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サンコール株式会社(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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京都品質

歩行学習支援ロボット「Orthbot」

サンコール株式会社(外部リンク)(京都市右京区)が、令和元年12月11日に京都大学と共同で発表されたプレスリリース資料です。

歩行学習支援ロボット「Orthbot」を2019年度内に発売 --「今使っている装具がロボットに代わる」新しい発想のリハビリ支援ロボット--(外部リンク)

歩行リハビリ支援ロボット KAI-R & 新たな装着型運動支援装置

(掲載日:平成28年6月27日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

画像(左) 画像(右)
左:KAI-R 右:新たな装着型運動支援装置

サンコール株式会社(外部リンク)(京都市右京区)の小早川執行役員・事業開発部門長代理にお話をおうかがいしました。 

KAI-R― 人工膝関節置換術後の歩行リハビリテーションをアシスト

―まず、「KAI-R(カイアール)」とは何ですか?

小早川) 人工膝関節置換術を受けた方の歩行リハビリテーションの際に、歩行アシストを行うことを目的とした支援ロボットです。長い間の疾患の影響でついた歩き方の「クセ」を健常者のように、つまり歩幅を大きく腿が上がるような歩行パターンを行うことができるように、アシストします。山梨大学を中心とした産学連による研究開発により開発したものです。

―人工膝関節置換術は、どのくらい行われていて、どんな課題があるのですか?

小早川) 人工関節置換術は1970年代から本格的な普及が始まり、現在では膝関節だけでも年間約5万件にのぼっています。一般に術後は入院治療を行いますが、この期間は理学療法士付き添いのもと歩行リハビリテーションを行います。口頭での歩行指導は、関節の曲げ角度、かかとの高さ、歩容なども意図が伝わりにくいですし、一方、理学療法士が患者を支えながら行う歩行指導は、意図は伝わりやすいものの、作業負担が大きく連続した指導が非常に困難です。また、長期入院を制限されるケースが多く、退院時の治癒レベルは高いとは言えません。このため、退院後も通院リハビリテーションによって機能回復を図りますが、この期間が長期化することも多く、患者負担が増加する要因となっています。

KAI-R― 測定機能でリハビリの目安も確認

―なるほど。そこで「KAI-R」の登場ですね。特徴はどんなところでしょう?

小早川) アシスト機能としては、曲げると回転中心がずれる「ロールバック」という人間の膝関節独特の動きに追従するため、「カム式回転すべり膝関節機構」という独自機構を用いて、違和感や装着ずれを解消し、人が手を添えて足を運んでくれるような感覚で、人に変わって膝の曲げ伸ばしや腿上げ等を教えてくれます。ちなみに、人工膝関節の手術は片足ずつ行なうため、片足に制御コンピュータ、逆側にリチウムイオンバッテリを内蔵しています。なお、膝屈曲目標角、股関節目標角、アシストの強さは、コントロールパネルのつまみで簡単に調節できます。

―他の機能もあるのですか?

小早川) 歩容測定機能もありまして、歩行中の関節角度、足底の着地状態、アシスト量等をタブレット端末に無線送信し、専用ソフトウェアで表示が可能です。データは記録され、歩行の分析や履歴比較を行うことができます。例えば、アシスト量を確認することで、ロボットに頼った歩行をしているか、自発的に歩行しているかを確認でき、リハビリの目安とすることができます。

―今後の展開はいかがでしょう?

小早川) KAI-Rは、人工関節置換患者だけでなく、その装置構成を基に修正すれば、下肢片麻痺、不全麻痺等の患者への使用も可能ですので、そうした応用に向けた開発も進めています。また、そのほかに新たな歩行アシストロボットも開発中です。

新たな装着型運動支援装置― 脳卒中後片麻痺患者等用の「正しい歩行」リハビリテーションをアシスト

 3号機装置側面

―どういったものですか?

小早川) 脳卒中後片麻痺患者などの歩行に障害をお持ちの方のリハビリテーション用として、「正しい歩行の学習」の支援を行う装置で、従来のリハビリテーションロボットのように「運動を補助する」のではなく、「運動の学習を補助する」という考え方の下、開発を進めています。多くの病院で使用されている長下肢装具に対してロボットを取り付けるだけで、最新のwearableの歩行支援ロボットへと変化することを目標に産学官連携で開発を進めています。

―既存の長下肢装具に取り付けられるというのはいいですね!開発中ということですが、少しだけ特長を教えてください。

小早川) 装着・準備が手軽で時間を要せず、小型軽量化により身体への負担も小さいです。アシストの特徴としては、歩行時の下肢運動に合わせて膝の曲げ伸ばしを補助するのですが、装置が歩行速度・歩幅に合わせた最適なアシストタイミングを取るため、違和感のない歩行が実現可能です。歩行の問題点や学習の進捗に合わせて補助の強さや調節をすることもできます。

弁ばねを材料から一貫生産

エンジン用弁ばね

―さて、御社全体のことを教えてください。「弁ばね」で有名ですね。

小早川) 自動車エンジンに使われる弁ばねは、高回転で動き、しかも何十万キロも走り続けるのに耐えられるものである必要があり、作っているのは当社を含め数社しかありません。「鉛」を使用しないで「砂」を利用した世界初の熱処理ラインを開発し、汚染の未然防止と廃棄物削減も実現しています。

―すごいですね。

小早川) しかも材料から自社で作っているのは当社のみです。ばねの性能向上のために、材料(材質)、形状(ばね加工)の両面で最適化な対応ができます。

―他にはどんなところで使われていますか?

小早川) 例えば、ハードディスクの磁気ヘッドなどですね。医療器具用にミクロンレベルのバネも開発したことがあります。

自動車業界とともに

―東証一部上場企業でいらっしゃいます。会社が大きくなられた秘訣は何でしょうか?

小早川) 難しい質問ですね(笑)。戦後の自動車業界の拡大とともに伸びてきたということは言えます。大戦中に陸軍がドイツから購入した自動コイルマシンを見て、終戦後に国に依頼して買い取った、創業者の先見の明と言いましょうか。

―今後の展開は?

小早川) これも難しい質問ですが、自動車以外の新しい分野への進出は当然考えていかねばなりません。人材育成のためにも重要です。今回の歩行アシストロボット開発もその一環です。日頃、自動車の中の、エンジンの中のバネ、というように、見えないところで暮らしを支えていますが、今回、直接人をサポートする器具の開発をしており、また違った喜びを実感しているところです。


創業当時の自動コイルマシン。戦時中のため”U”ボートで運ばれたとも伝えられる。

 

同社の今後の展開がますます楽しみです。

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