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リジェネフロ株式会社(京都企業紹介)

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ヒトiPS腎臓細胞で腎臓の再生を目指す リジェネフロ株式会社

(掲載日:令和5年9月8日 聞き手・文 ものづくり振興課 石飛)

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リジェネフロ社の基盤技術
「リジェネフロ社の基盤技術」

透析に代わる治療法を確立し、腎臓病で苦しむ人を助けたい

iPS由来の腎臓細胞による細胞療法を開発している京大発ベンチャーリジェネフロ株式会社(外部リンク)(京都市左京区)の森中CEO、山口CFOにお話を伺いました。

まずは、貴社の概要を教えてください。

森中)私たちの最高科学顧問である長船(京都大学iPS細胞研究所教授)らの知見をもとに、ヒト由来のiPS細胞から腎臓のもとになる「ネフロン前駆細胞」を効率よく作製し、移植するといった細胞療法の実用化などに力を注いでいます。この細胞には腎臓を保護する働きなどがあり、マウスの腎臓皮下に投与すると、腎臓の機能低下を抑えられるということが分かっています。

この事業に取り組むことになった背景を教えてください。

森中)日本では成人の約7人に1人がかかり、「新たな国民病」とも呼ばれている慢性腎臓病(CKD)の患者数は1,300万人超、有効な治療法がなく透析療法を受ける慢性腎不全の患者数は約34万人もいます。
これらは合併症による死亡者数の増加や患者の生活の質の低下に繋がるなど、深刻な問題となっています。

また、唯一の根治療法である腎移植は深刻なドナー不足です。さらに、透析医療費は年間1兆5,000億円超と全医療費の約5%を占め、医療経済的にも問題です。透析に代わる治療法を確立し、透析に移行する患者を減らすことができれば、こういった課題を解決できると考えております。

新たな移植用腎臓の作製から治療薬の開発まで

具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

山口)1つは、細胞療法です。腎臓が悪化してきており、今後、透析治療が必要になりそうな患者向けにネフロン前駆細胞を移植することで透析治療に至る期間を延長できると考えています。他の臓器と異なり、腎臓は傷つくと自ら再生する能力がないため、腎臓の機能低下を抑制することにも大きな意義があります。

さらにはネフロン前駆細胞を活用した腎臓の再構築(新たな移植用腎臓の製造)にも取り組んでいます。腎臓が相当悪化してしまい、既に透析治療を行っている患者向けにヒトの腎移植に代わる根治療法として人工的に製造した臓器を移植することを将来的に目指しています。

もう一つは、遺伝性の希少疾患の治療にむけた、治療薬の探索および開発です。私たちは患者由来のiPS細胞から腎臓の細胞を作成し、患者の腎臓で起こっている病状を試験管の中で再現できます。腎臓病には遺伝性で起こる希少疾患がいくつかあり既存薬では問題があるものも多いため、より有効な治療薬の開発を目指しています。

細胞療法の実用化については数年単位で時間がかかるとのことですが、社会的意義が極めて大きいですね。細胞療法は、1回投与すれば透析への移行がずっと抑制できるのでしょうか。また、通院負担があるだけでなく、年間約400万円かかる透析治療(週2~3回要通院/1回あたり5時間)より経済的なのでしょうか。

森中)1回投与すれば、少なくとも数年は透析への移行を抑制できると想定しています。弊社の細胞療法は一般的な細胞療法と比較してコストを低く提供できるため、透析療法よりも医療経済的な負担を大きく和らげることが期待されます。

さらには新たな移植用腎臓の製造にも取り組んでいます。これが成功すれば、透析療法そのものが要らない世界が実現します。

そのほか、この中であれば、治療薬探索は実用化が比較的早いのでしょうか。ヒトの実態に近い腎臓モデルがあれば、創薬開発に大いに活用できそうですね。

山口)そうです。ある1つの疾患に関しては、既に飲み薬の候補物質を発見済みで臨床試験を計画中です。臨床試験でヒトでの効果を確認できれば製薬会社にライセンスでき、患者に薬を届ける確実性が高まるとともに、私たちの事業の蓋然性も高まります。これまで他社の候補物質はマウスでの実験では有効性が見えていたのですが、臨床試験では失敗してしまったものばかりです。それはマウスとヒトでは種差が大きいため、マウス実験で有効だったからといって患者でも有効とは限らないからです。しかし私たちの候補物質は患者の病状を再現したモデルで評価しているため、臨床試験でも有効性を確認できる確率は高いのではないかと期待しています。

凄いですね。貴社は、iPS研究が進んだ先にどのような未来を想像されていますか。

森中)人類がヒトという種としての限界を越えて活躍できる世界でしょうか?ヒトの老化は避けられませんので、私たちのそれぞれの臓器も機能が低下していくことは避けられません。しかしiPS細胞の研究が進み、あらゆる臓器を自由自在に作成、移植することができるようになれば、それこそ自動車やPCのパーツのように臓器を交換して健康を維持するという未来も実現できるかもしれません。私たちは腎臓だけでなく、膵臓、肝臓にも取り組んでいますので、この未来を実現する一助になれると思います。

京大長船研究室と連携し、外部から専門人材も揃える

面白い未来ですね。ここで、あらためて貴社の強みを教えていただけますでしょうか。

山口)医薬品の開発には、基礎研究だけでなく、臨床開発や製造、薬事、事業開発、ファイナンスなど、様々な専門性が求められます。私たちにはそれぞれの専門性について豊富な経験を誇る人材が揃っておりますので、事業を確実に進めることができます。また、創業科学者の長船の研究室とも密に連携し、二人三脚で事業を進めていけていることも強みでしょう。

事業を行う上での課題、実現に向けて

今後事業を進めていく上で、どのような課題を感じてらっしゃるでしょうか。

森中)課題となると海外展開でしょうか。医薬品は文化による差がなくグローバルに展開しやすい製品です。製薬企業へのライセンスにしろ、資金調達にしろ、日本の市場が縮小する中、あらゆる創薬ベンチャーが海外に挑戦することは避けられません。日本だけでなくグローバルにパートナーを探索し、究極的にはパートナーに頼らずとも海外に展開できるよう会社を成長させていければと思います。そのためにはグローバルに活躍できる人材の獲得が必要不可欠です。

最後に今後の展望をお聞かせください。

森中)まずは慢性腎臓病(CKD)の細胞療法と、腎臓の遺伝性の希少疾患の治療薬を患者に一刻も早く届けることに注力します。その後、次世代の細胞療法や移植用腎臓の作成など、継続的に事業を成長させていければと思います。支援いただいた補助金なども活用し、これらの事業の実用化まで引き続き頑張ります。


森中CEOは、2023年7月付で代表取締役に就任したとのことで、ますます貴社の事業は加速しそうですね。
今後の展開が楽しみです!当社の技術、事業の詳細に興味がある方はリジェネフロ株式会社(外部リンク)まで

リジェネフロ写真
(左から聞き手石飛、森中CEO、山口CFO)
インタビューに快く応じていただき、写真までご一緒させていただきました。

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商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

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