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株式会社大日本精機(京都企業紹介)

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ものづくりで医療業界に大きく貢献!

(掲載日:令和2年11月27日、聞き手・文:ものづくり振興課 岩橋)

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令和2年度京都中小企業技術大賞(外部リンク)の技術大賞を受賞された株式会社大日本精機(長岡京市)の澤田専務執行役員にお話をお伺いしました。

(株)島津製作所の協力企業として創業

―まずは、御社の概要を教えてください。

澤田)弊社は1955年に(株)島津製作所の協力企業として創業し、同社の液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどの科学機器・精密機器の製造に携わってきました。それらで培った技術力を活かして、近年は自社製品として主に医薬品試験機器、医療機器、各種製造装置なども手掛けております。具体的には、医薬品で使われている錠剤等の成分分析を行う自動溶出試験装置や、がん等の病理診断における病理組織標本作製時の薄切工程等を自動化した組織切片自動作製装置の製造を行っています。

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(左:自動溶出試験装置、右:組織切片自動作製装置)

人手不足の医療業界をサポートする組織切片自動作製装置

―その組織切片自動作製装置で令和2年度京都中小企業技術大賞を受賞されましたね! 組織切片自動作製装置とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

澤田)御評価いただき、大変嬉しいです。組織切片自動作製装置の説明の前に、まず、医療現場での現状をお話しさせていただきますね。医療現場において、人体から採取された組織を顕微鏡で観察し、病変の有無や病変の種類について診断する病理診断というものがありますが、その病理診断を行うために病理組織標本を作製する必要があります。病理組織標本は、一般的に採取した組織にパラフィンを浸透して固め、数μmの膜状に薄く切り、スライドガラスに貼って染色して標本(プレパラート)にしますが、1.組織をホルマリンで固定、2.切り出し、3.パラフィン包埋、4.薄切・伸展・乾燥、5.染色、6.封入、7.ラベリングなど多くの工程があるため、質の高い病理組織標本作製には高い技術力が必要です。医療現場では、臨床検査技師さんがこれらの作業を行われるのですが、手作業が多く、また、何らかの理由で検体・標本を取り違えた場合、重大な医療事故に発展する可能性があるため、大きな負担となっているほか、臨床検査技師さん自体が医療現場で不足しているのが現状です。

―なるほど。その大変な作業を本装置で自動化・省力化されたということですね。

澤田)はい。弊社の組織切片自動作製装置では、最も大変な4.の工程を自動化した装置となっています。具体的には、パラフィンに閉じ込めて固定された検体(パラフィンブロック)をスライスし、スライドガラスに乗せて標本を作製します。本装置では、3~5μmにスライスした検体を静電気によりフィルムに付着させ、水の表面張力を活用してガラス面に移すという手法を採用していることから、組織がバラバラになることなく、組織の連続をそのまま標本にすることができます。病理学会や細胞学会でも本装置で作製した組織切片について、染色結果にムラがなく、同じ品質で作製できることを御評価いただきました。

―いいですね。組織の硬さの違いなどによっても品質が左右されそうですが、その辺について何か工夫されている点はありますか。

澤田)おっしゃるとおりでして、組織の硬さの違いなども品質にムラが出る大きな要因の一つです。本装置では、品質安定化のため、タッチセンサーにより検体のブロックの表面角度や高さを検知し、カットラインと並行となるように自動面合わせする機能を搭載しているほか、ロードセルを取り付け対象となる検体の圧力を計測し、組織の硬さの違いによって検体を切る刃の速度を調整することで刃飛びが出ないようにしています。その他にも、組織切片に生じた刃傷を検知する刃傷検知機能や安全性を考慮し自動刃交換機能を搭載しているほか、薄切した際に発生する屑吸引機能、取り違え等を防ぐためのスライドガラスへのバーコード印字によるサンプル管理機能を備え、使い手にできる限り配慮した装置となっております。技術的には、搬送の制御技術やセンシングの部分など、(株)島津製作所の協力企業として創業した経験が大いに活かされておりますし、本装置の開発には、京都府・(公財)京都産業21の補助金「京都エコノミック・ガーデニング支援強化事業」も活用させていただき、事業化することができました。

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(左;自動面合わせ機能、右:ムラのない染色結果)

―補助金もうまく御活用いただき、ありがとうございます。本装置の活用により、病理組織標本の作製から診断までをどの程度短縮できるのですか。

澤田)人手のみで病理組織標本の作製から診断まで行う場合、通常約3週間かかりますが、本装置を御活用いただくことで約1週間に短縮することが可能です。臨床検査技師の負担軽減につながり、医療業界に大きく貢献できると自負しておりますし、また、診断を受ける側の患者さんにとっても結果が出るまでの期間が長いというのは大きな心的負担になりますので、それらの解消にも繋がればと考えております。

病理組織標本作製から病理診断までの全自動化の実現を目指して

―医療現場への本装置の導入がますます進むことを期待しております。最後に今後の展望を教えてください。

澤田)現状では、本装置は日本国内の医療現場でも導入いただいた例はあるものの、日本国内よりも医療現場で自動化が進んでいるヨーロッパなどから多数引き合いをいただいている状況です。そのほかにも、アメリカの研究所などからも本装置を活用した医療現場における自動化の共同研究の依頼が来ておりますので、まずは海外でしっかりと実績を作り、日本国内に逆輸入する形で国内の医療現場への導入もより進めていければと考えております。また、現在、本装置で作製した組織切片のデジタル画像化などにも取り組んでおりますが、最終的には組織切片の作製だけでなく、染色からプレパラート化、ひいてはAIによるデジタル画像を活用した病理診断により病理組織標本作製から病理診断までを全自動化したいと考えております。このような病理診断はAIによるディープラーニングと非常に相性が良いと思いますので、病理診断までの全自動化の実現により、さらに医療業界に貢献したいと考えております。

今後の展開が楽しみですね!

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