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関西巻取箔工業株式会社(京都企業紹介)

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箔をつけるシゴト

(掲載日:令和2年12月24日、聞き手・文:ものづくり振興課 岩橋)

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関西巻取箔工業株式会社(外部リンク)(京都市北区)の久保昇平取締役C.O.O にお話をお伺いしました。

ユーザーフレンドリー、かつ環境にも優しいVOCフリーの「熱転写顔料箔」

—まずは、御社の概要を教えてください。

久保)当社は1952年に創業した「熱転写顔料箔」メーカーです。私たちが製造・提供している顔料箔は、自動車部品や家電製品、化粧品パッケージや医療資材等多数のロゴマークや商品名を表現する部分の加飾に御採用いただいております。

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—そうなのですね。その「熱転写顔料箔」とはどのようなものなのでしょうか。

久保)PETフィルムに顔料や接着剤をコーティングした「膜状のインク」のことです。フィルムにコーティングされた本インクは、ドライコーティングと呼ばれる、色彩素材を熱圧着する「熱転写(ホットスタンプ)」を行うための材料として用います。液体のインクを使うウェットコーティングであるシルクスクリーン印刷などと違い、ユーザー様側で調色の必要がなく、また、乾燥工程も不要で作業後の保管も容易な点が利点です。加えて、デザインの一部にワンポイントで用いたり、カラー印刷と組み合わせたりすることで、平面的な印刷物にデザインの多彩な広がりを生み出すことが可能です。

—いいですね。

久保)また、いわゆる油性インクにはアルコールやシンナーといった揮発性有機化合物(VOC)が含まれています。VOCは大気中へ放出されると環境破壊や健康被害を引き起こす可能性があり、火災の原因にもなり得る非常に危険な物です。弊社の「熱転写顔料箔」は、インクをPETフィルムにコーティングする段階で乾燥炉にかけることでVOCを揮発させて除去することから、ユーザー様はVOCフリーの加飾材として使用が可能です。

—中国でもVOC規制が始まるなど、VOCフリーのインクはニーズが高まりそうですね。

久保)おっしゃるとおりです。中国では、2015年に発生したVOCにより誘発された天津市内での工場爆発を受けて規制を強化しており、2020年12月1日からはVOC含有上限などを定めた国家強制標準規格が適用されます。本規制により、中国国内で生産・販売する製品だけでなく、日本で生産された塗料などを中国に輸出する場合も適用対象となるため、関係する事業者は早急な対応が求められています。すでに環境規制が強化されているEUなども相まって、弊社にも直近3年間で国内外から1,300件以上の引き合いがきております。

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金箔の製箔技術を活かして開発

素晴らしいですね。元々開発に至った経緯は何だったのでしょうか。

久保)弊社は創業当初から金糸に用いられる金箔材料の加工を主として事業を行っておりました。漆で紙に金箔を貼り合わせた加工を行っていたのですが、そこから着想を得て、PETフィルムにインクをコーティングし提供するという現在の顔料箔に至りました。また、従来の顔料箔は、ロットごとに厚さと色にばらつきがありましたが、現在では、網状の微細な溝を刻んだローラーを液体インクに浸し、余分なインクをそぎ落とすことで、厚さを1000分の1ミリまで制御できるようになりました。塗膜の厚みを均一にすることで弱点だった色むらが解消され、約800万台の自動車メーターや仏高級ブランドの化粧品容器に採用されるまでに至りました。

伝統的な技術を応用されて開発されたのですね。競合状況はいかがでしょうか。

久保)既存の顔料箔の世界市場は約200億円と言われておりますが、その市場の大多数をドイツのK社が占めております。しかしながら、ガリバー企業であるが故に、多様なユーザーニーズにきめ細かに対応しているとは言い難く、カスタマイズや小ロットの対応等には消極的であることから、弊社への引き合いが増えてきている状況です。また、製造過程で危険物を扱うため、工場の立地制約や防爆仕様を伴うことから設備コストがかかるなど、参入障壁が非常に高いため、後発も難しいと考えています。弊社は規模は小さいですが、ドイツのK社以外ではグローバル市場で戦うことができる数少ないサプライヤーの一つであると自負しております。

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周回遅れのトップランナーからの逆襲

—いいですね。最後に今後の展望を教えてください。

久保)先ほど参入障壁のお話をしましたが、顔料箔というのは非常にニッチな業界で、かつ危険物も取り扱うため、年々同業者が減少しており、弊社は国内ではトップランナーの位置付けです。ただ、これは同業者がどんどん減ってきたことに伴い、その仕事が舞い込んできた故の結果であり、いわば周回遅れのトップランナーと言えます。しかしながら、弊社はそれに甘んじることなく、技術力を高め、今では厚さを1000分の1ミリまで制御できるようになり、多様なニーズに対応することが可能になりました。例えば、自動車部品では電気自動車等の普及に伴い、車体の軽量化が進み、従来は金属で構成されていた部品が樹脂に移行してきています。金属の場合、その部品の装飾は「塗装」でしたが、樹脂に転じれば、その装飾方法は「印刷」に移行します。また、顔料箔が進出できていない「機能性」印刷の分野、中でも各種回路やアンテナ、センサー等に導電性やシールド性を付与するプリンテッド・エレクトロニクス分野においても参入できる余地があると考えております。これらの分野への参入を見据えて、まずは、顔料箔の知名度を上げるためにピッチ会等様々な場で周知させていただき、周回遅れのトップランナーからの逆襲として、既存の顔料箔市場に留まらず、多様な分野への応用・展開につなげていきたいと考えております。

今後の展開がますます楽しみですね!

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