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当所は、宇治茶生産の担い手を確保し、新規茶業経営者の育成を図るため、令和元年度に「宇治茶実践型学舎」を設立し、新規就農希望者の京都府内での就農を推進しています。
8月19日、当所において宇治茶実践型学舎5期生1名の入舎式が執り行われました。学舎生は非農家出身ですが、宇治茶の栽培や製造に強い関心と意欲を持っており、宣誓において茶業経営で生計を立てる決意を述べました。
今後学舎生は2年間のカリキュラムを通じて、茶の栽培や製造の実際と理論などについて研修を受けます。
当所では、学舎生のスムーズな就農に向けて、技術指導、座学による講義、現地実習の調整、就農地とのマッチングなどを行っていきます。
宣誓書を手渡す学舎生 |
煎茶の火入れ実習を受ける学舎生 |
京都府で6年ぶりの開催となる第77回関西茶業振興大会の最初の行事として、第77回関西茶品評会出品茶審査会が開催されました。本審査会は、茶の生産振興の一環として毎年開催されており、関西6府県から出品された茶の審査が行われました。
本年は、普通煎茶・深蒸し煎茶・かぶせ茶・玉露・てん茶の5茶種計342点の茶が出品されました。審査の結果、京都府の出品茶は深蒸し煎茶を除く4茶種で農林水産大臣賞を受賞しました。
当所は、審査員として厳正な審査を行うほか、審査運営を担当し、バーコードを活用した茶品評会記録集計システムを導入して審査記録作業の負担を軽減するなど、円滑な運営に努めました。
今後は、9月10日(水)にJA全農京都宇治茶流通センターにて出品茶入札販売会、11月15日(土)に宇治市文化センターにて大会式典及び茶消費促進関連イベントの開催が予定されています。
外観の審査を行う職員 |
香気審査の準備を行う職員 |
府内産茶の品質向上を目的として、「第43回京都府茶品評会審査会」が7月8日及び9日に宇治茶会館で開催されました。審査は煎茶、かぶせ茶、玉露、てん茶の4部門に分かれ、外観(見た目)と内質(香り、浸出液の色、味)について行われました。
当所職員は審査員として審査を担当するとともに、審査補助員として円滑な運営を支援しました。中でも審査の記録・集計はミスが許されない重要な役割ですが、迅速化とヒューマンエラー解消を目的に当所が構築した茶品評会記録集計システムを活用しています。
今回の取組を活かして、本年京都府で開催される第77回関西茶品評会出品茶審査会を円滑に運営をするとともに、今後開催される府内の各茶品評会への支援を続けていきます。
水色(すいしょく)の審査を行う職員 |
水色審査に用いる浸出液を作成する職員 |
抹茶の原料となるてん茶の製造において、生葉(なまは)の状態に応じた製造条件の設定は、篤農家の経験に基づく「ノウハウ」であり、経験の浅い生産者がてん茶製造を行う際の障壁になっていました。
そこで当所では、簡易にてん茶生葉の繊維含有量を測定することで、生葉の状態に応じた製茶の条件をタブレット上に表示する製茶アシストツールを開発しました。
現在、農業改良普及センターと連携し、府内5か所のてん茶工場で繊維含有量の測定精度や製茶条件の確かさを確認する現地実証を行っています。
実証に協力いただいた生産者からは「機器とタブレットが有線で接続するため、両手が塞がり測定しづらい」など、改善意見をいただきました。今後は集まった意見を基に機器の改良を進め、経験の浅い生産者のてん茶製造を支援していきます。
機器が有線でつながるため生葉の測定がしづらい様子 |
収量性に優れる「宇治茶の新品種」は、府内の生産者や茶商工業者から常に求められています。そこで当所では、高品質高収量に加えて難防除害虫であるクワシロカイガラムシへの抵抗性を備えた品種の育成のため、宇治種※1とクワシロカイガラムシ抵抗性を有する品種を使った交雑育種を行っています。
今年度はクワシロカイガラムシ抵抗性を備え収量性に優れた7つの系統※2を一番茶製茶し、味や香りを調査したところ、品質、収量性ともに優れるものが2系統ありました。
今後は、この2系統を中心に、夏季の高温下でも順調に生育するかを確かめるため、葉焼けの発生状況、生育等の調査を進めます。
※1宇治種:宇治地方で古くから栽培されてきた在来種から選抜された品種のこと
※2系統:種子から育てた茶樹を挿し木で増殖したもので、品種候補となるもの
視覚と触覚等で茶の形状や色沢の官能検査をしているところ |
当所では、一般の方々に宇治茶の魅力を体感していただくために、毎年、施設公開を開催しています。
今年度は、八十八夜にあたる5月1日に開催したところ、約150名が来所されました。製茶工程や茶の審査法の紹介、研究成果の展示のほか、水出し玉露と煎茶の試飲会を実施し、茶種ごとの特徴や水出し茶の健康機能性について理解を深めてもらいました。
来場者からは、「説明が分かりやすく大変勉強になった」、「もっとお茶を飲みたくなった」、「水出し茶を作ってみようと思った」等の声がありました。
当所では、研究所ならではの情報発信を続け、宇治茶ファンの裾野を広げることで、茶業振興に貢献していきます。
一番茶製茶見学 |
研究成果パネルの展示 |
審査室見学 |
水出し玉露・煎茶試飲会 |
当所では、所内の定点茶園において、一番茶新芽の萌芽※・生育状況について調査を行い、府内生産者や茶業団体等に情報提供を行っています。
令和7年の1~2月の平均気温は平年並か平年より低く推移しましたが、3月は平年よりやや高く推移したことで、本年の一番茶萌芽宣言は平年並の4月4日となりました。
萌芽期以降は5日毎に、新芽の生育状況を調査し、一番茶生産に役立つ情報としてホームページ等で発表します。また、気象予報と合わせて葉期予測情報も掲載し適期作業を促しています。
※萌芽:新芽の長さが包葉(芽を包んでいた葉)の約2倍になった状態のこと
萌芽した茶の新芽 |
報道機関の取材を受ける研究員 |
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