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R2年度茶業研究所月報

3月

令和2年度茶業研究所研究報告会を開

令和3年2月22日から3月15日の間、茶業研究所研究報告会を開催しました。今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、会場開催を取りやめ、web公開としました。報告課題は「直がけてん茶の品質向上に向けた被覆開始・摘採時期の管理」「手摘み園における省力防除技術の開発」「秋芽の被覆が品質関連成分及びその後の生育に与える影響について」と、現場の要望に即した3課題としました。公開期間中の視聴回数は314回を数え、今後もweb公開してほしいとの要望がありました。当所では、令和3年度以降も茶業関係者や府民の要望に応える研究を進め、公開していきます。

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web上の報告会画面

2月

第5回宇治茶アカデミー開

2月25日に開催した第5回宇治茶アカデミーは、株式会社大丸松坂屋百貨店の今井良祐氏を招き、コロナ禍での百貨店の取組や商品の販売方法について講演をいただき、35名の参加がありました。
どんなに良い商品でもお客さんに伝わらないと意味は無く、伝える際には「お客さんが商品を購入することでどんな価値があるか」といった提供価値を意識することが大切であることを学びました。
また、お茶の場合、デイリーユースや美容・健康に関してニーズが高く、商品の持つ美容、健康につながるエビデンスを把握して伝えることが重要との話もありました。受講者からは「まずは、自社の商品の提供価値を書き出したい。」や「デイリーユースを意識した商品を開発したい。」等の意気込みがありました。

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百貨店の取組についてZoomでスライドを共有し説明

1月

実需者の方々への新型てん茶機に関する評価会を開催

茶業研究所では新型てん茶機の開発状況について、1月8日に開催された(公社)京都府茶業会議所役員会で従来型てん茶機と比較した性能を説明し、役員の方々による荒茶の官能検査審査を実施しました。
京都府茶業会議役員は茶流通業者や茶農家から構成されており、実需者としての観点から、新型てん茶機の性能を評価していただきました。
役員からは、「新型てん茶機の性能はとても良い」、「従来型てん茶機と変わらない品質の荒茶が製造できている」と良好なご意見をいただきました。
新型てん茶機の性能の高さを確認できた一方、機械の処理量増大のご要望もあり、今後は共同研究機関とともに大型機開発を目指していきます。

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新型てん茶機と従来型てん茶機で製造した荒茶の評価を受ける
(滋味審査のためマスクを外しています)

12月

令和2年度宇治茶アカデミー第2回講座

宇治茶アカデミーは京都府内で茶の生産、流通・販売や加工商品の製造・販売等を行っている若い担い手を対象に、経営力、宇治茶の伝統や価値の発信力を高めるとともに、参加者同士の交流・連携を深め、宇治茶のイノベーションにつなげるための取組で、今年度は初めてWebオンラインにより開催しています。
12月23日に開催した第2回は「緑茶の機能性について」をテーマに、静岡県立大学客員准教授の海野けい子氏を講師に招き、緑茶全体や緑茶に含まれる成分ごとの機能性について講習を行いました。42名の参加があり、「緑茶を飲むことで認知症の発生を抑えられる」、「テアニンの摂取でリラックス効果が得られる」などの実験データが紹介され、緑茶の機能性について理解が深まりました。参加者からは「お茶の機能性について深く知ることが出来た。今後、営業や販売活動を通じお客様に伝えていきたい」との意見がありました。
第3回目は令和3年1月21日にJETRO農林水産・食品部農林産品支援課の安宅央氏、日本食品海外プロモーションセンターの武田光範氏、農林水産省生産局地域対策官室の鳥取寛氏の3名を講師に招き、茶の輸出に関する講義とディスカッションを行います。

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緑茶の機能性を紹介

11月

令和2年度宇治茶アカデミー開校

宇治茶アカデミーは京都府内で茶の生産、流通・販売や加工商品の製造・販売等を行っている若い担い手を対象に、経営力、宇治茶の伝統や価値の発信力を高めるとともに、参加者同士の交流・連携を深め、宇治茶のイノベーションにつなげるための取組で、今年度は初めてWebオンラインにより開催しています。
11月27日に開催した第1回は「アフターコロナに向けてSNSをビジネスに活用する」をテーマに、経営コンサルタントのADU株式会社の宇田代表を講師に招き、SNSの種類やビジネスへの活用方法の講義とディスカッションを行いました。34名の参加があり、「海外に向けるなら、どんな投稿でも♯Matchaをつけた方が良い。」や「商品写真だけよりは、器に盛るなど使用シーンを想定できる写真の方が良い」などの具体的なアドバイスを元に、実践的なSNSの活用について意見交換を行いました。
第2回目は12月23日に静岡県立大学の海野客員准教授を講師に招き、「緑茶の機能性について」をテーマにした講義とディスカッションを行います。

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左:裏方で運営事務を行う職員
右:講師の画面共有(左側)をしながら説明を行う

10月

茶園品評会審査研修会を開催

秋、茶の生育が止まる10月中下旬頃、茶栽培技術の改善により宇治茶の生産性と品質の向上を図ることを目的に、茶園品評会が府内各地で開催されます。
当所では、茶園品評会の開催に先立ち、審査の視点の理解、審査技術の修得・向上及び審査方法の統一を目的に、京都府茶生産協議会と共催で、農業改良普及センターやJAの職員等を対象とした審査研修会を開催しました。研修会は、密を避けるため、室内での講義は行わず、ほ場で実施し、当所の研究員が茶園品評会の審査項目に沿って審査方法を解説しました。
今後も、宇治茶ブランドを守るために、茶園品評会をはじめとした取組を支援していきます。tutidukuri

土づくりや施肥状況を評価するために土壌を掘って審査方法を説明

9月

茶園におけるドローンによる散布試験(水道水散布)

京都府の茶園の多くを占める傾斜地茶園(京都府茶園面積の79.4%)では、大きく重い農薬タンクを運び、重く長いホースとノズルを持ちつつ、傾斜地の各畝間を移動しながら行う農薬散布作業が、非常に重労働になっています。ドローン※1による航空防除は遠隔操作が可能なため、傾斜地を農薬使用者自ら移動する必要が無く、労力低減と労働時間削減が可能な技術として注目されています。しかし、現在、茶では航空防除用の登録農薬が無いため、生産現場での利用はできません。
そこで、茶園での利用を検証するため、9月16日に当所茶園において、農薬散布用ドローンによる水道水の散布実験を実施しました。今後、散布の均一性等を解析し、茶園におけるドローンにより農薬散布の問題点、実用性を検証します。

注※1 ドローン:遠隔操作できる無人航空機体のこと、マルチコプター(UAV)とも言う。

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左:農薬散布用ドローンの説明を受ける実験参加者
右:茶園における農薬散布用ドローンによる散布

8月

府内小学生を対象とした夏休み自由研究プロジェクトを開催

8月4日~7日に、府内小学生を対象とした夏休み自由研究プロジェクトを開催し、12家族34名(うち小学生21名)に参加いただきました。
本年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、夏休みに外出を控えるケースが増えている事を受け、少しでも外出の機会を提供するため、少人数で開催しました。
体験コースは「茶園の虫を観察しよう」、「お茶を鑑定し成分を測ろう」、「お茶の淹れ方の違いで変化する香味を体感しよう」の3つのメニューから選択する方式とし、参加者は、意欲的に学べ、お茶の奥深さや新たな発見などができたと大変喜んでおられました。今回の自由研究プロジェクトは昨年度に引き続き2回目であり、宇治茶ファンの裾野を広げる取り組みの大切さを再認識しました。

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左:品質の異なる抹茶を比較
右:近赤外線分析による茶成分測定の様子

7月

第38回京都府茶品評会審査会の運営を支援

茶の栽培・製造技術の改善による府内産茶の品質向上を目指して、京都府茶品評会審査会が、7月7、8日に宇治茶会館で開催され、当所職員が審査員及び審査補助の責任者を務めました。
本年は新型コロナウイルス感染症対応として感染リスクを低減するための審査方法を工夫するなど、例年とは異なる審査会となりました。
一番茶期の気象については、3月の高温により萌芽が早まったにも関わらず、その後の少雨や4月下旬の低温など、高品質の茶生産には難しい年となりました。さらに、新型コロナウイルス感染症により摘採人員の確保が難しくなるなど、生産者にとって苦労の多い製茶期でしたが、上位の茶には品質の優れたものが揃っており、出品者の高い技術と努力が伺えました。
茶全体の市況が悪くなっている中ですが、審査会で指摘された栽培、製造工程での改善点について、関係農業改良普及センターなどを通じて出品者に伝えるなど、生産技術向上を支援します。 

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左:審査員の距離を離して審査を実施
右:審査補助員も感染予防を徹底

6月

宇治茶の新品種育成に向けて

当所では、従来品種より生産性や品質に優れた茶の品種開発に取り組んでいます。
現在は、覆い下用品種の育成を目標に、‘さみどり、あさひ’といった優良な材料を交配※1して作出した32の系統※2の収量性や製茶品質等を調査しています。今年の一番茶期に収穫、てん茶として製茶したものの中には、収量性に優れるものが3系統、製茶品質に優れるものが3系統ありました。今後は、品種登録を目指して、収量性や製茶品質の年次反復調査とともに、障害の発生状況、生育、均整度等の調査を進めます。

注※1 交配:種子を得るために、雌しべに花粉を受粉させること
注※2 系統:種子から育てた茶樹を挿し木で増殖したもので、品種候補となるもの

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試料茶の香りや味、外観などを五感を使って検査する

5月

宇治茶実践型学舎の一番茶期摘採・製造実習を実施

当所では、昨年度から宇治茶実践型学舎を開講し、新規に宇治茶生産農家を目指す担い手の育成を進めています。昨年12月に1期生が入舎し、研修を進めています。
4月30日~5月22日に当所の一番茶期の摘採・製造実習を実施しました。
学舎生にとって初めての一番茶期の作業体験であり、摘採機の取扱いや揉み茶・てん茶製造など熱心に実習を行いました。
6月以降は、南山城村において複数の生産者の元で実地研修を行い、茶業技術の習得や農業者との信頼関係を深め、就農に向けた準備を進めます。

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左:摘採実習
右:てん茶 蒸熱操作実習

4月

伝統技術を活かす省力的な被覆栽培試験

宇治茶の伝統的な被覆(※1)方法であり、最高品質の玉露やてん茶(抹茶原料)を栽培する方法に「本ず」と呼ばれるものがあります。これは、現在広く普及している黒色の化学繊維による被覆ではなく、茶園を囲んだ棚の上に、よしずやわら等で被覆する栽培方法です。高品質の茶がつくれる一方、人が棚パイプの上に立ってわらを振り広げるなど、熟練した技術と手間暇がかかります。
当所では、茶の品質は落とさずに省力的に作業ができる被覆方法の検討を行うことで、今後も、継続的に高品質な宇治茶生産を行えるような技術開発を図っています。本年は、わらの代わりにこも(※2)を代用する試験を行っており、被覆作業については8割削減出来ました。5月には、その方法と本ず被覆、慣行被覆とで栽培した茶の製茶品質を比較する予定です。

注※1 被覆:宇治茶ブランドを支える玉露や抹茶の原料となるてん茶は、遮光をすることで特有のうまみや香りが発生します。遮光をする際に覆いを被せることを被覆といいます。
注※2 こも:わらを編んだむしろ。

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左が「よしず+こも」による被覆、右が「よしず+わら」による被覆

過去の月報リンク

お問い合わせ

農林水産部京都府農林水産技術センター 茶業研究所

宇治市白川中ノ薗1

ファックス:0774-22-5877

ngc-chaken@pref.kyoto.lg.jp