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伏見稲荷大社はトリップアドバイザー(旅行等に関する口コミを中心とするウェブサイト)が発表する「外国人に人気の日本観光スポット」で、2年連続1位となるなど、多数の外国人観光客が訪れる場所となっています。朱色の鳥居が続く風景や稲荷山のお山巡りでウォーキングができることも高評価の理由とされています。
深草稲荷保勝会は、稲荷参道商店街(稲荷山共栄会(いなりやまきょうえいかい)、稲荷繁栄会(いなりはんえいかい)、稲栄会(とうえいかい))の3会からなる組織で、約70軒の伏見稲荷大社周辺の商店などが加盟する団体です。
伏見稲荷大社への観光客の状況は、約1~2年前から多くなってきており、ウェブサイトの影響もあってか、アジア圏はもとより欧米からの方も多く訪れており、海外メディアの取材も増えてきています。それに併せて、伏見稲荷大社内では4カ国語に対応できる観光案内所を設けたり、案内板への外国語表記を増やしたり、またトイレを洋式に整備したりするなど取組を進めておられます。また、深草稲荷保勝会に加盟する商店などでは、外国語のメニューや標記を増やしたり、海外からの観光客に人気が高い「Made in japan」の商品を数多く取り扱うよう工夫をされたりしています。また店員には、英語や中国語の勉強会を開催するなど、観光客対応に努めておられます。こうした流れを受けて、商店街は、これまでの地域に密着した形態から、観光客に向けた商店街へと変わりつつあります。ただ、個の商店によってはこうした対応が遅れているところもあり、環境の変化に対応するための支援も必要であるということでした。さらに、観光客の増大により、境内のゴミの増加やけが人や急病人対応、犯罪の発生などの懸念もあり、対策が急がれるとのことでした。
伏見稲荷大社へ参拝された方々が、さらに稲荷山を巡っていただき、参道筋でお土産物などの買い物や飲食をもっとしていただけるように、保勝会としても人の流れを呼び込むための取組を強化していかれたいとのことでした。
外国人観光客への取り組み概要の説明を聴取した後、観光案内所などを視察
和束町は、京都府の南部に位置し、人口約4000人、基幹産業は茶産業であり、荒茶生産額が府内の45%を占めるなど、府における宇治茶の最大生産地です。和束茶の歴史は鎌倉時代にさかのぼり、これまでの800年あまりの歴史の中で、洗練された味わいと香りを脈々と受け継ぎ、発展してきました。和束の茶畑は、京都府景観資産登録第1号として、また、今年4月には、日本遺産「日本茶800年の歴史散歩」に登録され、その美しい景観は町の最大の魅力となっています。
町ではその魅力を活かして、10年後(2020年)のめざす和束の姿を「ずっと暮らしたい 活力と交流の茶源郷 和束」として、交流人口や定住人口の増加を目指す取組を進めておられます。特に1.飲むお茶(基幹産業)、2.見るお茶(景観資産・史跡名勝)、3.体験するお茶(茶摘み・農家民宿)、4.食べるお茶(茶団子・お茶スイーツ)の4つの「お茶」をキーワードに、住民グループが開発する特産品や、茶香服や茶摘みなどを体験できる施設のほか、山城地域で第1号オープンとなる「農家民宿」など、着地型観光が可能な環境づくりに町をあげて取り組んでおられます。また、町内の道路が狭いこともあり、歩く観光・自転車観光の推進を進めておられ、トレイルマップやサイクリングマップなどを作成し、モデルルートの提案などをされています。さらに、町内外の住民との交流を深めるために、ホテルと連携したフェアの実施や、「わづかまちづくりびと交流サロン」といったワークショップを開催し、ここで出てきたアイデアをまちづくりに活かす取り組みも実施されています。京都府では「お茶の京都」構想を進めているところですが、和束茶カフェ・周辺施設がその中心的な拠点となっており、ここを観光や特産品の購入、体験ができるエリアとして、「お茶の京都」構想と連動した、さらに集客をできる仕組みづくりを進めて行かれたいとのことでした。
和束のまちはお茶の歴史から成り立っているものであり、いつまでも元気で生き甲斐を持って暮らせる地域が大切だという思いのもと、自然と共生できるまちづくりに今後も取り組んで行かれるとのことでした。
取り組み概要について説明を聴取した後、和束町石寺地区を視察
けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)は、平成22年に閉館した「私のしごと館」を、国際的なイノベーションの拠点として再生させるために、国から京都府が譲り受けた施設で、今年5月21日に本格的にオープンしました。KICKは国家戦略特区のオープンイノベーション拠点として今後機能していくことが求められています。
京都府は、2014年5月に大阪府、兵庫県とともに地域の強みである、健康・医療分野における国家戦略特区に指定されました。府では「イノベーションの都・京都~世界最速時間による基礎研究成果の実用化を目指して~」をテーマに、京都からイノベーションを起こし、人や技術がさらに京都に集まる仕組みを作るよう特区を活用して取組を進めています。特区に指定されることにより、金融や税制面の支援が受けられるほか規制の特例措置が受けられ、研究開発や事業化が進むことが予測されます。これまでの取組成果として、保険外併用療養の特例が認められ、スピーディーな先進医療の提供が可能となったり、iPS細胞由来の血小板製剤供給事業において、課税の特例が認められたりするなど、特区の成果は上がっています。
京都府では、大学等研究機関や民間企業等が研究開発の場としてKICKをどのように活用していけばいいか、検討を重ね整備を進めてきました。その結果として、今年度から1.関西・けいはんなのポテンシャルを活かす、2.学術と産業の融合により新たな価値を創造する、3.生活と文化のイノベーションを創出する、を基本コンセプトに運営しています。現在は、大学や企業などのさまざまな分野にわたる3つの研究計画(ICT・エデュケーション分野、エネルギー・アグリ分野、カルチャー分野)が認定され、事業が動きだすなど、今後さらにプロジェクトが集積することを見込んでいます。
KICKが位置するけいはんな学研都市には、京都大学をはじめとした大学や企業の研究所などがすでに立地しているところですが、今後はKICKを中心に、さらなる産業の集積が進み、特区の利点を活かして新たな事業が創出されることが期待されています。
説明を聴取した後、KICKを視察
京丹後市にある丹後王国「食のみやこ」は、「丹後あじわいの郷」をリニューアルし、農林漁業分野における6次産業化と食に係わる人材育成の4次産業化を合わせた10次産業化の拠点として今年の4月、オープンしました。リニューアルのコンセプトは、1.「丹後の本物の食をあじわう拠点」集客目標50万人(H27)、2.「10次産業化拠点」「食の人材の輩出」、3.「丹後観光のゲートウェイ」情報発信機能の強化の3つです。4月のオープン以降、7月12日までの入園者数は約13万2千人、売り上げも約1億3千万円と順調な滑り出しとなっています。
前身の丹後あじわいの郷は、平成10年度に開業し、10年度は、約35万人の入園者があったものの、リピーターの獲得や園の魅力を継続して発信していくことが課題となり、26年度には約10万人に落ち込んでいました。こうした状況から「丹後王国 食のみやこ」のコンセプトを明確にし、そのコンセプトに沿って運営を継続的に実施していくことが重要であることから、民間会社を中心に京都を代表する食品企業や農業者などからなる新たな運営会社を設立し、地域と連携しながら運営をされています。また、園の従業員は、90%以上が地元からの雇用で、リニューアルに伴う増員により新たな雇用を生んでいます。
運営会社は発足して以来、1.店舗数の拡大、販売の強化、オリジナル商品の拡充といった購買機会の拡大・未改装施設を活用した売り場作り、2.イルミネーションの拡充や「海の京都博」、地域のイベントとのコラボイベントといったアトラクションの充実、ホームページの充実、3.旅行代理店との契約や近隣の駅からのシャトルバス運行など他の団体との連携、4.10次産業化拠点として農業や食・観光に係わる人材の育成を推進するなど、拠点施設としての機能強化と魅力創出といった取組を進められています。
丹後王国「食のみやこ」は、園全体が西日本最大級の「道の駅」として、また丹後地域全体の総合案内・情報発信拠点「丹後ゲートウェイ」の機能を備えた施設として、丹後地域の資源や人材と連携し、更に集客力を高めていきたいとのことでした。
施設について説明を聴取した後、園内を視察
野生鳥獣による農作物被害は京都府内でも大変深刻な課題となっており、その対策として京都府では、恒久防護柵の設置や狩猟・捕獲等に取り組んだ結果、近年、被害は減少してきているものの、中丹広域振興局管内における被害総額は約7,200万円(平成26年度)に上るなど、依然大きな被害が生じています。また中丹管内はイノシシとシカの捕獲頭数が府内でも多く、昨年度には合計約1万頭が捕獲されていますが、その多くは活用されず、埋設・廃棄されているのが現状です。
こうした状況の中、平成25年に鹿肉を安定的かつ衛生的に処理し、供給できる施設が管内で初めて整備され、また、平成26年の世相を反映した料理「今年の一皿」((株)ぐるなび総研発表)に「ジビエ料理」が選定されるなど、都市部を中心にジビエブームが広がり出したことから、中丹広域振興局では、こうしたことを契機に、捕獲された鳥獣を地域資源として利活用するため、ジビエを普及させる取組を始めました。
しかしながら、ジビエを普及していくに当たっては、狩猟者の高齢化・人手不足といった捕獲者の実情や、利用できる個体数がまだまだ少ないこと、鹿肉など鳥獣の肉は、硬い、獣臭いといった先入観が強く、また、調理方法も普及していないなど、多くの課題がありました。
そのため昨年度には、鹿肉を安定供給するため、シカを一斉捕獲する大型捕獲柵を設置。また、飲食店向けのジビエ料理講習会・ジビエクッキング教室を開催したり、中丹管内の28の飲食店が一斉にジビエ料理を提供する中丹ジビエフェアを実施したりするなど、加工業者から飲食店、さらには消費者へジビエをPRすることに力を入れてきました。
今年度は、これまでの取組を強化するとともに、首都圏で「中丹産ジビエ」をPRするなど、中丹で捕獲されたジビエの認知度を高めるための事業にも計画的に取り組んでいます。
さらに、ジビエ猟師で食肉処理業者である方からは、野生鳥獣肉は適切に調理することでおいしく栄養的にも優れた料理になり得る天然の高級地域資源であること、そのために食肉利用に適した捕獲、衛生的な処理方法などを、狩猟者はもちろん料理人などにさらに浸透させていくことが重要との説明がありました。
このように、野生鳥獣の利活用を促進することにより、農林業被害の防止に加え、野生動物との共存、さらには地域の活性化につなげていきたいとのことでした。
取り組み概要について説明を聴取。
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