1つのサイズは約0.1nmとさらに小さいです。こうした量子は「粒でもあり波でもある」ため、有名な「2重スリットの実験」のとおり2つの隙間を同時に通り抜けます。2択ではなく「重ね合わせ」(しかも「確認」すれば1つに集約)という、一見、古典物理では説明がつかない量子のふるまいが、私たちの世界を支配しています。最近では10兆個の原子からなる長さ0.04mmの金属板でもこの現象が確認されています。
この量子力学の原理を活用するのが「量子コンピュータ」です。量子ビットと量子論理演算によって構成されるものです。情報を保有する「量子ビット」は、イオン方式、半導体(電子)方式、光子方式など様々な方式が研究されていますが、1ビットについて、電気や磁気によってONかOFFかの2択で表すのではなく、量子の性質によって重ね合わせ、つまりどちらをも表せるので、nビットの場合に2のn乗通りのパターンをいちいち全て判別する必要はなく、そのnビット1本が全てを含んでいるため、それだけを判別すればいい、つまり大量の計算を並列処理できます。演算を行う「量子論理演算」は、波の干渉を操るような仕組みです。これらにより従来のコンピュータを大きく凌駕するスピードを実現しようというものです。2014年にGoogleが大学の研究グループを取り込み自社開発を宣言したことがきっかけでブームが到来したものの、本格的なものはまだ見通しは立っていませんが、素因数分解を高速に解く(現在の暗号化技術をあっさりと打ち破るものでもあります)、新素材を発見するなど、大きな期待がもたれています(日本においても日立、トヨタなどが量子技術による新産業創出協議会の設立を目指しています)。

そして宇宙へ、ユニバーサル時代

市場・サプライチェーンが国境を越えた「グローバル時代」の次は、大気圏を越える「ユニバーサル時代」。

人が大砲に乗って月を周回し地球に戻るという「宇宙の旅」を本気で妄想し小説化した『地球から月へ』(ジュール・ヴェルヌ(仏)1865年)を皮切りに、人類の宇宙開発はスタートしました。

  • 1897年、ロシアの科学者ツィオルコフスキー「ロケットの公式」発表
  • 1926年、米国の発明家ゴダードが液体燃料ロケットを打ち上げ(2.5秒、12m)
  • 第二次世界大戦中、ドイツのV2ロケット(弾道ミサイル)
  • 1957年、ソ連による人類初の人工衛星「スプートニク1号」
  • 1961年、ソ連「ボストーク1号」とガガーリンによる人類初の有人宇宙飛行(108分)
  • 1969年、米国「アポロ11号」とアームストロングらによる人類初の月面着陸

米ソの疲弊に伴って、1984年にレーガン大統領が発表した「人が滞在できる宇宙基地建設」には、欧州や日本だけでなくロシアも加わり、「国際宇宙ステーションISS」(1998年~)を国際協力により運営する時代になり、近年は、米中が競い合っています。

  • 米国を中心とした諸国の「アルテミス計画」は、2024年の月面着陸、月周回宇宙ステーションや月面基地の建設を目指すもので、月の砂からコンクリートを生成する、月の氷から水や水素を取り出して月生活や火星までの燃料に活用するなどの狙いもあります。
  • 中国も既に月や火星に無人探査機を到達させています。

そして、軍事目的で開発されたインターネットが民間開放されたように、宇宙産業も民間主導へと時代が変化しつつあります。これまでの軍需企業、旅客機メーカー、電機メーカなどに加え、既に2,000機以上の人工衛星を打ち上げているスペースX、ブルー・オリジンをはじめ、国内にも多くのスタートアップ企業が生まれています。

日本発の新技術

これまでも日本発の技術はたくさん生まれています。

  • セルロース(植物に含まれる地球上で最も多い炭水化物)を原料にした「セルロースナノファイバー」は、木材チップ、さらにはパルプを細かくしてほぐしたゲル状の物質です。まず、髪の毛よりも細い繊維故に、その接点が多さから結合力が強く、鉄の5分の1の重さで5倍の強度を有し、プラスチックに練り込み自動車に利用されています。あるいは、発砲材料としてスニーカーのクッションにも利用されています。食物繊維と同じで体内に入れても害がないため、ソフトクリームに入れると長時間形が崩れません。金属イオンを付着させることから銀イオンを保有させた抗菌消臭おむつとしても利用されています。
  • 自然界に存在する酸素の「同位体(同じ元素で重さが異なるもの)」比率は、軽いO16(99.8%)、重いO18(0.2%)ですが、地球上で最も長生きする樹木(年輪)の主成分セルロースに残る、樹木が過去に取り込んだ水(酸素が含まれる)の同位体比率を調べることで、過去数千年の気象変化(干ばつ時は乾燥し軽いO16の水の蒸発が進む)が分かります。
  • 同位体の中には不安定なために放射線を出しながら壊れるもの「放射性同位体」があり、C14の放射線エネルギーを電気エネルギーに変える装置「原子力電池」。放射性同位体が壊れて半減する時間「半減期」は、NASA火星探査車バーシビアランス搭載の原子力電池に使われているプルトニウム238で88年という長期。現在、半減期5730年の核廃棄物、炭素14を用いたダイヤモンド電池(半導体に人工ダイヤモンドを使用)の研究も進められています。ちなみに、炭素14は宇宙線を通じて生存中の生体内に採り入れられるので、その減少量から化石の年代特定で調べられるものでもあります。
  • 導電性、加工性、防錆性に優れる(光の三原色・赤緑青のうち青を吸収する故に金色に反射)は既に約19万tが採掘され、残る埋蔵量(自然界にある総量のうち現代の技術・資本で採掘できる量)は約5万tと言われ、注目されているのが都市鉱山。金鉱石1tで約3gなのに対し、スマホ1tで約280gが採掘可能で、それを容易にしているのが「有機王水」です。
  • シリコン太陽電池より安く、塗布するだけなので薄くて軽く、室内照明でも発電できる「ペロブスカイト(灰チタン石)太陽電池」の耐久性、大面積化等の研究が進められています。
  • 静止衛星から地球、宇宙の双方向に伸びる100tに及ぶケーブル(宇宙エレベーター)にかかる万有引力と遠心力に耐える素材として注目されている「カーボンナノチューブ(炭素でできた細い筒)」。炭素原子だけのシンプル=強固な結合故に髪の毛の50,000分の1の細さで鉄鋼の10倍以上の強さ、パイ結合故に電気や熱を良く通し電流耐性は銅の1000倍、2800度までの耐熱性を有しています。
  • 振り子、水晶の振れなど1秒間の振動数を図ることで時を正確に刻む時計。セシウムの振動数(92億回弱/秒)を基にする原子時計(3000万年に1秒しか狂わない)より高精度で、ストロンチウムの振動数429兆弱/秒を基にする「光格子時計(300億年に1秒しか狂わない)」と、相対性理論(動いている方が、あるいは重力が強い方が時間の流れがゆっくり)により、GPSの時刻情報の補正だけでなく、時間の差でわずかな地表の高低差の把握や、地下の比重の大きい鉱脈の発見が可能になります。
  • X線解析法が結晶(大量)でないと解析できないため、「結晶スポンジ」に対象分子を流し込むことで同じ方向を向いた状態を少量で作り出す方法で、苦味成分の物質変化を解析し、より美味しいビールが開発されています。
  • 通常2個ワンセットの「対」で安定する電子を、1個の「不対」で不安定な状態で有する原子・分子・イオン、すなわち「ラジカル」は、周囲の物質から電子を入手しようとします。その代表例が「活性酸素」であり、細菌やウイルス(過剰になれば正常細胞まで)を攻撃します。「」は空気中にある水と反応し、水をラジカルに変えるため、抗菌性を有するのです(新型コロナウイルスの生存期間は、プラスチックやステンレスの表面では2~3日であるのに対し、銅の表面では4時間程度と言われます)。
  • 光で作用する触媒「光触媒」には「葉緑素」のほか「酸化チタン」があり、UVが当たると空気中の酸素と水が「活性酸素」に変化します。なお、自動車の有害排ガス「窒素酸化物(NOx)」も触媒で無害かしています。
  • 細胞と細胞の間のタンパク質が糊の働きをして器官は形を保っていますが、心臓や角膜の再生のために貼り付ける細胞シートを作る際にも、タンパク質が細胞培養シャーレの底に貼り付く問題があり、「温度によって性質が変わる高分子(低温にすると水と吸収しはがれる)」をシャーレ表面にナノレベルで敷き詰める方法が考えられました。
  • ラップやヤモリで有名な「ファンデルワース力」(電気的中性であっても周囲の粒子によりプラスマイナスの偏りを生じることで引力が働く)で、皮膚に電極を貼り付ける「スキンセンサー」「スキンディスプレイ」の研究も進んでいます。
  • 手術(切除)化学療法放射線治療(照射でがんDNAの1本を切断)、免疫療法(オプジーボ、CART-T、iPS細胞由来T細胞など)に続く第5のがん治療として期待される「ホウ素中性子捕捉療法」。がん細胞が採り入れるフェニルアラニン(アミノ酸)にホウ素を結合させ、放射線を照射すれば、ホウ素が分裂しがん細胞を破壊(DNAを2本とも切断でき修復の恐れがない上、ホウ素2粒子は当該がん細胞を破壊するエネルギーしか持たない!)。照射までの時間、ホウ素をがん細胞に留めておく課題の克服に「液体のり(プリビニルアルコール)」が有効とのこと。

そして、宇宙から地球環境、産業競争力、社会、家庭や個人の心に至るまで、創造力とイノベーションを興していくことが重要です。

特区推進

そのために、まず、障壁となる規制の緩和、制度の見直しのために「国家戦略特区」を活用しています。

2013年に大阪府・兵庫県とともに10地区の1つに定められ、2021年11月末時点で、全国では、特区措置71メニュー、全国措置48メニュー(ちなみに、一時期特区でも議題になり現在「原動機付き自転車」扱いの電動キックボードは、新分類への検討がなされています)や税の特例があり、そのうち京都府では、税の特例(減価償却費の100%(当時)を繰り越して税額控除できる研究開発税制)を含め15メニューを実施してきました。例えば、

  • PETと診断機器との複合化促進
    PETは、がん細胞が好むブドウ糖類似物質から放出される陽電子と、電子との結合で発生するガンマ線を検出し画像化する装置で、がんの早期発見が可能であり、一方、MRIは、強い静磁場の環境で頭や体にパルス状の電磁波を当て、返ってきた信号を計算・画像化する装置で、正確な位置把握が可能です。特区制度で可搬型PET装置による撮影をMRI室で行うことでき、それにより、すかさずMRIによる詳細把握に繋げるもので、延べ50件を実施【京都府提案案件】
  • 血液由来特定研究用具製造
    2020年9月に血液法が改正され全国措置になりましたが、特区制度で「血液由来特定研究用具」も「血液製剤」と読み替えて、血液を採取することが認められ、府内2社が、採取した血液由来iPS細胞の研究ツールとしての販売、試験研究への活用が進展。【京都府提案案件】
  • 特定試験局制度
    無線通信における「実験試験局(科学技術振興用)」免許について、特区制度により、予備審査を行っておくことで申請時即日免許発給ができるもので、電動車両、センサー、トンネル点検車への無線給電を実施
  • 高度外国人材受入促進
    研究、教育、自然科学、人文科学の高度な専門能力を有する外国人で、学歴・職歴・年収等から算定されるポイントが一定(70点)以上の場合、在留活動の優遇(複数の在留活動が可能、在留期間5年、点数によっては永住申請が可能、など)が受けられるが、本府の特定の補助金(エコノミック、産学公の森、等)で支援を受けている製造業等は、ポイント算定時に予め10点を加算(1件相談中)。
  • スタートアップビザ
    事業所の確保、2名以上の常勤雇用又は500万円以上の出資金等の確保という在留資格を、上陸申請時ではなく上陸6ヶ月後に満たす見込みがあれば入国を認めるとともに、当該6ヶ月後に在留更新許可を受ける際、その時点から1年間に限り京都府が認定するコワーキングスペース・シェアオフィスも「事業所」として取り扱うもので、2021年10月末時点でビザ取得7件。対象となるコワーキングスペース等は、現在次のとおり。
  • イノベーション創出コミュニティー(STC3)、Impact Hub Kyoto(外部リンク)engawa KYOTO(外部リンク)Garden Lab コワーキング棟(外部リンク)Serviced Office OFFISTERIA(外部リンク)
    (なお、本制度とは別に、上陸後最長1年後に上記在留資格を満たす見込みがあれば入国を認める経済産業省制度あり)

など、着実な歩みを進めています。

国際科学イノベーション拠点と産学公連携推進部

そして、産学公の連携・融合によって諸課題の解決、産業の活性化を図ろうとしています。

産学公連携機構10周年を機として、京都大学、京都府、京都市等で、2012年に「国際科学イノベーション拠点整備事業(COI)」の採択、2013年に「COI STREAM(最大10億円×9年間)」の採択をそれぞれ受けるとともに、2015年には府・市もオフィスを構え、特区を活用した研究開発、中小企業を含めた産学連携の推進等に取り組んでいます(研究機関訪問約20件、企業訪問約100件(2021年10月末))。

COI STREAMにおいては、「離れてくらす家族・仲間と日常を共有」する「しなやかほっこり社会」の実現のための通信・センシング・先端医療・予防先制医療に関して、2013年から32テーマ、2016年から15テーマ、2019年から13テーマ、合計60テーマが実施されました。無線給電、フィルム型太陽電池、ミリ波レーダーを用いたバイタルセンシング、iPS細胞培養装置、歩行支援ロボット、育児サポートコミュニケーションロボットなどの開発が進み、既に発売されているものもあります。そしてCOI-NEXT(JST共創の場)については、「食サイクルのイノベーション(フード&アグリテック)未来共創拠点」、「ゼロカーボンバイオ産業創出による資源循環共創拠点をスタートさせているところです。

そして、2018年設立の(一社)京都知恵産業創造の森。その「産学公連携推進部(外部リンク)」は、府内中小企業等と、京都の34の大学とを繋ぐハブとなって、企業の狙う企画に沿う大学研究室を探してマッチングするところからサポートを行っており、年間数十件の橋渡しを実現しています。

 

脱炭素

コロナの次に世界が直面する課題は、脱炭素

世界が直面する二つの危機、感染症気候変動
パンデミックにより、2020年度の世界の経済成長率はマイナス3.5% となり、1日1ドル90セント未満で暮らす極度の貧困層の割合は、2019年の8.2%から8.8%へと、過去20年で初めて上昇しました。一方、産業革命前に比べ平均気温の上昇を1.5℃以下(2℃では極端に気候が変化すると言われています)に抑えるために、温室効果ガスの排出量から、森林による吸収量等を差し引いた実質的な排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」の今世紀後半の実現を目指すパリ協定(2015年)に対し、既にEUコペルニクスプログラムの観測によれば、2020年の世界の平均気温は産業革命前から1.25℃上昇しており、1.5℃まで残り0.25℃だけとなっています。
コロナで甚大な影響を受けた人々を救済し経済を蘇らせるのに従来の経済手法を採れば、新型コロナウイルスの出現以前に世界が直面していた気候危機をさらに悪化させてしまうため、各国が打ち出しているのが「グリーンリカバリー」です。

  • 2021年に誕生したアメリカ・バイデン政権の「ビルド・バック・ベター(より良い復興)」
    インフラ投資:電力網、再エネ発電(太陽光、風力)、5G網、EV充電ステーション、小型モビリティ、クリーン資材による老朽住宅建て替えなど
    テクノロジー投資:蓄電池、炭素回収技術、クリーン材料、グリーン水素、次世代工業プロセス、精密農業
  • 2019年の「欧州グリーンディール(グリーン・デジタル・レジリエント)」
    自動車の制限:CO2を排出するガソリン車などの新車販売を2035年から全面禁止
    投融資の制限:グリーン・タクソノミー(分類) に合致したものしか投融資しない
    国境炭素税等の制限
    公正な移行への再教育:英国ではその恩恵を受けた若い世代が脱炭素ビジネスに続々と参入
    その他英国では、2016年以降の新築住宅は全てゼロカーボンにすることを義務付け、看護師の制服を軽くしてCO2を削減するよう誘導
  • 中国「両新一重」
    インフラ投資:電力網、5G、充電ステーション
    5G×AI×EV:街中カメラで道路交通制御、レベル4自動運転車を5Gクラウドによるリモート支援で保証
    再エネ導入促進

そして、「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」(1997年)が開催され、温室効果ガス削減に関する初めての法的拘束力をもった国際的枠組み「京都議定書」が採択された地である京都においても、「京都府総合計画(京都夢実現プラン)」(2019年)において、「脱炭素社会へのチャレンジ」を掲げるとともに、2020年に、日本を含む他の国々同様、「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ」を目指すことを宣言したところです。

京都産業にとって不可欠な「脱炭素テクノロジー」

こうした動きは、京都産業にとっては大きな脅威でもあります。
世界のビジネスが「脱炭素前提」へと変化しているからです。

  • 政府機関
    設定された「CO2排出枠」を超えた企業がその超過分まで、下回った企業から余剰分を買い取る「排出量取引」(排出量1t当たり7,500円など)は、既に世界の温暖化ガス排出の2割分に価格設定がなされています。また、日本も既に導入(地球温暖化対策税)している、CO2排出量に税を課す「炭素税」は、北欧やカナダ等が高い税率(日本のは排出量1t当たり289円だが、EUでは数千円以上)で企業の取組を促進しています。こうした「カーボンプライシング」で先行する欧州は、対策が不十分な国からの輸入品に価格を上乗せする国境炭素税を導入する方針であり、脱炭素の取組の遅れは、企業・産業の国際競争力に影響を及ぼす恐れがあります。
  • 投資家等
    国連では既に「責任投資原則(PRI)」「持続可能な保険原則(PSI)」「責任銀行原則(PRB)」の三原則が定められ、石炭からの撤退が続く資金の向かう先が、2020年度全世界で35兆ドル(4,000兆円)にのぼるESG投資です。社会の持続的な成長に貢献する企業は長期的にパフォーマンスが優位になるはずだと考えられ、現に世界最大級の年金基金である日本のGPIFが選定したESG銘柄は、2017年4月から2020年3月までの年率リターンでTOPIXを上回る成績を上げ、また、投資リスクを量る意味でも気候変動に関する対応やビジネス獲得に関する情報(座礁リスク)開示を求める動きが当たり前になりつつあります。また融資においても、エールフランスKLMへの支援融資の条件として、2024年までの国内線CO2排出量50%削減などを条件に課すケースや、削減目標を達成できれば金利が低くなる商品等も登場しています。
  • 事業会社
    「2030年カーボンニュートラル」宣言を表明したアップル。サプライチェーン全体を見ると、CO2排出量の大半を占めるのは、京都の電子部品関連を含むサプライヤー企業です。ダイムラーは2039年に乗用車からのCO2排出ゼロを宣言し、フォルクスワーゲンはカーボンニュートラル、マイクロソフトはカーボンネガティブを打ち出しています。

このように、世界に部品を供給している京都産業にとっては、再エネへの転換、製品(部品)の100%リサイクル品又は再生可能な素材での製造等が不可欠となってきます。しかしながら、日本は「脱炭素インフラ」が未発達なのです。

  • 世界平均では、過去10年で太陽光、風力の各発電原価が、石炭、ガスなどのそれを下回り最も安い電気となっています。世界最大の洋上風力発電を有する英国は、CO2を1990年比で42%削減しながら、73%プラスの経済成長を実現しています。
  • しかし、日本では、再エネが火力発電より4割程度高く、依然として石炭火力が主流です。石炭は化石燃料の中でも炭素集約度が最も高い燃料で、同じエネルギー量を消費した場合、石油や天然ガスより多くCO2を排出してしまいます。

もちろん、インフラ面の不利を乗り越えようとする試みも始まっています。

  • 2018年に日本の小売業で初めて「脱炭素ビジョン2050」を公表したイオンは、再生可能エネルギー100%での事業運営を目指す国際イニシアティブ「RE100」に参加し、グループ全体で日本の総電力の1%分に相当する国内最大の需要家が再エネ100%を目指すという大きなインパクトを与えました。固定価格買取制度の期間満了で売り先がなくなった個人宅の発電を買い取りWAONポイントで還元する仕組み、EVに貯めた電気買い物中に店舗で放電しいてもらいポイント還元する仕組みなどで再エネをかき集め、一部店舗で再エネ100%を実現しています。
  • 世界シェア5割を誇るソニーのデジカメやスマホに欠かせない、「CMOSイメージセンサー」の製造には、クリーンルームでの24時間操業に膨大な電気が必要で、工場の屋根の上の太陽発電だけではまかなえないため、電力会社が開発した予測技術(転機に発電量が左右される再エネを、発電量と消費量が一致しなければならない既設の送電網につなぐのに必要)を利用することで、他工場から電力を融通する仕組みが実現できました。
  • かつて日本がトップランナーであった多くの技術が、徐々に地位を失いつつある中で、セラミックコンデンサでは、材料を原子レベルで制御して小型化しエネルギー使用量を減らそうという試みも始まっています。

しかし、インフラ面の不利の中にあって、京都産業が世界の中で発展していくためには、日本・京都がオイルショック以来世界をリードしてきた優れた省エネ・環境技術と、スタートアップ企業等の柔軟な発想による複合によって、様々な新しい「脱炭素テクノロジー」を創出することが不可欠なのです。

エネルギーと材料物質、温室効果ガスの排出抑制と回収・固定

太陽光のうち、雲等による「日傘効果」を除く約7割が大気中または地表に届き、地表からの跳ね返る赤外線を、雲等と同じく、吸収し再び地表側に跳ね返すのがCO2、メタン、フロンガスなどの「温室効果ガス」で、これがなければ氷点下19度とも見積もられる地表付近の温度は温められているのです。
温室効果ガスの中でも最もウエイトが大きいCO2に含まれるカーボン。これまで発見され、作り出された物質の8割は炭素を含んだ化合物(有機化合物。ただし、元々は生物が作り出す化合物を指す言葉故にCO2やダイヤモンド等は含みません。)です。他のあらゆる元素と異なり、炭素はお互いに長くつながり合って安定な分子を作ることができるからです。DNAやタンパク質、脂肪など我々の体も、木材、紙、プラスチック、アスファルトなどの材料も炭素が基軸となっていますし、石油や石炭などのエネルギー源も炭素と水素、炭素と炭素が結びついてできているのです。
このように、温室効果ガスは、「エネルギー」の活用や「材料物質」の創造・分解の際に排出され、その「排出抑制」や、「回収・固定」ができる脱炭素テクノロジーが求められているのです。

エネルギー-- 化石燃料・還元、水素・光触媒、再エネ・2次電池・スマートグリッド

石油・石炭あるいは食料などの化学エネルギーのほか、光エネルギー(波長が短い方がエネルギー高い)、電気エネルギー熱エネルギーなど様々な形があり、同じ大きさで変換が繰り返されています(エネルギーの原則:3E+S(環境適合、エネルギー安定供給、経済効率性+安全性))。

石油・石炭などの「化石燃料(有機化合物)」。

  • 炭素の酸化還元- (炭素(有機化合物、エネルギー内蔵))+(酸素)=(エネルギー)+(CO2)

燃焼させれば、つまり、酸素を結びつけて「酸化」させれば、エネルギーが取り出せますが、炭素の酸化物CO2が生じてしまいます。CO2を回収・固定する技術には、「CCS(回収・貯蔵)」「CCU(回収・利用)」「CCUS(回収・利用・貯蔵)」などのほか、「還元」して酸素を切り離せばいいのですが、例えば金属を結びつけてCO2を還元する場合、その金属を精製するのに結局エネルギーを使い、CO2を排出してしまうのです。巨大扇風機で集めた空気から吸着物質でCO2を取り除くカナダの企業など、多くのスタートアップ企業で「DAC(直接空気回収)」という手法も開発されています。

燃焼時にCO2を排出しない水素

  • 水素の酸化還元- (水素)+(酸素)=(エネルギー)+(H2O)、電子放出(酸化)と電子吸収(還元)

水素の酸化を活用してエネルギー(ここでは電気)を生み出すものとして、水素燃料電池(発電)があります。水素と酸素の混合ガスに火を付けると、水素から電子が飛び出すことにより水素イオンになります。そして電子は酸素と衝突し酸素イオンができます(このように原子(ここでは水素)から電子が放出されることが「酸化」の正体で逆が「還元」の正体。例えば亜鉛メッキ鉄板は、たとえ鉄がイオン化(酸化)しても亜鉛から電子をもらう(還元)ことで浸食を防止)。こうしてイオン同士が結びついて水ができるのですが、水素から電子が飛び出す工程と、電子が酸素と衝突する工程を分けて、電子の通り道を作ることで、電気が起こるという仕組みです。こうして水素自動車(燃料電池車)は、タンク内の水素と空気(酸素)で、H2Oを排出しながら電気を生み、それでモーターを回すものです。まだ、通常のガソリンスタンドが数千万円なのに対し、水素ステーションは何億円かかるため、現在はルートが決まった路線バス等への導入が現実的ですが、将来期待されるものです。ただし、EVもそのものからCO2が出なくとも、動力となる電気を化石燃料でまかなっているとすれば、効果が乏しいということになります(石油化学や鉄鋼業等での副生水素を「グレー水素」、それに回収固定装置を付けた「ブルー水素」、再生可能エネルギーを用いて生成する「グリーン水素」など様々な呼称があります)。
また、同じく燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや、(水素)+(酸素)ではなく、(水素)+(二酸化炭素)から都市ガス(メタン)を生成する次世代技術「メタネーション」への期待も高まっています。ガス田から採取した天然ガスではなく、再生可能エネルギーで作る水素と、工場等から回収した二酸化炭素で作ることで、カーボンニュートラルを目指すものです。
なお、エネルギーを取り出すことを目的としているものではありませんが、「光触媒」も水素の還元反応を利用しています。光のエネルギーによって、化学反応を促進する物質全体を指しますが、その中で実用化されているのが酸化チタンを用いたものです。酸化チタン(TiO2)に光を照射すると、そのエネルギーによって水が水素と酸素に分解(還元)されます。その際生じた電子を得た酸素(活性酸素)が、アルコール、植物の葉、ゴキブリさらにはCO2までをも分解(酸化)する、これによって汚れなどを太陽光で分解するというものです。

化石燃料以外のエネルギー源としては、さらには太陽電池(いずれ、太陽電池の大量廃棄時代に備えたリサイクル技術の確立が必要になってきます。)や風力等の再生可能エネルギーがありましょう。
世界の温室効果ガス排出量の3割を占める中国は、2015年時点で排出量100億tを超え、その6割を石炭が占める一方、世界の太陽光発電メーカーの上位10社のうち8社も中国で、風力発電量も世界一という、再生エネルギーの国でもあります。英国では2200基、ドイツでは1500基の洋上風力発電が稼働しています。こうした世界的な動きを受けて、2020年、一時的にエクソン・モービルを時価総額で上回った風力・太陽光発電の米ネクステラ・エナジー、再生エネルギーへシフトしている世界最大の売上高を誇る電力会社・伊エネルなど「グリーン・ジャイアント(再エネの巨人)」や小型原発のスタートアップ企業等が登場しています。
日本は、オイルショックを機に原発、太陽光に傾斜したものの、世界に先駆けてFIT(固定価格買取制度)を実施したドイツなどEUのメーカーに追い越されました。日本でも遅れること2012年にFITを導入したものの、買取価格が高額となり、イノベーションの芽が育ちませんでした。そして福島原発事故以降、LNGの輸入や高効率な石炭火力発電所の新設に目が向き、その間、太陽光発電の適地が徐々に少なくなり、風力発電の洋上建設は日本にもレノバというスタートアップ企業が登場していますが、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海洋の利用の促進に関する法律」が2019年に施行されたばかりで、浮体式なら日本の水深の深い海でも、風の強い沖合でも設置でき、大きな発電量が期待できるものの時間を要すると考えられます。そして今、原発に改めて脚光が当たっています。京都議定書が発効した2005年頃は世界の原発への期待が高まっていましたが、日本では福島事故時点で54基あった原発は、2020年度時点で36基まで減り、そのうち9基が再稼働しています。
京都にも、太陽光発電モニタリングシステムで実績の豊富な企業その検査システムを提供する企業のほか、風力発電の効率アップに挑戦しているスタートアップ企業も生まれています。
そして、発電量が変化する再生エネルギーから転換された電気の蓄電に、2次電池の需要がますます高まっています。
電池とは、「電気(電子)が詰まってる」のはなく「発電する」ものです。負極の材料は、電解液に溶けやすい金属にして、溶けてイオンになる分、電子が導線を伝って正極に移動します。正極の材料は電解液に溶けにくい材料で、導線を伝わってきた電子は電解液(イオン)と結びつきます。こうして正極の電子がすぐに消費されるので、また負極から電子が移動してくるのです。そして、イオンになりやすさ(イオン化傾向)が「電圧」を決めるものです。また「2次電池」の充電は、外部エネルギー(コンセントにつなぐなど)によって、こうした放電とは逆の動きをさせるものです。
塩をよく溶かし、溶解したイオンが速く動くので、電解液に水を用いる「水系電解液」(液体のままでなく、紙にしみこませたものは「乾電池」)は、水が1.5Vより大きな電圧では水素と酸素に電気分解するため、「小型(電気を蓄えるための必要な体積(体積エネルギー密度)が小さい)」「軽量化(重量エネルギー密度が小さい)」、すなわち高電圧化に不向きです。そこで、「非水系有機電解液」として、「1次電池」では金属リチウム電池が、「2次電池」ではリチウムイオン電池が開発されました。リチウムは、金属で最大のイオン化傾向を持ち(高電圧)、軽い元素である(軽量化)ため、特にリチウムイオン電池は、携帯電話に、これからはEV(ガソリン車が給油1回で600km以上に対し、現行では充電1回で2~400km)に用いられます。
リチウムイオン電池は、負極にカーボン、正極にコバルト酸リチウム(セラミックの一種)が用いられています。スーパーのレジ袋などに使われるポリエチレンは、「単結合」(隣り合う分子が互いに電子を1つずつ出し合っている。)のみの安定的な「シグマ結合」で電気は流れませんが、カーボン、中でも一般的なグラファイトは、「二重結合」(2つずつ)と「単結合」が交互となっているような不安定な「パイ結合」で、電気が流れやすいのです。「化学電池」に位置づけられますが、化学反応は使っておらずサイクル寿命が長いです。
こうしたリチウムイオン電池を世界に先駆けて商品化した日本は、電池メーカーのほか、負極材(グラファイト。最近はシリコンを混ぜる研究が進む)、正極材(コバルト酸リチウムやニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムなど)、セパレーター、電解液などのメーカーが多数存在し、京都にも、エンジンスターター鉛電池に加えEV用リチウムイオン電池の生産を始めている企業(外部リンク)負極材の開発や鉛蓄電池とのハイブリッドなど斬新な電池の開発を進める企業もあります。しかし、2000年頃は小型タイプのシェアの大半が日本であったものの、今や中国が世界の7割を占め、特に車載用では中国・韓国勢が主流となっています。そんな中、京都には、EV向けバッテリー検査装置で世界で高いシェアを誇る企業や、交流モーターが主流となっているそうしたEV向けに世界初の交流(高電圧、大容量(電力(電圧×電流)×時間))リチウムイオン電池を開発するスタートアップ企業も生まれています。こうした開発の先の本命は、体積エネルギー密度がリチウムイオン電池の2倍以上である全固体電池と言われています。さらに、リチウムイオン電池の充電回数や時間等の面の制約を補い代替するものとして、物理現象によって瞬時に充放電が可能で、それによる劣化が少ない物理電池であるキャパシタも、EV業界からは引き続き注目がなされているところです。さらには、EVの消費電力の多くを占めるエアコンの省エネ冷媒の開発など周辺技術の向上も進められています。
そして再生可能エネルギーの電力需給のバランスはもちろん、交流電力網から直流製品への転換に必要なコンバータ直流電離(太陽電池等)から交流電力網・交流EV用モーターへの転換に必要なインバータなども含め、より全体効率化を図るスマートグリッド(電力・情報統合ネットワーク)の構築も大きなテーマとなっており、京都においてもAIによるエネルギー需給予測等に取り組むスタートアップ企業も既に生まれています。
また、AI、データセンター、スーパーコンピュータの莫大な消費電力をいかに低減するか、その研究開発にもビジネスチャンスが潜むと考えられています。

材料物質– 人工光合成、ネイチャーテック、電炉、資源循環

まず、農林水産業・食品分野。「化学肥料」は土壌で分解(発酵・腐敗)されると一酸化二窒素になってしまうため、化学肥料や農薬を用いないリレジェラティブ農業を指向する動き、「もみ殻」も土壌中で分解されればCO2になってしまうため、予め炭化した「バイオ炭」を用てCO2になる量を減らす(土壌に貯留する量を増やす)研究、稲わらなどの穀物の「藁」や家畜の「排せつ物」も分解されるとメタンガスが発生するため、昆虫を使って素早く分解する研究が進められています。畜産においても、牛やヤギなどの反芻動物のげっぷにも大量のメタンガスが含まれるため、げっぷが出にくい成分を飼料に混ぜる研究等が進められています。
また、米インポッシブル、ビヨンドなど「代替肉」「培養肉」に関するスタートアップ企業も登場してきています。
さらに、CO2の還元の観点でも植物は注目されています。35億年前、植物による光合成が始まって以来、地球上の酸素が光合成で作られているということのほかに、葉に当たる僅かな太陽光をエネルギー源にし、大気中にわずか0.04%しか存在しないCO2を還元し糖分に変換しているということが重要です。具体的には、太陽エネルギーと、葉緑体に含まれるタンパク質複合体「PSII」の触媒機能により、水が酸素(放出)・水素イオン・電子に分解されます(「明反応」)。蓄積された水素イオンの濃度差がエネルギーとなって生じる物質ATPと、電子を蓄える物質NADPHにより、CO2から糖質を作ります(「暗反応」)。化学プラントに見られるような、高温も高圧も必要とせず、幹や根、花や実を作り出しています。この仕組みに倣う人工光合成の研究では、植物のように葉緑素を利用するもの、人工的に改変したタンパク質を活用するもの、半導体と分子触媒を用いた完全に人工的な系など、アプローチは多岐にわたっており、植物が主に作る化合物は、ブドウ糖を連結させたセルロースやデンプンなどですが、植物が作れない化合物を作ることも可能となります。

次に、化学分野。CO2排出量5700万tで、産業界2位の化学業界。原油由来のナフサを高温で分解する工程で大量のCO2を排出しています。自家発電ボイラーの燃料を石炭から天然ガスへの転換、植物由来のバイオプラスチックの開発、マテリアルレベル(数回リサイクルすると廃棄せざるを得ない)ではなく原子レベル、ケミカルレベルのリサイクル技術の開発が必要です。
服一着作るのに排出される平均的なCO2=25kgは、500mlのペットボトル250本を作るのと同じであり、水消費量2,300lは浴槽11杯分と同じです。しかも製品の3分の2が焼却処分によってCO2を排出しているのです。洋服がライフサイクル全体の中でどれだけのCO2を排出しているのかを表示する「フットプリント」や、CO2排出や水消費、大気汚染など数千項目に及ぶ「EP&L(環境損益計算書)」などの取組が始まっています。
既に、生物多様性条約(1992年)、生物多様性国家戦略(1995年)、生物多様性基本法(2008年)などが施行されており、例えば近年は、光合成しながら移動し植物と動物の両方の性質を有す微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)を用いて、世界の課題解決に取り組んでいる尊敬すべき先行事例が出てきています。培養に関するプロセス改善、品種改良(突然変異、ゲノム編集)などの研究を着実に進められ、ユーグレナの栄養素豊富で細胞壁がなく吸収しやすい利点を活かして「食用」に【食糧問題】、あるいは、酸欠になるとエネルギーとして油脂を蓄積する仕組みを活かしてバスやフェリー、航空機等の「燃料」に【脱炭素】、あるいは、有機酸を含まない優れた有機肥料成分、医薬品としての価値すら見込める繊維成分、さらには宇宙での物質循環をも支えるものとして【素材(繊維、飼料、肥料など)】など、大きな可能性を示しています。バイオスタートアップちとせは、藻類の光合成を活用した代替燃料の生産プロジェクト「MATSURI」を始動しています。大成建設はCO2とカルシウムを合成した炭酸カルシウムでコンクリートを作る技術を確立(外部リンク)しています(セメント産業のCO2排出量は世界全体の8%)。あるいは、川上から川下まで異業種30社が集まる「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」でも廃棄魚網からリサイクルした生地で製品開発する例など、企業どうしの共創も生まれてきています。
京都にも海洋性光合成細菌由来・CO2固定バイオプラスチック工業用トウモロコシ由来生分解性ポリ乳酸ナノセラミック膜から分離回収したCO2と水素による燃料、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持つセルロースナノファイバーの機能向上などの開発を行うスタートアップ企業が登場しています。地球上には数百万種とも言われる生物種が存在していると言われますが、まだまだ自然には未解明の機能が底知れず眠っており、その有効活用を図るネイチャーテックによって、四季折々の豊かな自然を抱える日本は、まさに世界一の資源大国と言えるかもしれません。

さらに、金属分野。CO2排出量1.6億tで、国内の14%、製造業の約4割を占める鉄鋼業界。2021年には、鉄鋼連盟も、業界トップの日本製鉄も2050年のカーボンニュートラルを宣言しました。鉄鋼業の高炉では、鉄鉱石から錆び(酸)をとるためにコークス(炭)を投入してCO2が排出され、転炉では、そうしてできた銑鉄(炭が結びついて脆い)から炭素をとるため、また酸素と結びつけてCO2が排出されている(もちろんこれらの工程で大量のエネルギーも用いられています)ため、高炉の排気口にCO2を回収・固定化するためのCCUS装置を取り付ける方式や、コークスの代わりに水素を用いる研究や電子をぶつける研究が進められています。あるいは、鉄スクラップを原料として不純物を取り除く方式である「電炉」への転換にも着手されています。国内では電炉メーカーも少ないこと、鉄スクラップの調達コストがかかること、再エネが未普及であること、自動車向けの高級鋼の品質確保の観点などから、コークスを用いる「高炉」が主流ですが、アメリカでは7割、EUでは4割を占めているのです。

こうした資源循環は様々な分野で重要です。食品ロス(食品ロスの削減の推進に関する法律、2019年)や脱プラスチック(京都府プラスチックごみ削減実行計画、2020年)などの制度が始まっており、京都においても、回収した食用油から創出するバイオディーゼル燃料間伐材を無駄にせずそのチップからの抽出液で作る染料(外部リンク)ファッションの廃棄ロスをなくし同時に付加価値を高めるオーダーメイドシステム飲料容器の使用を減らすためのマグボトルの用マイボトル、海洋プラスチック対策の一環としてレジ袋などではなく硬い素材でも水中で自然分解可能な微粒子などの開発・普及を推進しているところです。

生産性向上・エネルギー効率化

これまでから京都府では、環境部局や京都市とも連携し、(一社)京都知恵産業創造の森・スマート社会推進部を核として、スマート製品等の開発支援を行ってまいりました。

  • エコ、エネルギー、ICTなどの先端テクノロジーを支援する「スマート社会実装化促進事業(補助率2分の1、上限500万円)」では、HEMSや省エネのための高機能膜分離技術、リユースバッテリーのリモートメンテナンス、物体検知ソリューション、急速充電可能な電動自転車の給電スポット開発等の事例が生まれています(2020年度、2021年度とも4件)。
  • 画像検査等へのAI導入、省人化のためのロボット導入などのスマート技術の進展は、同時に電力等の消費増加の恐れを伴うものであり、エネルギー消費の見える化(定額補助、上限150万円)、生産性向上(補助率3分の1、上限350万円)を支援する「スマートファクトリー促進支援事業」によって、様々なエネルギーマネジメントシステムの構築を進めています(2020年度は10件、2021年度は9件)。
  • 開発されたスマートプロダクトを認定する「京都スマートプロダクト認定」においては、大気からガスを発生する装置やお手軽CO2センサーなどユニークな製品が2019年度から累計14件生まれています。
  • その他、温室効果ガス削減のために施設改修の支援を行う「京-VER創出促進事業(補助率3分の1、上限800万円)」(2020年度採択事業分で高等学校2校分に相当するCO2を600トン弱削減)、再生可能エネルギー設備や蓄電設備の新設等の支援を行う「自立的地域活用型再生可能エネルギー設備等導入補助事業」、「省エネ診断」などを行っています。

新しい人類史の幕開けへ

脱炭素対応は、京都の経済・産業の存続にすら関わる重大なテーマであること、経済価値・企業価値を高めるものであること、幅広く総合的な知見の中から解決が図れるものであること、日本が出遅れているとは言え日本・京都の技術的な強みを生かせば追い付き追い越せるテーマであることなどを踏まえ、様々な施策を充実させていく必要があります。

施策

ものづくり・ネイチャーテック

製造業はGDPの約2割を占めています。中でも「自動車」と、自動車やスマホをはじめとする様々なIoT機器に搭載されている「半導体」が、現在の日本のものづくりの代表格でありましょう。

次世代自動車を見据えた垂直連携

日本の主要製品出荷額約300兆円のうち約2割を占める自動車産業。特に次世代自動車は、ダイムラーが2016年に発表した「CASE」に表されるように、製造業だけでなく異分野の参入が拡大するとともに、巨大市場を背景に技術革新著しい中国など国家も巻き込んだ群雄割拠状態で競争が進められており、求められる技術も、従来の自動車関係にとどまらずIT、電機・電子など裾野が広がっているため、府内ものづくり中小企業にとって、自動車産業との関わりのウエイトがこれまで以上に大きくなっていると実感されるところです。

「CASE」を概観すれば、まず「Electric(電動化)」については、充電スポットや電池コストの問題がありますが、環境問題先進地である北欧ノルウェーでは既に新車販売の過半をEVが占め、ディーゼル車の排ガス不正問題を契機とするドイツ、ガソリン車で後発故にEV車購入補助やその開発品質の向上の両輪で進めている中国などの国策が目立つとともに、「人類を救済する」というミッションと、エネルギーを太陽光発電で創り、蓄電池で蓄え、EV車で使うというグランドデザインを描く米国のテスラが先導してきました(創業者イーロン・マスク氏のスペースX、アマゾン創業者ジェフ・ベソス氏のブルーオリジン、ヴァージン・ギャラクティックなど宇宙船開発競争も進んでいます)。データを蓄積しつつ、そのノウハウはオープン化しており、中国でBYDをはじめとする数十社のEVメーカーが誕生することにつながったのかもしれません(圧倒的な安さで中国国内ではテスラを上回る売上を達成する企業も。日本の自動車メーカー、トラックメーカーが出遅れる中で、京都企業は世界のEVメーカーに部品提供を行っています)。そして、EV車で高まる電力消費に対しエネルギー業界では「3つのD」、すなわち、より限界費用が小さいクリーンエネルギーによる脱炭素化(Deccarbonization)、分散化(Decentralization)、デジタル化(Digitalization)を進めており、石油メジャーもEV充電ステーションを抱える企業の買収を図ったり、ソフトバンクグループは「ビッツ(情報革命、IoT)、ワッツ(エネルギー革命)、モビリティ(移動最適化)」と評し、CASEの様々なレイヤーの企業に投資をしています。タイヤメーカーにおいても、EVは大量の電池を積み重量が重くなるため、ゴムの使用量の削減によるタイヤ軽量化、溝の形成の工夫による耐摩耗性向上を図ろうとしています。
次に「Autonomous(自動運転)」については、運転手の人件費を不要にできる業務用分野で先行する傾向がありますが、アルファベット傘下のWaymoや、自動運転技術のオープンソース化によって多様なパートナーと協業する「アポロ計画」を進める中国のバイドゥ(国策AI事業である自動運転、都市計画、医療映像等をバイドゥ、アリババ、テンセント等が分担)、さらには、2020年の米中両国での自動運転試験走行距離で、この2社を抑えて首位に立ったGMなどがひしめいています。また、自動運転の核となるLiDER等によるセンシング、AIによる判断、制御等をスムースに行うためのGPU等の半導体においてはエヌビディアが存在感を発揮しています。しかし、ここでも際立つのはテスラ。高コストなLiDERを使わず視覚情報をベースに、実運用面で圧倒的なシェアを誇り、もはや「車輪のついたソフトウェア」として日々収集されるデータから、ディープラーニングでアップデートされています。なお、日本でも2022年度にもドイツ(自動車メーカーと所有者による事前認可、限定ルート)に続きレベル4の法制化が見込まれています(米国自動車技術者協会や日本の国交省の区分/レベル1:アクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の一部支援、レベル2:同両操作の一部支援、レベル3:運転者対応待機状態付きでの一定条件下全操作支援、レベル4:一定条件下全操作支援、レベル5:完全自動運転)。
そして「Shared & Service(シェアリングとサービス)」MaaSの1つ、ライドシェアではウーバー(選択肢を広げるため有人ドローンを開発中)、リフト(自動運転部門をトヨタが買収)や滴滴出行などが有名ですが、P2Pを成立させるための与信情報、相乗りを実現する経路・到着時間予測などAI、ビッグデータが重要な技術です。また、カーシェアにおいては、ダイムラーでは逆に購入(所有)を刺激し押し上げたり、長距離利用が多い北米からは撤退するなど試行錯誤が続いていますが、同社のIT企業並のAIアシスタント「MBUX」はドライバーのスケジュール管理や好みの音楽やレストランの紹介など、そのホスピタリティが好評を博しています。
最後に「Connected(つながる化)」。既にインドでも、配車アプリで、目的地入力と二輪車・三輪車・四輪車の選択をすれば、評価の高い運転手が割り当てられ、クレジットカードでキャッシュレス決済ができると言います。今後、自動運転によって「どう運転するか」から「どう過ごすか」がポイントとなる中、音声認識技術アレクサアマゾンエコー(AIスピーカー)やアマゾンゴー(無人店舗)等の無人システムを進めるアマゾンが、2020年に自律走行車開発企業を買収した動きは注目です。

「壊れない自動車」として人気の日本車を支えてきた日本のものづくり技術。今後、いずれかの分野の企業から総合プレイヤーが登場し、OEM(生産受託)、ODM(設計・生産受託)、EMS(電子機器生産受託)等が加速するとしたら、それらが追求する「規模の経済(生産規模拡大)」に対応する低コスト化、「範囲の経済(種類拡大)」に対応するデザイン指向による幅広いアイテムの提供、「速度の経済」に対応するデジタル試作などが、中小企業にとっての鍵となるかもしれません。仮にその総合プレイヤーがITなどの異分野からの参入企業であった場合は、ものづくり中小企業の強みである要素技術、生産技術、量産技術を活かしてIT企業の弱みを補完するチャンスだと考えられます。

何より、こうした次世代自動車によって狭義の自動車産業は縮小し、大手自動車メーカーには収益性を含めて厳しくなる反面、広義の自動車産業は拡大し、中小企業にとってはユニット開発という新たなチャンスが広がっています。FA分野で日本が世界をリードするきっかけとなったのは、ファナックが、PCへの搭載よりも早い1975年にインテルMPUをCNCに搭載し、それを多様なマシンに組込補完材として搭載していったことがきっかけだと言われているように。

例えば、ガソリン車からEVへの変化としては、搭載部品点数が3万点から2万点に縮小するとともに、

  1. 「ガソリンタンク(給油)」が「バッテリー(充電)」へ:スマホなどと同様のリチウムイオン電池が主流。しかし、アップルのEV開発プロジェクトでは、リン酸鉄系の正極材料が用いられているとされ、エネルギー密度は高くないが耐久性が抜群と言われています。京都のスタートアップ企業では「交流」のリチウムイオン電池を開発しています。
  2. 「燃料ポンプ」が「コントローラー」へ:バッテリーの直流電気をモーター用に交流に変換する「インバータ」や電圧をコントロールする「コンバータ」などを組み合わせたユニット開発のチャンスがあります。
  3. 「エンジン」が「モーター」へ:モーターには、磁界に挟まれたコイルに直流電流を流すことで、フレミングの法則によりコイルが回転する「直流モーター」、コイルに電流を流すブラシをなくし、外側に配置したコイルにインバーターで制御した電流を流すことで、内側の電極を回転させる「ブラシレスモーター」などがありますが、EVで多く用いられているのは、向かい合うコイルに交流電流を流すとフレミングの法則によってN極、S極が生まれ切り替わることで、同法則によってコイルの間にある軸が回転する「交流モーター」です。なお、日本電産はモーターとインバータと減速機が一体となったユニットを開発しています。

このように、ガソリン車のような系列サプライヤーによる垂直統合モデルのバリューチェーンではなく、例えばモーターとバッテリー連携をはじめ、ユニット開発のための水平分業モデルへの移行が鍵を握っていると考えられます。

バーチャルエンジニアリング

日本では、詳細部位までの製品形状表現ができない2D図面を用いて、加工技術者が、設計者の意図を汲み取り、あるいは意図以上の具現化を図ることで「日本品質」の製品を製造してきており、現在も3DCADだけでの設計は2割以下と言われています(『2020年版ものづくり白書』)。しかし、世界の自動車メーカーでは、1980年代から3Dデータを活かした開発・生産の模索が始まり、1990年代後半には3DCADの活用へと大きく変革し、今はほぼ完了しています。例えば溶接工程も、3DCADなら、溶接打点に流れる電流値と流れる時間を属性情報として入力できますから、極論すれば、3D図面なら、機械が同じならば同じ品質を実現できます。しかも、図面を送付することで、輸送コストと輸送時間を掛けずに、現地で同じモノを生産できるということです。
工場の「制御盤」も同様です。その中のPLCやインバータ、ブレーカー等の配置は、各装置から発生する熱や磁力線の影響を配慮して設計が行われます。日本では依然として、2D図面と熟練技術者に委ねられ、仮組立の上で組み立てるという調整作業が行われていますが、海外では2000年を過ぎて、各装置の3Dモデルがカタログ化され、3D設計で一発対応できるようになり、現地での組立時にはMRデバイスで指示を送ることもできます。

製品開発費に対するソフトウェアの割合は7割を超え、特に3万点を超える自動車の各モジュール、電子系部品に組み込まれているソースコード行数は1億行以上(マイクロソフトOfficeのOSが4400行)と言われます。以前はハードウェアのモジュールを検証していたところですが、2010年頃にはCAE解析が始まり、ECUの計算時間の検証、さらには自動車1台丸ごとの挙動検証可能なシミュレーションも登場しています。
これまで日本は、設計者のラフ図、解析技術者の機能検討、製造技術者の量産仕様検討の「すり合わせ」から最終量産図面を作成することを得意としてきました。これにより海外よりも少ない工数であったと言われています。しかし、欧米の自動車メーカーはシミュレーションを用いて「バーチャルスリアワセ」が可能な、開発・解析プラットフォームを整えたのです。2008年にCADが専用のUNIXワークステーションでなくともWindows上で稼働し、メールで送受信できるようになったことも大きな要因ですが、特に欧州は、戦後の米国の経済拡大、日本の高度成長に対抗すべく数十年掛けて産業育成のシナリオを作って、自動車メーカーの自社CADから汎用CADへの転換、CADメーカーの育成(その三大メーカーのうちシーメンス、ダッソーの2社は欧州)、ギアの表面精度はミクロンオーダー、ボディはミリ単位などの違いへの対応などの規格の構築、型式認証に変わるバーチャルテスト認証制度の構築などを図ってきた賜物です。既に検査工程においても、日本ではレーザー計測や非接触3D計測がようやく広がり始めたところですが、欧州では複雑形状で見えないところも測れるCT計測検査が始まっているとも言われています。
日本では量産受注を前提に設計提案をサービス的に行う向きもあったところですが、これによって、サプライヤーから自動車メーカーへの効果的な設計提案が可能になって、モノではなくバーチャルモジュールそのものが「価値」となる上に、自動車メーカーとの対等な協業も行われることとなり、サプライチェーンの変革をももたらすものです。

もちろん、発注企業の設計(CAD)技量によっては、受注企業の加工(CAM)の手間や、検査の手間が増えるため、サプライチェーン全体での統一意識、技能向上を合わせて行うことが必須ですが、水平分業でのユニット開発を推進するためには「意を汲む力」と「すり合わせ力」の強みを活かすためにも、こうしたプラットフォームを「輸入」し、この「バーチャルスリアワセ」を取り込むことで、シミュレーション、バーチャルモジュールの流通を進めていくことが効果的です。

半導体によって、時代は再びソフトからハードへ

一方、かつて「産業の米」と言われた半導体は、一層脚光を浴びています。

日本はDRAMを中心に世界を席巻するも、日米半導体協定、90年代のインターネット・ブームを境に、やがてハイテク産業の覇権はGAFAMに移りました。しかし今や、それら巨大IT企業もクラウドサーバーやスーパーコンピュータの半導体チップ(CPU、画像処理やAI用等に用いられるGPUなどのプロセッサ)開発に注力しており、「半導体は英国が設計、米国(巨大IT企業)が開発、台湾が製造(製造装置は日本、欧州が製造)、そしてスマートフォンは中国で製造」といった世界的サプライチェーンができています。

2020年6月、世界スパコン・ランキングで、5部門のうち4部門を理化学研究所・富士通の「富岳」がトップを独占しましたが、残る1部門のトップを獲得した日本のAI企業Preferred Networksもチップの自社開発に取り組んでいます。ディープラーニング(学習と推論)やビッグデータ処理に対応するため、ライバルに差を付けるため、ハードの制約を受けるソフト開発の効果を高めるため、チップ開発に進出しているのです。
ムーアの法則によれば、1チップのトランジスタ数が18ケ月で倍化しますが、トランジスタが微細化するに従い電流漏れや過剰な熱の発生が起こるため、近年のパソコンは、クロック周波数を保ったまま性能を上げようと、演算ユニットを多数内蔵(マルチ・コア)した汎用CPUを並列(マルチプロセッサ)で繋いでいますが、先の両者のスパコンは、命令を同時に複数のデータに並列に適用するかつてのベクトル方式も組み合わせ、富岳にあっては毎秒41.6京回の浮動小数点(仮数、基数、指数の要素で表現する数字)計算を実現しました。
このため、スーパーコンピュータは、「理論」「実験」と並ぶ現代科学の第3の柱「シミュレーション」の高度化を実現し、天気予報のほか、宇宙シミュレーション、材料研究、量子化学や量子コンピュータ開発、空力設計、がんゲノム医療研究などに用いられています。例えば、新型コロナウイルス感染症の治療薬。一般に創薬開発は、病原である標的タンパク質の探索(ターゲット探索)、それと結合する化合物の探索(リード探索)、人間が飲める形にする薬剤変換(リード最適化)、動物評価(前臨床試験)、ヒト評価(臨床試験)という長い工程を経て、成功確率は2.5万分の1程度と言われています。そこで、リード探索のシミュレーションが行われてきましたが、通常は標的タンパク質を「固定」した形で探すので精度が低いのに対し、富岳を用いて「動かす」ことで高い精度で検索が進められています。三次元座標に、標的タンパク質を構成する数万個の原子を配して質量や電荷を基に加速度を計算し、フェムト秒単位で移動後の座標を求めるという膨大なデータ量をこなしているそうです。

スーパーコンピュータは、自国の産業基盤の強化などを目的に「汎用機」開発で国家間でしのぎを削っているところですが、富岳は、最高レベルのマシンをコンシューマー製品にも幅広く応用できる点も高く評価されています。一方、計算量が数ヶ月ごとに2倍に伸びているAIの学習のため、巨大IT企業は自社開発のAI計算用チップやエヌビディアの最新GPUなどを数千個搭載したAIスパコンの自社開発を進めており、計算速度毎秒100京回に達しています。90年代以降、半導体の最小加工寸法が数百から数十nmへと微細化するに伴い、ウエハー上での薄膜形成、回路焼き付けなどの前工程を中心に、水平分業への転換が起こり、開発・設計を行うファブレス企業(クアルコムやエヌビディアなど)や、製造だけを行うファウンドリ企業(台湾のTSMCなど)が生まれてきました。

日本の半導体そのものの世界シェアは10%を切っていると言われますが、ロジック半導体(演算処理)、パワー半導体(電力制御・供給)、CMOSセンサ等で依然高いシェアを誇っており、半導体の基板となるシリコンウエハでは日本の2社で世界シェアの5割を占め、洗浄装置においてはSCREENホールディングスが1社で世界シェアの半分近くを占めています。また、イノベーションも次々と生まれています。トランジスタやコンデンサなどを配置する基板である電子回路を、スパッタリングでウエハに銅箔成膜、レジスト塗布、フォトマスクで露光・現像(レジスト廃棄)、エッチング(銅廃棄)、レジスト除去(レジスト廃棄)という従来の回路形成方法は、線幅10nm程度までに対応できるものですが、波長の短い極端紫外線露光(EUV)を用いて微細化を行う技術が生まれています。また、東京のスタートアップ企業(外部リンク)で、銀ナノインクジェットプリント、銅めっきという新方式で、少工程・廃棄レスで実現するところも生まれてきています。あるいは、型をウエハに押しつけて、回路線幅15nmほどの回路パターンを形成するナノインプリントリソグラフィ(NIL)は、EUVと比べ消費電力を10分の1に抑制できると言い、キオクシア・キャノン・大日本印刷などが実用化に向けて進めています。一方今後は、こうした前工程だけでなく後工程の技術革新も今後のトレンドの1つとも言われています。回路線幅3nmを実現し、2nmの新工場も建設中の台湾TSMCは、半導体を縦に積み上げる3次元実装技術の確立を目指すため、素材や製造装置に強みを有する日本企業と組もうとしています。ベルギーの研究機関imecによれば、2027年にも回路線幅1nm以下品が実用化されると言われ、EUVによる露光装置の開発が進められており、実用化の暁にはエッジAIの拡大、それによるデータセンターとの伝送電力の削減が見込まれます。

こうした半導体による、逆説的ですが、ソフトからハードへとも言える動きをチャンスとして捉えていくことが重要だと考えられます。

高機能材料、微細加工、生産材

元来、日本は、こうしたハード、特に「高機能材料」や「微細部品」、量産を支える「生産財(工作機等)」の技術は得意としてきました。
例えば高機能材料。半導体分野では、SiC(炭化ケイ素)をはるかに凌ぐ電気性能のGaN(窒化ガリウム。高周波等が得意)やGa2O3(酸化ガリウム。電力ロスが少ない)などの新たな材料開発パワーデバイスの開発が、京都の企業においても進められています。
あるいは微細加工。成膜やエッチングなど2次元加工の半導体製造、光学系のレンズ表面加工などの「ナノ加工」に次ぐ、1μm~30μm程度の「微細加工」です(肉眼で見えるのは300μm程度まで)。「生産財部品」では医療ロボットを支える微細機構などがそうですし、「製品部品」では痛くない注射針、カプセル内視鏡、スマホの微細部品の検査プロープ、カメラ内蔵あるいはAR用ディスプレイ内蔵スマートコンタクトレンズなどがそうです。
さらにこうした部品を生産するための「マシン(生産財)」も日本の中小企業が存在感を発揮しています。直径0.01mmのエンドミルや微細加工用マシニングセンタ(自動工具交換・数値制御機能付きフライス盤)等がそうです。小径ゆえに回転数を上げながら冷却液等で収縮を抑える主軸の構成、数値制御の補正をも超えるナノレベルの位置決めを実現する組立時キサゲ作業など匠の技が盛り込まれています。さらには加工ヘッドに超音波振動を加えることでセラミックスやガラスへの微細加工もできるようになっています。また、セラミックスの放電加工が可能になったり、CO2レーザーから、ファイバーレーザー、さらにはフェムト秒レーザーなどが登場したりと、非接触で高アスペクト(深穴)を実現できる放電加工機、レーザー加工機も飛躍的に発展していますし、量産向けのプレス加工や医療分野のディスポーザブル等で利用が進む樹脂成形でも、微細加工は深化しており、精度を測る非接触3次元測定器やX線CTスキャン等も発達しています。京都においても、光学ミラー金型などナノレベルの超微細加工(外部リンク)ミクロン単位の補正技術と研究者の知見を組み合わせて開発型企業へ飛躍する取組フェムト秒レーザーのシェアリングなどを後押ししています。
あるいは、高機能材料。SiCやGaNなどの様々な半導体材料(外部リンク)CO2の吸収をはじめ気体分子を自在に収納する多孔性配位高分子などの研究開発も推進しています。

エンジニアリングチェーンのDX、そして「ものを特定顧客に」から「ノウハウを不特定多数に」へ

ただし、京都の課題は2つです。

1つ目は、技術・製品(精緻さ)の差別化が困難になる中で、AI・IoTなどのDXを用いて、技術・製品を支える哲学やストーリー、設計力や生産技術・現場カイゼン力などのオリジナルのノウハウを、新しい強みとして見い出し、それを活かすプロセスエコノミーの構築です。既に京都府においては、

  • 中小企業技術センターなどにおける貸付、すなわち、加工精度の診断を行う工作機械精度診断測定システムや高性能高さ測定機、ものの表面の解析を行う電子顕微鏡、内部の解析を行うX線透視装置などのほか、電子部品の有害物質に関する欧州の規制強化への対応の関係では、有機物の分析を行うガスクロマトグラフ、金属の分析を行う放電発光分析装置などの検査装置や生産装置の貸付などのほか、
  • 2019年オープンの「北部産業創造センター」の高速開発支援センター」(中小企業技術センター本所のほか、丹後、けいはんなも含めた4か所でオンライン利用可)によるエンジニアリングチェーンのDX、すなわち、3Dスキャナ、CAD/CAE、3Dプリンタ等を駆使したデザイン、設計、検証プロセスのデジタル化支援、
  • さらには、補助金・伴走支援による、ノウハウなどの強みとDX等の掛け合わせの推進(残留応力まで配慮した加工プロセスの工夫とSNSによるパターのオーダーメイドや加工プログラムノウハウのAI化によるサブスクサービスなど)

などを行っています。なお、2018年開設の北部産業創造センターにおいては、2020年度はコロナの影響で来場者数は4割減の9000名程度でしたが、機器貸付は約1200件と横ばいで推移し、2021年度も10月末まで600件超と同様に推移しています(交流スペース「コネクト」は延3900名利用)。特に「高速開発支援センター」は、中小企業で従来ほとんど導入されていなかったCAE等を推進を図り、現在デジタルマニュファクチュアリング関連で年間50件以上の利用がなされるなど、中小企業の開発力向上に寄与しています。丹後ものづくりパークにおいても、2020年度は研修受講者が1300名程度に半減したものの、機器貸付は約2000時間、交流スペース利用は1000時間超と、それぞれ横ばいで推移し、2021年度も10月末まででそれぞれ1000時間超、500時間超とほぼ同様に推移しています。

垂直統合から水平分業へ移行してきたサプライチェーンのDX化、そして「競合との開発競争」から「未来への開発協創」へ

もう1つは、文化芸術や最先端研究、伝統産業からハイテク産業に至る多彩な企業等どうしの強みを結合させ、そのイノベーション(新結合)によって高付加価値を生み出すユニット化です。府内工業製品出荷額は約5兆9,000万円(京都市内2兆6,700万円、山城2兆1,000万円、南丹3,700万円、中丹6,500万円、丹後1,100万円)であります(2019年工業統計調査、従業員4人以上)と、これらの様々な付加価値を融合させることが重要です。

半導体、自動車業界の概観のとおり、サプライチェーン垂直統合から水平分業への移行傾向にあります。自動車、半導体、機械などの産業は、樹脂材料や金属材料などの「素材工場」、最終製品などの「製品組立工場」、そして、その間には多くの中小企業や多くの京都の大企業が担う「部品製造工場」などから成り立っています。

  • その部品製造工場の加工機に着目すると、複数の加工機が並ぶ中を加工部品が順番に流れる「ライン生産型工場」(中堅企業等。一人等でまとめて管理する場合は「セル生産」)、同種の加工機が集まるエリアから別のエリアへと加工された部品が渡り歩く「ジョブショップ生産型工場」(多くの中小企業)、1つの加工機だけの「単一工程型工場」(一人親方企業等)に区分でき、
  • フローに着目すると、自社オリジナルの「汎用部品」を製造している場合は、販売計画を基にした「計画生産」、親会社からの依頼の「専用部品」を製造している場合は、「生産指示方式(内示、確定受注)」や「在庫補充方式ジャスト・イン・タイム、かんばん方式)」を基にした「受注生産」という区分ができます。

多くの中小企業が担っているジョブショップ生産型工場、生産指示方式受注生産(製造指示書(現品票)で管理)はスケジュール管理が難しいわけですが、近年の多品種化、人手不足に加え、パンデミックにより、納期遅れの増加が露呈しました。

  • 自動化されているケースも多い食品産業、化学産業の「加工製品工場」と違って、半導体工場を除けば、完全自動化はほとんどありません。各工程の加工機(自動機)が稼働している正味製造時間と、その前後の余裕時間(セットアップ時間や待ち時間)を、機械増強、現場改善、品質向上などでいかに短くするかが引き続き重要です。
  • また、ジャスト・イン・タイムはパンデミックや災害に弱いことも分かりました。需要変動(計画生産)生産変動(受注生産)に備えた一定の安全在庫は必要です(逆に安全在庫を求める動きは、世界的な資材不足の原因の一端になっているかもしれませんが)。

そこで今後、京都府においては、

  • 補助金・伴走支援によるサプライチェーンのDX、すなわち、企業間での生産履歴や不良の原因把握など品質管理のためのIoT(制御盤(PLC、インバータ、サーボ等を収めた箱)や加工機からデータ収集))の推進
  • 交流事業等による企業間マッチング(北部で増加するUIJターン、ワーケーション、スタートアップ企業などの交流)や事業継続・創生支援センターの兼業・副業サポート

などを行ってまいります。

施策

スマート(AI/IoT・Robot)、サイバー・フィジカル・メンタル融合

日本こそリープフロッグに

時価総額世界トップ30社のうち、日本企業は1989年には21社であったのが今は1社のみ。自動運転、AI、5G、フィンテックなどが、アメリカや中国ではもはや「先端技術」ではなくなり、新たなビジネスが次々と興ってきています。
例えばフィンテック(あるいは保険領域のインステック)は、長く続いたデフレの影響等で50歳以下の金融資産シェアが約2割しかなく、家計の金融資産構成の約半分もが現金・預金である日本では発展が難しいですが(スウェーデンでは金融機関の支店の大半が現金を持たなくなり、銀行強盗が数千件から数十件に激減)、中央銀行デジタル通過CBDCは世界が注目していますし、アメリカではリーマン・ショック(金融機関への不信感の増大、金融機関をリストラされた人々の存在)がきっかけの1つとなりました。日本でも資産運用、税金を考慮した投資、目標貯蓄の達成のための日々の支出のアドバスなど、ロボアドバイザーは登場していますが、何より重要なポイントは、ミレニアム世代(スマホ世代)、ビッグデータ、クラウドです。これらによって、ATMを持たなくていい、ライフログ(SNS上に残っている行動記録、自動車運転の急ブレーキの回数など)から審査を自動で行うなどにより、低コスト化と高い与信力を発揮できるため、書面不要でより高い預金金利や低い貸出金利の設定、これまで金融が届かなかった幅広い消費者へのサービス展開が実現できるのです。さらには、オープンAPIによって、オンラインショッピングを支える基盤にもなるなどカスタマーリレーションシップの強化を目的としたBtoBサービスも発展しています。
こうした遅れを逆手にとって、今や日本がリープフロッグを実現するチャンスではないでしょうか。

DX- 社会全体の業態変革のためのオープンイノベーション

人口減少時代のPOSTコロナ社会において、効率化と付加価値向上を両立させていくためには、従来のやり方を根本的に変える「業態変革」、言い換えれば「構造改革&意識改革」を「社会全体」で行うことが必要です。そして、その有効なツールであるDX、大型コンピュータやPCの導入では世界にキャッチアップできていたのに日本が出遅れてしまったDX、にも同様のことが言えます。
例えばテレワークを例に挙げれば、紙ではなく業務を行えるなどの「企業のDX」のほか、家庭の通信インフラの整備などの「家庭のDX」、取引先等もオンライン対応してくれること、すなわち「業界のDX」や、必要な手続に関わる「行政のDX」、必要な時だけ必要な場所に移動するMssS等の「都市のDX」など、一企業だけでは不可能だということです。
そのためには、「オープン(イノベーション)」が不可欠です。

オープンソース

まず、1980年代には既に「オープンソース」の動きが始まっていました。プログラムには、人間が分かる(人間が書いた)「高級言語(ソースプログラム。Python、Java、Cなど)」と、機械が分かる「機械語(オブジェクトプログラム:コンピュータ(ハード)の構造を反映していて、そのまま計算回路への動きの指示になる)」があり、高級言語を機械語に翻訳(一括翻訳のコンパイラ方式、1行ずつ翻訳するインタープリタ方式)して実行されるわけですが、人間が理解できるソースプログラムをオープンにするのがオープンソースです。
その1つである、人間を相手にする「情報処理系コンピュータ」関係のGNU(グニュー)プロジェクト(1983年~)から、情報処理系のOSであるUNIXに繋がっていきます。現在、PC用のWindows、スマホ用のiOSやAndroidがありますが、クラウドサーバーのOSである Linuxは、UNIXから生まれました。1980年代の、IBM互換の「メインフレーム」と呼ばれる一部屋を丸ごと使う大型コンピュータでは各メーカー純正OSが使われていましたが、家具サイズに小さくなった「ワークステーション」で、大学や企業の研究室を中心に、オープンソースのUNIXが使われ始め、1990年代になりLinuxとしてPCに移植され(一般のビジネスでは、マイクロソフトのOS、MS・DOSとインテルのプロセッサを搭載したIBMのPC等が活用されました。)、現在、クラウドサーバーのOSとして、オープンの代名詞である「インターネット」のサービスを支えています。
もう1つの、機械を相手にする「組込系コンピュータ」関係のTRON(トロン)プロジェクト(1984年~)によるOSは、トヨタの自動車のエンジン制御や、ヤマハの楽器、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」シリーズなど様々な機械に用いられています。(なお、組込系OSは情報処理系OSの10倍近い利用台数に及び、TRON系OSは世界一の数が出ているのですが、情報処理系OSが実行中のプロセスにプロセッサ処理時間を一定で割り振り切り替える(ラウンドロビン)のに対し、組込系OSはプロセスの優先度に応じて振り分ける(プライオリティ・スケジューリング)ので、より職人技的なプログラミングが必要で、日本には人材が不足していると言われています。)
この間も、IBM互換機に対する問題(IBMが製品に付けていた回路図等を基に、完全コピー製品をより安く作る互換機メーカーが席捲し、やがて産業スパイ事件に発展)、パッケージソフトのコピー禁止問題(メインフレーム時代は、機能が限定されていた上、ハードの仕様をよく知る技術者でないと開発できないなどの事情によって自前OSであったものの、PC時代になってソフトウェアの価値上昇に伴い、ソースコードは隠され、オブジェクトコードは渡すがコピー禁止とされた。)など、「クローズ化」の傾向もありましたが、再度「オープン」にしたのはインターネットです。コンピュータの高機能化に伴い、プログラム開発に多大な時間を要するようになり、オープンな資産を用いたアジャイル(素早い)開発の動きが生まれてきたのです。
現在、GitHub(外部リンク)Kaggle(外部リンク)などの公開サイトがあります。
(一方で、データ分析技術の進化によって、携帯電話の位置やパソコンの動作環境等の匿名データからもその人の好みや生活習慣が導き出せるようになりました。このため、氏名や住所など個人を特定するデータだけでなく、そうした「顔の見えないプライバシー」も個人情報をみなす動きが、EU(「一般データ保護規則(GDPR)」)を中心に加速しており、便利さとプライバシー保護の両立が不可欠な時代となってきました。)

オープンデータ

また、2009年に米国大統領に就任したオバマ氏が「オープンデータ」政策を唱え、ワシントンでは、行政に問題を知らせるAPIが公開され様々なアプリが開発されているとともに、集まった問題指摘内容が公開されビジネスの種として利用され、データを公開するだけで連鎖反応的に新サービスが生まれているそうです。オープンデータの乗数効果は高く、例えばダイナミックマップや信号状態から、自動運転だけでなく視覚障害の方に音声で信号状態を知らせるサービスなど様々なものが生まれてくると考えられます。今後、こうしたデータアセット(資産)の証券化など、ビジネスモデルの構築も重要となってきます。

またグーグル・マップでは、道路の傾斜等をAIが自動計算してよりCO2排出量が少ないルート提示を行うなど、ESGの視点も重要となってきています。

クラウドファースト

さらに、こうしたサービスやデータの提供方法も自己完結ではなくなってきています。通信環境の向上(1G(1979年頃)で9.6キロバイト(1秒間に1万ビット弱を伝送)、4Gで1ギガバイト、5Gで20ギガバイトと40年で200万倍の性能向上)なども背景にありますが、グーグルのクラウドサービスは、全世界数十か所、数千万台あると言われるサーバーのうち、AIを駆使して冷房効率が高く電気代が安い夜側の半球での処理を高め電気代を4割も削減したと言われています。マイクロソフトのOfficeもクラウド化によるサブスクリプションモデルに移行しました。

程度のバランスとAI

社会全体の最適化を目指す際には、様々な事象を「程度の問題」「確率の問題」として俯瞰し、バランスを考えながら進める必要があります(ベイズ哲学)。新型コロナウイルス感染症対策においても、日々変わる事態の中で、正しさを「程度」で判断するしかないハードな状況が続いてきました。そして、「正しさは確率」「すべては程度の問題」というベイズ主義の申し子と言えるのがAIです。
AIは1960年代のコンピュータ黎明期から謳われてきたものですが、現在の第3次AIのブームのきっかけは、当時カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン教授の論文で謳われた「ディープネットワーク」(2006年)と、その重要性に気づいた当時中国・百度(バイドゥ)所属のアンドリュー・ング氏の論文で謳われた「ディープラーニング」ですが、複数の入力値について、重みづけ、バイアス、しきい値といった「パラメータ」を設定し「程度」を判定していくものです。ベストではなくベターな解を長年の経験から掴み取るようなものと言いましょうか、人間の脳の神経細胞・ニューロンの樹状突起(入力)と軸索(出力)の接続部シナプスが、頻繁に刺激を受けると感度が鈍くなったり、しきい値を超えると出力されるのと同様です。

そして、このパラメータは何億、何十億個もあり人間が設定するのが不可能であるところ、大量の正解データを与えることで、正解から逆方向を辿って途中のパラメータをコンピュータが自動的に決定する「学習」を行えるようになり、現在のAIが実現しました。
その要因の1つは、そのゲームの普及でGPUが大量に使われ安価になり、スマホやニューラルネットワークに活用できるようになったことです。
そしてもう1つは、オープン化です。グーグルがAIソースプログラムのAPIの公開を進めたことがきっかけで、マイクロソフトやアマゾンも追随しました。アルファ碁を開発したグーグル傘下のディープマインド社は、化学式からタンパク質の三次元折り畳み構造を推測するAIも開発し、GitHubでプログラムや学習データを公開しています(例えばアルツハイマー病は、化学式的には同じなのに正常とは違う折り畳みをしたタンパク質が脳に沈着することで引き起こされます。)。通常は10年かかると言われてきたワクチン開発が、たった1年程で緊急承認までこぎ着けられたのも、ディープマインド社のAIをはじめ、世界規模での研究の連携が背景にあるのです。

考え方や制度を変える

もちろん、こうしたDXにも功罪両面があります。例えば、京都・日本は精緻なものづくり、すり合わせ力が強みでありました。光学分野ではナノレベルの寸法公差を、最後は人の手で実現してきました。しかし、既に海外ではピコレベルを、デジタルで制御されたマシンで実現しており、DXによって日本の強みが無きものとなりつつあります。
しかし、一方で、例え触らなくても開くドアや、店頭や体調不良を察知するセンサーなど、障がい者や高齢者にとって住みよい街づくりや機器の開発など、社会の諸課題に寄り添った製品・サービスを生み出すチャンスも多く拓けています。

「Beyond 5G(6G)」では、省電力化のためにも、ネットワークから端末まで光のまま伝送する技術や、チップ内に光通信技術を導入する「オールフォトニクス技術」も想定されており、新たなビジネスチャンスが着実に巡ってくると考えられます。
しかし、変遷が激しい「技術競争」に飲み込まれないためには、技術の基礎となる「思想」を見定めることが重要です。そして、それ以上に今後重要なのは、例えば、ロボット導入で省人化を進めるにも、特養では入所者3人につき常勤換算で1人以上の職員が配置されないと介護報酬が減らされる実態があるなど、技術よりも考え方や制度を変えられるかです。
京都の大学やけいはんな学研都市の様々な研究機関とも一層連携を図ることで開発ステージを高め、例えばロボットというハード起点でUXやアプリケーションを思考するという流れではなく、デジタルでつながれた世界の中での「振る舞い方(それはデータ活用によって向上を重ねる)」「ビジネスモデル(自動運転車はロボタクシーとして貸し出すことで24時間稼働)」を起点に考えるなど、これまでの延長線上ではないアプローチを図ってまいります。

メタバース

現在、メタ(旧フェイスブック)もハプティックグローブを開発中ですが、商品の手触り感、脈取り診断など様々な分野でハプティクス技術開発が進められており、パタバース空間に、見る、聞く、触るが加わろうとしています。

ブレインテック

従来、アルファ波、ベータ波等の「ムード」のような脳の状態を把握する「EEG」、動作や知覚、思考の際の脳内各部の血流動態反応を画像化する「fMRI」がありましたが、近年注目されているのが、脳にマシンを接続し双方向で情報をやり取りする「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」。
「知覚」の際の「脳内反応部位」をfMRIで捉えた画像を、「AI」に学習させることで、「脳内反応部位のパターン」から、知覚した映像の再現がある程度なされるように、ある「動作」をする際の「脳の電気信号」を捉え、そのデータを「AI」に学習させることで、「脳の思念(意図)だけ」で、つまり「動作なし」で物事を行えるようにするものです。これまでも、パーキンソン病の患者らの脳に小型電極を埋め込み、微弱な電気信号を与えることで各種症状を沈静化する治療方法が既に活用されていますが、事故や病気で身体の麻痺した患者が手足を動かそうと念じることで、自身の手足の筋肉あるいは代替ロボットを動かすBMIや、念じるだけでテキスト入力ができるBMI等の開発が進められています(文字を手書きするイメージを持つと正確性が増すなど様々なノウハウが試されています)。
半導体チップ等を脳に埋め込む「侵襲型」は、イーロン・マスク氏らのニューラルリンク社等が取り組んでいます。人間の髪の毛の20分の1以下の糸状電極数千本を手術時間内に埋め込むには手術ロボットの開発が必要だと言われており、脳の広範囲に貼り付けるシート状の装置の開発も進められています。また、米豪シンクロンはステントロードという手法を開発しました。通常のステント(カテーテル)治療では、直径数ミリの柔らかいチューブ(カテーテル)の中に、閉じた状態の金属製網状チューブ(ステント)を挿管し、手首や足の付け根の動脈から、狭窄部まで到達させ、そこでステント内部のバルーンを膨らませますが、この原理を応用して首の付け根から脳までセンサーを挿管したカテーテルを届けます。
一方、ヘルメット等のウエアラブル端末による「非侵襲型」は、メタ(旧フェイスブック)が、脳が活動する際の一瞬の変化を高速にスキャンした「光学画像」を作って把握しようという研究を行っていますが、他にも仏ネクストマインド社(VR/AR用ヘッドマウントディスプレイに脳波計を組み合わせたものを扱っており、イメージの訓練(キャリブレーション)によって特定の脳波でゲームを行える)、米カーネル(光トポグラフィーによる精神疾患の診断)、米ドリーム(軽微な音波による骨伝導で脳の特定領域を刺激することによる睡眠の改善)、米ニューラブル(労働の改善)などの取組が進んでいます。
さらに、ケーブル型からワイヤレス方式への移行など通信面の改善はもちろん、ロボット等のセンシング情報を逆に脳に「知覚」として伝える技術の開発、カメラ映像を変換して舌に電気信号を与えることで視覚を失った方において味覚領域で視覚を感じ取る「感覚代行」、ウイルスベクターで光に反応するタンパク質を脳に組み込み、発光ダイオードなどを用いて光で脳をコントロールする研究等も進んでいます。
こうしたブレインテック・スタートアップ企業は、世界全体で2010年には約50社程度であったものが、現在は500社以上と言われています。いずれは、「リハビリ」などだけでなく、人間の記憶力の向上、食欲などの欲求のコントロール、さらには新しい職業に必要となる技能や知識を脳に直接ダウンロードするといった「教育の限界を超える」使われ方をする時代が来るのではないでしょうか。

スマートシティ

スマートシティを最初に打ち出したバルセロナ、官民連携組織を立ち上げたコペンハーゲンのほか、シカゴ、ラスベガス、サンディエゴ、ジャイプールなど欧米・アジアの都市を中心に、センサープラットフォームが整備されていますが、それらの国々に共通するのは、古い都市が過密になりインフラのカイゼンが必要であったこと。そうした条件に当てはまらない日本において、どういった「都市や地域のインフラの課題」を見出すか。それが日本のスマートシティの鍵のようです。

施策

食産業・イートテック

クリエイティブ産業

そもそも、私たちが日々当たり前のようにいただいている食品・料理は、その全てが最初は、人類の歴史のある時、どこかで、誰かが生み出した「新商品」でありました。
例えば、移民の国・アメリカで、ドイツ・ハンブルク出身者が生み出したのが、ありあわせの肉を刻んで丸めて焼いた「ハンバーグ」です。イタリアの食材・マカロニと、フランスの調理法・グラタンを合わせたのが「マカロニ・グラタン」です。やがて豊かな時代になり、より健康的な朝食の提案として生まれたのが「グラノーラ」や「コーン・フレーク」です。
遡って、ヨーロッパを慢性的な飢饉状態から解放したのは、大航海時代に南米からもたらされたジャガイモです。見てくれの悪さで、永らく栽培されませんでしたが、18世紀、フランスの農学者パルマンティエという人物が、ジャガイモ畑を作って昼間は兵隊に警護させました。貴重なものだと思わせ、思惑通りジャガイモ泥棒が現れ、各地に広がったと言われています。そのおかげで「フライドポテト」、「フィッシュ・アンド・チップス」など様々なメニューが誕生しました。トウモロコシも、小麦のようにグルテンがないため、ふんわりとしたパンに仕上がらず普及しませんでしたが、粉を練って平たく焼いた「トルティーヤ」や、具を入れ、ちまきのように蒸した「タマ―レス」などが生まれました。また、永らく飲料原料であったカカオからチョコレートが生まれたのは19世紀です。オーストラリア原産のマカダミア・ナッツを、ハワイ土産の定番としてのが「マカダミア・ナッツ・チョコ」です。そして「カレー」は、インドなどでは本来、香辛料たっぷりの汁物・煮込みの総称ですが、日本で馴染み深い、いわゆる「カレー風味」のカレー粉は、イギリスで最初に開発されました。
さらに遡れば「漢」の時代の中国では、シルクロードで小麦粉料理が伝わるものの、「焼パン」ではなく、古来から中国で用いられてきた蒸気で蒸す技術を用いた「蒸しパン」が発達しました。
ついでに申せば、「レストラン」というビジネス形態を世界で最初に開業したのは、18世紀末、フランスの貴族に仕えてきた元料理人ボーヴィリエという人物です。フランス革命の前夜の時代で、貴族たちに仕えていた料理人の失業、厳しい同業者組合が崩壊し自由に料理を提供できるようになったことが背景です。ちなみに、ナポレオン三世の時代に軍の携行用バターの代用品として懸賞募集され、化学者によって開発されたのがマーガリンです。

そして、京都が誇る和菓子も創造性豊かな歴史に彩られています。

  • 古代
    くだもの(果子、菓子):自然界の木の実・草の実(最初の菓子は11代垂仁天皇に持ち帰った「橘」の実)
  • 奈良時代
    唐菓子(からくだもの、唐から穀物を主原料とする加工法が伝来。米に飴・油を加える):大豆餅、小豆餅、麦形、煎餅等。やがて今日の団子、饅頭、煎餅
  • 鎌倉時代
    点心(定時の食事の前後の軽食、禅宗の影響):饅頭類、羹類、麺類等
  • 室町時代
    茶席用:麩焼、栗、シイタケ、昆布、餅と味噌、等
  • 室町末期
    南蛮菓子:カステラ、ボーロ、金平糖、カルメラ、等
  • 江戸時代
    饅頭、羊羹、落雁、豆菓子、最中(日本発祥)など完成(明治:饅頭に小豆餡)
    注1)幸福を呼ぶ5色の豆:青(木)、赤(火)、黄(土)、白(金)、黒(水)
    注2)打物:「寒梅子(またはみじん粉)+砂糖」を木型(均一に固い桜が適する)で形成する干菓子で落雁等

このように、今日、私たちがいただく食品や料理は、世界の食品業界の皆さんが、数々の時代の転換点を乗り越えてこられた「証」そのものであり、地球上の「おいしい」は土地や風土、歴史等によって多様で無数に存在します。

サイエンスの粋

また、食品・料理は科学の粋を集めたものとも言えます。
そもそも、食品の原料として大きなウエイトを占め、食物連鎖のはじまりである植物自体がすごい仕組みを有しています。まず、舌の味蕾で感じる「旨み」「甘み」「苦み」「酸み」「塩み」の味覚のほか、舌が「痛い」と感じる「辛み」がありますが、植物にはそれらの元となる栄養素(五大栄養素:カラダをつくる「タンパク質(アミノ酸)」、エネルギー源「糖質」「脂質」、体の調子を整える「ビタミン」「ミネラル」)を自ら生産する能力があります。例えば、酢豚に入っているパイナップルのように、タンパク質を分解する成分を有し、肉をやわらかくしてその消化を助けるものもあれば、紫外線によって人や植物の内部で生じるスーパーオキシド、過酸化水素などの「活性酸素」(老化や成人病、がんの引き金になるとも、病気全体の原因の9割を占めるとも言われます。)を消去する成分(抗酸化成分)として、「苦み」の成分でもあるポリフェノール(及びそれを作用させるためのポリフェノール酸化酵素)やその一種であるアントシアニン(花びらの色の成分で、紫外線が強い高山の植物の方が色鮮やかになる)、「酸み」の成分でもあるビタミンC、ビタミンE、ビタミンAに変換されるカロテン等、香り成分である「フィトンチッド」等があります。
最近では、欧州のシェフの中には、調理や味の表現を分子レベルで解析している方、日本の食材をくまなく調べ上げ、新しい料理を創造する方も多数いらっしゃいます。シンガポールのCRUSTは、売れ残りのパンを使ったビール製造を始めています。そして、米国では、米国初・世界一の料理大学カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカとMITとの提携、ハーバード大学デザイン学部での食研究チームの発足など、研究が一層本格化しています。

京都では「清酒」づくりがまさに発酵技術の粋を集めたものと言えます。

開発力・安全性・付加価値の向上

日本の食品産業の国内生産額は、比較的大きな国内消費者に支えられ約80兆円(加工業34兆円、流通業24兆円、飲食店20兆円/2010年度、農林水産省調)(外部リンク)で推移してきました。穀物自給率が3割以下と言われるように、安さを求めて「原料の輸入」は多いものの、海に囲まれた立地や歴史・文化的な背景も重なって、独自かつ世界有数の多彩な進化を遂げてきたため、「製品の輸入・輸出」のウエイトや大企業のシェアが小さく、地域に根ざした中小企業・小規模企業が担ってきた分野であり、参入しやすい分野で、府内の事業所は、製造業が約1,300、卸・小売業が約11,000、飲食店が約17,000(2009年、事業所統計)に上ります。

これまで、こうした中小企業・小規模企業の商品開発力、生産性向上、衛生管理対応、販路開拓等の支援に取り組んでまいりました。例えば、

  • ブランド力のある「京野菜」を加工食品に活用するための加工体勢の整備(野菜1次加工施設のシェアリングの推進)、粉体・乾燥・ペースト・冷凍に関する知見の整理(「京野菜加工のトリセツ」など)
  • 食品表示法対応は、2022年3月末には原産地表示の経過措置が完了しますが、これまでから担当課から多くのセミナーで周知を図ってまいり、例えば京都府食品産業協会では560アイテム以上の全ての「京都吟味百選」認定商品の検査も完了しています(逆に府内への生産回帰の動きなど、チャンスも巡ってきています)。
  • 食品衛生法に基づくHACCP対応のうち「HACCPに基づく衛生管理」は、従業員50名以上の食品製造業(府内約130施設)が対象で、国や府等の「7原則12手順」を記した手引書に基づき、(1)製造工程の異物混入・微生物汚染等のリスク要因の分析、重点管理点の選定、(2)重点管理点の継続管理を行うものです。また、「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」は食品製造業・運送業・小売業、飲食店(府内56,000施設)が対象で、府の手引書を参考にするならば、(1)原材料受入、保管温度管理、汚染防止、健康管理の4分野に関する衛生管理計画策定と、(2)カレンダー形式による日々の取組確認を行うもので、引き続き保健所を中心に周知徹底を図られているところです。
  • 技術伝承・人材育成の基盤として「京もの伝統食品」指定も行ってまいりまして、2007年に京つけもの(千枚漬、すぐき、しば漬)、2019年に京上菓子(あんを用いた多彩な生菓子、落雁・有平糖などの干菓子)が、それぞれ指定を受けました。

コロナ

そんな中で発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大。食品業界が受けた影響は大きく分かれました。まず、「実店舗」について、製造から見て「直営店」の場合については、「常使い」されてきた商品以外は大きな打撃を受けました。「他店」に卸す場合は、スーパー・コンビニは好調でも、人流抑制による旅行者・インバウンドの激減によって百貨店・土産物店・飲食店は大きな打撃を受けました。一方、「オンライン販売(宅配)」は伸びました。

そして様々な取組の後押しをしてまいりました。

  • DX
    オンライン販売、すなわち宅配です。もちろん、それで成功するためには、顧客層ごとに発信方法・タイミングを検討するなど緻密で丁寧な対応が不可欠です。自社で研究し「生菓子の全国配送」を実現している例も登場してきており、自社にそのノウハウがないならば、「まるごと京都直売所」など先行している事例に合流、連携する手法が考えられます。
  • 輸出
    海外の日本食レストランは2005年2.5万軒から2020年15万軒へと大幅に増加しているそうです。一方、国内においては、いずれインバウンドが戻ってくることを見越して事前PRを目的とするパターン、本格的な輸出を目的とするパターンが考えられます。賞味期限が長いものであること、米国FDA対応をはじめ食品衛生体制がしっかりしていること、輸送費や通関、中間業者のマージンなどによって消費者価格が日本の「1.8倍」になることなどの制約条件を踏まえると、現地の食文化と親和性があるものであって、日本らしさ、オーガニックなどといった分かりやすい付加価値のあるものが好ましく、日本酒や抹茶のほか、和菓子や味噌等の調味料、佃煮などの総菜等が候補でありましょうか。商社を活用する場合、京都には現地拠点を有しているため、円建てで決済でき、為替相場を気にする必要がない商社もあります。あるいは、現地インポーターに直接依頼する手もありますが、いずれにおいても、条件を調べ、少量で試してみて、良かったら本格的に活用するという手順でありましょう。各社で輸出担当者を置くなど社内の方針を定めることが絶対不可欠ですが、慣れている企業様であれば、JETROのJAPAN MALL(外部リンク)を活用して商社や現地インポーターを探す挑戦をされてもいいですし、不慣れであればJETROのハンズオン支援(外部リンク)を活用し、現地情報を把握するところから始めるのもいいです。
  • 期限伸長テクノロジー
    冷凍・急速冷凍技術のほか、フリーズドライ(凍結乾燥)・熱風乾燥・缶詰瓶詰め(加熱殺菌)・レトルト(加熱加圧殺菌)などの乾燥殺菌技術などを駆使しながら、おいしい食品を開発される例が、コロナを契機に国内外において増えています。京都でも既に急速冷凍機等をシェアするサービス等も生まれてきていますので、ぜひご活用ください。

イートテック

地球・社会・経済の観点で俯瞰すると、世界の食料システムの市場規模10兆ドルに対し、肥満や糖尿病治療など健康損失6兆6000億ドル(安価な加工食品の多用によるフードデザート、調理の効率化の余剰時間によるおやつ採取の増加など)、異常気象の被害や生物多様性の破壊など環境損失3兆1000億ドル、フードロス(世界で全食品の3分の1が廃棄)などの経済損失2兆1000億ドルで、総じて1兆9000億ドルの損失と言われています。そして、2050年の世界の人口は約97億人と、現在より20億人も増加するのに、既に世界の7~8億人もの人々が飢餓や栄養不足で苦しんでおり、日本においても食品ロス(食品ロスの削減の推進に関する法律、2019年)は600t以上で、国連などが世界各地で行っている食料支援の1.5倍に匹敵します。
一方、家庭や個人の目線に立ち返れば、60歳以上の高齢単身者の67%が朝昼晩全て孤食となっているなど様々な課題が山積しており、大量生産・大量販売や効率化を主眼としたバリューチェーンでは対応できなかった新たなニーズ、すなわち、価値観に合った食材、食材発見の喜び、調理の楽しみ、コミュニケーション、食のパーソナライズ化などの、ニッチでロングテールのニーズへの対応も必要となっています。
こうした中、マイクロソフト、アマゾンの本社やスターバックス1号店もあるシアトルなど、フードテックが盛んな都市を抱えるアメリカにはフードテック分野を扱うVCが200を超えるなど、欧米を中心に多くの食にまつわる技術革新やビジネスモデルが登場しており、食品開発設備を提供するオープン型研究開発コミュニティ「MISTA」(スイス香料メーカー・ジボタン)や食品製造ラボのあるフードテック専門シェアオフィス(米キッチンタウン、日本の新大久保フードラボ等)も生まれています。
また、コロナ禍を契機に「三間(時間、空間、仲間)」のあり方の変化や、立ち返るべき原点(オリジン)の重要性が高まる中、外食ビジネスにおいては、アンバンドル(分解)、すなわち、「場所」機能を切り離すデリバリーサービス、「調理」機能を切り離すゴーストキッチンなどの動きが進むとともに、コミュニケーションや体験の場としての「場所」機能の新たな価値の創造や、郷土料理やシェフの人生観など「コンテンツ」機能の強化など、新しい形が求められています。

まず1つめは「食材の進化」です。

次に「買い物・レシピの進化」です。

  • デリバリーサービス(飲食店の「フロント」)
    届いた菓子の好き嫌いをアプリでフィードバックすればより好みに合ったものが届くネットフリックス的な健康菓子サブスクサービス(日本スナックミー)、急速冷凍ノウハウを活かして農家の余剰フルーツ等の冷凍販売(日本ディスブレイク)、飲食店の余剰食材と一般購入者を結びつけるプラットフォーム(日本コークッキング/TABETE)、置配サービス(クックパッドマート)
  • 食材・人・調理を連動させるパーソナライゼーション
    血糖値やグルコースの低侵襲測定サービスと連動した購入食材や調理法の提案サービス(米Abbott)、検査した自身のDNAにマッチした食材を色で提示する小売店サービス(英DNANudge)、最適食材を処方箋に記す病院と小売との連携(英Kroger)、食意識・気分・環境からのレシピ提案(ニチレイ/conomeal)
  • フードロス関連
    京都においても、規格外京野菜の活用促進のための1次処理設備のシェアリング食品ロス解消を目指す「食のSDGsステーション」開設等を推進しています。

そして3つ目は「調理・食事体験の進化(家の外の食)」です。

  • シェフの人生観を伝える店(飲食店の「ミドル」)
  • シェアキッチン(飲食店の「バック」):デリバリー専門レストランを束ねるゴーストキッチン
  • フードロボット:ハンバーガー自動調理ロボット(米Creator)、各種厨房機器ロボット(日本コネクテッドロボティックス)、AI搭載バウムクーヘン専用オーブン(ユーハイム/THEO)
  • 自販機(移動型レストラン):サラダ製造(米Chowbotics)、ラーメン製造(米Yo-Kai Express)、受取時間を考慮したAIカフェロボット(日本ニューイノベーションズ)

最後に「調理・食事体験の進化(家の中の食)」です。

  • 買い物、レシピ、調理のプラットフォームとなる「キッチンOS:音声によるキッチンのコントロール(Amazon)、料理を洗濯したら購入食材、洗濯すべき調理器具や加熱時間を提案するプラットフォーム(米イニット)、タブレットのレシピとBluetoothで連動し自動で温度調節を行うIoTフライパン(米Hestan Smart Cooking)、レシピ連動調味料サーバー(クックパッド)、お茶を煎れる人の体温・心拍、周囲の温湿度をセンサで読み取り茶葉に応じて抽出時間を自動調節するIoTティーポット(日本Load&Road)、味噌の発酵を見える化し温度調節をサポートするデリバリーキット

京都においては、「和食×サイエンス×デジタル」によるイートOSづくりなどが期待されるところです。

施策

ライフサイエンス・ヘルステック

65歳以上人口割合が7%以上の「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」、21%以上を「超高齢社会」と呼びますが、世界平均が9.6%に対し、日本は28.7%となっています(「世界人口白書2021」。ちなみに生産年齢人口は約7500万人)。

「健康」「医療」「福祉」に関するライフサイエンス、ライフイノベーションには、(1)健康増進による医療・福祉費に関する国民負担コストの抑制と、(2)付加価値の高い、あるいは安く手頃な健康・医療・福祉関連製品・サービスの創出促進による国民へのバリュー提供の2つの意義があるとともに、医薬品市場、医療機器市場、再生医療市場とも世界的に年数%の伸びが見込まれる成長産業であることから、京都が世界に誇る「iPS細胞」をはじめとする研究開発や府内中小企業の本分野への参入を支援してきたところです。

これまで京都産業21を中心に、相談・開発支援等を行うとともに、

  • コーディネータによる相談:215件(2014年度~、共同開発先・OEM先のマッチング等)
  • 参入済企業らの交流会・勉強会を通じてマッチングの促進を行う「京MED(外部リンク)」(2021年度~。51者参加)
  • 窓口専門相談(外部リンク)176件(2014年度~。分野:創薬・再生医療等9件、医療機器・介護機器等147件、食品その他20件。内容:薬事手続50%、販路・参入各15%)
  • 薬事支援センターとの連携による薬機法相談:107件(2020年度~)

ものづくり振興課においても、開発製品の広報・販路開拓支援等を行ってまいりました。

そして、新型コロナウイルス感染症が世界を席巻する今、コロナ禍からWITH・POSTコロナ社会の構築に向けて、そのテクノロジーの開発を一層進めねばなりません。

コロナ時代に生命・健康を守る--

ウイルスの遺伝子を見つける「遺伝子検査」は、京都においても中小企業はOEMで、大手は自ら、それぞれ高速PCR検査装置や全自動PCR検査装置の製造を行い、大学病院でもPCR検査ロボットシステムの実証が行われています。
ウイルスのタンパク質、すなわち、抗原あるいは抗体に接合させる「抗体検査」「抗原検査」は、遺伝子検査に比べて精度が低いとされていますが、京都のスタートアップ企業において、タンパク質をダイレクトに製造する方法により高精度な検出法の確立を目指す動き等が起こっています。

抗原から身を守る仕組み「免疫」。免疫は、白血球(マクロファージ)や皮膚・肺等の樹状細胞が細菌やウイルスを取り込む(そしてT細胞等の他の免疫細胞に情報伝達を行うマクロファージ(低分子タンパク質)を分泌する)ことから始まりますが、ウイルスを取り込むこうした貪食細胞をiPS細胞から作り研究用に提供する取組が、京都のスタートアップ企業で進められています。がん治療用に攻撃(免疫)細胞(T細胞)をiPS細胞から作るなど「細胞性免疫」の研究開発が京都でも進められていますが、コロナ関連で注目されるのは、「体液性免疫」すなわち、ヘルパーT細胞を経てB細胞により抗体を自ら作り出すための「ワクチン」です。2021年2月に国内で接種が始まったファイザー(米国)・ビオンテック(ドイツ・スタートアップ企業)や、モデルナ(米国)の世界初となるmRNAワクチン(開発に時間がかかる不活化ワクチンではなく、ウイルスのスパイクタンパク質を体内で作らせるもの)、アストラゼネカ(英国)のウイルスベクターワクチンのほか、国内でも塩野義製薬の遺伝子組み換えワクチン、田辺三菱製薬のウイルス遺伝子を組み込んだ植物から抽出するワクチン、VLPセラピューティクスらの投与後に体内で自己増殖するため投与量が少なくて済むmRNAワクチンなど、様々な開発が進められています。京都のスタートアップ企業においては、ウイルスのスパイクタンパク質をmRNAから生成するのではなくダイレクトに生成するスパイクタンパク質の成分そのものを生成する攻撃(免疫)細胞(B細胞)を活性化するヘルパーT細胞を制御する細胞(Treg)を抑制しB細胞の活性化環境を作るといった研究開発が行われています。

ウイルスの増殖を抑制する「治療薬」については、スーパーコンピュータ富岳や府内スタートアップ企業による既存薬の中からAI等で候補を絞り込む取組が進められながら、RNAポリメラーゼ(転写因子と結合し遺伝子複製を作動させる酵素)を阻害するタイプの重傷患者用注射薬「レムデシビル」、軽症者向けに中和抗体を増やして注射する抗体カクテル療法「ロナプリーブ(米リジェネロン、中外製薬)」(濃厚接触者への予防投与についても承認申請)、肺炎治療薬では「バリシチニブ」が承認済)、RNAの複製を抑制する世界初の飲み薬「モルヌピラビル(メルク)」等が生まれています。ウイルスの遺伝子(mRNA)に直接作用する核酸医薬」の開発を目指す京都の大手創薬メーカーなどの意欲的な取組も進められています。

コロナ時代に医療崩壊を防ぐ--

Apple Watch」「Amazon Halo(ヘイロー)」などのウェアラブルデバイスが有名ですが、血中酸素濃度など患者や施設入居者の状態をリアルタイムでリモート監視するシステムや、排尿計測記録システムなどは、府内企業が既に上市しており、現場での使いやすさ、UIが重要なポイントとなっています。さらに、コロナの影響で拡大する産後うつ問題に対して、相談体制を構築する健康管理を行うといったスタートアップ企業も生まれてきています。声で感情認識を行う(外部リンク)とか、家電のリモコン操作から認知症の兆候を掴もうとする研究等も国内で進められています。

また、クリニック等の院内感染リスクを下げるとともに、患者を繋ぎ留めるためにも有効なAI問診(外部リンク)オンライン診療システム(外部リンク)医療従事者間コミュニケーションアプリ(外部リンク)などは府外スタートアップ企業が先行しています。初診の場合、本人確認や基礎疾患の事前把握など困難さはあるものの、重症度に応じた優先順位の見極め等にも有効です。一方、AIとオンラインを駆使して薬局の新しい姿を模索する動きは、京都のスタートアップ企業から生まれてきています(米国ではドローンによる市販医薬品の宅配がスタート)。

コロナ時代に感染拡大を防ぐ--

高性能CPU・GPUを駆使してSLAM、物体認識、AI顔認証などをエッジ完結で行い、エレベータ・システムとも連動して各階のフロアマップを参照しながら自律的に動くロボットが、介護施設の巡回、深紫外線を用いた消毒等を自動で(外部リンク)、あるいは遠隔操作で(外部リンク)行うなどRaaS(Robot as a Service)の取組も始まっており、多くの京都企業も追随しているところです。

また、スマホの活用に関しては、アンドロイド(グーグル)、iPhone(アップル)がOSどうしで連携し実現した「COCOA(外部リンク)」をはじめ、大手通信会社の取組、海外では体温計の値の全国分布、京都でも人流分析、混雑やコロナ感染者発生アラート発信など、様々な取組が生まれています。

コロナ時代に感染症に強い社会を築く--

感染の恐れを最小限にするために人を介さず3Dプリンターでの食品製造(外部リンク)、動物を用いない植物由来の人工肉開発、店舗に出掛けずスマートミラーでの試着、ラフな手描きのイメージ図をスマホカメラで撮影すれば自動で3D図面ができあがるリモート設計相談(外部リンク)企業の枠を超えた共同デジタル試作(外部リンク)ARによる共同現場管理(外部リンク)リモートでの重機操縦(外部リンク)など、新しい取組が登場し、大手自動車会社では「都市OS」構想等も生まれてきていますが、京都企業もデジタルツインに着手しているところです。

また、コロナによる物理的・心理的距離が生じていることがきっかけで企業の福利厚生にも取り込まれたAI恋愛ナビゲーションアプリ(外部リンク)オンラインパーティシステム(外部リンク)リモート応援システム(外部リンク)のほか、ARと連動したリモート音楽ライブ、VRと連動したエクササイズ(外部リンク)エクササイズの動きで進めていくゲーム(外部リンク)など、新しいビジネスが登場してきています。

ゲノム編集

ヒトの大人の体には37兆個、250種類以上の細胞(直径20µm)があり、細胞核の中には23の染色体 (23対目は男女を決めるX・Y染色体) 、31億対の塩基(ゲノム)があります。マウスだと27億対、小麦170億対、イモリ310億対のゲノムがあります(なお、細胞分裂の際にDNAは複製されますが、末端部分「テロメア」は複製されず短くなり「命の回数券」とも呼ばれます)。

  • 染色体=ヒストン(タンパク質)+DNA(デオキシリボ核酸)
  • DNA=糖+リン酸+塩基(アデニン(A)・チミン(T)、グアニン(G)・シトシン(C))
  • 塩基(ゲノム)遺伝子配列(ヒトの場合1.5%)+その他配列

その他配列中のハイエンサーと呼ばれる配列への転写因子(タンパク質)結合がきっかけとなり、同じくその他配列中のプロモーターと呼ばれる配列に転写因子とRNAポリメラーゼが結合することで、遺伝子配列の転写が開始されます。

遺伝子改変」には、従来の放射線利用、微生物の酵素による化学変異などの「人工突然変異法」のほか、近年は人工制限酵素やクリスパー・キャス9等のツールを用いた「ゲノム編集」が飛躍しつつあります。ゲノム編集は2層構造になっており、1層目はゲノムの認識です。複数の人種のデータをつなぎ合わせる形でのヒトゲノムの解読は2003年に完了し、最近では次世代シーケンサーで31億対を数日で解読(個体差を判別)できるようなりました。また、旧世代のゲノム編集ツールでは標的とする塩基配列を特定するためのタンパク質をオーダーメイドしなければなりませんでしたが、クリスパーでは遙かに簡便なRNAを用いています。2層目はキャス9などの酵素で遺伝子を切断することで、DNA本来が有する修復機能を活用して改変します。改変は、切断末端部を修正(末端部が欠失)することで生じる遺伝子ノックアウト(自然突然変異と同等の影響)、切断された間の部分を修復(手本に合わせて復元)することで生じる遺伝子ノックイン(従来の遺伝子組換と同等の影響)があります。

ゲノム編集によって、遺伝性疾患の研究などライフサイエンスへの応用のほか、病気に感染しにくい家畜や花粉を撒き散らさない杉の開発など様々な農林水産の品種改良が進められています。また、昆虫の擬態にはどのような遺伝子が関係しているか、クマムシはなぜ放射線を浴びても生きることができるのか、イモリの脚はなぜ完全に再現できるのかなど、地球上の生物について多くが未解明であり、その解明が資源問題をはじめとする幅広い社会課題の解決にもつながるものとも期待されます。

創薬・再生医療

世界の創薬市場は2020年時点で700億米ドルに迫り、2025年には1,100億米ドルにまで伸びると言われています。また再生医療市場も2019年時点では17億米ドルですが、今後大幅な伸びが見込まれ、いずれも世界のメガファーマがリードしているところです。1990年代から、生活習慣病向けの「低分子医薬」開発が多かった日本メーカーは、2000年代のジェネリックの台頭に促される形で出遅れ感が否めない中で、がん・神経系等向けのアンメッド・メディカル・ニーズ向けの「バイオ医薬品(抗体薬等の高分子医薬)」の開発に進んできたところです。例えば、がん細胞はリガンド(シグナルを出すタンパク質)のPDL1を、T細胞の受容体(シグナルを受けるタンパク質)PD1に接続させることで、T細胞による攻撃にブレーキをかけているのですが(加齢とともに遺伝子変化が蓄積し、自己と非自己の境界があいまいになると、免疫細胞が自己を攻撃することになるためのブレーキでもあると考えられています)、受容体に結合してそれを阻止する「オプジーボ」や、特定のがん細胞にだけ反応する人工的な抗体(受容体)を装着したCAR-T、さらにはiPS細胞由来T細胞などが生まれてきています。さらに現在は、高分子故に細胞内に入れない、胃で消化される故に経口投与ができない抗体薬より中分子の「ペプチド」細胞内の標的分子を直接ターゲットにできる「核酸医薬」、「マイクロバイオーム」による創薬など次世代医薬の開発も行われてきています。
原子や素粒子の学問「物理」、分子と分子の化合物の学問「化学」に比べ、細胞の中のバリエーション豊かな「生物」は、まだ未知なることが多く成功確率の低い極めて厳しい分野ではありますが、京都のスタートアップ企業等においても、大学から技術移転されたシーズや民間企業で培われてきたシーズ等を基とするテクノロジープッシュの様々な研究開発が進められています。

医療機器

世界の医療機器市場は2016年時点で3,300億米ドルを超え、年5%前後で伸びていると言われています。日本のメーカーも内視鏡、超音波診断装置、CTやMRIなど診断機器分野では高いシェアを有しています。また、例えば世界のリハビリテーション機器市場は2016年時点で100億米ドルに迫るなど、介護機器等の市場も伸びています。
この世界的な成長市場への参入をビジネスチャンスにすべく、ニーズドリブンで開発される医療機器・介護機器にも、多くの中小企業が参入し、様々な手術器具、細胞培養器具の製品や部品の開発を後押ししています。

施策

メディアコンテンツ・エドテック

DX時代だからこそ、自分のものの見方、自分なりの答え、すなわち「創造性」を!

ルネッサンス画家と20世紀アーティストの違いは何でしょうか?
前者は、教会や王侯貴族らに雇われ、依頼され、キリスト教をテーマにした宗教画や、権力者の肖像画などを、臨場感ある表現、生き写しのような正確な表現こそ正解だとしていました。
しかし、20世紀に入ると、目に映るとおりに世界を描くという従前のゴールが根本から崩れてしまいました。そう、カメラの登場によって。
そして、芸術家たちはアートにしかできない新しいゴールを目指し始めます。例えば20世紀の最も著名な画家の一人、パブロ・ピカソ。1907年に描いた当初、世界から酷評された『アビニヨンの娘たち』。しかしこれは、遠近法や人間の視覚だけの物差しによる「従来のリアル」と決別し、様々な視点から認識した「新しいリアル」を1つの画面に再構成した彼なりの答だったのです。
また、アートは創った本人がその見方を決めるだけではありません。典型的な例が音楽鑑賞です。「作曲家の意図」「作品の背景」とは別に、聴き手一人ひとりが自由に、自分の思い、自分の体験をベースに「作品そのもの」とやりとりします。つまり、アートは、芸術家だけではなく、鑑賞する側の解釈にも支えられ、成り立つものなのです。
そして21世紀の今、DX等のテクノロジーの進歩によって、日本・京都の強みであった「職人技による精緻さ」が危機を迎えています。今こそ、あらゆる常識、既成概念、枠組みを取っ払い、自分の内なる興味、好奇心、疑問をもとに自分のものの見方で世界を捉え、自分なりの答を探求し続ける「アート思考」、すなわち、「創造性」が求められています。なぜなら、「必要性」よりも「自分の欲求」、これこそが究極の付加価値、究極の需要だからです。

美術工芸のまち

京都の絵画は、空海が持ち帰った「真言五祖図」や手本となる曼荼羅図などの「密教絵画」で開花しました。
やがて、平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像の後壁に描かれた日本の自然の姿など、「唐絵」に対し日本生まれの絵を意味する「大和絵」が成立し、神護寺に残る「伝源頼朝像」などの「似絵(肖像画)」、同じく同寺に残る、猿や蛙などを人間に見立てた日本最初のマンガとも言われる「鳥獣人物戯画」といった「絵巻物」、さらに南北朝時代には大和絵の伝統を受け継ぐ、朝廷お抱えの絵師らによる「土佐派」も成立しました。
室町時代には、将軍家に収集された中国の水墨画を学びに、晩年「天橋立図」を描いた雪舟や、幕府お抱えの絵師となり「狩野派」を開いた狩野正信などの絵師が京都に集まり、桃山時代には「洛中洛外図屏風」を描いた狩野永徳、江戸時代には二条城二の丸御殿障壁画を描いた狩野探幽らが活躍しました。同じく桃山時代から江戸時代に亘り、「風神雷神図」屏風を描き、本阿弥光悦とともに「琳派」を開いた俵屋宗達、琳派を発展させた尾形光琳らが活躍しました。
江戸中期以降は与謝蕪村、伊藤若冲、円山応挙なども輩出し、文人画・写生画の諸流派が形成され、今日の日本画の基盤が築かれました。明治になると「美術」という言葉が作られ、明治13年には日本初の美術学校「京都府画学校(現京都市立芸術大学)」が設立されました。

京都の彫刻も、絵画同様、仏教文化の伝来とともに始まります。
仏像には、悟りを開いた姿を表す「如来」(仏教の開祖、釈迦の像である「釈迦如来」、無限の光を放ち時間を越えたという意味の「阿弥陀如来」、さまざまな病気を治すとされる「薬師如来」など、薄い衣をまとい、ほとんど何も持たない姿として表されることが多い。)、悟りを求めて修行する姿を表す「菩薩」(釈迦入滅後56億7000万年後に如来となってこの世に現れる(現在修行中)とされる「弥勒菩薩」、その弥勒菩薩が現世に現れるまで民衆を救済するという「地蔵菩薩」など)、怒りの表情が特徴の「明王」(不動明王など)、仏教に帰依したとされるインド神話の神「」(毘沙門天など)など様々なものがあります。
渡来系の秦氏が創建した蜂岡寺(広隆寺)の弥勒菩薩像(国宝第1号)、空海による大日如来を中心にした曼荼羅の立体的表現、そして、仏師・定朝による、平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像などが生まれ、定朝以降生まれた京仏師から分かれた奈良では運慶・快慶を輩出し、随心院の金剛薩田坐像は快慶作と知られています。
なお、京都の仏教については、603年に建立された広隆寺が京都最古の寺院です。そして、奈良の仏教勢力の影響力を弱める目的もあり遷都した桓武天皇が最澄、空海を中国に送り出し、それぞれ天台宗(延暦寺)、真言宗(東寺)を開かせました。やがて末法思想によってひたすら来世の幸せを願う浄土教(阿弥陀仏の極楽浄土に往生することを説く教え)が流行し、鎌倉時代になると、「鎮護国家」から次第に民衆の救済を目指すものとなり念仏思想が広がりました。中でも浄土教に基づき、「南無(おじぎ等を意味する)阿弥陀仏」と念仏を唱え続けることで救われるとする法然の浄土宗、その弟子・親鸞の浄土真宗(真宗、一向宗)が生まれるとともに、「南無妙法蓮華経」と唱えることで救われるとする日蓮宗(法華宗)も生まれました。一方、この時代には中国からもたらされた臨済宗、曹洞宗の2つの禅宗が、武士に好まれました。室町時代には臨済宗は幕府に保護され、京都五山(南禅寺を筆頭に、天竜寺、相国寺、建仁寺、東福寺、万寿寺)が定められる一方、曹洞宗は民衆に日蓮宗は商工業者に普及したと言われています。また、当時最大勢力であった浄土真宗は、戦国時代から江戸時代にかけて、大谷、山科、石山、やがていわゆる東・西本願寺へと本山が変遷しました。

大宮付近は平安時代に織部司があったところ(やがて朝廷の仕事だけでは成り立たず独自の座(大舎人座)を結成)で、先染めである織物は、鎌倉時代から室町時代にかけて「大宮絹」の名で知られていましたが、応仁の乱での疎開後、西軍の陣地であった地域に織手が集まり「西陣織」の名が生まれました。後染めのものでは、宮崎友禅斎の「友禅染」など織物とは異なる自由な文様が生まれました。

桃山時代以降、茶の湯の場は、絵画や工芸品の展覧会場でもあり金工の茶釜(三条釜座の西村道仁、辻與次郎など)、陶芸の茶碗・花入、竹工芸の茶筌などが発達しました。そして、俵屋宗達とともに「琳派」を開いた本阿弥光悦は、徳川家康から受領した鷹峯に職人を集めた「光悦村」を開きました。京焼は、野々村仁清が江戸時代初期に御室に釜を築いて色絵陶器によって新風を吹き込み、やがて粟田口、さらには五条坂を中心とする清水焼に受け継がれていきました。

なお、建築については、屋根の形には切妻造寄棟造、そして天守閣の頂上部分でよく見かける入母屋造などがありますが、神社建築では吉田神社本宮などで見られる「春日造」(切妻造、妻入)、上賀茂神社本殿・下鴨神社本殿などで見られる「流造」(切妻造、平入)など様々です。宮殿邸宅では、御所紫宸殿に残る「寝殿造」、金閣・銀閣の初層や二条城二の丸御殿に残る、床の間などのしつらえを供えた「書院造」、わび茶の精神同様、無駄をそぎ落とすなど質素ながら洗練されたデザインで、桂離宮や修学院離宮に残る「数寄屋造」なども発達してきました。

文化芸能のまち

京都の歌道は、905年に紀貫之らが醍醐天皇に奏上した日本最初の勅撰和歌集「古今和歌集」に始まります。同時代には小野小町がいます。鎌倉時代には、晩年に「小倉百人一首」を手掛けた藤原定家から、二条家、京極家、そして冷泉家に分かれ中世の歌壇を導いていきました。明治以降では短歌の与謝野鉄幹・晶子が著名です。

華道は、仏前に花を供える「供華」に始まり、平安時代には貴族の遊びの一つとして、栽培した花の優劣を競う花合せ、室町時代には武家や貴族の床や書院においた瓶花の観賞が普及しました。そして、法会などの催しに花を立てることが盛んになり、「立花」の名手として六角堂頂法寺の池坊専慶住職が名を挙げました。

茶道については、臨済禅とともに茶種と喫茶法が伝わって以来、喫茶の本格的な普及と京都の栂尾と宇治など各地での茶栽培が始まりました。やがて、村田珠光が禅の精神を採り入れて創始した「草庵の茶」を受け継ぐ千利休により茶の湯が大成されました。やがて利休の孫・千宗旦は三男、四男、二男に表千家、裏千家、武者小路千家をそれぞれ興させて、三千家を確立しました。なお、抹茶を用いる茶の湯に対し、茶葉を湯で煎じて飲む煎茶道も江戸時代後期に成立しました。

は、奈良時代に唐からもたらされた散楽(平安時代以降は猿楽)から発達したもので、奈良の興福寺に奉仕していた観阿弥・世阿弥父子が室町幕府将軍の愛護で京都に進出。世阿弥が幽玄優美な能を完成させました。また狂言は、能の合間に演じる芸能として発達しました。

歌舞伎は、異様な振る舞いや風俗を指す「傾く」が語源で、江戸初期、出雲の阿国が京都で始めた「かぶき踊り」がその始めとされます。やがて風俗取締りを理由に幕府から禁止され、成年男子の役者による野郎歌舞伎が生まれ、後に幕府の許可を得て京都・大坂・江戸には常設芝居小屋(南座など)が設置されました。

京舞井上流は、江戸後期に始まる京都の座敷舞の流派で、明治5年の京都博覧会において、祇園町の芸妓・舞妓による「都をどり」の振付を行い成功させました。(五花街:祇園甲部、祇園東、宮川町、先斗町、上七軒)

映画のまち

2019年の国内映画興行収入は史上最高2,612億円を記録したものの、2020年は過去20年で最低の1,433億円(外部リンク)となりました。

京都は、国内において東京以外で唯一、映画の撮影所(製作・配給・興業を一貫して担う国内大手3社のうちの2社)が存在する都市であり、加えて、東京に比べてもロケ地が近いこと、さらには、特に時代劇の制作に関して深い知見と高い技術・ノウハウを有する中小企業、人材が撮影所周辺に多く存在することなどが強みであり、時代劇製作は往時に比べて少なくなったとは言え、京都での撮影ニーズは依然として高いものがあります。

これまで、ベトナムでコメディ映画を製作しハリウッド映画を上回るヒットを飛ばした日本人監督など、最初から他国でローカライズした映画でデビューを飾る若手監督も出てきているなどの近年の背景を踏まえ、「国境を超えた撮影誘致」を促進するため、2010年より若手映画監督等を育成するための映画制作ワークショップ「フィルムメーカーズラボ(外部リンク)」と映画企画コンペ「京都映画企画市(外部リンク)」を、2011年より著名な映画監督等が京都に集う機会ともなる「京都ヒストリカ国際映画祭(外部リンク)」を開催してまいりました。

  • ラボ(外部リンク)」は例年50~60カ国、200~300名の応募の中から約20名に絞って参加いただいており、2020年までに延べ257名が卒業し、劇場映画監督デビューが10名以上、短編映画祭グランプリ受賞者も多数輩出するとともに、卒業生が京都で映画を制作する事例も生まれています。
  • カンヌなどの市場タイプの映画祭では、吹き替えや字幕が未だ付いていない映画、パイロット版、脚本だけ、企画だけのものを、セリのように買い付けに来るような場がありますが、京都の「企画市(外部リンク)」は、国内唯一の映画企画コンペティションとして、最優秀企画には京都で撮影してパイロット版の制作を支援するものであり、2021年までに延べ340件の応募の中から11作品のパイロット版を制作するともに、過去の応募企画の中から公開映画に採用される事例も生まれてきています。
  • ヒストリカ(外部リンク)」は、「世界唯一の歴史映画祭」と銘打ち、東京、ベネチアなどの有名映画祭との連携や、著名監督の招聘などを通じて、映画業界における京都の知名度向上を図ってきました。2020年はコロナ対応として、シアター上映22本のほか、オンライン上映71本YouTube配信29本1,500名を超える来場、1,100本を超える購入がありました。2020年までに約18,800名が来場しています。

また、ロケ地情報発信のために2012年より「ロケスポット京都(外部リンク)」を開設し、500件以上のロケ地を紹介しています。地域からはロケ地として有名になることによる喧騒への懸念、製作側からは「とっておきのロケ地は秘密にしておきたい」など様々な思いがあり、センシティブな一面がありますので、こうした情報をきっかけに、市町村フィルムコミッション・ロケーションオフィス(京都市、宇治市、亀岡市、京丹波町、舞鶴市、京丹後市)等に問い合わせが繋がることが目的であり、これまで600件超の撮影実績を挙げています。

そして、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は映画製作に大きなダメージを与えました。そこで、東映、松竹等の映画関係企業どうし、さらには3Dデータ測量企業らも交え分野を超えた連携によって、風景を予め3Dデータ化しておくことで、実際に出かけなくともリモートでロケハンができる、役者さんがロケのために出かけなくとも撮影ができる「バーチャルプロダクション」について、京都でも研究開発を開始しました。VFX(ポストプロダクションの映像加工)も組み合わせ、映画制作技術の高度化によって、映画撮影誘致に寄与することを目指しています。

一方で、近年は、フィルムへの焼き付けという現像工程不要(陰影表現ではやや劣る)で、ハードディスクに保存するだけのデジタル映画撮影・保存技術により、低コストながら大きなヒットを得る作品も登場し、資金は多く集めやすいものの制作会社に著作権がない製作委員会方式だけでなく、クラウドファンディング等を活用した自主製作を行う新たな潮流も生まれてきています。また、かつてテレビが映画に取って代わらんとしたように、インターネットの台頭はテレビ撮影にも影響を与えています。興業サイドから見れば、京都にはシネコンを含め15の映画上映施設がありますが、米国エンタメ業界では、動画配信、レコメンド制作に加え、ゲーム配信にも進出するNetflixやそれに追随する動きが生まれてきています。こうした新たな動きも捉えながら、互いに相乗効果を生み出すような新しい映画興行のあり方の模索が課題となっています。

ゲームとXRのまち

2020年の国内家庭用ゲーム市場はソフト・ハードあわせて3,674億円で、前年比113%(外部リンク)と、巣ごもり需要の関係で大きく伸びましたが、世界においても、2020年のソフト市場規模は1,650億ドル(18兆円)で10年間で2倍以上に成長し、米国エピックゲームズの「フォートナイト」ユーザーは4億人を超えるなど巨大ソフトが増加している一方、ゲームの高性能化で1本当たりの開発費が10倍の数十億円に及ぶようになり、グーグルなどIT大手がクラウドゲームに参入し、10年前は市場の過半を占めた家庭用ゲーム機のシェアは2割を割り込んでいると言われています。

NINTENDOの存在によって、京都は世界中のゲームクリエイターにとっても憧れのまちであるものの、スマートフォンの登場以降、小規模・低予算で開発されながら斬新なヒット作が多く登場していたインディーゲーム市場においては、欧米に先行されていました。そこで、国内外のインディーゲーム企業・クリエイターを発掘・育成し、日本にその市場を創出することを目的に、2014年からゲーム展示会イベント「BitSummit(外部リンク)」を産学公連携で開催してまいりました。2021年までに延800チーム以上が出展、5万人以上が来場、320万以上のネット視聴があり、イベントでの受賞チームなどは、取引拡大にも効果を発揮しています。2021年度はコロナ対応として約100チーム(国内64チーム(京都9チーム))のオンライン配信のみとしましたが、オンライン試遊18,000アクセス、再生100万回を実現するとともに、大手出版社もゲームクリエイター支援を目指して参加されたのが特徴的でした。そして、この間、米国STEAMなどインディーゲーム等を投稿できるゲーム配信プラットフォームの登場なども追い風となり、京都のゲーム企業数は、2012年の15社(経済センサス)から、2019年には60社(独自調査)を上回るに至っており、京都の世界的ゲーム企業の決算報告でもインディーゲームの売上への貢献が言及されています。さらに近年はeスポーツ用のゲーム開発への表彰など新たなことにも取り組んでいます。

多くの下請開発企業にとっては、ゲーム市場の伸びによってロイヤルティ収入が得られるわけではないため、収入の増加に直接つながるものではありませんが、この成長市場において、いかに新たな企画開発を提案していけるか、実力が試される局面でもあります。

また、例えばフェイスブックも仮想空間メタバース、VRを用いた仮想会議空間サービスを開始(外部リンク)しましたが、京都においては、これまでからゲーム分野を中心にAR、VR、MRなどのXR技術の活用を進めてきました。産業分野への拡大を図るため、2020年には、XR人材の養成スクール「VRIA(外部リンク)」の開講に合わせて、用途開発ワークショップ「xR KYOTO」を開始し、開発企業だけでなく、利用を希望するユーザー企業、斬新な発想を有する学生等を交えて商品説明AR等の開発が進みました。「atama+(外部リンク)」などのAI教材などエドテックが、途上国の貧困問題などの社会課題解決にも繋がるものと期待されており、こうしたxR技術の発展も大いに推進すべきところです。

アニメのまち

2019年の国内アニメ産業市場は3,017億円と過去最高を記録(外部リンク)し、日本産アニメは海外でも人気の強いコンテンツでありますが、一方で、いくつかの問題が忍び寄ってきています。

まず1つは、生産性の低さです。1本の作品の制作予算は、日本もアジアもさほど差がないのですが、動画や原画の描写スピードが遅いと言われています。その理由はアニメを好む故に丁寧過ぎること、しっかり訓練を受けないままに独立してしまい、ますます訓練の機会を逸してしまうことなどが指摘されています。

もう1つは、特に3DCGなどのデジタル技術の担い手の層の薄さです。その分野では中国等が先行し、日本企業が技術力が足らずに下請けに入れないケースすら生じていると言います。

こうした状況から、これまで東京一極集中であったアニメ企業が、人材獲得を図るため、動画や原画等の作画部門を地方に拡大する動きが活発化し、コンテンツ系大学の多い京都にも近年5、6社が新たにスタジオを構えられました。

そこで本府では、そうしたアニメーター(動画マン、原画マン)の実力向上を図るため、アニメ企業どうし、さらには産学公連携によるワークショップ「アニメーターズキャンプ」を開始し、初年度の2020年度は、6企業が横断的に指導役になって、学生がデザインしたアニメキャラクターを用いて、6名のアニメーターが一連のアニメ制作全般を体験し一本のフルアニメを制作しました。2021年度は、3DCG技術の習得等を予定しています。

クロスメディア・コンテンツのまち

京都には、以上の、映画・映像、ゲーム・XR、アニメなどのコンテンツ企業、彼らがこれまで蓄積してきた深いノウハウ、そして約9,000名のコンテンツ学部学生といった人材が存在しています。

コンテンツ企業の事業支援・異分野展開や学生の地元就職等を支援するため、2014年に「KCC(京都クロスメディアクリエイティブセンター)」、2016年にはその後継の「KCROP(京都クロスメディア推進拠点)(外部リンク)」を開設・運営してまいりました。KCROPにおいては、2020年度まで370以上の雇用を創出し、延580以上の企業の伴走支援を行ってまいりました。

しかし、ネット配信をはじめコロナで加速する構造転換に伴う従来型コンテンツ市場の飽和、制作スピード(生産性)や3DCG技術に優れる新興国等との競争激化など、状況は厳しさを増しています。このように、世界を視野に入れた付加価値の高いコンテンツを生み出せる産業への転換が急務となっており、京都が蓄積してきたクリエイティブな精神・ノウハウと、最新技術の融合による「クロスメディア・イノベーション」を生み出せる仕組みづくり(蓄積のアーカイブや人材育成)が今後の課題です。

施策例

地域

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京都市・中部

北部

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