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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:平成28年12月1日、聞き手・文:ものづくり振興課 笠原)
【同社マスコットキャラクター:レーベル】
株式会社アカツキ製作所(綾部市)の小寺代表取締役社長にお話をおうかがいしました。
—企業の概要について教えてください。
小寺) 当社は、大阪市港区市岡の地において、大正8年(1919年)に測定器メーカーとして創業し、確かな資料はありませんが、わが国では初の国産水平器を製造したと言われています。
創業者である小寺傳次郎は、細々とした機械類が好きな人でしたが、様々な製品に興味を持つ中で、ドイツ製の水準器を見たときに、「地味だが幾ら技術が発達しても、測定原理は変わることがない」と感じたことが、国産水平器の開発、製造に取り組んだきっかけと聞いています。
その後、昭和19年に戦災に見舞われ、当時の知り合いを頼って、綾部へ疎開することとなりました。終戦後は大阪へ戻る予定もあったようですが、綾部の風土が気に入ったようで、そのまま綾部で操業を続け、以来、現在に至るまで100年近くに亘り、水平器一筋に専門メーカーとして、事業を営んでまいりました。
—御社の水平器のラインナップは、どのようなものがありますか?
小寺) アクリル製水平器、アルミ製水平器、設備・土木用水平器などの他、建設機械や建設車輌などに内蔵される水平器など、ユーザーの用途に合わせた作業工具を製造、販売しています。
そして、建築現場で働く職人の皆様におなじみの「KOD」ブランドは弊社の登録商標です。「KOD」のロゴマークの起源は、創業者「小寺 傳
次郎(こてら でんじろう)
」のイニシャル「K」と「D」を表し、真ん中の「O」は気泡をモチーフにしたものです。
特に、気泡管の製造、フレームの加工、組立、精度調整等に対して「MADE IN JAPN」の技術と厳格な品質管理など、水平器メーカーとして国内のリーディングカンパニーであると自負しています。
—「MADE IN JAPAN」の技術とのことですが、どのようなことを心がけておられますか?
小寺) そもそも、アルコール等の入った容器内の気泡の位置によって水平や傾斜を測るという現在の水平器に通じる測定器は、17世紀半ばには実用化されていたようです。したがって、他の道具のように新規性のある製品をつくり出すことが難しいと言われています。
そのため、当社では、まず、多品種小ロット対応で自社開発にこだわり、図面を引くことから始まり、素材の加工から組立まで一貫生産を行っています。
生産工程は手作業が主体となり、あえて自動化では対応が難しい製品づくりを心がけています。これが、結果的に、機械化により低コスト品を大量に生産する中国等の海外企業には、真似のできない高精度な製品づくりに繋がっていると考えています。
—ほかに心がけておられることは?
小寺) 顧客へのヒアリング等の市場調査を行い、使い勝手の良い製品かどうかを判断した上で商品化を進めています。ユーザーのちょっとした要望も丹念に拾い上げて製品に反映させるなどの取り組みで、建築現場のプロの方々から高い評価をいただいております。
例えば、水平を測定するアクリル樹脂製のゲージ(気泡管)の目盛り線は、通常は外側に印刷することが多いのですが、当社では製品の内側にワイヤーを埋め込み目盛り線としています。そのため長期間使用しても擦れて目盛りが消えることがなく使っていただけます。
また、排水設備の現場などで使用していただく製品では、滑り落ちやすい塩化ビニール管の曲面にも安定して乗せられる、「滑り止め付き」排水勾配器を提供したり、石工用の水平器として他社では製造していない、剛性の高く安定感のある鋳物製フレームの水平器を提供するなど、常に、便利な使い勝手の良さの追求を心がけた製品づくりを進めています。
—デザインはどうですか?
小寺) 水平器は、作業工具として使用されるものと、水平器が部品として機器等に組み込まれる内蔵型に大きく分類されます。内蔵型は、機器メーカーへ直接納入するため、皆さんの目に触れることがほとんどなく、デザイン性が問題となることはありません。
一方、一般的にホームセンターなどで販売されている作業工具用の水平器は、現場の職人さんたちが直接使用するものですが、従来はプラスチック製の凡庸な形状で色目もグレー調のものがほとんどで、特徴のある商品はほとんど有りませんでした。
今から10年ほど前には、それらの水平器市場は、中国製や台湾製などの品質より価格を優先した輸入品に押され、国産品の量販店での取扱いは20%を切るような状況に陥っていました。当然、当社もそれら低価格商品の影響を受け売上も伸び悩みました。
ちょうどその頃、私自身が家業のアカツキ製作所に戻ってくることになり、それらの輸入品に惑わされることなく、弊社の強みである高品質・高精度な部分は譲らず、デザイン性の高い水平器の開発に取り組みました。
例えば、従来プラスチック成形で特徴のなかった水平器のフレームにシルバーメッキを施すとともに、若い職人さんや女性の職人さんにもアピールできるような、輸入品にはないデザイン性の高い製品をつくり出すことなどで、定番品の売上をこれまでの数十倍に伸ばすことができました。
さらに、積極的に設備更新を進めることにより生産性を高めてコストダウンを図り、高品質で適切な価格により顧客の評価を得て、今ではホームセンターなど量販店向け製品の売上も回復し、輸入品との取扱商品群の入替に成功しています。
—品質管理についてはいかがですか
当社では、ISO9001の認証を受け、その規程に基づきすべての製品を検査員が工程内及び出荷前に全数検査を行っています。また、製品によっては、画像検査機器を使用し、カメラで撮影した画像で精度検査を行っています。
検査後の製品には、すべてシリアルナンバーを付番し、検査日や担当者等の製造履歴を管理し、トレーサビリティも確保しています。
これらの品質管理体制も「KOD」ブランドの強みとなっていると思います。
—今後の展開について、教えてください。
小寺) 国際見本市などの展示会への出展などを契機に、海外からの発注や問い合わせもあり、海外企業向けの英語版のカタログを作成し、代理店等を通じてPRしています。もちろん、ホームページも英語に対応しています。
海外では、安価な中国製の水平器も流通しており、販路拡大に苦戦を強いられている状況ではありますが、長い歴史のなかで培った技術と経験に加え、一つひとつ手作業でつくり出している当社の品質や精度に期待をしていただき、どうしても「KOD」製品が欲しいというユーザーは、ホームページ等を通じてダイレクトに問い合わせをいただいています。
今後、安価な製品が多いカンボジアやマレーシア、ベトナム、タイなどの東南アジア諸国においても経済成長に伴い水平器に対する認識や考え方が変化し、品質や精度が重視され、当社の水平器に対するニーズが高まるものと期待しています。
また、販売ルートは代理店経由に限定してきましたが、これでは、代理店の声は聞けるが、ユーザーの要望や情報が入り難いため、今後、ユーザーの立場に立った製品開発をより一層進めるために「BtoB」から「BtoC」へとシフトしていく必要もあると思っています。
さらに、インターネットの販売サイト「デモ測る計.com」もオープンしておりますが、ここでは測定器に特化した商品のラインナップを揃え、デモ器の無料貸出などの仕掛けを進め、新しい販路の構築にも取り組んでいきたいと考えています。
京都品質の海外展開も進める、同社の今後に注目です!
【展示会写真:JIMTOF2014】
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