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株式会社片岡製作所(京都企業紹介)

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「先」を見据え、グローバルニッチトップへ

(掲載日:令和2年7月1日、ものづくり振興課 足利、中原)

株式会社片岡製作所(外部リンク)(京都市南区)の片岡宏二代表取締役社長様にお話をお伺いしました。

「横」ではなく「先」を見る

--社長ご自身で立ち上げられ、50年程でここまでの会社に成長を遂げられた秘訣について、以前、西様(現専務取締役)におうかがいしたら「社長のリーダーシップと、社員が誠実だから」というお答えでした。

片岡)ははは。まず、20年先の2040年にどういう会社になりたいのか考え、そこから逆算して、あるべき姿、すなわち、仕込むべき技術、それを支えるマネジメントを会社として身につけていくということです。

--なるほど。

片岡)ですので、例えば、近年になって「IoT」と言われ始めましたが、当社では販売した機器のメンテナンスをリモートで行うというのは、2000年頃から始めております。細胞プロセシング装置も、リモートでプログラミングを修正しますよ。

--そうなのですね。

片岡)当社の、というより、京都の特徴として、オーナー経営者が多いということがあります。オーナー経営者は、決断が早く、責任感が強い。日本にはもっと大きな企業がたくさんありますが、例えばある業界を1社が撤退したら他も撤退するといったようなことが頻繁に起こりますね。それは「横」を見ているからです。しかし、オーナー経営者は「横」ではなく「先」を見ています。

--なるほど!

片岡)ついでに言えば、京都のオーナー経営者どうし、とても仲が良いです。誰も同じものを作らないですから。

狙うはグローバルニッチトップのみ

--それは、本当によくお聞きすることですね。誰も「真似」をしない。

片岡)それから、開発の決断を下す時の基準としては、日本一、世界一になれるかどうかで判断します。

--京都らしい、ですが、それは結果としてはそうですが、とても大変なことではないですか。

片岡)いちど何か1つの商材でグローバルニッチトップになれば、どうしたら一番になれるのか経験としても分かります。競争相手は大企業です。しかし、大企業の1つのディビジョンに過ぎませんから、怖くないです。

全ては自己責任

--なるほど!

片岡)そして私は自己責任論者です。「雨が降れば銀行は傘を貸してくれない」と嘆く方もいますが、私は、銀行に貸していただけるような経営をしなければならないと思っています。今回の新型コロナウイルスでサプライチェーンの分断が問題になりました。もちろん、当社も、調達は海外からも行っていますが、生産は全て京都で行っています。今年の新卒も大卒30名、高卒3名、計33名採用いたしました。

--そうなのですね。

片岡)AIなど海外に押されている日本ですが、9年ぶりに日本のスパコンが、理化学研究所の富岳が、1位となりました。大変勇気づけられる話です。当社も引き続き誠実に努力を重ねてまいります。

 

グローバル・ニッチトップ企業、片岡製作所の細胞プロセシング装置

(掲載日:平成30年7月12日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 

株式会社片岡製作所(外部リンク)(京都市南区)の西取締役研究開発本部長様、鈴木執行役員研究開発本部ライフサイエンス研究所長様、松本主任研究員様にお話をおうかがいしました。

京都から世界へ、グローバル・ニッチ・トップを目指す

―有名な会社様でらっしゃいますが、改めまして、御社の概要から教えてください。

西) 昭和43年設立、現在従業員は230名を超え、レーザー加工装置、充放電検査装置、それらに派生したロボット・省力化装置、ライフサイエンス分野の装置を開発、製造しています。「世界にマーケットがあり、そこで戦える製品を」ということで取り組んでまいりまして、ニッチ市場に技術を特化し、独自のソリューションとして磨き高めて、大手メーカーに負けない信頼性、多くの製品で世界市場でのトップシェアを獲得してまいりました。

設立50年程で、ここまで大きくなられるとは素晴らしいですね。

西) 創業者である現社長のリーダーシップに依るところも大きいわけですが、社是にもありますように、何事にも誠実であることということが、社員に浸透していると思います。

会社を大きくする、事業を発展させるために大切なことを、一つ挙げるとしますと?

西) その事業にとことん打ち込める、継続してやっていける体制があるかどうか、そういう体制を作るかどうかですね。そうした中で、社内でレーザー技術、ロボット等の機械技術、NC制御・PLC制御等の制御技術、電源技術、アナログ計測・デジタル計測等の計測技術といった幅広い要素技術を磨いてきました。

発振器から全て自社一貫対応― 微細加工用レーザー装置

では、レーザー加工装置にはどんなものがあるのですか?

鈴木) そうですね、例えば、レーザパターニング装置というものがあります。スマートフォンのフィルム状のタッチパネルの製造工程において、中心部のタッチセンサ部分の成形工程の後、額縁配線工程があります。縁の極めて狭い範囲に配線が詰まっているのですが、近年より微細化が進んできており、従来の印刷・現像技術では対応しきれず、代わってレーザーで配線を切り分ける装置でして、Line/Space=20um/20umも可能です。

 

すごいのですね。

鈴木) あるいは、太陽電池パターニング装置というものもあり、世界シェアでトップクラスなのですが、ガラス基板の上にシリコンや金属の薄膜を蒸着させて製造する薄膜太陽電池は、シリコンの消費量を大幅に抑えて製造コストを下げられるという利点があります。その蒸着させたシリコンや金属の薄膜に対するパターニング(剥離加工)において、レーザは大量生産を可能にし、他社製品に比べて品質、速度、信頼性に優れたものとして発展してきているのです。

そうなのですね。

鈴木) その他、精密切断装置、穴開け装置等もございます。穴は回転半径と入射角を制御し、ストレート穴だけでなく、順テーパ穴、逆テーパ穴、特殊テーパ穴など多様な形状を加工できており、四角穴で、例えば穴径50um、ピッチ58umなど精密に加工できます。加工精度No1だと自負しています。

御社のレーザー技術の特長は?

鈴木) まず1つは、今説明してきましたように、微細加工用ということですね。もともと参入当時、レーザー加工機は海外製ばかりでした。だから参入したのですが、板金用等は大手メーカーの市場でありましたので、微細加工用に特化したのです。

なるほど。

鈴木) もう1つは、レーザシステムを構成する5大要素の発振器・光学系・機械・制御・加工ノウハウを全て自社で設計・製作しているということです。特に発振器から自社で製造しているところはほとんどありません。自社で一貫対応できますので、お客様の多様なご要望にも迅速に対応できます。

EV用世界シェア1位― 二次電池充放電検査システム

充放電検査装置も世界シェア1位とお聞きしています。

鈴木) そうですね。あらゆる電池に対応していますが、最近は電気自動車用バッテリーの検査用が多いです。中国を中心にこれからますます伸びていく分野ですね。

不要細胞除去、必要細胞選別を簡単に― 細胞プロセシング装置

さて、ライフサイエンス分野の装置としては、このたび「細胞プロセシング装置」を開発されましたね。

松本) iPS細胞の培養では、細胞に意図しない変化が起きて放置すれば、周囲にも変化が広がり培養効率が低下するという問題があり不要細胞の除去を、研究者が顕微鏡を使って手作業で行っている実態があります。それに対し、今回開発した細胞プロセシング装置は、不要な細胞を高速で判別し、レーザー照射により除去するものでして、従来の60倍のスピードで、不要細胞を除去できます。

すごいですね。

松本) 具体的には、まず、ディッシュ全面の「高速観測」が可能です。35mmディッシュで約60秒です。そして、ディープラーニングにより不要細胞の「高速判別」を行います。そして、レーザ処理にて不要細胞の「高速選別(除去)」を行います。狙ったところだけ高速レーザー照射によって行います。ただし、レーザーを用いて基材上の培養細胞から不要な細胞を分別除去する方法は、処理速度を上げるために照射エネルギーを上げると、周辺にある培養液や細胞も加熱されてしまう問題がありますから、光応答性ポリマーの薄層を培養基材表面に導入し、ポリマーに照射することで、直上にある標的とする細胞への作用を最大化するとともに周辺の細胞を含む培養系全体への影響を最小限に抑えています。

開発で苦労された点はどういったことですか?

松本) そうですね。何事も新しい分野であったということですね。1つは、当社のこれまでの事業領域とは異なり、細胞の知識がないですから、そこから勉強でしたね。もう1つは、分野の異なる人同士によるコラボレーションですね。おかげで、ひととおり完成し、今年中の上市を考えているところです。

それは楽しみです。さて、最後に御社全体において課題はいかがでしょうか?

西) やはり人材確保ですね。新しい技術を習得して新しい商品を開発する必要があります。そのため、開発する商品の選択と集中が重要だと思っています。

 

今後の展開がますます楽しみです!

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