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株式会社トダコーポレーション(京都企業紹介)

事業承継インタビュー

(掲載日:平成31年4月15日、聞き手・文:ものづくり振興課 長谷川)

 株式会社トダコーポレーション(外部リンク)(京都市南区)の戸田正和会長にお話をお伺いしました。

事業承継は、社長の決断次第。私は譲ったら口出しはしなかった。

 -株式会社トダコーポレーションの事業内容を教えてください。

戸田会長)弊社は昭和10年創業の貼箱専業のメーカーです。売上の概ね3分の2が貼箱、3分の1が桐箱で、仕事は顧客からの紹介や自社ホームページ経由のものが大半です。貼箱とは、板紙製の紙器(紙箱)の表面にデザインされた薄紙を貼って美しく加工した化粧箱のことです。高級な贈答品の容器として用いられ、宝石、時計、文房具、化粧品、酒類、菓子類など様々な分野で容器として用いられています。元々は伝統産業の手工芸で1つ1つ手作業にて製作されていましたが、現在では機械技術の進歩により量産が可能になりました。人件費の高くなっている中国では製造工程の機械化が進み、国内以上に生産性向上が図られています。桐箱は年100万個を扱い、国内でもトップレベルの取扱量を誇っています。売上は約5億円、従業員は20名でそのうち9人が中国からの技能実習生です。

 戸田会長

 

 -会長が社長に就任した時のことを教えてください。

戸田会長)私が社長に就任したのは昭和63年で突然のことでした。父親が創業した会社ですが、継ぐという意思はなく、父親からも会社を継いで欲しいという話は聞いたことがありませんでした。大学を卒業したあとは服飾関係の会社に就職しました。

その後、昭和54年に株式会社戸田製作所に入社しました。昭和61年に創業者である父親の弟が会社を継ぎましたが、2年程あとに病気で他界。私が急遽社長にならざるを得ない状況になったのです。

 -突然の社長就任だったのですね。ご苦労があったと思いますが、社長としてどのような事業に取り組みましたか。

戸田会長)昭和63年に社長に就任し、平成元年に社名を株式会社トダコーポレーションに変更しました。事業としては骨董品や高級品の入れ物として使用される桐箱に目をつけました。桐箱は、当時、中国から桐材を輸入し、国内で製品に組み立てている時代でした。そこで、平成2年に全国に先駆け、中国の現地で桐材を仕入れて、現地で組み立て、出来上がった製品を国内に輸入するという取り組みを始めました。

桐箱

 

 -業界に先んじて約30年前から中国で事業に取り組まれていたのですね。創業当時からこの場所で事業をされてきたのですか。

戸田会長)社長就任後は順調にいっていましたが、バブル崩壊後はその影響が大きく、負債が大幅に増えました。複数あった工場の閉鎖、売却を実施。平成11年に会社を一旦清算し、60人いた従業員が15人になりました。

貸工場から事業を再開しましたが、今の本社・工場は、10年前に同業者の移転に伴いその物件を購入したものです。借金しての購入が決断できたのは、会社に息子が入ってきたからです。

 -息子さんには会社を引き継ぐつもりでしたか。

戸田会長)息子に引き継ぐつもりではありませんでした。会社を大きくする思いはなく、社員が定年になるまで継続したらいいかなと考えていました。息子は大学卒業後に呉服屋へ就職しました。しかし、その会社が息子の入社後1年ほどで倒産してしまった。そのことがきっかけで平成18年に息子が入社してきました。

 -平成23年に息子さんが社長に就任されました。

戸田会長)息子もまだ引き継ぐのは早いと思っていたようです。ただ、私も突然社長を引き継いだ経験があったので、自分が生きているうちに譲った方がいいと思っていました。息子は入社後3、4年経験を積んだら、自分の思いや要望を伝えてきましたが、私の考えや意見と異なりよく喧嘩していました。そんな出来事も息子に譲ろうかと思ったきっかけです。社長になれば自分の考えどおりのことができます。

 -なかなか社長の座を息子に譲れないという話を聞きますが。

戸田会長)事業承継は、社長の決断次第だと考えます。事業承継をどのように進めるかは、同業者の社長同士の話題にも上がりました。私は、業界組合の理事長を務めていることもあり、率先して57歳の時に事業承継を進めました。そのあと組合員6社ほど事業承継による社長の交代が続きました。

儲かっている会社や成功体験を持つ創業社長は、後継者に社長を譲った後も権限を持っていることが多いですが、私は譲ったら口出しはしなかった。息子に任せます。息子は、営業や製造部門で経験を積み、銀行と話ができるのに7年くらいかかっています。お金のことを教えて欲しいと本人から言ってきました。

 社長を交代したので、社長業に費やしていた時間がなくなり、たくさん自分の時間ができました。その時間は、組合理事長として業界の最新動向や補助金などの情報収集のために説明会へ参加するなど、業界のために活動できる時間が増えました。また、社長をしていた時は週末にしか中国に行けませんでしたが、平日にも行けるようになりました。事業承継を行うことで、むしろ新しいことを始められると思います。

貼箱

 -最後に貴社の今後についてお聞かせください。

戸田会長)今後のことは息子である社長に任せています。若い世代も賢いです。若い連中同士が集まり、そこで決めたことは間違いないと思っています。

 今後の展開が大変楽しみです!

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