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岐阜市は、市域南部に鉄道が位置しており、市内の移動に鉄道が活用しにくい状況にあります。また、岐阜市でも既に人口減少傾向に入り、人口集中地区が拡散している状況が今も続いており、都市経営が非常に難しくなっているという課題があるとのことです。さらに、公共交通も平成16年度末に路面電車の廃止、市営交通も長年経営赤字が続き、将来の市政への財政負担が非常に大きいということで廃止されるという大きな変化がありました。
このため、市民を巻き込んで市民交通会議において将来の公共交通体系のあり方について議論され、残されたバスを中心とした公共交通ネットワークにより41万都市を支えていく方針を立てられました。その柱がBRTの導入と地域が経営するコミュニティバスの取組です。これにより、ようやく公共交通の減少が止まり、負のスパイラルから脱却されたとのことでした。
BRTには、鉄軌道と比較して初期投資が安価であることや需要、都市構造の変化に応じたルート設定が可能という高い柔軟性などの特徴があり、また、揺れが少なく高齢者にやさしいバスで、バリアフリー対応もスムーズにできるようになっています。平成23年3月に導入され、現在、3路線で4台が運行されており、路線全体で利用者数が増加しています。上下分離の考え方で導入され、走行環境、利用環境の整備は自治体が担い、交通事業者はバス車両の購入費負担、整備工場の整備と安全安心の確保を担われています。
全国的に導入の検討をしている自治体は多いものの、効果が明確でないことから実際に導入されているところは少ないですが、岐阜市では段階を踏んだ整備とあわせて、市民に効果を見せながら理解を得ていこうと導入効果が最も早期に期待できる路線に導入する戦略的な取り組みで合意形成を図られました。導入により大量輸送が可能となりバスの待ち時間が短縮され、朝の駅前広場でのバスの待ち時間が13分短縮されたとのことです。
また、コミュニティバスは地域が経営し、利用者が増えるモデルとして高評価を得ているとのことで、ルート・ダイヤ・運賃も運営協議会を設置し、地域が決め、バス停も地域で組み立てているという特徴があります。行政では、手続きや補助金で支え、継続する基準を示しています。この基準を守ることができれば継続できるとのことで、現在18地区で運行され、特に高齢者の日常生活の移動の確保に役立っているとのことでした。
今後、まちづくりとの連携として、先般、国土交通省において承認された地域公共交通再編実施計画により、ネットワークを公共交通で支えていこうということで、基本を歩きとし、歩いて出かけられるまちづくりに向け、公共交通を軸に幹線・支線・コミュニティバスが連携したバスネットワークを構築し、公共交通全体の利便性向上を目指されるとのことでした。
連節バスに乗車
岐阜県は、管理する15m以上の橋梁が全国2位(1,634箇所)、トンネル延長は全国1位(104,252m)と、全国でもトップクラスの膨大な道路施設があり、また、これらが急速に高齢化を迎えている状況で、橋長2m以上の全橋梁4,336橋のうち、架橋後50年以上経過した橋梁は1,725橋で約40%を占めています。
また、県の財政状況も厳しく公共投資額はピーク時と比べて37%と極端に減少、さらに土木技術職員数も減少しており、一人当たりの管理延長は、近県の中では最も長く(10.12km)なっています。県内の建設業も建設許可業者数や従業者数が減少しており、特に若年就業者数が極端に減少している状況です。
このような現状のなか、県では、施設の機能・特性にあった効率的で効果的な維持管理を3つの柱で対処することとされました。
戦略的・効率的に維持管理するため、道路施設維持管理指針では維持管理水準を定義、明確化し、道路施設の長寿命化・維持管理コストの縮減、効果的かつ計画的な維持管理の実現に取り組まれています。
また、社会資本を支えるパートナーの育成・支援の必要性を認識し、社会資本の維持管理技術を習得し、発注者・受注者の立場を超え、確固たる高度な技術をもって、地域に密着した貢献をし、安全・安心な県民の暮らしを下支えする技術者として社会基盤メンテナンスエキスパート(ME)を育成されています。平成20年度から、岐阜大学、建設業協会、測量設計協会などの3業界、県の産官学連携により育成を始められ、現在276名、本年11月に新たに33名が加わる予定で、309名となるとのことです。
MEは、適切な点検・補修を実施する技術者として活躍したり、災害等において初期調査を行い助言を行ったり、小規模橋梁修繕で点検から補修まで一体となった業務の実施などで活用されています。県職員のMEは、県内11土木事務所に必ず一人配置しており、市町村からのメンテナンスの相談を受けるなど支援体制をとっておられます。また、点検・診断・工法の提案・補修までを一つのパッケージにして地域の建設業者に委託されています。従来は、別々に発注され、補修完了まで時間を要しましたが、これにより地域の建設業者は身近なインフラを周知していることから迅速な対応が可能となり、工期の短縮やきめ細やかな対策が可能になったとのことでした。
さらに県民を巻き込んだ県民協働の仕組みをつくってパートナーとして道路施設の簡単な点検や情報提供をボランティア活動で行ってもらう社会基盤メンテナンスサポーター(MS)の取り組みを平成21年度から始められ、現在は1,095名に委嘱されています。
今後も確かな安心安全の県道づくりを進め、これまで整備してきたインフラに手を入れて長くかしこく使っていくために最小限の経費で効率的効果的に、そして計画的に維持管理を進めるとともに緊急輸送道路を重点的に整備することにより防災災害対策を推進されるとのことでした。
下水道には汚水処理による生活環境の改善、雨水排除による浸水の防除、公共用水域の水質保全という大きな役割があります。それに加え近年では新たな役割として、省資源・省エネルギー化の推進による地球環境の保全に貢献、施設の上部を公園にして開放するなど施設の多目的利用による良好な都市環境の創出などが行われています。
東京都では、下水が気温と比べ「夏は冷たく、冬は暖かい」という温度特性を活用し、冷暖房用の熱源として利用できることから水再生センターや管きょなどから主に下水と処理水から下水熱を取り出して熱需要施設に送る取組をされています。未利用エネルギーである下水熱を利用することにより省エネに貢献、また、CO2排出も削減でき、下水や処理水への排熱によりヒートアイランド対策にも貢献できるとともに、冷暖房用エネルギー費の低減、冷却水費用が削減できるという特徴や効果が見られるとのことです。
水再生センターにおいては、昭和62年からヒートポンプを活用し処理水を空調システムに利用されており、電力量やCO2排出量削減の効果が見られるとのことでした。
また、後楽一丁目では地域冷暖房に活用されています。平成6年7月から供給を開始され、未処理水下水の温度差エネルギーを熱源として東京ドームや周辺のホテル、ビルなどに熱を供給されています。ここでは、生下水から熱交換器を通して熱を受け渡すまでを東京都が下水道事業として管理整備し、受け取った熱をヒートポンプを通し入れ替え、需要家に熱を送る部分は熱供給事業として東京熱サービス株式会社が管理しています。
さらに、新砂三丁目地区においても平成14年4月から焼却炉を冷却した排熱エネルギーを活用した洗煙水をベースに利用し、高齢者医療センターなど福祉施設を中心に送られているとのことでした。
最近では、芝浦水再生センターの再構築の中で、平成27年5月に水再生センターの中に民間のビルが建てられました。これは、日本では今までなかった事例とのことです。ビルの下には雨天時貯留池が設置されているほか、下水熱を使ってビルの全空調を賄っておられ、さらに、下水処理水熱供給システムのため、屋上に冷却塔がなく、ヒートアイランド対策にも効果があり、太陽光パネルが設置されるなど、環境対策に力が入れられているとのことです。
下水熱事業を実施する上では、採算性が求められ、安定的に熱を利用する需要家を確保すること、熱源と熱需要のマッチングや将来的な下水流量の変動、下水温度の変化が下流での下水熱利用に及ぼす影響もあり、設置個所が課題であるとのことでした。
目黒区大橋一丁目周辺地区は、武蔵野台地の河川流域部にあたり周辺に比べて低地であり大気が滞留しやすい地形であることと、国道と都道が交差する交通の要衝で以前から都内でも有数の環境悪化地点であり、地域の長年の課題となっていました。さらに、中央環状新宿線大橋ジャンクションの整備計画により、新たな環境悪化が懸念されること、ジャンクション建設により当地に住み続けることができなくなることへの不安から、地元でのまちづくりへの取り組みが始まりました。まち・みち・再開発一体型プロジェクトを進められることになり、大橋ジャンクションの道路整備は首都高速道路株式会社で、住民の生活再建を図るための再開発事業は東京都、ジャンクションエリア周辺地域の整備は目黒区が分担して進められました。
目黒区では、再開発と道路事業で生み出された空間を有効に利用し、環境に配慮した形でまちづくりを進めようと平成20年6月、大橋ジャンクション上部空間等を区立公園化する利用計画を決定されました。公園づくりにあたっては、地域の方と話し合い、内容を詰めていく公園づくり検討会を立ち上げ、公園基本構想を策定し、公園の整備内容を決定、また、利用と管理の検討会では、公園完成後の管理についても地域の方と話し合い、基本ルールと管理運営方針をまとめられ、平成25年3月に高速道路ジャンクションの屋上に整備された全国初の公園として目黒天空庭園・オーパス夢ひろばが開園しました。
ジャンクションは、地下35メートルから地上35メートルまで上がるため、道路が2周してつなぐ構造になっていることから、その勾配のあるループ状の空間を生かし、車いすでも利用できるようつづら折りに通路を設定したバリアフリー対応の回遊式の日本庭園となっています。整備にあたっては、大規模人工地盤上での緑化事業となりクレーンを使って5,000平方メートルの盛土を行われたとのことでした。
また、検討会において出された「大人も楽しめる公園づくり」との要望を受け、天空庭園の中央部にオーパス夢ひろばを整備されました。このひろばは、夜間貸し出しをされており、フットサルの利用が多く、平成26年度は69%の稼働率で336万円の歳入があったとのことでした。
公園の管理は、まちづくりに関わってきたNPO法人に委託されており、ボランティア団体によるブドウ・無農薬野菜の栽培やイベントの開催、清掃・除草など住民主体による管理運営が行われています。
なお、大橋一丁目地区の再開発事業は、道路事業協働型再開発事業という新しい事業手法を採択し、首都高速道路株式会社が行う道路事業との協働による事業展開を図られました。これにより、ジャンクションの早期整備と関係権利者の生活再建を同時に実現できたとのことで、このような事業手法を全国に先駆けて採用したこの事業は、今後の都市基盤整備における先導的モデルになると期待されているとのことでした。
目黒天空庭園を視察
オーパス夢ひろばを視察
柏市では、2005年につくばエクスプレスが開通し、柏の葉キャンパス駅を中心とした地域を柏市の第2の都市拠点として、現在まちづくりが進められています。
柏の葉地域には、東京大学柏キャンパス、千葉大学が立地しているという地域の最大の資源を活用して社会的課題の解決モデルとなるような次世代型まちづくりを、公(千葉県、柏市)・民(企業、住民)・学(東京大学、千葉大学、学生)連携で進められています。ポイントは、2008年3月に千葉県、柏市、東京大学、千葉大学の4者で策定された柏の葉国際キャンパスタウン構想をまちづくりを進める全員で共有することです。それに企業2社を加えた6者で推進されており、「大学とまちの融和」によって次世代型のまちを実現しましょうということがコンセプトになっています。これは、まち全体が大学のキャンパスのように緑の豊かな空間となり、知的交流の場となることが、この構想の目指す都市の姿であるとのことです。
この構想には、環境、産業、国際化、移動交通システム、健康、エリアマネジメント、都市空間、イノベーション・フィールドという8つの目標があります。この中には、まちの緑被率40%、世界をリードする10の研究・教育機関の誘致、自動車分担率10%低下といった数値目標が設けられており非常に高い目標となっています。このため、「公・民・学」が共同で設立・運営する柏の葉アーバンデザインセンターを事務局として、実現に向けた検討や関係機関との調整を行う継続的なフォローアップを実施されているとのことでした。
また、柏の葉は、環境未来都市の指定を受けており、低炭素社会に対する環境共生、超高齢化に対する健康未来、低成長社会に対する新産業創造の取組を推進されています。特に、駅を中心とする市街地の先導エリアでは、エリアエネルギー管理システムを中心に、分散した太陽光、風力、ガスなどの電源を併用、電力を融通し、住居の共用部、ホテルや商業施設など用途の異なる施設の間でエネルギーのピークカットを実施され、災害停電時には自営の送電線で3日間の電力供給を確保する仕組みも整備されているとのことです。
さらに、市内に設置された無人のサイクルポートにおいて、柏の葉キャンパスカードを登録することでメールを通して情報を受け利用することができ、現在、社会実証実験中でマルチモビリティポートでは電気自動車、電動バイクも同様の仕組みで利用できるとのことでした。
このように、柏の葉エリアをモデルに先行的・実験的施策を実施されており、今後、その成果・知見を柏市や千葉県全域、全国、全世界に展開されたいとのことでした。
概要説明聴取を聴取した後、マルチモビリティポートを視察
東日本大震災後、原子力発電所が停止し、関東地方では広域的に計画停電が実施されました。エネルギー不足から日本にエネルギー問題が新たに登場し、それを解決するモデルを埼玉で作っていけないか、都市もあり田舎もあるということが特徴であり、埼玉でできることであれば日本全国どこででもできるはずだという考え方で、どこでもできるようなモデルを作ることを目指して進められています。
埼玉エコタウンプロジェクトは、エネルギーは最大需要量に足りるように供給する必要があり、発電所等の停止により供給不足が生じると停電が発生しますが、供給が不足するのであれば、需要をそこまで下げるという発想です。供給確保は国家的課題ですが、需要面の変革は地域がイニシアティブを握れる問題であると考えられ、自分たちで作れるエネルギーを作る「地産」と省エネを徹底的にする「地消」により、供給不足になるかもしれないが、それに備えるだけの需要量に減らせることができないか、このエネルギーの地産地消を具現化するモデルを埼玉でつくり、全国に発信することで問題解決に結びつけようとするものです。
このため、プロジェクトでは、日本中どこでも取組可能なモデルとするため既存街区で取り組むこととされました。根本の考え方は住民の方の間に自分たちで気がついて、自分たちで行動するという「省エネのムーブメント」を起こしたいということで、住民目線で発想し、行政が積極的に関与し、多様な事業者が参画するという、住民・企業・行政の協働・共助・協援で進められています。
まず、2つのモデル市で既存街区のひとつを「重点実施街区」に指定し、平成24年に始められました。開始当初は県の職員が、ほぼ毎週街区にいる状態で、住民の方に向けて説明会の開催、戸別訪問、アンケートの実施など何度も説明を行い、ムーブメントを作る動きをとられ、既存住宅に太陽光パネルや創エネ機器・省エネ家電などの整備を行い「スマートハウス化」を図ることを先行集中して進められました。また、その周辺では市町村が独自に商店街のエコ化や公共施設のエネルギー管理を一括管理する地域EMSや避難所エコモデルなどの事業を進められています。
モデル市のひとつ、東松山市の市の川地区では、3年間で350戸のうち43.1%が取組に参加され、太陽光の普及率は30.9%となり、省エネ・創エネにより従来外部から得ていたエネルギーをどれだけ減らすことができたかを表す地産地消実現率は32.3%で、大きな成果が見られたとのことでした。
現在、第2弾として、今年度から地域特性の違う新たな2市を展開エコタウンとして同様の取り組みを展開されています。また、民間事業者との協働により、民間の知恵と技術を活かしてエコタウン化を図るミニエコタウンの取組も進められており、エコタウンを県内全域に拡大していくことを目指されているとのことでした。
概要説明を聴取した後、商店街のエコ化シンボル太陽光発電施設を視察
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