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株式会社寺内製作所(京都企業紹介)

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材料調達から品質保証まで一貫対応による国内唯一の航空機専業ボルト・ナット製造

(掲載日:平成28年7月19日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

平成26年度元気印企業、株式会社寺内製作所(京都市伏見区)の山本代表取締役様と小林取締役様にお話をおうかがいしました。

国内唯一の航空機専業のボルト・ナット製造

京都航空宇宙産業ネットワーク(略称:KAIN)を立ち上げられるなど、京都の航空機産業界のリーダー的存在の御社でらっしゃいますが、まず、事業の概要から教えてください。

山本) ボーイング社の航空機や、GE社の航空機エンジンの部品を、日本の大手重工さんらを介して受注しています。売上割合で言えば、ボルト・ナットやピン、リベットの各種ファスナー類が5割強、残りがオイル噴射ノズル、主要構造結合金具などの切削部品です。

  
(左から、ファスナー、オイル噴射ノズル、主要構造結合金具)

―航空機用のボルト、ナットを作ってらっしゃる競合って、国内にあるのですか?

山本) もちろんありますが、大変少なく国内で数社だけです。世界的な大手企業もありますが、航空機専業でボルト・ナットを作っているのは当社だけです。

品質の高次元安定化とスピードアップのノウハウが詰まった製造工程

―すごいですね。航空機用のボルトの製造工程を教えてください。

小林) まず、材料は受入検査を行い、識別タグを付与して倉庫で保管します。そして加工適寸に切断した材料を鍛造加工します。鍛造は切削等と違って、ファイバーフローを切断しない加工方法であるため、高い強度のボルト製造に適しているのですが、航空機エンジン用などは、ニッケル基合金材など、高温域での強度に優れる反面、加工が難しい素材を使うため、ファイバーフローを切断したり壊したりしないよう、圧力をかけるのにノウハウが必要です。なお、予備成形や本成形の前に投入する電気炉を誘導加熱炉に変更することで、加熱時間および連続加熱による時間の短縮、および品質のバラツキを抑えるといった研究開発を進めているところです。

―なるほど。

小林) 続いて、プレス加工で12角形や6角形に成形し、熱処理工程で強度を高め、軸部の切削加工を行います。そして転圧工程に続きます。首下に応力が集中し、疲労破壊を避けるために行う工程です。転圧は重要工程に位置付けられています。

―いろいろあるのですね。

小林) そして、軸外径をミクロン単位で研磨仕上げし、ねじを転造加工します。ねじ転造用の金型を回転させながら、金型の圧力を使って軸に溝を形成していく工程です。航空機用では、ねじの切り上がりの谷底Rを大きくしています。すなわち、ねじの溝をあまり鋭くしないということです。最後に寸法検査、強度検査、非破壊検査など検査工程となります。

航空機業界の難しさ

―品質の高次元での安定化とスピードアップのため、すごく努力やノウハウが必要なのですね。航空機部品製造の難しい点はどういったことでしょう?

山本) まず何より、顧客(発注)企業様ごとに、その認証を受けねばならないことです。しかも、工場の認証、特殊工程などの工程の認証、検査員の認証など、その内容は多岐にわたります。JISQ9100やNadcapを有しても、これを有さねば仕事を受けられないのです。「空の安全」のためにはやむを得ません。また、それに関連して、重要工程を変更するに当たっても顧客企業様の認可が必要です。例えば、特殊工程である熱処理を行う炉の場所を変更するにも認可が必要です。変更プランを立てて認可を得、実施後には報告をして了解をもらうという作業が必要なのです。

―大変ですね。

山本) そして、トレーサビリティーです。先ほども説明がありましたが、材料段階からロット番号を付与しており、出来上がった製品については、検査番号がわかれば、どういう材料で、どういう加工、試験を行い、その数値がどうであるのかということが分かるようにしてあります。

  
(左から、真空熱処理炉、トルク試験機、浸透探傷試験設備)

特殊工程、検査も含めた一貫対応は自社・顧客双方に高付加価値

―これだけ大変な航空業界に特化されている理由は何でしょう。航空業界に携わっているおかげで、半導体や自動車業界などとの新たな取引が始まり、それがメリットだという企業さんもいらっしゃいますが。

山本) 当社の場合は、「選択と集中」で航空機業界に特化しました。自動車など大量生産対応は、国内メーカーの海外流出などもありますように価格競争が激しく、継続は困難と判断しました。航空機は多品種少量生産であり、特殊工程や検査も社内一貫対応で行っており、それなりに投資や人材育成は大変ですが、付加価値が高いと捉えています。

―まさに一貫対応は、この業界では発注企業側も求めてらっしゃることですよね。

山本) はい。例えば非破壊試験については、NAS410(NAS Certification & Qualification of Nondestructive Test Personnel)レベル3を保有している検査員もおり、他の企業様から依頼されることもあります。この資格は、業界特有のものではと思います。日本のネックの一つに、NAS規格で非破壊検査員を認定する制度および機関が確立されていないという問題があると考えています。資格取得の前提として一定期間の経験が必要であるなどの課題もあります。

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「京都航空宇宙産業ネットワーク(略称:KAIN)」

―「京都航空宇宙産業ネットワーク」を立ち上げられましたね。

山本) まず、実は京都は、航空産業にゆかりのある地であるということがあります。当社は1913年創業でありますが、第二次大戦中、航空機産業が進出、疎開してきたという歴史があるとお聞きしました。1つは名古屋の三菱重工関係の会社が、もう1つは鐘紡の前身企業が航空機部品工場を開設したというものだそうです。京都は電力事情や、熱処理に利用する都市ガスの余力があったことなどが理由のようです。ただ、京都には川下企業さんの協力会以外、部品加工企業同士のヨコのつながりがありませんでした。兵庫県にも2つほどグループがあるし、大阪にも以前からあります。京都にもJISQ9100を保有されてる企業、航空関連の特殊工程をされてる企業もあります。これはよそに負けないピリッとしたグループが作れるはずだ、と思い立ったわけです。

―素晴らしい。御社も100年を超える老舗でらっしゃるのですね。さて、御社の今後の展望はいかがでしょうか。

山本) 参入企業も増えてきました。一方で、川下メーカーも受注増で忙しく、これまで内製化していたものも外注に出してくる状況になってきています。そこで、これまで得意としてきた小物部品に加え、中物部品、例えばエンジンの燃焼器等へも拡大していきたいと考えています。大きいものであっても、業界の永遠のテーマである軽さの追求のため、厚さの薄いものが求められます。大きくて薄いけれど、いかにひずまない、変形しないものを作っていくかの研究開発が必要です。材料、その削り方などなど、勉強と投資を進めていかねばならないと考えています。年内には、自動で測定まで行う、最先端の5軸制御のNC複合旋盤を導入し、更なるスピードアップや品質アップを図るつもりです。

 

同社のますますの発展が楽しみですね!

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