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人権口コミ講座 172

スポーツとジェンダーと人権

関西大学文学部教授

井谷 聡子

遺伝子検査強制の裏に政治の影響

今年3月、国際オリンピック委員会(IOC)は、約30年ぶりにすべての女子選手を対象にした「性別確認検査」を再導入すると発表しました。「SRY遺伝子」の検査を起点として女子競技への出場資格を判断するというものです。

しかし、生物学的性は多元的要因で構成され、単一遺伝子(SRY)で決定することはできません。また、遺伝子という極めてプライベートな情報を半ば強制的に提出しなければならないなど、深刻な人権問題を抱えています。いったんは廃止された制度ですが、トランプ米大統領が国内外の団体にこうした検査を要求し、米国の意向を無視できない競技団体が次々と検査の導入を決め、今回のIOCの決定につながりました。

一方、国連人権委員会をはじめ、多くの人権擁護団体や専門家はこれに反対し、学術団体や法律の専門家からも撤回を求める声明が出されています。

人権を置き去りにしないスポーツを

スポーツでは、「公平らしく見えること」は大切です。しかし、それは全く同じ身体を持つことを指すわけではなく、それは人権侵害の上で目指すべきものでもないはずです。ところが、「絶対的な男女差」という思い込みと、実際には存在しない身体の同質性に基づいた「公平性」が優先され、科学や倫理、人権が無視されています。

この問題はトランスジェンダーの選手をめぐる議論でも見られます。排除ありきではなく、どうしたらすべての人に開かれたスポーツをつくることができるのかについて人権と科学的根拠をベースにした議論が求められます。

※令和8年1月発行の「人権口コミ講座27」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

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