4 トリガイ養殖の問題点
トリガイ養殖において、これまで養殖マニュアルどおりの作業を実施していても色々な問題点が出てきています。それらを解決するために海洋センターでは様々な試験を実施し、対応策等を調べています。十分な対応策がまだ明らかになっていないものもありますが、それらの中から2つの事例を紹介します。
(1)靱帯損傷と変形貝・矮小貝の出現
殻長3〜4cm程度のトリガイの靱帯(殻と殻との繋ぎ目で蝶番になった部位)に、人為的に傷をつけて養殖すると、大きく傷つけた個体は変形貝になりました(写真21)。
写真21 左の2個体は変形貝、右は正常貝
靱帯損傷個体の出現状況を詳しく調べたところ、養殖開始2〜3カ月後の9〜10月頃から靱帯損傷個体が増加し始め(図3)、その中でも大きく傷ついた個体は変形貝や矮小貝となることが分かりました。しかし、靱帯損傷個体が養殖貝全体に占める割合は年変動が多く、ほとんど出現しない年も見られます。残念ながら現在のところ、どのような原因で靱帯が損傷するのかは分かっていません。ただし、通常の養殖作業による影響で靱帯が傷つくことはないようです。
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