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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:令和元年12月9日、ものづくり振興課 中島・足利)
株式会社aceRNA Technologies(外部リンク)(京都市)の進代表取締役にお話をおうかがいしました。
--まずは、御社の概要を教えてください。
進)2018年4月設立で、現在、常勤では4名体制(まもなく6名体制)で、「miRNAの新規機能の発見を通じて再生医療と新薬創出に貢献する」との企業理念のもと、特定の細胞種の識別・選別、細胞純化等の技術提供、それらのための試薬の開発・製造を行っています。具体的には、現在、「RNA Switch™シリーズ製品」の発売を開始しています。これは、京都大学iPS細胞研究所の齊藤博英教授らによって発明された「RNAスイッチ」技術を用いたもので、当社代表の進が、齊藤教授らとともに1年以上にわたり事業化に向けて取り組んできたものです。
--それはどういったものですか?
進)特定の細胞種の識別または選別ができる試薬です。細胞内に存在し、生命現象の様々な作用機序を制御すると言われているmiRNAを検知します。
--miRNAとは、マイクロRNAのことですね?
進)はい。DNA、RNAと同じ核酸の一種で、ヒトには現在、2657種類あると言われております。RNAと比べると塩基数が極端に短く、従来は不要な細胞成分だと言われていましたが、近年、ヒトの生理機能に深く関わっていることが分かってきたものです。細胞種ごとに特異的に発現し、例えばバイオマーカーとしても期待されています。
--なるほど。
進)「RNAスイッチ」とは、miRNAを「認識する配列(標的配列)」と「蛍光タンパク質やアポトーシス(細胞死)誘導因子などのマーカー遺伝子」を含む人工的に作製したmRNA (メッセンジャーRNA)のことです。RNAスイッチは細胞内に導入された後、目的のmiRNAが存在すれば分解されますが、存在しなければタンパク質が発現し、蛍光タンパク質が光る又は細胞死という形で細胞の識別・選別が可能です。
(細胞選別前の「i(赤文字)」で示した排除すべき細胞が、選別後では排除されている)
-アポトーシスとは?
進)以前は、細胞が死ぬということは、栄養不足や強い物理的・化学的刺激などで起こると考えられていましたが、細胞が自ら「自爆装置」を作動させて、能動的に死ぬことが分かっておりまして、胎児の体を形成するのもそうですし、細胞自身を攻撃する免疫細胞が能動的に死ぬことで健康を維持するといったこともそうですね。
--なるほど。話を戻しまして、「特定の細胞種の識別または選別ができる」ということですが、今回の「RNA Switch™」は?
進)第一弾として、心筋細胞用、iPS細胞用の製品です。
--心筋細胞用ですか。
進)iPS細胞やES細胞から分化・誘導した細胞には、未分化状態の細胞も残っており、未分化細胞をそのまま放置しておくと、望まない細胞を形成する可能性があるため、分化・誘導後の細胞だけを選別して取得することが課題となっています。ですので、iPS細胞やES細胞から心筋細胞に分化させていく際に役に立つということです。
--なるほど。
進)また、iPS細胞を作製する際の、iPS細胞に純化させていく工程でも同様です。
--他の手法はあるのですか?
進)現在、iPS細胞から分化させた組織細胞も分取には、セルソーターと呼ばれる装置を使っています。しかし、装置が大規模で、作業時間も長く、早い流速によって細胞へのダメージなどもあります。しかし、当社技術であれば、大規模な装置も不要で、細胞が生きたまま識別することが可能です。セルソーターでは抗体は使う場合が一般的ですが、RNA Switch™では抗体は一切不要です。また、表面抗原に依存しないため、応用できる細胞数も多いです。
--それはすごいですね。お値段って?
進)詳細は販売会社のウェブ等にあるとおりですが、数万円です。
--安いですね!では、細胞種ごとに識別したり選別したりする仕組みとはどういったものですか?
進)先ほど申しましたとおり、ヒトのmiRNAは現在2657種類あります。そのそれぞれのmiRNAと対応する標的配列があります。標的配列は、その対となるmiRNAと一致すると分解されます。
(株式会社aceRNA Technologiesのホームページより)
--ということは、心筋細胞、iPS細胞以外にもラインナップを増やそうと思うと、標的配列も多種類必要ということですか?
進)そのとおりです。既に当社は2657種類全て揃えています。マイナス80度の環境で大切に保管しています。
--すごいですね!こういったことをなさっている企業は他にあるのですか?
進)ないと思いますね。
---初歩的な質問で恐縮ですが、 RNA Switch™ってどうやって作るのですか?
進)DNAを増幅させるための手法として一般的に用いられる、PCR法やその他の転写方法を用いて作製していきます。現在ではPCR装置も大分安くなり、数十万円で購入することもできます。
---今後の展望はいかがでしょう。
進)今後、順次、対応する細胞選別試薬のバリエーションを追加していくとともに、共同研究等を通して、再生医療用の細胞に使用できる医療用の細胞選別製品を提供していきます。また、再生医療だけではなく、自社のRNA Switch™ライブラリーを使用した創薬事業も進めていきます。
今後の展開が楽しみですね!
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