ここから本文です。

小野工業株式会社(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

京都企業紹介(業種別) 京都企業紹介(五十音順) 京都府の産業支援情報

大量短納期・高品質のフィルム・スリット加工

(掲載日:平成30年7月16日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

平成29年度経営革新企業・小野工業株式会社(宇治田原町)の村上代表取締役にお話をおうかがいしました。

日用品からスマホ、工業用まで様々なフィルムに不可欠な「スリット加工」

―まずは御社の概要を教えてください。

村上) 1959年創業、1969年会社設立、現在従業員約120名で、大手フィルムメーカーから依頼を受けて、フィルムスリット加工を行っています。

 

―フィルムですか。例えばどんな?

村上) 各種食品包材、シャンプーなどのパウチといった日用品から、リモコン等の機材、タッチパネルや液晶パネル、その他各種工業用など様々な分野で使われているフィルムです。次に大手印刷企業等がこのフィルムに印刷したりといった工程になりますので、かなり上流工程を担っていると言えます。

―素朴な疑問なのですが、フィルムメーカーは、最初からその形、その幅にフィルムを作ったりしないのですか?つまり、スリットを外注する必要がなぜあるのかという質問です。

村上) フィルムメーカーは、おおまかに言いますと、原料チップを溶融し、延伸して、熱固定(熱処理)して作られます。すなわち、化学メーカーですから、一度火を入れるとなかなか消せませんから、ある程度「見込生産」で作ってしまわれます。だから、実際の需要、オーダーに応じて、細かく幅を合わせるようなスリット工程が後で必要となってくるのです。

 大量・短納期!

―なるほど!この業界の難しさという点についてはいかがでしょうか?

村上) そうですね。まず1つは、フィルムメーカーは自社でもスリット工程を有してらっしゃるのですが、例えば、新しいスマートフォンが全世界で販売開始になるという場合、あまりに大量に短納期で対応しなければなりませんので、そこで「外注」という選択肢も選ばれるわけです。

―御社は、そういうオーダーに応えてらっしゃるということですよね?

村上) はい。「大ロット・短納期」が当社の強みの1つですね。

―同業者っていらっしゃるのですよね?!

村上) 京都は、金銀紙関係で比較的多いのですが、全国的にはニッチな業界ですね。そんな中でも、当社のように20台以上のスリット機を有して、ISO9001など高品質対応をしているところは、珍しいです。おかげ様でお仕事の依頼が集中してきていると思います。

高品質!

―高品質対応ですか。

村上) はい、それが2つ目の難しさに関連するのですが、当社は、フィルムメーカーに納品するのではなく、そのお客様に、これも大企業であったりしますが、直接納品します。つまり、当社のお客様であるフィルムメーカーにとっては、当社が「最後の砦」と言いますか、当社が提供する品質が重要であるわけです。

―具体的な加工工程を教えてください。

村上) エアシャワーを完備したクリーンルーム(実測値1,000クラス)を保有し、防塵・防虫対策を行っていますが、まず、最初の工程は、資材である巻かれたフィルムシートを剥がし、欠点異物検知器によって、走行中のシートの欠点・異物を高速・高精度で外観検査を行います。欠点や異物を検出すると、リアルタイムでその部分の画像をモニターに映し出し、画像をファイリング。合わせてワーク中の欠点位置情報をCRTに表示し、欠点データ出力・マーキング出力・プリントアウト出力などを行います。

 

―なるほど。

村上) 次に、オーダーにもよりますが、コロナ処理を行います。基材表面をコロナ放電照射により改質させる表面処理技術ですね。ぬれ性が向上し、印刷特性、コーティング特性、貼り合わせ特性等が向上するものです。当社ではコロナ処理機を7台保有しており、量産品はもとより、試作品のコロナ処理も実施しています。

―そうなのですね。

村上) そして、高密度除電システムによる除電処理を行います。光学用フィルムのコーティングの際には帯電模様が大きな障害となります。当社の高密度除電システムを用いれば、帯電模様もきれいに除去できます。

―なるほど。

村上) そしてスリットです。包装用フィルムから医療用フィルム、工業用フィルム、粘着用フィルムまできわめて多岐にわたりますので、スリット幅20mm~1950mm・巻取径Φ1000mmまで、厚みは1.6μm~500μmで幅広い製品に対応しています。工業用の厚物フィルムを得意とする機械も保有しています。水平巻取方式で表面張力が接圧に影響を及ぼさない高品質巻取方式を採用しています。切断方式は直接・屈曲シアーカット及び屈曲回転レザー・矩形レザーとあらゆる方式に対応しています。しかし、資材であるフィルムには、もともとムラがあったありしますので、それを見極めながら対応する必要があり、この技術を身に付けるには相当のノウハウが必要です。

IoT、そして、次のステージへ

―そうなのですね。では、最後に今後の展望についてはいかがでしょうか?

村上) もともと当社は紙管で創業し、そこから紙管容器などのパッケージや、フィルム・スリット加工などに事業が派生してきたのですが、先ほども申しましたように、フィルム・スリットの仕事が非常に忙しくなってきているということもあり、設立後50周年を迎えたこの機に「選択と集中」ということで、まずはフィルム・スリット加工に集中をすることとしました。その上で、大量・短納期、高品質という当社の強みを一層伸ばしていくために、社内での技術ノウハウの共有、顧客へのトレーサビリティの観点から、IoTを導入してまいりたいと考えています。

―なるほど。

村上) さらに、新しい事業も構築してまいりたいと考えており、「パートナーと共に未来へ躍進する」という企業理念を掲げ、新たなコラボレーションの模索を続けているところです。

 

今後の新展開が大変楽しみです!

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp