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知の京都- 山口太郎さん(京都大学医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特定助教)

産学公連携、産業振興の一環として、京の研究者・専門家の皆さんを紹介するページです。

知の京都 京都府の産業支援情報

INNOVATION HUB KYOTOの医療機器開発、人材育成支援

(掲載日:平成30年7月24日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

写真:山口太郎さん

 京都大学医学研究科「医学領域」産学連携推進機構(KUMBL)特定助教の山口太郎さんにお話をおうかがいしました。

KUMBL

―赤いシャツを着てサムズアップして、かなりノリノリな写真ですね(笑)

山口) すみません、最近写真を撮る機会がなくて、直近の写真がHiDEPの懇親会で撮ったこの写真だけだったので。まあまあお酒が入ってます(笑)

―京都大学さんは、さすが様々な組織や施設をお持ちなのですが、素人なもので大変恐縮ですが、医学研究科「医学領域」産学連携推進機構というのは何ですか?KUMBLの読みは、クンバル?

山口) カンバルです(笑)。本研究科の重要なミッションのひとつに、その研究成果を広く社会に還元し多くの疾病の克服につなげることによって、国民の健康と福祉の向上に貢献することがあります。この使命の達成に向け、2002年に(社)芝蘭会の協力を得て産学連携オフィスを設立、その後2004年の国立大学法人化を機にこれをさらに発展させ、京都大学産官学連携本部と協調して、この「医学領域」産学連携推進機構を立ち上げたと聞いています。MTA契約・技術移転などのリエゾン活動、事業化を支援するインキュベーション活動、知財の管理と教育など、活動内容は非常に広汎にわたり、積極的な産学連携活動を展開しています。

―カンバルですね、失礼しました。「頑張る」で覚えておきます、なんてこと言っていたら怒られますかね(笑)。要するに、医学と薬学に関する産学連携というところでしょうか?

山口) 例えば、工学であっても、メディカルデバイス等は関係してきますし、広く医学領域に関連すること全般といったところですね。

―企業さんがそうした分野で何か連携したいという場合、相談に乗ってもらえると?

山口) そうですね。何がしか具体的に、アイデアや計画をお持ちで、こういった分野の先生と連携ができないかといったご相談であれば、ぜひ。

INNOVATION HUB KYOTO

―具体的に「頑張る」計画を持った企業さんなら、といったところですかね(笑)。さて、このKUMBLで「INNOVATION HUB KYOTO」の運営もなさっていますね。

山口) はい、イノベーションハブ京都は2017年に開所したものでして、異分野のスペシャリストたちの交流から生まれたメディカルバイオ分野のイノベーションを基に、ベンチャーを創出・育成するためのインキュベーション施設です。この建物は医薬系総合研究棟という名称で、地上5階、地下2階の建物です。1、2階は薬学研究科が管理をしており、3階から上を医学研究科が管理しています。3、4階がイノベーションハブ京都になり、ありがたいことに現在、ほぼ満室です。

―インキュベーション施設は、世の中にたくさんあるわけですが、こちらはどういった特長があるのですか?

山口) 前提として、本学の研究成果に基づくベンチャー、本学と共同研究を実施しているベンチャー等が入居対象となっております。特徴の1つ目は、バイオセーフティレベルP2の実験設備を完備していること。

―なるほど。

山口) 2点目として、地下1階、2階に動物実験施設を有しており、入居企業が利用できます。

―いいですね!この分野は、基礎研究から人への臨床試験の間に、動物を用いた非臨床試験が必要ですものね。

山口) 3つ目として、5階には「医学研究支援センター」があります。DNAシークエンス解析室、ドラッグディスカバリーセンター、質量分析室、蛍光生体イメージング室、マウス行動解析室、小動物MRI室、合成展開支援室などがあり、医学研究を支援するための高度な解析機器等を有しています。入居企業は、それらの機器を利用することができます。3階にも医学研究支援センターの分室があり、そちらにも解析機器等を設置しています。

 

成長ステージに合わせた種々のラボ

―素晴らしい。

山口) そして4点目として、成長ステージに合わせた種々のラボを用意しているということです。まず「スタートアップ・オフィス」は、起業を考えている研究者、あるいは立ち上がったばかりのベンチャーを対象としており、入居者にはフリーアドレスのデスクを1つずつ貸し出します。賃料は月1万円で、登記も可能です。

―そうなのですね。

山口) 次に、「インキュベーション コアラボ」。こちらがイノベーションハブ京都内で最も特徴的なラボになります。こちらも起業を目指す研究者、あるいは立ち上がったばかりのベンチャーを対象にしていますが、ウェットの実験が可能です。お貸しするのはベンチひとつですが、ラボ内には生物学実験を行う上で必要な標準的な実験設備を備えておりますので、十分な資金や設備を保持していなくても、入居後迅速に実験に取り掛かることができます。バイオベンチャー立ち上げのハードルの1つとして、初期費用の大きさが挙げられますが、このラボによってそのハードルを下げることができます。

―ベンチひとつを利用できると。

山口) ただ、オープンラボでは入居者同士、互いにどんな実験をしているかが見えますので、情報漏洩を心配してか、このラボだけは、まだ入居者が少ない状況です。しかし、このようなスタイルのラボは、ボストンのLabCentralに既にあり、他社同士がオープンな環境で実験することで、交流を通して新しい発想が生まれたり、課題が解決されたりと良い結果につながっています。このLabCentralでも、最初はなかなか入居者が見つからなかったとスタッフの方が仰っていましたので、弊所においても地道にリクルーティング活動を継続していけば徐々に入居者が増えていくのではと思います。ここの賃料は光熱費・機器利用料込で1ベンチ、月25万円です。

―なるほど。

山口) このコアラボで、POCをとっていただき、VCからの出資や補助金などから資金調達に成功すれば、「アントレプレナー・ラボ」に移っていただき、更なる成長を目指していただきます。こちらは月2,500円/平方メートルです。

―私の知っている企業様もたくさん入居されています。

山口) また、ベンチャーや研究者ではなく、国内外製薬企業、医療機器メーカー等、既存の大企業向けに「アライアンス・ラボ」も、月4,000円/㎡でご提供しています。京都大学内の情報収集や、京都大学、入居ベンチャーとの共同研究のための拠点としてご活用いただき、将来を見据えた投資先の検討等が期待できます。

医療機器開発に向けた人材育成プログラム「HiDEP

―また、様々なソフト支援活動も実施されていますね。

山口) 我々のネットワークを駆使して、入居企業を弁護士等の外部専門家や本学の研究者と繋げるといった個別支援はもちろんのこと、イノベーションの種を作るための異分野スペシャリストを招いての交流会も、月1回のペースで実施しています。交流会のコンテンツはバラエティに富んでおり、特許庁の方など専門家によるセミナーや起業家にご講演いただくこともあります。スウェーデンのベンチャーに3Dバイオプリンターのデモをしていただいたこともありました。

―かなりの頻度ですね。ところで「HiDEP」というのは何ですか?これは、ハイデップですね?!

山口) そうです(笑)。これは、「Healthcare Innovation Design Entrepreneurship Program(医療ヘルスケア・イノベーション起業家人材育成プログラム)」の略で、約6か月間に亘る広く医療機器領域における「起業家人材育成」のプログラムです。私が企画し、昨年からスタートしました。ねらいは起業家人材の育成だけでなく、「医療機器の創出」、さらには「イノベーションエコシステムの創出」も目指しています。京都大学と言うと、医薬品、再生医療が中心のイメージがあるかと思いますが、医療機器開発にも力を入れていこうということです。実際、医療機器開発に関心をお持ちの先生方が増えてきていますし、また医療機器領域でデジタルヘルスや医薬品と医療機器のコンビネーションなど新しい医療機器も生まれてきており、今後ますます研究開発が活発になると思います。

フローチャート:講義→実践→事業化

―具体的にはどんなことをするのですか?

山口) まず、薬機法や医療関係、経営学関係など医療機器開発に必要な幅広い関連分野の講義ですね。各分野の第一線でご活躍されておられる先生方に出講いただいています。また、学内だけでなく、例えば先日はJohnson & Johnson Institute(東京サイエンスセンター)を見学させていただくなど、通常では見ることができない民間企業の施設や、研究開発の最前線でのお話を伺う機会も提供しています。

 

―素晴らしい。

山口) 次に、実際の医療現場の見学です。肝胆膵・移植外科手術や整形外科手術の現場をはじめ、循環器内科、放射線部など様々な診療科の手術・手技を見学させていただきます。見学対象は本学医学部附属病院だけでなく、滋賀医科大学医学部附属病院や武田総合病院と、他病院の臨床現場も見学させていただきますし、クリニックも見学します。大学病院とはまた異なった臨床ニーズをお持ちですからね。さらには、病院だけでなく、今後ますます重要なターゲットになる高齢者福祉施設も見学します。

 

―すごいですね。

山口) こうした実際の臨床現場の様々なニーズをくみ取っていただき、その中から最終的に一つに絞り込んで、新しい医療機器開発に繋げていっていただこうというものです。手前味噌ですが、メンターも大変充実しており、いずれの先生方も医療機器開発、プロトタイピング、経営など様々な分野のトップランナー方々です。

―受講料は、かなりのものなのでしょうね・・・。

山口) 今年度は30万円です。

―えーーー! 安過ぎません?! 数百万円でもおかしくないようにも思いますけれど・・・。

山口) プログラム立ち上げの際、価格設定について検討する時間が十分に取れず、えいやで決めてしまった部分があります。来年度以降は、時間をかけて検討し、訂正価格をつけようと思います(笑) まだ始めたばかりで認知度が低いので、多くの皆さんに知っていただき、ぜひ参加いただきたいです。

―今、どんな方が受講されているのですか?

山口) 本学大学院生、研究者を始め、製薬メーカー、機器メーカー、材料メーカー、金融機関、保険会社、住宅メーカーなど様々です。チームアップは、スタンフォード大学の「BioDesign」を参考にして、可能な限り医学系、経営系、工学系、事業創出経験者で1チームになるようにしています。

医療機器の破壊的イノベーションへ

―これは、本当におススメですね。ところで、山口先生のご専門は何でらっしゃいますか?

山口) えっ、私の話ですか?

―大学の中にいらっしゃる様々なセクション、様々な立場の方が、どういった想いで、どういったことをなさっているのか、それも大変参考になるので、ぜひ教えていただきたいのです。

山口) 専門と呼べるほどのレベルではありませんが、大学院では工学、経営学、社会健康医学の修士号を取りました。略歴をお話しますと、最初は工学部、工学研究科で応用物理を学び、卒業後は大手電機メーカーの知財部門で特許の権利化やライセンス業務を担当していました。その間に経営大学院で経営学の修士号を取りました。ただ、実は小学校3年生の時に難病を発症しており、社会人になってから病状が悪化し、2年間休職しなければならなくなりました。

―そうでらっしゃったのですね。いつも大変フランクでらっしゃるので、全然想像もつきませんでした。

山口) そうですね、キャラが軽いので、なんの苦労も知らずにのほほんと育ってきたと思われることが多いです(笑)。休職中、誇張では無く、かなり危険な状態まで陥ったのですが、お陰様で多くの方々に助けていただき、社会復帰できました。復職はしたものの、小さい頃から難病に苦しんできましたし、せっかく生き延びることができたので、なにかしら少しでも医療の発展に貢献できればと思い、会社を辞めて、京都大学の医学研究科に入り直しました。今の上司の寺西先生にはその時からお世話になっています。ここで社会健康医学修士を取得し、卒業後は京都大学に残り、バイオベンチャー創出の支援や、起業家育成プログラムなどを担当し、現在に至っています。

―工学、経営学、医学ですか・・・。普通そんなに勉強しようと思わないのですけど、勉強は小さい頃から得意だったのですか?

山口) 得意ではありませんが、必要に迫られてというかその時々の興味の赴くままにといった感じです。新しい世界を知るという楽しさはありましたね。

―工学、経営学、医学・・・、先ほど仰っていましたスタンフォードの「BioDesign」の4名は、たしか、工学、医学、経営、起業経験者でしたね。前半の3人分を1人でできますやん!

山口) レベルが雲泥の差です(笑)少なくとも博士レベルでなければ、専門とは言えません。

―では、最後に、HiDEPなどのお取り組みについて、課題や今後の展望など、お聞かせいただけませんか?

山口) あくまで私個人の考えですが、HiDEPに関する課題としては、まず臨床現場の真のニーズをどうやって掘り起こすかということですね。どうしても表面的なニーズ、一部の医療従事者だけのニーズに終始してしまい、上市しても全く利用してもらえないという事例がたくさんあります。経営学でよく出される、セオドア・レビットの「ドリルと穴」の話ですね。また、真のニーズを掘り起こせたとしても、既存のソリューションの延長ではなく、いわゆる破壊的イノベーションをどうすれば創出できるかという課題があります。こちらの例としてよく挙げられるのは、フォードの「車と馬」の話です。現在、当たり前のようにメスを使って治療している疾患が、全く別のアプローチで非侵襲に治療できる可能性もあるわけです。これらの課題は一朝一夕に解決できるものではありませんので、プログラムを継続し改善を重ねながら、その方法を探索していきたいと思います。

―なるほど。

山口) INNOVATION HUB KYOTOに関しては、昨年開所したばかりで運営がまだまだ手探り状態ですので、入居企業が何を求めているのか、ベンチャーの成長を促進するには何が必要かといったところを把握し、ソフト面、ハード面、両面での充実を図っていきたいと思います。また、1つのインキュベーション施設だけではリソース等の関係で、ベンチャーに対して十分な支援ができない部分もありますので、例えば他のインキュベーション施設と、各々の特徴を活かした連携を進めていくことも必要だと思います。以上のような取り組みを積み重ねながら、京都大学の研究成果を事業化に結び付け、医療領域におけるイノベーションの創出、医療の発展を促進して参ります。

 

京都のベンチャー企業、中小企業のみなさま、ぜひINNOVATION HUB KYOTOHiDEPを、一度ご検討されてはいかがでしょうか。

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp

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