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有限会社キュー・ゲームス(京都企業紹介)

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枠にはまらず時流に流されず、ただ面白いゲームを

(令和2年6月15日、ものづくり振興課 足利、植村)

キュー・ゲームスウェブ

BitSummit(外部リンク)の創設メンバーのお一人で、現在は同実行委員会のトップであられる有限会社キュー・ゲームス(外部リンク)(京都市)の富永ディレクターに、オンラインでお話をおうかがいしました。

世界初かも!?バーチャル展示会「BitSummit Gaiden」

--オンラインだとどうしても調子が出ないのですが(かと言って、日頃が調子良いわけでもないですが)、改めまして、「BitSummit Gaiden(外部リンク)」の見どころを教えてください。

富永)みやこめっせで今年5月に開催予定だった「BitSummit 8th」は、新型コロナウイルス感染症の影響で、断念せざるを得ませんでした。それを目標にしてくれていた出展予定のクリエイターさんたちには本当に申し訳ない気持ちでした。そこで、代わりにオンライン開催をできないかということになり「BitSummit Gaiden」プロジェクトが急遽スタートしました。

--実は府も別でバーチャル展示会の予算を組んで進めようとしているところですし、他の分野の方々にも参考にしてもらいたいですね!

富永)BitSummitのコンセプトは、クリエイターさんが主役ですので、彼らとチャットで会話したり、試遊したりできる、バーチャル展示会のようなものができればいいなと考えました。ゲームファンご用達のDiscordというチャットツールをまるで実際のブースと見立て80近くのゲームクリエイターさんが一堂に参加します。Discordでのこういう使い方は見たこともないので、もしかしたら世界で初めてかもしれないですね(笑)

 

BitSummit

(外部リンク)

「マニアック」から「個の世界観の表現」へ—変遷するインディーゲーム

--おお!今回出展の全ゲーム、全て拝見しました( 「外伝の外伝」 )。どれもいい感じですが、傾向としてはどう理解したらいいですか?

富永)2013年にBitSummitを始めた頃とは、どんどん変わってきていますね。当時は「ゲーム」という枠の中で「マニアック」なものが多かったですが、ここ数年の傾向としては、ある意味ゲーム云々というより「個人」の「作風」が際立ったものが多いですね。ソリチュード系と言いますかね。

--なるほど。

富永)「今までにないマニアックな感じ」から「個人の世界観」を魅せるものになってきました。以前から日本のクリエーターはそういう傾向がありましたが、海外のクリエーターにも広がってきましたね。

インディーがメジャーの時代

--一方、業界全体も大きく変わってきましたね。BitSummitを始めた時は、大手ゲーム機メーカーが絡むことはあまりなかったですが。

富永)メジャープラットフォーマーに入ってきていただけて、今やインディーゲームがメジャーになってきた感がありますね。

--BitSummitとしては、狙い通りで、大成功じゃないですか!イベント自体も最初から国内最大級でしたが、さらに大きくなって。

富永)BitSummitとともにそうなったなら、嬉しい限りですが。よく「インディーゲームって何ですか?」と聞かれるんですが、私は「時流に流されない」ということが重要だと思っています。なので、今の時流とは違う新しいスタイルやメッセージを目指すインディースピリッツがあるなら、メジャーやマイナーなどは関係ないと常々思っています。

--なるほど。

富永)ですので、BitSummitはマンネリになったらやめたほうがいいと、発起当初から言ってきました。その時その時の状況に合わせて新しい必要なことをやる。今回はまさにそれがオンライン開催だったということです。

BitSummit7風景

とにかく面白いゲームを作る

--さて、キュー・ゲームスさんのことも改めて。社長のディランさんは、イギリス出身の天才プログラマーとして有名な方ですね。17歳でプログラマーになられ、任天堂、SCEなどを経て、2001年にキュー・ゲームスを立ち上げられたということでしたね。以前から大手ゲーム機メーカー用であっても、御社が主導的に企画をされているともお伺いしています。

富永)そうですね。とにかく面白いゲームを作るということに、みんなが夢中ですね。

-- PixelJunkシリーズが有名な御社ですが、今はどんなゲームがありますか?

富永ついこの4月にリリースしたのは、ゴミを回収しながら戦うゲーム「SCRAPPERS」ですね。)Apple Arcadeによるサブスクサービスですね。また、昨年リリースしたPixelJunkシリーズの最新タイトル「Sticky Bodies」は、私がディレクターを務めた、喉越し爽快アクションです。

ゲームSCRAPPERS ゲームSticky Bodies

--喉越し爽快!?

富永)落下しながらベタベタと人をくっつけ、まとめてパクっ!っと食べられてポイントを競う、なんともユニークなゲームです。

--むちゃむちゃシュールじゃないですか(笑)。ところで、ゲーム開発のチーム構成はどんな感じですか?

富永)プログラマー、アーティスト、プランナーから成り立っています。

--BGMは?

富永)外注することも、内製することもあります。ミュージシャンもやってる音楽が得意なスタッフもいますし、社長のディランが自分で作ったりもしていますよ(笑)

--そうなのですか?!

富永)私も「音」は大事だと思っています。ディレクターなので、よくゲームの中の動きのイメージについてスタッフたちから意見を聞かれますが、その際、音のイメージも合わせて考えるようにしています。音には尺がありますし、音で材質感も大きく変わりますしね。音が詳細なイメージを助けてくれるんです。

--最近は、ゲーム中の位置や周囲の構造物の材質等による音の伝播の仕方を、適切に再現するような技術も出てきているそうですね。

富永)そうですね。例えば、音の反響等についてもプラグインがあるので、それを使えば簡単にできますが、肝心なのは音がどうやって聞こえてるのかなどの基礎知識があるかどうかだと思います。専門的に勉強したわけではないので、独学で勉強しています。

--富永さんはどういった勉強をなさってこられたのですか?

富永)私は芸術大学で映像やメディアアートを学び、マルチメディアCD-ROMを製作する企業に就職しました。その後、転職し、キューゲームスは3社目の会社です。ちょうど、ディランが会社を立ち上げた頃で、彼との共通の友人から紹介されました。私は、生粋のゲーマーでも、生粋のゲームクリエーターでもなかったのですが、ゲームはインタラクティブコンテンツでありアートだという話をした記憶があります。

「アルス・エレクトロニカ」のように

--最初、京都府と一緒にBitSummitを開催された際はどうでしたか?

富永)1回目のBitSummitが終わった後、足利さんにお声がけいただき、2回目をやるつもりなど考えてもいなかったので、びっくりしました。大きな会場で、大きなイベントをすることになりましたが、私どももイベント開催を本業としているわけでもないので、調子に乗って構想だけがどんどん大きくなり、お互い大変だったと思います。

--海外から来たあるチームは、その場で「仮面ライダーVS鉄火巻」といった、いかにも“日本っぽい”対戦ゲームを作ってみせたり、とにかくハチャメチャ感が良かったです。ゲームクリエーターってそういう面白い人たちなんだよということを、世間に知ってもらいたかったので、イベント自体もオタク系ではなくカッコよくしたくて、スモークを炊き過ぎて会場真っ白・・・みたいなのがまた面白くて・・・でしたね。

富永)そうそう、ステージライブも全然見えない。音だけはライブハウスバリに大きくして(笑)。ブースでも会話ができないくらいにうるさかったですね。今回の「BitSummit外伝」は、手探りでまだまだどうなるか分からないことが多いという意味では、そうした初期のころの雰囲気に近いかもしれません。

BitSummit2014

-私は、そういうゲーム関係の皆さんが、行政と組んで本当に良かったのだろうかと、心の一部ではずっと思いながら悩みながらやってた部分もあるので、イベントが終わって富永さんに挨拶した際に「役所と組んだハイブリッド感が良かった」と言ってもらった際には、少し泣きそうでしたよ(笑)

富永)いやいや、役所と一緒に、ということは、社会との関係性が生まれるということだと思います。得てしてゲーム業界は作り手も遊び手も孤立しがちだったので、我々も勇気づけられるんです。オーストリアのリンツという町で、「アルス・エレクトロニカ」というメディアアートの祭典が、アーティストと市役所が連携して、通年で行われています。そうすることで、アーティストの地位向上にもなりますし、私が理想とするモデルです。

--いいですね。では、今後の展望についてはいかがでしょうか。

富永)ゲームのネット配信、サブスクサービスは、ますます進んでいくと思います。一方、2020年は日本でも5G商用化が始まっています。何年かすれば日常生活にももっと入り込んできて、やがて現実とデジタルのハイブリッドの形が普通になっていくと思います。もはやスマホやゲーム機というハードに囚われない、あるいはデジタルゲームだけで完結しないようなものなど、新しいものをどんどん生み出していきたいですね。

 

楽しみですね!!

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