5.養殖業としての経営収支の試算
ここでは、京都府の作製したトリガイ養殖専用筏を用い通常コンテナ100
コンテナで養殖を行なうことを想定して試算しました。
支出において、筏関係の経費は大きなウエイトが占められていますが、これには筏本体の他に電動ウインチおよびデレッキ、櫓、養殖海域までの曳航・設置費が含まれています。コンテナ・フタ類は、交換用の数も含め全部で150
セットとしました。種苗は15mmサイズで4,000
個収容することとし、単価を1円/mmで試算しました。初年度に必要な金額は約264
万円、10年間の追加額(消耗品等の更新費)は約162
万となります。したがって、10年間に約426 万円の支出となります。
これに対して収入は、漁業者の養殖技術が海洋センターの技術と同等であると判断し、海洋センターの平成7年度から平成9年度の平均値を用いて収獲数・販売金額を算出しました。平成10年度は特異な年であったので、算出基準から除きました。この3年間は、養殖開始時期を8月としていましたが、実際は7月からの開始となります。そこで、7月から9月までの生残率を海洋センターの試験結果から80%と推定し、9月以降の収獲率は上記で述べた3
年間の平均値75%としました。販売価格は、大型貝500
円/個、中型貝300円/個、小型貝150
円/個で計算しました。総収獲数は2,400
個で、うち大型貝は1,342個(全収獲数に占める割合55.9%)、中型貝は636
個(同26.5%)、小型貝は422 個(同17.6%)となり、総販売金額は約93万円となります。したがって、10年間の収入合計は約930
万円となります。
以上のことから、トリガイ養殖を1筏100 コンテナ規模で実施すると、年間の平均的な利益は約50万円と見込まれました。
この収益に対して必要な管理作業の単価を試算してみました。定期的な管理作業として50コンテナを交換するのに5名でおおむね1.5
時間かかりましたので、100 コンテナでは延べ15時間・人となります。作業回数は、収容時から収獲時までに7回ありますので合計105
時間となります。あと、コンテナおよび網ふたの掃除が各回ごとに必要ですので、2時間/回の14時間と推定します。合計で作業時間は延約120
時間・人となり、収益から時間給を計算すると約4,000
円となります。
このようにトリガイ養殖は驚くほど儲かる仕事ではありませんが、魚類養殖などのように毎日毎日餌やりの作業があるわけではありませんので、自分の都合の良い時間を活用してできる仕事であり、他の漁業の副業として考えれば、十分魅力のある漁業ではないかと考えています。
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