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サイアス株式会社(京都企業紹介)

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日本経済新聞「がん治療、大学発新興が競う iPSやゲノムの技術活用」(令和3年10月26日)(外部リンク)

iPS細胞技術を用いたがんに対する再生免疫細胞療法

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(掲載日:平成30年3月19日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

サイアス株式会社(京都市)の等代表取締役にお話をおうかがいしました。

iPS細胞で再生したT細胞によるがんに対する再生免疫細胞療法

―何をされてらっしゃる会社ですか?

等) ヒトiPS細胞からT細胞を再生し、がんや感染症に対する再生免疫細胞療法の製剤を提供することを目指して、日夜研究開発を行っています。弊社の技術は京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の金子新准教授を中心に開発されました。

―T細胞とおっしゃいますと?

等) T細胞は、白血球の成分の一つで、腫瘍や外部から侵入したウイルスが感染した細胞などを攻撃します。腫瘍やウイルス感染細胞は細胞表面上に腫瘍やウイルスに特異的なタンパク質の一部(抗原)を発現しており、T細胞はその抗原を認識します。またT細胞は認識する抗原を記憶しており、再び侵入してきた場合や再発の場合に腫瘍やウイルスを排除することが可能です。

―なるほど。

等) 免疫応答をうまく利用することによって、従来の治療法(手術、放射線、抗がん剤)では治療効果が見られない末期のがん患者の一部で、完治に近い治療効果が得られるようになってきました。弊社では、がん患者のがん組織中または血液中のT細胞の中から、がんに特異的な抗原を認識して細胞障害性を示すものを分離し、一旦iPS細胞に変換して再分化させ治療に利用することを目指しています。

―それをiPS細胞を使って行われるということですが、iPS細胞だとどういう良いことがあるのでしょうか?

等) がん患者さんの体内では、がんを認識するT細胞は疲弊した状態にあり、腫瘍に対して細胞障害性を示せないことが最近の研究でわかってきました。それらを取り出して体外で増やそうとしてもなかなか増えてくれません。またT細胞は過剰に増殖させると機能を失う傾向にあります。iPS細胞は高い増殖能を持ちますので、iPS細胞に一旦変換することによりこれらの問題を解決することができます。T細胞の抗原認識能は遺伝子の上に記憶されていますので、iPS細胞に一旦変換しても再生したT細胞は全く同じ抗原認識能を持ちます。iPS細胞技術を用いると腫瘍に特異的で疲弊のない若いT細胞を大量に得ることが可能です。これらの若いT細胞は高い増殖能と細胞障害性を示すことが実験的に示されています。私どもの製造するT細胞を患者さんに戻すことで高い治療効果が期待されます。

生産の効率化・安定性に京都のものづくり技術を

―素晴らしい。

等) iPS細胞由来再生T細胞を用いた治療法は、患者個人のT細胞を用いる自家移植法と、健常人ドナーから作製したT細胞を多くの患者に用いる他家移植法に大別できます。私たちは、まずは、T細胞のドナー(提供側)とレシピエント(受領側)の適合性等の問題がない自家移植を優先して開発を行い、1日も早く安全で薬効の高い製品を医療現場に届けることを目指しているところです。

―研究はまだ続くのですか。

等) これから前臨床試験に入っていく段階です。この業界は、どうしても時間がかかります。再生T細胞について、がん化しないかどうか、自己免疫の原因とならないかといったことなど「安全性」の検証はもちろんですが、「生産の効率性、安定性」といったことも今後、重要になってくると思っています。

―とおっしゃいますと?

等) そもそも細胞培養の分野は、人手がかかるため、価格も高く、時間もかかってしまいます。たとえば、がん細胞・抗原に反応性のT細胞をいかに効率的に分離するかとか、細胞を運搬する際の温度管理、振動の抑制、細胞の再生の判別など、各工程の自動化、効率化が必要となってくると思います。

―なるほど。

等) 京都には、様々なものづくり企業がいらっしゃると聞いていますので、この辺りをサポートしていただけるとありがたいなと思っています。当社は2015年に設立された会社ですが、私自身は海外の創薬メーカー勤めが長く、昨年、当社の社長になったところでして、京都には初めて参りました。

―そうなのですね。

等) 今は、当社で細胞を生産し、患者様の元へ届けるという絵姿でしょうけれど、いずれは、一人ひとりの患者様のベッドサイドに装置があって、自分で作れるという、そういう世界になっていくのだろうと、思い描いているのです。

 

是非ともそういう世界を実現させていただきたいと思います!

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