[心の健康について]
〈社会的ひきこもり〉 「社会的ひきこもり」まめ事典
1「社会的ひきこもり」という病気があるわけではありません。
「社会的ひきこもり」とは、そのような病気があるのではなく、「社会的にひきこもっている状態」をさす言葉です。そのため、様々な背景があると考えられます。
また、ひきこもり状態は、必ずしも病的な状態を表すわけではなく、健康な成人でも気分の波や、ちょっとした出来事でひきこもることがあります。
一方、統合失調症などの精神疾患により、ひきこもり状態にある場合には、その病気の治療が進むことで、ひきこもり状態の改善も見られるため、ここでは除外して考えることにしましょう。
そこで、ここでは「社会的ひきこもり」を統合失調症やうつ病などの明確な精神疾患によらずに「6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態であること」をひとつの目安として考えていきましょう。
2「社会的ひきこもり」の原因はひとつではありません。
学校や職場で「いじめ」や「きつい労働」などの辛い経験があって、外出しにくくなったり、電車に乗れなくなったりすることがあります。また、目標を見失ったり、対人関係がしんどくなったりして無気力になり、社会生活を営みにくくなることもあります。個人を取り巻く様々な要素が、相互に絡み合って「社会的ひきこもり」にいたると考えられ、「本人の性格」や「親の育て方」などの一面的な理由からだけで、起きるわけではありません。むしろ、本人はもともと真面目で優しい性格の方が多いようです。
3「社会的ひきこもり」の人の数は、かなり多数にのぼると考えられています。
正確な値は、いまのところ分かっていませんが、少なく見積もって数十万人、多く見積もって100万人いるという見方があります。これらの数を参考に考えると、今日では、「社会的ひきこもり」の問題は、決して少なくないことがイメージできます。
4ひきこもる期間は、半年から十数年まで、さまざまです。
半年から1年と短期間で済む場合もあれば、5年、10年と長期にわたる場合もあります。ある調査では、平均ひきこもり期間は3年3ヶ月でした。本人が社会や人間関係からいったん身を引き、自分自身を見つめ直してじっくり考えるために、十分な時間を費やすことは無意味ではありません。むしろ、今後の人生において、有意義であるともいえるでしょう。しかし、本人と家族の距離がうまく取れずに関係がこじれてしまうと、ひきこもる期間は思いのほか長引いてしまうことも事実です。そのため、早めに信頼できる専門機関にご相談されることをお勧めします。
5男性に多いといわれています。
「社会的ひきこもり」に至っている男女の割合は、8対2とも7対3ともいわれています。圧倒的に男性が多いとされていますが、理由はまだ明らかになっていません。
本人も家族も一生懸命やってきたのに、ちょっとしたボタンのかけ違いで問題がこじれてしまうことも多いようです。