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更新日:2016年3月31日

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農商工労働常任委員会管内調査(平成28年1月19日~1月21日)

阿蘇地域世界農業遺産推進協会[於:阿蘇草原保全活動センター](熊本県阿蘇市)

世界農業遺産の認定及びその後の活動について

世界農業遺産(GIAHS(ジアス): Globally Important Agricultural Heritage Systems)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化、景観、生物多様性に富んだ、世界的に重要な地域を次世代へ継承することを目的に、国連食糧農業機関(FAO)が平成14年から開始したプログラムです。 平成27年12月15日現在、世界では15カ国36地域が認定を受けており、「阿蘇の草原の維持と持続的農業」は平成25年、世界農業遺産に認定されました。

「阿蘇の草原の維持と持続的農業」認定のポイントは、1.持続的な草原管理システム、2.多様な農林産物、3.生物多様性と生態系機能、4.優れた景観と水の恵み、5.農業と関わりの深い伝統文化、の5つで、阿蘇地域は千年以上続く「野焼き」など伝統的な草原の管理方法により、木が生い茂るのを防ぎながら、「あか牛」の飼育に必要な草資源を確保するなど持続的な農業の営みによって雄大な自然景観を維持しているところが評価されました。

世界農業遺産に認定されることにより、国際的な知名度が向上し、観光振興や農業振興に生かされること、世界文化遺産・世界ジオパーク認定への弾みとなることが期待されています。また、これまで受け継がれてきた「野焼き」などの作業が、認定されることにより、改めてその価値に地域住民が気付き、さらに守っていこうという機運につながったことが重要なことだと説明がありました。京都には農業遺産はありませんが、同じように日本文化遺産の「お茶」の歴史・景観があり、こうした取組が地域住民の地元への誇りにつながり、観光、農業の振興につながっていくことなどを再認識しました。

阿蘇地域においては、遺産認定を契機として、草原の管理システムを保存しながら農業遺産としての阿蘇をPRし、その付加価値を高める取組を進めていかれるとのことでした。

主な質疑

  • 遺産認定による農業システムの維持と農業所得向上との関係
  • 世界遺産との違いについて
  • 地域の農業の状況、就農者の年齢について
  • 遺産認定をきっかけとした農業や観光の振興について
  • 遺産認定の重要な要素について など

 

概要説明を聴取した後、施設を視察

日本磁器誕生・有田焼創業400年事業実行委員会(佐賀県有田町)

有田焼の創業400年事業について

有田焼は、1616年に陶祖・李参平が有田で日本初の磁器焼成に成功したのが起源と言い伝えられ、江戸期に誕生した「古伊万里」「鍋島」「柿右衛門」様式は、欧米各国の人々から高い評価を受け、JAPANブランドの先駆けとなりました。今年、誕生から400年の節目を迎えたことを機に、有田が有する技術・歴史・伝統・文化・自然等の資産をさらに磨き上げ、次代につながる人づくりと魅力的なまちづくりを図る取り組み「日本磁器誕生・有田焼創業400年事業」が始まっています。

有田町では、町長を委員長とする実行委員会が組織され、1.記念セレモニー、2.有田焼の展示・催事、3.観光集客イベント、4.未来へつなぐ企画、の4つの委員会にわかれて事業を進められており、また、県でも「ARITA 17 PROJECT」として酒蔵とのコラボレーションや欧州でのマーケティングリサーチ、ミラノ万博をはじめとした見本市への出展など17のプロジェクトが進行中です。

佐賀財務事務所の発表によると、平成26年の有田焼の売上高は前年比0.2%増の約19億円で、2年ぶりに増加に転じました。(※)しかし、ピーク時の平成2年には約157億円の売り上げを記録したこともあり、この400年記念事業を契機に売り上げが持ち直すことが期待されています。

京都においても国指定の伝統的工芸品である「京焼・清水焼」があります。有田焼と同様に売上高の減少や後継者不足の課題を抱えており、見本市への出展や「京もの認定工芸士」の認定制度などにより販路開拓や技術の伝承に取り組んでいます。

有田町では窯業がもっとも主要な産業となっており、町にとっても多様な製品開発や観光との連携による有田焼の産地の活性化は重要な課題です。400年記念事業として実施される予定のさまざまな事業において販売強化に取り組むとともに、「有田キッズ検定」の実施など、子どもたちが参加できる事業を通じて、若い世代への普及を図っていかれるとのことでした。

※ 調査は有田焼の組合に所属し、共販制度を利用する窯元から商社への売上高を集計しており、直売する窯元は含まれていない。

主な質疑

  • 400年祭をきっかけとした今後の有田焼の後継者づくりについて
  • 販路開拓について
  • 酒造業界とのコラボレーションについて

 

概要説明を聴取した後、有田陶磁の里プラザを視察

 

伊万里市議会(佐賀県伊万里市)

伊万里港の日本海側拠点港の取組について

伊万里港は、福岡県、長崎県に接し、水深が深い天然の良港で、韓国までの距離は200キロ、また、福岡、長崎県が100キロ圏内に位置し、東アジア・東南アジアのゲートウェイ、北部九州の物流拠点として期待されています。古くは焼き物・石炭の輸出にはじまり、昭和30年代後半からは港湾施設や工業団地の整備が進められ、工業港として発展してきた経過があります。現在、港では原木、石炭、砂利・砂等の貨物が取り扱われ、工業団地には水産加工、木材関連企業、半導体企業、造船の大手企業等が立地しています。

平成9年にはコンテナ航路が開設され、現在、中国、韓国等との間に5つの航路(※)が開設されています。港湾にはガントリークレーン、ジブクレーンが設置され、平成26年の実入りのコンテナ取扱量は31,610TEU(対前年比20%増で過去最高)。うち90%が輸出です。コンテナ輸出の相手方は中国、東南アジア、韓国の順に多く、取扱貨物の主要品目のうち、輸入は家具、飼料、日用品、輸出はロール紙、古紙、木材が多くなっています。

また港湾の整備に併せて広域幹線道路の整備が進んできました。昨年新しく港湾近くにインターチェンジができたことにより、福岡市や佐賀市など主要都市への陸上輸送がより便利となりました。

伊万里港のセールスポイントは1.東アジアに近く、全ての航路がファーストポートであること、2.バックヤードが広く、重量物の輸出入に便利、3.静穏で地震に強い安全な港、4.輸出コンテナ助成制度によりコストが安いこと、があげられます。また24時間の荷役体制が可能になったことから船会社、荷主の利便性が向上したとのことです。

伊万里港は、平成23年には舞鶴港と同様に日本海側拠点港(国際海上コンテナ)に選定されました。これを機に、輸出入貨物の集荷促進、航路の開拓・充実などさらなる伊万里港の利用促進を図るため、伊万里港振興会では国内外でのポートセールス、貨物助成制度の充実にさらに取り組まれていくとのことでした。

1.華南・韓国航路、2.大連・青島航路、3.上海航路、4.釜山航路、5.国際フィーダー航路(※1)の5航路がそれぞれ週一便で運行。(H27.1現在)

※1 神戸港を経由して世界中への輸送するルート

主な質疑

  • 博多港との連携について
  • 輸出コンテナ助成制度について
  • 輸出入ルートについて
  • 伊万里港の工業用地の状況について
  • 航路の開拓について  など

 

株式会社伊万里木材市場 (佐賀県伊万里市)

林業の6次産業化の取組について

(株)伊万里木材市場が取り組んでいる木材のサプライチェーン(効率的な流通体制)は、伊万里港に面した広大な土地で、需要に応じて原木の生産から需用者までの生産流通過程を一体化し、ジャストインタイムで必要供給量を住宅メーカーなどに安定供給できる体制の構築です。このいわゆる山側の川上から川中、川下が一体となった伊万里木材コンビナートでの6次産業化の取り組みにより、原木・製品の品質維持、価格安定が図られ、林業・木材産業における安定的な収益を確保しています。

伊万里木材コンビナートは、平成16年、国産材の新しい流通形態と集成材の大量安定供給を図る目的で設立され、(株)伊万里木材市場、西九州木材事業協同組合、中国木材(株)の3社で構成しています。九州一円から木材を集荷し、西九州木材事業協同組合がラミナを製材し、中国木材がその製材されたラミナを集成材に商品加工し、専用岸壁から全国へ輸送しています。それぞれの企業の利点を生かすことにより、物流コストの軽減、高品質な製品製造が可能になっています。

このほかにも、伊万里木材市場では鹿児島県においてこれまで外国産材のみで提供されてきた2×4(ツーバイフォー)用材を国産材で提供する新しい仕組みを構築し、国内はもとより、将来的には海外への輸出も見据えた事業を進めておられます。集荷した原木を乾燥・製品加工し、最終的には住宅メーカーに納品する事業は現在、農林水産省へ6次産業化の認定申請をされています。

また伊万里木材市場では、森林の整備をこのスキームの重要な根幹ととらえ、計画的な伐採など、計画にのっとった森林整備を実施し、循環型森林の育成につなげています。事業を通じて1次、2次、3次の事業者それぞれにしわ寄せがこないように、利益は分配されています。

現在国産材については、供給量が安定しない、価格が安定しない、必要な時にないといったことが課題とされていますが、事業のスキームを確実に構築し、需要に応じてしっかりと高品質製品を供給することで需要者からも信頼を得られるよう、さらに事業を進めていかれるとのことでした。

主な質疑

  • 地元木材の利用状況について
  • 地元の製材所との連携について  など

概要説明を聴取した後、伊万里木材コンビナートを視察

長崎県議会(長崎県長崎市)

ながさき田舎暮らし情報局の取組について

長崎県内には21の市町村があり、南北に長く、また、離島も多いため(有人離島数51)、地域ごとに気候や風土が違うという特徴があります。地方創生の施策が全国で進む中、移住者の獲得競争が自治体間で激化しており、県においても今年度から昨年の6倍にもあたる約6000万円の予算を組み、市町村と連携しながらそれぞれの地域にあった移住促進施策に取り組んでいます。

県では本年度から東京に移住専用相談窓口「ながさき暮らしサポートデスク」を設置しました。10月までの相談実績は延べ320件、うち移住実績は6世帯となっています。また4月には、県庁に移住促進センターをオープン予定であり、併せて無料職業紹介を実施される予定です。平成18年から始まった県の移住施策ですが、当初のターゲットは退職にさしかかった団塊の世代でした。現在は若い方をターゲットとしていますので、移住にあたっての一番の課題は仕事の確保です。そのため職業紹介を相談のメインに据えて取り組まれていくとのことでした。

また、全国初の取り組みとして「キャンピングカーでらくらく移住探し」を実施されています。県内には公共交通機関や宿泊施設が少ないところも多く、キャンピングカーを活用して移住先を体験してもらうことを目的として開始されました。低料金(1日3000円)での利用が可能で、この取り組みは8月からスタートしていますが、利用者のうち、現在までに2世帯が移住を決めています。

そのほかにも都市部での移住相談会、移住アドバイザーの配置、移住を考えておられる方を対象とした「ながさき移住倶楽部」の創設、県内の市町村で実施されている優良なお試し住宅の整備、空き家バンクの登録制度など県全体でさまざまな事業が行われています。

県内市町村においても移住に積極的なところ、そうでないところがあり、県としても市町村とさらに連携を図りながら、温暖な気候や災害発生率の低さ、病院数の多さなど「快適・安全・安心」をアピールし、他府県との差別化を図りながら取り組みを進めていかれるとのことでした。

主な質疑

  • 県への移住及び県外への移住した理由について
  • Uターン・Iターンの割合について
  • 県内での移住の偏り・市町村連携の課題について
  • 移住者の定着状況について 
  • 県独自の支援の特徴について
  • 海外からの移住について  など

 

水産業の概要及び大学と連携した人材育成の取組等について

 長崎県は対馬、五島列島など離島が多く海岸線の長さは全国2位、島の周辺には多くの魚礁があり、養殖、定置網、まき網などのさまざまな沿岸漁が行われています。四季を通じて200種類以上が水揚げされ、漁業は県の重要な基幹産業のひとつです。水揚げされた水産物は首都圏、関西、福岡方面に出荷され、平成24年の漁業の総生産量は約26万トン、生産額は約900億円でいずれも全国で2位となっていますが、年々生産量、生産額、漁業経営体数が減少しています。

県では、生産量や就業者数の減少を受けて、漁業に関する知識や技術を習得するため「未来に繋ぐ漁村塾事業」を実施しています。内容は、漁業者等が水産業に関する知識・技術を習得する「漁業講座」、各地域で漁業士を対象とした専門的な研修を行う「ベテラン研修」、長崎大学が実施する「海洋サイバネティクスプログラムへの参加支援」、経営に関する「漁業経営セミナー」です。

この「海洋サイバネティクスプログラム」は、平成19年に大学が県とNPOと連携して水産業・水産加工業を活性化させる人材を養成するために開講されたものです。対象は県内の水産業・水産加工業に従事する方または地方公共団体の職員とされており、受講料は無料。授業内容は水産業の課題を題材とした講義と演習が中心であり、海洋環境の保全、水産資源の育成・生産、水産物の加工・流通に関する高度で専門的な教育を受けることができます。受講者の中では「儲かる漁業」への転換を進めるため、水産品をそのまま出荷するのではなく、加工して付加価値を付けることにより、ヒット商品を生み出した方もいらっしゃるとのことでした。このプログラムをきっかけに百貨店のオンラインショップで「長崎大学×おいしいもの発掘便」というコーナーが生まれ、水産品の販路の開拓につながっています。

今後もこうした取り組みを通じて人材育成を図り、水産業の活性化に取り組んで行かれるとのことでした。

主な質疑

  • 新規就業者への漁業権の取扱について
  • 漁獲量の変化について
  • 水産業振興への課題について
  • 漁業への就業年齢について
  • 漁村塾(人材育成)について など

 

お問い合わせ

京都府議会事務局委員会課調査係

京都市上京区下立売通新町西入

ファックス:075-441-8398