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31(R1)年度茶業研究所月報

3月

令和2年一番茶新芽の生育状況

当所では、所内の定点茶園において、一番茶新芽の萌芽(※)・生育状況について調査を行い、府内生産者や茶業団体等に情報提供を行っています。
本年は、1月(+2.4℃)、2月(+0.7℃)、3月(+1.2℃)の平均気温が平年と比べ高く推移したことから、一番茶の萌芽宣言は平年より6日早い3月30日となりました。
また、気象庁が発表する近畿地方の1か月予報(3月28日から4月27日までの天候の見通し)では、気温は平年並み又は高いとのことなので、新芽の生育も平年並み又は早く進むと予想されます。
なお、萌芽後は耐凍性が落ち、凍霜害に見舞われる危険性が高くなるので、霜注意報や予想最低気温に注意して防霜対策を徹底するようJA、普及センターを通じて、生産者に情報提供しています。
今後は、5日ごとに生育を調査し、HP等通じて情報発信します。

注※ 萌芽:新芽の長さが包葉(芽を包んでいた葉)の約2倍になった状態のこと

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左:萌芽した新芽
右:萌芽宣言当日、報道関係者取材の様子

2月

茶業関係者対象に研究報告会を開催

2月7日に茶業会議所において、平成31年度茶業研究所研究報告会を開催しました。本会は、研究成果を速やかに生産者・茶商工業者に普及することを目的に毎年開催され、本年は310名の参加がありました。
最新の研究成果として、「宇治茶に含まれる機能性成分と栽培条件の関係調査」、「ここまで来ました~新型てん茶機の開発~」、「頭すっきりな毎日を~新てん茶飲料の開発~」の3課題について報告したところ、会場からは、「機能性成分と味の関係性はどうか。」など踏み込んだ質問もあり、関心の高さが伺えました。また、「府内産高品質抹茶の成分特性と機能性成分」、「乳酸菌のポリアミン生合成経路の研究」等についてポスター報告を行い、多くの参加者と対面で意見交換を行いました。
今後も、常に生産・流通現場と密に関わり、現場のニーズに基づいた研究を進めるとともに、宇治茶ブランドの発展につながる成果の普及を目指します。

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左:研究成果を報告する研究員
右:ポスター発表での活発な意見交換

1月

宇治茶実践型学舎冬期製茶研修を実施

当所では、今年度から宇治茶実践型学舎を開講し、新規に宇治茶生産農家を目指す担い手の育成を進めています。昨年12月には1期生が入舎し、研修を開始しています。
1月24日及び29日に製茶研究棟において、冷凍蒸葉を用いた揉み茶の製茶技術研修を実施しました。学舎生にとって初めての製茶作業であり、機械の操作方法や変化する茶葉の観察など、熱心に研修を受研しました。
2月はこの荒茶を用い、手作業による仕立て法と官能審査の研修を予定しています。

精揉機の操作方法について説明を受ける学舎生(左)

12月

令和元年度宇治茶アカデミー第2回講座開講

当所では、(公社)京都府茶業会議所(注※1)との共催により、宇治茶の生産、流通、加工商品製造、販売等に携わる担い手の経営力・発信力の向上、交流・連携の場作りを目的として、毎年宇治茶アカデミーを開講しています。
12月3日には、第2回講座を開催し、「オープンラボで茶の品質評価」をテーマに、機能性成分に関する講義に加え、茶業研究所にある研究機器による機器分析を行いました。生葉(注※2)の保管方法による違い(てん茶)、製造工程による違い(煎茶)について、色差(注※3)、かさ密度(注※4)、糖度、成分を分析し、官能審査(注※5)の評価と機器で得られた数値の違いや原因について理解を深めました。
受講者からは、「機能性成分を意識した栽培を行うために、今回得た知識を活用したい」、「お客様に正確な知識や情報を伝えるのに活用したい」などの声が聞かれました。
第5回講座まで開催予定で、輸出やインバウンド向けマーケティング対策の研修、講演等を行い、宇治茶のイノベーションに繋がる人材づくりを進めます。

注※1 京都府茶業会議所:宇治茶の生産者団体(京都府茶生産協議会)と、流通業者でつくる事業協同組合(京都府茶協同組合)を会員とする公益社団法人
注※2 製茶原料となる摘み取った後の新芽および葉のこと
注※3 赤、青、緑の3刺激値(知覚感度)
注※4 ある容積の容器に試料を充てんし、その内容積を体積として算出した密度のこと
注※5 官能検査…人間の感覚(味覚、嗅覚など)を用いて品質を判定する検査のこと

 

左:機能性成分に関する講義
右:かさ密度の測定実習

11月

令和元年度宇治茶アカデミー開講

当所では、(公社)京都府茶業会議所(注※1)との共催により、宇治茶の生産、流通、加工商品製造、販売等に携わる担い手の経営力・発信力の向上、交流・連携の場作りを目的として、毎年宇治茶アカデミーを開講しています。6年目となる今年度は、37名の受講生を迎え、「経営向上に役立つ実践技術」をテーマに、全5回の講座を予定しています。
11月22日には、第1回講座を開催し、「官能検査による茶の品質特性~品質の違いが生まれる要因は?~」をテーマに、官能検査(注※2)についての技術研修と、茶の特性を消費者に伝える表現方法についてのグループワークを実施しました。受講生からは、「同じ原料でも製造方法が少し違うだけで大きく違いがでることわかった」などの声が聞かれました。
第2回以降は、リニューアルした茶業研究所の施設を活用した技術研修、講演等を行い、宇治茶のイノベーションに繋がる人材づくりを進めます。

注※1 京都府茶業会議所:宇治茶の生産者団体(京都府茶生産協議会)と、流通業者でつくる事業協同組合(京都府茶協同組合)を会員とする公益社団法人
注※2 官能検査…人間の感覚(味覚、嗅覚など)を用いて品質を判定する検査のこと

官能検査に取り組む受講生

10月

茶園品評会の審査研修会を開催

毎年秋になると、茶栽培技術の改善により宇治茶の生産性と品質の向上を図るため、茶園品評会が各市町村で開催されます。
当所では、本品評会の開催に先立ち、審査員の審査技術の修得・向上と、審査方法の統一を目的に、京都府茶生産協議会と共催で、農業改良普及センターやJA等の職員を対象とした審査研修会を実施しました。研修会では、茶園を審査する際の観点(茶樹の生育状況、病害虫管理、土壌管理等)についての講義と、実際の品評会に即した茶園での研修を行いました。
今後も、茶園品評会をはじめとした宇治茶振興に繋がる取組を支援していきます。

実際の茶園で審査方法を研修

9月

学生の職場訪問を受け入れ

当所では、宇治茶や研究内容についての理解を深めていただくため、茶業関係者のみならず、教育機関など多方面からの視察を受け入れています。
9月5日には、京都先端科学大学の学生30名が職場訪問も兼ねて来所され、宇治茶や京都府の研究機関の役割、研究内容などについて理解を深めました。学生からは宇治茶に関する質問に加え、「研究の仕事でこれまで一番大変だったことは何か」などの質問もありました。
今後も、開かれた研究所として、積極的に視察を受け入れ、幅広い世代に宇治茶の魅力を発信していきます。

 

左:お茶の審査方法の説明
右:研究内容を紹介

8月

「夏休み自由研究プロジェクト」初開催!

8月21日に当所において、「夏休み自由研究プロジェクト」を開催しました。本プロジェクトは、地元白川地区との連携の一環として、地区の子ども達を対象に、茶業に関する体験学習を提供し、夏休みの自由研究等に活かしてもらおうという初めての取組です。
子どもたちは、“種類の違いや入れ方でかわるお茶を味わってみよう”“お茶を鑑定し、成分を測ろう”“茶園の虫を観察しよう”の3コースから、興味のあるコースを選び、お茶について理解を深めました。
参加した子どもたちからは、「家のまわりにも茶園はあるが、はじめて知ったことがたくさんあった。」、「楽しかった。また来たい。」などの感想が聞かれ、大変好評でした。
今後は、時期や内容等を調整し、次回の開催を検討していきます。

 

左:お茶の製造工場を見学
右:お茶の成分の分析結果を確認

 

7月

宇治茶ブランド拡大協議会で気象観測データの活用方法等について意見交換

7月23日に開催された宇治茶ブランド拡大協議会の令和元年度第1回協議会に出席しました。本協議会は、平成26年度に宇治茶産業の競争力強化とブランド力向上を目的に設立され、京都府茶生産協議会、京都府茶協同組合、(公社)茶業会議所等宇治茶関係団体によって構成されています。
今回の協議会では、山城地域各地の茶園に設置した12台の各気象観測装置の活用方法等について活発な意見交換がなされました。本装置で観測された気象データは、インターネットを介してパソコンやスマートフォンで確認することができます。また、当所で開発した、気象データからクワシロカイガラムシ(注※)の発生を予測するシステムも同様に確認することができます。
当所では、引き続き、得られた気象データを生産者の栽培管理に役立つ情報として活用できるよう検討を進めます。

注※クワシロカイガラムシ:茶の重要害虫

 

左:協議会で活発な意見交換
右:クワシロカイガラムシ孵化予測概況一覧画面

6月

本ず被覆(注※)作業および解除作業の省力化

宇治茶ブランドを代表する茶種である「玉露」や「てん茶」は、新芽生育期に茶樹を覆い、遮光します。中でも、伝統的な本ず被覆で栽培された茶は、最高の品質を誇りますが、高さ1.8mの被覆棚の上でのわらを振り広げる作業は、危険で熟練の技が必要なことなどから、面積は激減しています。
そこで、当所では、本ず被覆の省力化を図るため、棚の下から“こも”を展張する被覆方法について試験を行いました。”こも”展張の手順や作業時間、展張後の遮光率等の調査に加え、現場へ赴き、実際に篤農家が行うわら振り作業との比較を行いました。その結果、危険な高所作業は不要となり、被覆解除にかかる作業時間は、本ず被覆と比べて約5割短縮できましたが、展張作業には約4倍と想定以上の時間を要することがわかりました。
今後は、“こも”の展張方法等を再検討するとともに、他の方法も試しながら、更なる省力化を目指します。

注※本ず被覆:茶の新芽生育期の一定期間、茶園上の被覆棚に、よしずを広げ、その上に稲わらをまんべんなく振り広げることで遮光をする被覆方法

 

左:高所でのわら振り作業
右:展張したこも(白色破線部)

5月

直がけてん茶の品質向上を目指して

近年のてん茶(注※1)需要の拡大に伴い、府内では、煎茶からてん茶への転換が急増しており、てん茶品質の高位平準化が急務となっています。
そこで、当所において、直がけ被覆(注※2)の最適な被覆期間を被覆内温度等から判断する技術を開発するため、2品種(「やぶきた」「さみどり」)で被覆の開始時期(1.0、1.5、2.0葉期)と期間(18~27日)を変えて、調査を行ったところ、被覆の開始時期が遅いと短い期間で出開度(注※3)が80%に達すること等が分かりました。
今回得られたデータは、今後実施する官能検査や成分分析の結果と併せて解析し、直がけてん茶の品質向上に向けた栽培マニュアル作りに活かします。

注※1 てん茶:約20日以上被覆(遮光)してから摘採された葉を蒸して、乾燥させたもの。主に抹茶に加工される。
注※2 直がけ被覆:棚を設けて遮光資材をかけるのではなく、直接茶うねに遮光資材をかける被覆方法。煎茶からの転換園で活用されている。
注※3 出開度:新葉の展開が止まった芽の新芽全体に占める割合。てん茶では60~80%が摘採適期の目安とされている。

試験うねに遮光資材を被覆

4月

平成31年度茶業技術研修生入所式

4月8日に当所において、茶業技術研修生の入所式を開催しました。本研修は、大正14年から、現在までに計191名の研修生を宇治茶を支える現場へと送り出しています。本年度は、舞鶴市、京田辺市、和束町から各1名の計3名が入所しました。研修生は、一年間の実習や講義を通じて、茶業経営の担い手として技能の習得に努めるとともに、就農後に直面する課題を想定し、一人一課題のプロジェクト研究に取り組みます。
当所では、研修生が円滑に就農できるよう、職員一同、研修生の技能習得を支援します。

平成31年度茶業技術研修生入所式の様子

入所にあたり意気込みを語る研修生

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お問い合わせ

農林水産部京都府農林水産技術センター 茶業研究所

宇治市白川中ノ薗1

ファックス:0774-22-5877

ngc-chaken@pref.kyoto.lg.jp