天橋立の保全対策について
はじめに
- 特別名勝である天橋立は、「白砂青松」として日本三景の一つに数えられ、毎年全国各地から年間100万人を超える人々が訪れ、丹後地域の重要な観光資源となっています。
- その天橋立は平成19年8月3日に誕生した「丹後天橋立大江山国定公園」第1種特別地域に指定されており、国定公園利用拠点として総合的な整備を行う集団施設地区にも指定されています。
- 天橋立は白い砂と約5,000本の松でできており、その姿は「白砂青松」として古くから愛され、文人墨客により和歌や絵画により表現されてきました。
- 京都府としては、これまでから松枯れ対策を行い、海岸部分については港湾事業として砂州の侵食対策など天橋立の保全対策に取り組んできました。しかし、平成13年には176本の大規模な松枯れ被害に遭い、平成16年には台風23号により約200本の倒木被害を受けました。
- このような経緯を踏まえ、平成17年に松枯れ対策の継続と併せて松並木の適正な管理を検討する「天橋立公園の松並木と利用を考える会」を立ち上げ、専門家や地元メンバーを委員として4回にわたり検討を行いました。
- 天橋立公園の松並木と利用を考える会(公園緑地課)
松並木のあるべき姿とは
- 天橋立は「白砂青松」という形で千年以上も続いてきました。何故、続いてきたのでしょうか?
- その理由を考える中で松の特性、天橋立の現状等、天橋立の松を取り巻く環境について考えることが大切です。
松の特性は?
- 陽樹であり、陽光を好む
- 乾燥地、やせ地でも生育可能
- 肥沃地では広葉樹林へ遷移する
- 天然更新で繁殖できる
- キノコと共生し、菌根を形成する
松は海岸や山の尾根など土壌環境が優れているとは言えない場所で見られる事も多くあります。
逆に、土壌の富栄養化が進むと、広葉樹へと遷移が進行するため、松は生育しにくい状況となります。
植物群落の遷移(松は放置すると広葉樹へ植生遷移する)
天橋立の現状
- 土壌養分が良好な状態である
- 遷移が進んでいる
- 光環境の問題がある
- 地下水位の問題がある
- 現在の天橋立は腐植土により栄養過多の状態であり、松以外の植物が育ちやすい環境となっており、それは松自身にも影響しています。
- 天橋立は地下水位が高いため松は苦労せずに水が吸収できるので、根をあまり張らない状況にあるといえます。
- それに加えて、土壌養分がよくなっていることから根は余り育たないまま、幹だけが高く育ってしまい、バランスの悪い状態となっています。
- 平成16年の台風23号の際には、松が根から倒れる例が多く見られたのもこれらのことが影響していると考えられます。
下草の繁茂
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下草の繁茂している様子 |
光環境の悪い状態 |
台風による倒木被害の状況
なぜ天橋立の松並木が千年以上も存続してきたのでしょうか。
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昔は炊事や風呂に沸かす燃料として、松の枝や葉などを集めていました。そのことが松林を良い環境に保つことに繋がっていました。
地域による天橋立の保全活動
地域ボランティアによる取り組み
- 天橋立は日本を代表する景勝地であるとともに、ふるさとの財産として地域住民達によって愛され続けてきました。
- その地域住民中心としたボランティア団体の代表として「天橋立を守る会」があります。
- 天橋立を守る会は昭和40年1月に結成され、天橋立の景観を守るため日々活動されています。
- 主な活動として、天橋立の公園清掃や毎年恒例行事として「クリーンはしだて1人1坪大作戦」が取り組まれています。
- また、天橋立の環境をテーマとした啓蒙活動も実施されており、周辺地域の小・中学生を対象にした環境学習も実施されています。
台風以降のボランティアの取り組み
- 台風23号による約200本という倒木被害は、私達だけでなく、地域の人々やこれまでから天橋立に関わってきた人々にとっても大きな出来事でした。
- 被害直後、天橋立を心配して駆けつけた地域住民達は、その悲惨な松並木の状況を目の当たりにして「自分たちも天橋立を何とかしなければならない」と立ち上がりました。その思いが1つになり、有志による「天橋立名松リバース実行委員会」が設立しました。
- 「天橋立名松リバース実行委員会」は台風で倒木した松を地域活性化を目的とした再利用としてベンチやフラワーポットなどを作成したり、住民達への天橋立への意識を高めるために、フォーラムを開催するなど、台風以降の天橋立の復活を目指した取り組みが行われています。
- こうして、今も天橋立は私たち行政だけでなく、地域住民達によって守られているのです。
昔から今、そして未来へ
- 古代から現代まで受け継がれてきた天橋立の松並木とその周辺の景観は、絵画や詩の題材として扱われるなど、日本を代表する景勝地として多くの人々に親しまれるとともに、幾多の天橋立の切断危機を脱したように先人達によって永年の間守られてきたものであります。
- 私たちは、先人達が守り続けてきた、このかけがえのない財産を未来へと引き継いでいかなければなりません。
- このことを踏まえ、松並木のあるべき姿及びそれを実現するための取り組みを次のように進めます。
松の保護から松並木の適切な管理へ
このような現状から天橋立の松並木を適正な状態に戻して行くには、従来から行ってきた松枯れ対策などに加えて、新たに次のような作業が必要となります。
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引き続き実施する作業 |
新たに必要となる作業 |
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天橋立に必要な3つの管理
松並木の保全育成作業を進めていきためには、上記の「松林の管理」だけではなく、「砂州の管理」や「利用の管理」と連携しながら進めていくことが必要です。
松林の管理
- 松枯れ対策、松林保全対策
砂州の管理
- 突堤等の設置、サンドバイパス工
サンドバイパス工法のパンフレット(PDFファイル,1MB)
利用の管理
- 歩道整備による進入箇所の限定、ビジターコントロール
接続可能な管理の仕組みづくり
- 天橋立を適正な状態で維持していくためには、上記の3つの管理を持続的に進めていかなければなりません。
- そのためには、多くの人手と専門知識が必要であり、行政だけではなく地域や専門家など多くの人々に多様な立場から参画してもらえるような仕組みとして、その組織づくりを構築する必要があります。
- 私たちはそのための取り組みを進めていきます。
天橋立の価値付け
- 「天橋立をなぜ守るのか。そして、天橋立の何を守っていくのか。」
- 天橋立を保全するということは、天橋立が愛し、誇れる財産であるという思いから始まります。
- 天橋立に関わる全ての人々がこの思いを共有し、自分の言葉でその価値を語れるように、天橋立の価値付けと共有共感を図る取り組みを進めます。
府民との協働管理体制の構築
- 「白砂青松」である天橋立を未来へ継承する仕組みづくりを考える中で、これまでから関わりのあるボランティアや地域住民との協働体制を確立する必要があり、また、地域住民が関わることで天橋立を身近に感じてもらえ、価値の共有にも繋がります。
- これまでからの活動をベースとしてネットワーク化を図りつつ、多くの主体が関わる協同管理体制の構築に向けて取り組みを進めます。
情報と価値の発信による共感の環の構築
- 天橋立は国民の財産であることからその価値は広く国民が共有すべきものです。
- 天橋立に関心のある全国の人たちへ天橋立についての取り組みや情報を発信し、価値を共有するとともに、共感の環を広げます。
天橋立周辺環境の保全
- 天橋立の美しさは「天橋立十景」でも表されるように、様々な角度からその景観の美しさを楽しむことができます。それは周辺の山々、海、そして町並みとの一体となって表現されるものであるため、一体的に環境保全を考えなければなりません。
- 現在、天橋立周辺の町並みを検討する「天橋立周辺景観まちづくり検討会」や阿蘇海の浄化を考える「阿蘇海環境づくり協働会議」など、周辺環境保全についての取り組みが進められています。
- 私たちとしても、これらの取り組みと連携を進めることにより、天橋立の価値を更に高めていくことに努めます。
取り組み状況
府民との協働の場づくり
未来に継承していく仕組みづくりを検討し、骨格組織を設立することを目的に府民との協働の場としての地元既存活動団体、行政関係機関とで構成する「天橋立公園継承準備委員会」を設立しました。
新たな森林保全作業
下草(葛)除去作業、松葉拾い
- 松林に悪い影響を与えている下草の除去や土壌の富栄養化を防ぐために松葉も積極的に拾わなければなりません。
- 昨年度から地域住民やボランティアと協働で下草の除去や松葉拾いを始めています。
腐植土の除去の試験実施
- 天橋立の松並木の保全育成作業として、地面表層の腐食を除去する必要が明らかになったことから、腐植土の除去作業について準備を進めています。
- 腐植の除去は、松の生育環境に変化を与えるため、現在は本格実施の前に、試験実施を行っています。
当面3年間調査を実施し、最良の方法を見極めます。
- 天橋立公園内腐植土除去の試行について(平成18年11月14日)
地域やボランティアとの協働による管理作業の実施
新しい保全作業である葛の除去や松葉拾いだけでなく、漂着ゴミの除去を含め協働作業での取り組みについて、関係機関とも連携して実施しています。平成19年度は地域団体等ボランティアによる協働作業により約1600人の方の参加があり、引き続き多くの方々に協働した取り組みをしていただいています。
価値付けの取り組みを地域とともに実施
天橋立継承準備委員会の設立とともに、メンバーとなっている地域団体や関係機関との連携して価値付けの取り組みを進めています。
取り組み経過
平成20年度の取り組み
- 天橋立まなび舎塾の継続
- 天橋立冊子「天橋立を未来に引き継ぐために」の作成(平成20年7月28日公開)
- 天橋立まもり隊の活動推進
- 天橋立公園管理計画ワークショップの開催(第1回平成20年5月29日開催)
平成19年度の取り組み
平成18年度の取り組み
- 与謝野寛・晶子歌碑建立記念シンポジウム(平成18年7月7日)
- 松風景再生シンポジウム(平成18年11月12日)
- 宮津市立府中小学校「出前語らい」(平成18年11月28日)
- 天橋立公園における植樹式の実施について(平成18年12月13日)
- 宮津・与謝子ども環境フォーラムの開催について(平成19年1月21日)
シンポジウム(写真左)と植樹式(写真右)
今後の取り組み
天橋立公園継承準備委員会を運営しながら、次のような取り組みを進めます。
(1)未来へ継承する仕組みづくり
- 松並木の保全作業や価値付けの作業、情報発信などを地域やボランティアと協働実施していくことで、未来に継承する仕組みづくりを検討しながら骨格となる組織の設立を進めます。
(2)新たな松林保全作業や協働管理作業の推進
- 一部試行的に進めている新規作業の本格化や、協働作業のシステム化していくことにより、官民協働管理を進めます。
(3)天橋立の価値の発掘、共有、情報発信の推進。
- 天橋立の価値の共有共感を広めるため、まずは地域住民や子ども達を対象に学習会などの取り組みを進めます。
- また、より多くの人に天橋立の取り組みを知っていただくことで、価値を共有できるよう天橋立に関わるあらゆることへの情報発信を進めます。
(4)天橋立の利用に関する整備検討
- 天橋立の環境保全とバランスを保ちながら観光資源としての利用を図ります。
- その一つとして、現地においても天橋立についての情報提供が出来るよう、環境づくりとして拠点施設の整備なども進めます。
- 天橋立を利用される方にも私達の取り組みを知っていただき、理解を深めていただくことで価値を共有しながら、心地よく利用していただけるよう努めます。
世界遺産登録を目指して
- 白砂青松の天橋立の美しい景観について、文化遺産として価値を高め、未来へと継承する必要があります。
- 現在、天橋立とその周辺地域について、世界文化遺産としての登録に向けて、取り組みが進められています。
- 天橋立世界遺産登録に係る取り組みについて
お問い合わせ先
丹後土木事務所 管理室 ダイヤルイン電話 0772-22-3245
