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川崎機械工業株式会社(京都企業紹介)

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「解析ソフトによる設計支援サービス×オンリーワン技術」の航空機用歯車一貫生産

(掲載日:平成28年7月28日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 

 川崎機械工業株式会社(京都市)の林代表取締役樣、営業企画部 今井課長樣、吉祥院工場 松岡工場長代理樣にお話をおうかがいしました。

航空機用歯車製造の先駆け― 材料調達から完成まで一貫生産

まず、事業の概要を教えてください。

林) 工作機械・産業ロボット・フォークリフトなどの産業用機械、自動車、船舶、そして、航空機用の歯車といった高精度の歯車を製作しています。1968年から歯車製造業を生業とし、材料調達から完成まで歯車の一貫生産をおこなってきました。海外顧客をお迎えする機会が多いこともあり、本社は京都市中心部に置きながら、その他市内に中央研究所・吉祥院工場の二工場を構え、歯車生産を行っています。

  
(左:吉祥院工場、右:中央研究所)

航空機用の歯車は、どういう性能を求められるのですか?

今井) 航空機は現在、低燃費を主眼においた設計がされており、部品の軽量化が進んでいます。そのため、歯車においても、薄肉であったり、可能な限りの小型化された設計がなされることになりますが、その一方で、例えば1分間4万8千回転などといった高速回転、高荷重といった過酷な条件に耐えうる強度も同時に必要とされます。すなわち、「軽量化」と「高強度」といった相反する性質を同時に達成する必要があります。当社は歯車メーカーとしては、国内で2番目に早くJIS Q 9100を取得し、航空機部品の厳しい品質要求に対応できる体制を構築しています。

凄ワザ! ― 内歯車歯面研削量産加工対応(クラウニング加工も可能)

生産面ではどういった特長をお持ちですか?

今井) 国内ではなかなか困難な内歯車歯面研削の量産対応に実績があります。例えば、この「遊星歯車」の一番大きなリング歯車の内側が「内歯車」です。機械加工特性上、量産加工がこれまで困難であったのですが、研究を重ねその工法を確立、当社では短いサイクルタイムでの航空機用の高精度の対応が可能です。

すごいですね。

今井) また、これも同様に他社では加工困難な二段歯車の小歯車歯面への研削加工(クラウニングも可能)を得意としています。クラウニングとは、歯面を理想的な歯当り位置するために歯面の形状に極微量ふくらみを持たせることで、歯当りを歯面の中心部に集中させることが目的なのですが、これにより力の伝達の効率向上、破損の低減、ノイズの低減などのために適用される加工方法です。そして、さきほどの内歯車にも、同様にクラウニングが可能で、これも当社の得意とする技術です。

  

歯車解析ソフトによる設計支援サービス

素晴らしい。

林) 当社では、「歯車解析ソフト」を導入しています。歯車解析をすることで、歯車のどこに応力がかかるか、ノイズはどうなるかなどという詳細な分析結果や、諸元をどのように変更すれば、理想的かといった提案を顧客企業様に示し、設計品質を向上させる手伝いをサービスとしておこなっています。歯車研究で有名な米国オハイオ州立大学の歯車研究機関「GEAR LAB」の正式スポンサーとして当社は活動しており、そこで開発された歯車解析ソフトを使用できる数少ない企業です。世界の航空機エンジン製造会社や自動車メーカー等歯車を必要とする会社が「GEAR LAB」にはスポンサーとして名を連ねており、国内では当社含め二社のみです。

ノイズは重要な要素なのですね。

松岡) 例えば、分かり易く自動車で考えますと、比較的低速(低回転)の際は、エンジンそのものの音が大きいので、歯車のノイズ低減はあまり重要ではないかもしれませんが、オーバートップギアになった際には、歯車のノイズが目立ってくるため、高速回転時にいかにノイズを下げられるか、そのような歯車にするにはどういう設計とすべきか といった分析・提案ができるわけです。


(歯車解析ソフトの画面)

日本の経済発展のために「価格競争」ではなく「価値競争」を

航空業界の難しさはどういったことがありますか?

今井) 航空機の場合、試作から量産までに、5年とか10年とか長期間に開発が及びます。そうした長期スパンに対応できる企業体制を整えるであるとか、安定した財務状況を維持するとかといったことが必要になってきます。また、航空機部品の特徴として、一度設計が確定するとその部品は20年から長いもので40年近く継続して供給することが求められますので、長期的な事業運営体制の構築が重要となります。

なるほど。

今井) また、欧米企業が最川下ですから、AMS(航空宇宙材料規格)であるとか、その他海外の様々な規格を正確に理解し対応することが必要となります。日本の技術力は、自動車業界の発展が牽引してきたと思いますが、航空機業界に関しては日本はまだまだこれからなわけですから、世界標準に合わせ、フレキシブルに対応すべきだと思います。

  
(左:非接触3D歯車測定器、右:歯車測定)

今後の展開はいかがでしょう。

林) 当社の少量多品種、高精度対応といった特長は、航空機関連部品向きであり、ウェイトをより増やしていきたいと考えています。そのため、今後主流となる加工技術に対応すべく、当社がスポンサーとなっている歯車研究機関「GEAR LAB」を含め最新の情報にアンテナを張り対応していくことが重要と考えています。また他社ができない、やりたがらないことの技術力を常日頃から磨くようにしています。例えば加工設備にしても、中央研究所は特殊な加工もあるため、最新鋭の加工設備を備えていますが、吉祥院工場は、逆に、最新のCNC(コンピュータ数値制御)だけではなく、昔の加工設備もできるだけ維持し、加工設備の原理、構造を習熟できるようにしています。そうすることで、新しい技術の開発、応用ができるようにということです。

―なるほど。

林) もう一つは、海外企業への対応です。日本の中小企業の場合、国内の顧客企業からの受注を目指し、限られたパイを奪い合っているという構図が多いですね。しかし、海外企業からの直接受注に目を向けることが、日本の中小企業にとって考えていかなければならないことだと思っています。そのため、社内では常々「価格競争ではなく、価値競争をしよう」と言っています。実際、航空機業界でも日本の高い技術を求められる顧客は多いですが、なかなか海外バイヤーとの接点が多くないというのは日本の中小企業の課題ですね。当社では、外国人スタッフや語学のできるスタッフを置いて対応をしています。

 

フランス企業と日本企業との懸け橋となる在日フランス商工会議所アンバサダーでもある林社長。京都の伝統産業と航空機との接点を作る活動など、多彩な展開を進めてらっしゃいます。今後、ますます楽しみです。

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

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