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抹茶の原料となるてん茶の製造において、生葉(なまは)の状態に応じた製造条件の設定は、篤農家の経験に基づく「ノウハウ」であり、経験の浅い生産者がてん茶製造を行う際の障壁になっていました。
そこで当所では、簡易にてん茶生葉の繊維含有量を測定することで、生葉の状態に応じた製茶の条件をタブレット上に表示する製茶アシストツールを開発しました。
現在、農業改良普及センターと連携し、府内5か所のてん茶工場で繊維含有量の測定精度や製茶条件の確かさを確認する現地実証を行っています。
実証に協力いただいた生産者からは「機器とタブレットが有線で接続するため、両手が塞がり測定しづらい」など、改善意見をいただきました。今後は集まった意見を基に機器の改良を進め、経験の浅い生産者のてん茶製造を支援していきます。
機器が有線でつながるため生葉の測定がしづらい様子 |
収量性に優れる「宇治茶の新品種」は、府内の生産者や茶商工業者から常に求められています。そこで当所では、高品質高収量に加えて難防除害虫であるクワシロカイガラムシへの抵抗性を備えた品種の育成のため、宇治種※1とクワシロカイガラムシ抵抗性を有する品種を使った交雑育種を行っています。
今年度はクワシロカイガラムシ抵抗性を備え収量性に優れた7つの系統※2を一番茶製茶し、味や香りを調査したところ、品質、収量性ともに優れるものが2系統ありました。
今後は、この2系統を中心に、夏季の高温下でも順調に生育するかを確かめるため、葉焼けの発生状況、生育等の調査を進めます。
※1宇治種:宇治地方で古くから栽培されてきた在来種から選抜された品種のこと
※2系統:種子から育てた茶樹を挿し木で増殖したもので、品種候補となるもの
視覚と触覚等で茶の形状や色沢の官能検査をしているところ |
当所では、一般の方々に宇治茶の魅力を体感していただくために、毎年、施設公開を開催しています。
今年度は、八十八夜にあたる5月1日に開催したところ、約150名が来所されました。製茶工程や茶の審査法の紹介、研究成果の展示のほか、水出し玉露と煎茶の試飲会を実施し、茶種ごとの特徴や水出し茶の健康機能性について理解を深めてもらいました。
来場者からは、「説明が分かりやすく大変勉強になった」、「もっとお茶を飲みたくなった」、「水出し茶を作ってみようと思った」等の声がありました。
当所では、研究所ならではの情報発信を続け、宇治茶ファンの裾野を広げることで、茶業振興に貢献していきます。
一番茶製茶見学 |
研究成果パネルの展示 |
審査室見学 |
水出し玉露・煎茶試飲会 |
当所では、所内の定点茶園において、一番茶新芽の萌芽※・生育状況について調査を行い、府内生産者や茶業団体等に情報提供を行っています。
令和7年の1~2月の平均気温は平年並か平年より低く推移しましたが、3月は平年よりやや高く推移したことで、本年の一番茶萌芽宣言は平年並の4月4日となりました。
萌芽期以降は5日毎に、新芽の生育状況を調査し、一番茶生産に役立つ情報としてホームページ等で発表します。また、気象予報と合わせて葉期予測情報も掲載し適期作業を促しています。
※萌芽:新芽の長さが包葉(芽を包んでいた葉)の約2倍になった状態のこと
萌芽した茶の新芽 |
報道機関の取材を受ける研究員 |
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