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日本蚕毛染色株式会社(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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京都品質

ハイテク繊維「サンダーロン」や「DEW」の開発

(掲載日:令和3年3月30日、ものづくり振興課 宮﨑)

日本蚕毛染色株式会社(外部リンク) 平本取締役にお話を伺いました。

産学連携で生まれた「擬毛状絹繊維製造法」を特許化し創業

まずは事業概要を教えてください。

平本)弊社は機能繊維の製造と、染色整理(繊維に精練・漂白・染色等の処理を行うこと)を行う企業です。1938年(昭和13年)に初代社長の冨部要人が、当時高価だった羊毛繊維の代用品として、絹繊維から羊毛繊維に似た繊維をつくる「擬毛状絹繊維製造法」を開発し、特許を取得するとともに創業したベンチャー企業でした。

「擬毛状絹繊維製造法」とはどういったものでしょうか。

平本)絹繊維は白く光沢のあるフィブロインという成分と、そのフィブロインを覆うように存在するセリシンという成分から成り立ちます。通常、絹繊維を使用した織物は、光沢を出すためセリシンを取り除いたフィブロインを使用しますが、弊社の擬毛状絹繊維製造法はセシリンを高温で溶かした後、フィブロインに再付着させ、羊毛繊維独特の繊維表面の凹凸を再現することで、羊毛繊維に類似した質感を実現しました。

この製造法開発のきっかけは何だったのでしょうか。

平本)当時羊毛繊維は日本国内では生産量も輸入量も少なく高級品であり、安価な代用品が求められていました。初代社長は京都工芸繊維大学の卒業生で、卒業後も母校の教授との交流が続いていました。そういった縁で、羊毛繊維の代用品を開発するため、弊社と京都工芸繊維大学の共同研究により誕生したのが「擬毛状絹繊維製造法」で、主に防寒コートとジャケットの生地を生産し海外に輸出していました。

脈々と受け継がれる技術革新への意欲と商品開発力

なるほど。

平本)昭和30年代にポリエステル繊維が市場化される情報を知ったときは、ポリエステル繊維が100℃で染色できない為、高温高圧の密閉型染色機を特注注文し、130℃で染色可能な設備を導入しました。そして、戦後、団塊の世代の学生服やセーラー服に使用されるポリエステル繊維の黒と紺を大量に染色加工して時代のニーズにこたえました。アクリル繊維が市場に出たときには染料を開発して時代に応えました。

現在の代表的な機能繊維としては、静電気の除去機能を有する「サンダーロン」や、銅イオンで抗菌性・消臭性を発揮する「DEW」、洗濯できないとされるシルク衣服を繰り返し洗濯できるシルクの改質加工繊維「セレーサカルメン」など、それぞれ特許を取得しています。

「サンダーロン」はアクリルやナイロン繊維に硫化銅を化学結合させ、繊維表面に極薄(100nm)の硫化銅の被膜を形成することで静電気を防止するもので、高級ホテルや航空機の静電気の起きないカーペット、食品工場、半導体製造工場の除電対策カーペットや電子関係工場の除電手袋、コピー機の除電ブラシ等に使用されています。

 

(「サンダーロン」を使用した除電手袋)

抗菌性・消臭性を有する繊維「DEW」を使用したエアコンフィルターの開発

「DEW」とは、今回チャレンジ・バイ認定を取得されたエアコンフィルターに使用されている繊維ですね。

平本)はい。1996年(平成8年)に岡山県や大阪府で発生した集団食中毒事件を契機に、腸管出血性大腸菌O157に対する世間の関心が高まっていたことを受け、抗菌性・消臭性を有する機能繊維「DEW」を開発しました。「DEW」はコットン等の天然繊維に粉ミルクに使用される安全安心の銅を化学結合させた繊維です。

御社が開発された特許技術とはどのようなものなのでしょうか。

平本)弊社の特許技術は、過酸化水素と二価鉄を使用し、金属とコットンを安定して結合させる方法です。もともと、金属をコットンに化学結合させる場合、モノクロロ酢酸を含有する水溶液中で、金属とコットンをグラフト重合(一方の高分子を幹にして,もう一方の高分子を枝の様に結合させること)させる方法が取られてきましたが、高分子同士の結合が安定しないため量産が難しいものでした。

試行錯誤を繰り返していましたが、その過程で、カルボキシル基を有する有機酸(メタクリル酸)を含有する水溶液に、過酸化水素と二価鉄を混ぜると金属とコットンの結合が安定することを発見しました。カルボキシル基は水と高い親和性を有するため、コットン特有の吸水性等を損なうこともなく、量産化技術の確立に成功したのです。

この「DEW」を使用して新たにエアコンフィルターを開発されたわけですね。

平本)はい。今回チャレンジ・バイ認定をいただいたエアコンフィルターは、弊社の取引先から「オフィスにおける感染予防策が何かないか」とのご相談を受けて開発したものです。エアコンは室内の温度の調整をしますが、換気効果はありません。その為、ウィルス、細菌、カビなどが内部で増殖する可能性があります。「DEW」を使用したこのエアコンフィルターは、吸水性・通気性に優れ、抗ウィルス、抗菌、抗カビ、消臭効果を有するため、安心で快適な室内空間の提供に貢献します。

「技術」を武器に、さらなる質の向上を目指す

優れた技術を持つ御社だからこそ開発できた商品なのですね。素晴らしい商品をご紹介いただきありがとうございました。最後に、今後の展望についてお聞かせください。

平本)弊社は創業以来、長年の厳しい国際競争の中にありながらも、時代の要請に応える商品・技術の開発を行ってきました。先ほど紹介した繊維以外にも、洗ってもシルク本来の風合いを損なわない絹繊維「セレーサ」や防縮ウール「シャブール」を開発し、これらの繊維は百貨店等で販売されているセーターなどに使用されています。

今後も天然繊維の高付加価値化や「サンダーロン」や「DEW」のようなハイテク繊維の開発に励み、質の向上に注力していきたいと考えています。

今後のご活躍が楽しみですね!

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

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