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青年海外緑と文化の大使レポート(ネパール)

藤井 美和子 平成24年度3次隊(職種:村落開発普及員)

 京都府民の皆様、こんにちは。

 この1~2か月、ここネパールでも朝晩はとても冷える日々が続いておりました。暖房器具があまり普及しておらず、さらに日光が入らない家の中はとても冷えます。体の芯から冷える寒さが、京都の底冷えを思い出させます。そんな寒い季節も、少しずつ和らいで来た今日この頃です。

 さて、赴任後1年を迎えた今回は、自らの活動内容と、村の女性たちの生活に焦点を当ててリポートさせて頂こうと思います。

1.活動内容について

 私の職種は「村落開発普及員=Rural Community Development (現コミュニティ開発)」です。「村落開発普及員」は、特定の技術を用いて行う仕事ではありませんが、人と人との間に入り、人と人との間を繋ぎ、村落に住まう人たちが置かれている状況を察知し、必要とされている課題に取り組み、今よりも良い状況を作る…という事が求められている仕事です。 

 

 配属先である郡の土壌保全事務所は、郡内全村の河川流域における自然資源の管理や、土壌の保全活動を主な事業としています。森林系、農業系、灌漑系などをバックグラウンドに持つ技術者4名を中心とした、こぢんまりとしたオフィスです。この事業内容と、村落開発普及員としての活動をリンクさせ進めて行く際に、初めは繋がりを持たせられず、自らの活動内容を確定するまでは大変遠い道のりとなりました。

 しかしシンプルに考えてみると、事務所の事業内容は技術面中心であっても、我々が「お客様」として関わるのは土壌保全に関する何らかの問題を抱えた”コミュニティ″であり、”そこに住まう人たち″です。土壌保全に関する技術面の問題が解決されたとしても、その過程はどうだったのか(女性や低カーストとされる人たち、社会的弱者とされる人たちはコミュニティの運営に自らの声を届け参加できているのか?) 、またその後の変化(技術面が解決された事によって、コミュニティがどう変化していくのか?)という事にも目を向ける必要があります。この課題こそが、村落開発普及員として、この事務所に派遣された自らが取り組む課題であると認識するに至りました。そして現在、河川流域村の一つであるB村の2区に対象を絞り、先述の課題に挑戦しております。具体的には下記の様な活動に取り組んでおります。

1. 事務所(郡レベル)と村(村落レベル)のネットワーク強化支援

 こちらに来て、自らのコミュニティに何か問題が起こっても、その解決方法が分からず、結局解決に至らない、という状況を良く見聞きします。土壌保全に関して述べると、土壌保全事務所で解決できる問題であっても、

(1)土壌保全事務所の存在が村落部にて認知されていない。

(2)土壌保全事務所の存在は知っていても、サポートを依頼できるというサービスを知らない。

(3)サービスは知っていても、その申請方法がわからない。

などの問題で、コミュニティの問題を「解決したい」という意思があっても、声を挙げられない、又、事務所側も拾い切れていないのでは、という状況があります。又、申請過程に於いては、申請者である彼らが、村から何日もかけて事務所に赴く場合もあります。(バス通りまで出るのに徒歩数時間、バイクがあってもガソリン代も貴重な収入からの捻出です) この様な状況の中、申請書類の不備などの理由で、再び数日かけて村に戻り、再度事務所へ来なければならないといった状況も起こっています。

 これは、前もって彼らに情報があれば改善できる事。そこで、カウンターパートと共に、土壌保全事務所のサービス紹介、そして依頼の申請手順を例文つきで説明したパンフレットの作成に取り掛かりました。これまでの様な無駄な負担を削減し、スムーズに問題解決に踏み出せる事を目的に、現在手作り版ではありますが、対象村9区にて配布、反応を確認後、改善し郡内全41村にて配布、活用して貰う事を目標としています。

申請手順に目を通す男性
・申請手順に目を通す男性

パンフレット記載希望内容ヒアリング

・パンフレット記載希望内容ヒアリング 

2.行政アプローチ実践を通したキャパシティ・ビルディング強化支援

 対象村には、急な斜面が多いが故、それまで敬遠されていた「収入向上としての農業の導入」を目指して、3年前に土壌保全事務所のサポートで作った灌漑用水路があります。しかしこの水路、様々な理由を背景とし、今まで一度も利用されていません。その理由の一つに、水路の一部崩壊・未完成という致命的な状況があります。村の人々の意見では、完成させて有効利用したいとの事。しかし3年間そのままになっていた状況に、意思はあっても行動は起こすには至っていないという事実を見ました。

 そこで、このコミュニティグループが再度「依頼申請⇒水路の完成⇒有効利用開始」そして、「持続して ″自分たちの水路″として管理して行く」ということを目標においた、一連のプロセスを歩むお手伝いをさせて頂く事になりました。

 これを達成することもですが、何よりも、そのプロセスを辿る過程を通した、コミュニティのキャパシティ・ビルディングを一番の目的としています。

 

・例えばミーティングにて出席を取る際、自分の名前を全員の前で言う事。私たちにとっては、こうした一見何てことないように思われる事も、(特に、男性優位が色濃く残る村落部の女性たちにとっては)続けることで「人前で話す」という自信へと繋がります。

・タマン族の多く住むこの地域の居住形態(一軒一軒は離れているが、同姓同士近くに住むなど近所同士の繋がりは強い)に注目し、連絡を連絡網の要領で人から人へと伝えるという取り組み。責任感と、「自分がいなくては次の人が困る」という自らの存在意義への気づきに繋げます。

・また、メンバーとの話し合いの中で、今後取り組むべき必要を感じているのが「会計の透明化」です。担当者以外から不満の声が出るほど、今まで曖昧になっていたというこのコミュニティグループの会計。公なお金の動き、バジェットがある以上、一体何にいくら使われたのか、内訳はどうなっているのかという事実を、担当者に留まらず、グループ全体で周知する透明性が必要です。その為、公開報告会を開くことを目標に、万人に見せても恥ずかしくない会計を目指そう、と働きかけています。

 このアイデアをくれたのは、「私は読み書きも出来ないけれど*、自分のグループのお金がどうなっているのかくらい知る権利があると思う。」と言ったメンバーである一人の女性でした。

*B村対象地域の識字率は、男性32%、女性18%。
(村落開発委員会=VDC=Village Development Committee調べ )

 

ソーシャルマップにて自分の家を探す女性
・ソーシャルマップにて自分の家を探す女性

水路が完成したら何が変わるのか、完成のその先をイメージ

・水路が完成したら何か変わるのか、完成のその先をイメージする

 とはいえ、全てが目指すように進んでいく事は、まずありません。正解が無いだけに本当に悩みは尽きませんが、時間はかかっても、強引に彼らを巻き込むのではなく、彼らの文化的・社会的背景に沿ったやり方で、影からサポートできるように、少しでも前に進んで行けたらと思います。 

2.村の女性たちの生活

 今回、私の活動しているB村に暮らす女性、Nさんのとある一日に密着してみました。

Nさんのとある一日

 いつも何気なく「薪刈って来たよ」「畑仕事して来たよ」と言ってミーティングに現れる彼女たちですが、密着してみると、一つ一つの仕事はとても重労働。例えば、薪を背負っている写真にもある「ドコ」と呼ばれるしょい籠は、簡単に見えてとても大変。(情けないことに、私はキャベツ一つしか入れていないドコでバランスを失ってしまいました。) 彼女たちに尊敬の念を抱かずにはいられません。

 さて、この村には約7年前にやっと電気が来るようになったそうです。Nさんも夜家族に電話していますが、携帯電話も今では村中のほとんどの人が通信手段として持つほどに普及しています。しかし、それまでは遠方に連絡が必要な場合、最寄の町(歩いて4時間)まで、電話通信サービスを受けに行っていたとの事でした。

 Nさんの例は全ての人に当てはまる訳ではありませんが、多くの女性がNさんのようなリズムで生活を営んでいます。

お問い合わせ

健康福祉部こども・青少年総合対策室(青少年係)

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

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kodomo@pref.kyoto.lg.jp