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26年度茶業研究所月報

このページは、本年度の茶業研究所の主な活動を月ごとにまとめています。

3月

宇治茶アカデミー修了式

 宇治茶の伝統と価値を継承し、自らが宇治茶の素晴らしさを発揮できる経営力の高い人材の育成と交流を図ることを目的に、当所では平成26年度に計7回の宇治茶アカデミーを開催してきました。
 3月6日(最終回)は、日本茶インストラクター理事で宇治茶伝道師の片山晃子氏から、消費者から見た緑茶消費拡大に向けた課題について、コーヒーや紅茶の事例も交えた講演を受けるとともに、受講生は自らの中期的な経営計画を発表しました。経営計画は、いずれも各自の経営的な背景をふまえて立案されており、総括アドバイザーからは修了者(12名)に対し計画実践への期待が述べられ、アカデミーを閉講しました。

      

                片山氏の講演                       修了証書の授与

茶業技術研修生(187人目)修了式

 当所は宇治茶を支える茶業後継者の育成のため、平成26年度は1名の茶業技術研修生を受け入れ、1年間、茶業に関する栽培や製造の技術、経営実務の習得支援を行ってきました。
3月16日、修了式を開催し、自らが主体的に茶生産に携わる際に直面する問題を解決する方法の習得のために取り組んできたプロジェクト研究について、害虫防除の取組成果を地元市町村などの来賓や職員を前に報告しました。
 所長から修了証と共に、宇治茶を支える地域のリーダーとなることを期待する言葉を贈られ、大正14年から続く187人目の研修を修了し、当所を巣立っていきました。

 

プロジェクトの発表(左)と修了証の授与(右)

2月

平成26年度茶業研究所研究報告会を開催

 2月13日、「平成26年度茶業研究所研究報告会」を茶業関係者310名に参加いただき、宇治茶会館(宇治市)で開催しました。当研究所は、「覆い下茶生葉に対応した鮮度保持装置」、「遮光栽培の歴史と今後の研究展開」、「乗用摘採機による直がけ被覆の軽労化」、「EU向け輸出に向けた取組状況」について報告を行いました。

 また、直がけ被覆の軽労化に向け開発された乗用摘採機用資材展開・巻取装置の実演も併せて行いました。

 参加者アンケートからは、新しい生葉鮮度保持装置に対して期待の高さがうかがわれるとともに、輸出に向けた新しい防除体系の確立を求める意見が多く寄せられました。

        

                           研究報告の様子                   資材展開・巻取装置の実演

「てん茶の効率的新製茶法」実演セミナーを開催

 2月3日、機械メーカーと共同開発したてん茶新製法についてセミナーを開催し、京都府内の茶生産者、機械メーカーなど約100名の参加がありました。既存てん茶機以外では製茶できなかった色合いや風味を新製法は同等に製造でき、さらに電気を熱源とすることで加熱の効率化や装置の小型化を図ることができます。

 新てん茶機の実演を行い、既存てん茶機でつくられたものと品質を比較したところ、「品質面での完成度が高いことから、量産型装置による実証研究を進めて欲しい」との意見を多くいただきました。

      

                           成果報告の様子                         新てん茶機の実演

1月

展茗(てんみょう )」生産者交流会を開催

 平成18年に品種登録された「展茗」の市場出荷が、平成26年に本格的に始まったことから、市場に定着させ、生産者所得の向上を図るため、山城地域の生産者を対象に、1月16日に初めての生産者交流会を山城広域振興局木津庁舎で開催しました。

 意見交換では、生産者から新芽の硬化が進みやすいことから、「摘採時期の見極めが難しい」などの意見があり、当所から「展茗」の硬化がやや早い特性に対応するには早期被覆、早期摘採が有効な対策であることなどを試験結果に基づきアドバイスを行いました。

 今後、「展茗」が品質の優れた品種として、安定した市場評価を得られるように、被覆方法や製造技術についての生産支援を行っていきます。

 ※「展茗」:府が平成18年度に品種登録した茶品種。てん茶用品種で、手摘み、機械摘みの両方に適している。

           

   早期摘採、早期被覆を行った荒茶を手に取る生産者     意見交換会で栽培の工夫を話す生産者

 12月

味認識装置による茶浸出液の評価

 当所では、てん茶特有の香りや味を生かした新商品開発を進めています。てん茶を煎茶等と同じように葉から浸出する場合の湯の温度、量などの最適な浸出条件を調査するため、官能検査※1とあわせ、味認識装置※2により「うま味」「渋味」「苦味」の強さを測定しました。

 官能検査に基づく感覚的な表現とあわせ、茶の味を数値に基づきグラフ化することにより、消費者の好みに合う条件をグラフから推定するなど、最適な浸出条件を明らかにします。

※1 官能検査 :人間の感覚による品質評価

※2 味認識装置:試料液に複数の味覚センサを浸漬し、センサの応答から「うま味」、「渋味」、「苦味」の強さを測定する装置

 

        味認識装置による茶浸出液の測定               味の違いをレーダーチャートで解析

11月

平成26年度京都府優良品種茶園品評会

 平成26年度京都府優良品種茶園品評会が、11月13、14、18、26日の4日間にわたって府内全域を対象に審査が行われました。この品評会には40点(前年41点)の出品があり、当所からは3名が審査員として参加しました。

 出品茶園の状況は特に山城地域のはさみ摘み茶園では、生育の均一性、地際から摘採面までの枝のバランスが素晴らしく、高品質、高収量が期待できる茶園でした。一方、出品茶園全体では、例年に比べ8~9月が低温・日照不足で推移したため、やや葉色が薄く、枝条の伸びが緩慢で、例年ほど茶園に勢いがなく、気象の影響を色濃く感じました。

 当所では、茶園品評会を府内全域の茶園を同時期に巡回できる貴重な機会ととらえ、出品茶園だけでなく一般茶園の状況も把握することによって高品質な宇治茶生産の基本である茶園づくりを支援していきます。

      

審査の様子(左:城陽市手摘み茶園、右:木津川市はさみ摘み茶園)

10月

茶園品評会の審査研修会を開催

 栽培技術の向上による茶業の生産振興を目的として、10月中旬から府内各市町村単位で地域の茶園品評会が毎年行われています。これに先立ち10月6日、当所において審査方法の研修会を開催しました。研修会では審査を担当する関係団体、市町村、各普及センターなどの職員を対象に、当所の職員が講師となり、審査のポイントを詳しく解説し実習と併せて、茶園の評価技術を高めました。研修参加者は本研修の成果を地域に持ち帰り、今後、高品質な宇治茶が生産できる茶園づくりに活用していきます。

     

                審査方法を講義                        当所茶園で実習

9月

茶用新被覆資材(天然素材:椰子繊維)の実用化検討会を開催

  今年度、当所では現地実証茶園を設置し、平成24、25年度のタスクチーム活動の成果を元に普及に向けた取組を継続しています。9月24日、新被覆資材を活用したお茶の製茶品質について実証農家を交えて検討を行いました。

 官能検査では、アミノ酸(お茶のうま味成分)等の分析結果と照合し、新資材で被覆したお茶の品質が、化学繊維被覆と比べ優れることが確認されました。

 今後は、本資材の現地での耐久性を確認し、現地普及の資料として活用します。

※ 官能検査:外観、香気、水色、味、から色(てん茶のみ)の各項目を熟練者が調査し、総合的に製茶品質を評価する方法

 現地実証茶園のお茶を審査  (実証農家・開発業者も参加) 

 8月

平成26年度試験製茶の官能検査

 当所では、5月の一番茶及び7月の二番茶において取り組んだ課題毎に製造したお茶の官能検査を8月に行いました。今後、実施する品質に影響するアミノ酸(テアニン等)などの品質関連成分の分析結果との関係を調べることにより、高品質茶の効率的な安定生産の確立を目指しています。

 今年度から実施している「新品種における色沢向上技術の確立」の課題では、被覆方法などがてん茶の色あいに及ぼす影響を重点的に調査しており、被覆を早期に開始することで、色合いが良好となる傾向がみられました。

※ 官能検査:外観、香気、水色、味、から色(てん茶のみ)の各項目を熟練者が調査し、総合的に製茶品質を評価する方法

てん茶の外観を審査する様子

7月

てん茶の風味・機能性を生かした新商品の開発

 てん茶特有の風味や機能性を最大限に生かした新商品開発に向けて、てん茶の抽出条件が、風味、機能性成分(テアニン、カフェインなど)に及ぼす影響を調べています。

 今後、これらの関係を明らかにし、得られた抽出液を用いた飲料の開発や食品素材としての利用を図ります。

     

  ① てん茶仕立て葉          ② 攪拌抽出中               ③ てん茶抽出液の成分分析 

 6月

京丹後茶の生産技術向上を支援

 当所は、関係機関と連携して「京丹後茶の生産技術と品質向上」に取り組んでいます。

 6月27日、広域振興局、普及センター、市役所、関係団体等とともに第2回京丹後茶担当者会議を行いました。

 生産者も参加して現地試験の内容を確認するとともに、茶樹や土壌の試料採取を行いました。その後、本年度一番茶の生育、収量、荒茶販売価格等の結果、害虫のモニタリング状況、肥料試験の施用効果等について報告を行うとともに、夏季の干害対策について試験計画を検討しました。

 今後も丹後地域における安定的な良質茶生産体制の確立につながるよう積極的に支援を続けます。

    

    試料採取状況                        生産者に病害虫防除状況を聞き取り

5月

茶業研修生の揉み茶の摘採・製茶実習

 平成26年度の茶業技術研修生に対して、一番茶の試験製茶期間(5月5日~27日)に、摘採・製茶実習を行いました。研修生用に所内の一画に割り当てた茶園から、職員の指導のもと研修生が主体的に生葉の摘採から茶工場での蒸し・揉み・乾燥まで、製茶の全工程に責任を持って実習を行いました。引き続き、将来の茶業経営に役立つ実践的な研修に加え、技術を裏打ちするため講義を受講予定です。

※ 茶業技術研修: 茶業関係の後継者育成を目的として、てん茶(抹茶の原料)、玉露、かぶせ茶、せん茶について栽培、製造技術等を修得させる研修制度

      

            一番茶を摘採する研修生               茶葉の蒸し具合を確認する研修生 

4月

平成26年産「一番茶」萌芽宣言

 本年は、年明けから気温が低く経過し、3月には平年並となりましたが、新芽の動きに遅れがみられました。

 このため、平年より2日、昨年より4日遅く、4月7日に当所から本年の「一番茶」萌芽宣言を行いました。

 この萌芽宣言は、府内の茶農家が一番茶に向けた作業準備の目安になっており、萌芽宣言と併せて霜害対策等の注意喚起の広報を行いました。

 ※ 萌芽宣言:当所作況園における萌芽日(全体の70%の新芽が包葉の約2倍の長さに達した時期)を公表

    

                                報道機関への説明

 平成26年度茶業技術研修生入所式

 4月8日に当所では、平成26年度茶業技術研修生の入所式を開催し、和束町から中井雄一さんが入所しました。

 修了までの1年間、研修生は実習や講義を通して、てん茶(抹茶の原料)や玉露などの覆い下茶を中心に栽培や製造技術を修得するとともに、職員の指導のもと、将来の茶業経営上の課題を見据えたテーマ研究に取り組みます。

             

             入所にあたり宣誓を行う中井研修生

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お問い合わせ

農林水産部京都府農林水産技術センター 茶業研究所

宇治市白川中ノ薗1

ファックス:0774-22-5877

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