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株式会社ワコール(京都企業紹介)

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一発逆転!失敗から学び大ヒット商品を開発

(掲載日:令和3年11月15日 聞き手・文:ものづくり振興課 笠原、矢島)

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株式会社ワコール(外部リンク)(京都市南区)の第1ブランドグループ ワコールブランド商品企画部 商品開発課 開発担当専門課長 福永千春様(写真右)、同部 商品設計課 チーフ 小林真紀子様(写真左)にお話をお伺いしました。

接着技術不良の重大品質トラブルから生まれた新商品

―昨年度、「上半身衣類」で京都府発明等功労者表彰を受けられましたが、開発の経緯を教えてください。

福永) 今回の発明はブラジャー前側の中心部、挿入口の形状に関するものです。
この商品は接着の技術を使っていますが、2005年頃に、ワコールで業界に先駆けて接着技術を活用して商品化した際、重大な品質トラブルが発生してしまい、それ以降、接着技術は社内的に避けてきたという経過があります。
 しかし、新しい接着技術が開発され、他社ブランドが商品化を進め市場に展開を図っている状況の中、弊社は遅れを取り戻す必要がありました。そこで満を持して、過去の失敗を踏まえて開発に着手した商品であり、社内でもかなり気合いが入った状態で商品開発が始まりました。
 業界の中で遅れをとっていたため、女性が一番美しくなるための商品を開発するというポリシーで、美しさ・機能性、そして品質を併せ持った商品を実現することに大変苦労しました。

 

―以前発生した重大トラブルとは、どのようなものでしたか。

福永) 通常は縫製で生地に縫い付ける後ろカンと呼ばれる背中側の留める部分(ホック)を、縫い付けではなく接着した商品でしたが、接着部分が剥がれてしまい、着用時に後ろカンが外れるというトラブルでした。着用中にブラジャーが外れる可能性があるため、社告を出して商品回収するという重大品質問題となりました。それ以降、接着商品の開発に慎重になり、新たな商品をお客様にご提供できていませんでした。

 

―それでは、今回の開発に当たっては、接着剤の選定など、かなり工夫をされたのですか。

福永) はい、接着剤や素材の選定に加え、染料や加工用の部材も全部調べ上げ、かなりの高水準がクリアできるまで耐洗濯強度・剥離強度テストを繰り返し、現在の接着強度がクリアできる商品をつくり上げました。

 

―後発品として、参入にあたり留意された点など教えてください。

小林) 開発品は後カンのないハーフトップと言われるブラジャーで、着用感は楽ですが、きれいなシルエットを得ることが難しい商品です。この商品は、従来縫製していた部分のほとんどを接着しています。他社との差別化という意味では、接着技術だけでなく、きれいに見せるという点からシルエットにも力を入れました。他社の商品は、左右のバストに1つずつ別々のパッドが入っている形状ですが、今回の商品は、このパッドを一体化し、左右のバストが離れずに立体的に保持できる点が、本発明の元になったアイデアです。

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―商品化に向けて苦労された点など、教えてください。

福永) 最初は、単純に脇側の部分に切り込みを入れて、出し入れする形状で試作しましたが、前側の中心部分で反対側にパッドを入れ込むときに、非常に入れにくかったため断念しました。お客様には「お洗濯時には取り外して、洗ってください」と説明していたパッドのため、お客様が容易に出し入れできることも重要なポイントです。商品化にあたってパッドの挿入口の場所を決定するのに苦労しました。

再チャレンジ、そのとき会社は

―開発に慎重になっていた接着方式に再度トライすることになったということですが、会社側のバックアップはどうでしたか。

福永) 当時の部長が、どんどん新しい技術が出現しているのに慎重になって着手しないのは、弊社のこれからの発展にも絶対良くないということと、新たな技術を取り入れることで開発チームの士気も高まるということから、急速に動き出すことになりました。
 本来開発は1年以上かけて進めることが多いのですが、今回の商品は半年くらいで仕上げることを目標に、やれることを全部組み込み、知見のある社員を集めてプロジェクト化して取り組みました。ちょっと冒険的なプロジェクトでしたが、限られた期間の中で商品化までやり切ることができ、私たちの自信にもなりました。

 

―商品化の目処が立つまで、とても心配だったのではないですか。

福永) はい。今回の商品化に向けては、設備投資が多額となりますので、恐らく、部長も首が飛ぶ覚悟だったと思います(笑)。ミシン縫製とは異なった技術や設備開発が必要で、しかも短期間で確立しなければならなかったので、非常にリスクが高いプロジェクトだったと思います。

特許のここを見て!

―今回の発明のアピールポイントを教えてください。

福永) パッドですね。これまで、バストの造形性 、シルエットを高めるために様々なサイズの着用者の体形を計測し、それぞれのサイズに最適なフィット性と造形性を確保していました。しかし、この商品はS・M・L・LLの4サイズ展開(現在はS~5Lの7サイズ展開)の商品となっています。Lサイズの中にも、様々な形状やバストサイズがあり、今まで弊社が作り込んできた細かなサイズ設定による商品よりも4サイズ展開では、最適なフィット性と造形性を確保する「サイズフィット」と「美しさ」の達成が難しくなります。

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―つまり、S・M・L・LLの4パターンの中で高い造形性を表現することに苦労されたのですね。

小林) そうです。パッドについてもう少し説明しますと、パッドにはやや厚みをもたせており、肌側のバストに触れる面は実際にバストにフィットする形状になっていますが、外側のシルエットとして見える部分はバストが寄って見えるような工夫を施しています。
 そのようなパッドを、一番出し入れのしやすい場所はどこかと考えたところ、パッドの中央に対応する部分に入り口を設けるのが最適だと思い、前側の中心部を採用しました。
 出し入れも可能で造形性も崩さず、着用時の違和感も少ないという場所を探索した結果、今回の発明が完成しました。

 

―これだけの工夫を重ねて商品化されましたが、市場の評価はどうでしたか。

福永) おかげさまで差別化されたパッドの造形性は、非常に高い評価をいただきました。今まで接着方式の商品をいろいろと試された方のお悩みにしっかり対応できていて、本当に細かいところに手が届く、お客様のニーズを満たせる商品が提供できたという手応えはありました。

難しいほど楽しい!

―どのようなところに、開発者としてのやりがいを感じますか。

福永) そうですね。私は、新しいことを知ることができる点はもちろん、実生活では知らない世界に飛び込むような冒険はあまりしないタイプですが、業務だったらできる!みたいな感覚はあります。
 本当に仕事で様々な知識や経験が得られるということは、とてもやりがいがあり、とりあえずワクワクしよう!という感じで仕事に取り組んでいるので、常に新しいことに興味を持ち続けていられることは、ありがたい仕事だなぁと感じています。

小林) 開発とか新しいことをやろうとするときは、多くの課題が出てくると思いますが、そういう課題が、例えば一つのアイデアで全部解決できるような発想が出てきたときなど、自分天才!みたいな、謎解きに成功したときのような興奮を感じます。そのときの喜びを何回も感じたいがために、どんどん難しいものにチャレンジしていこうかなと思っています。難しければ難しいほどドーパミン出るという感じですね(笑)。

―とても心強いですね。

小林) でも浮き沈みは激しいんです。沈んだときは手もつけられない。

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(左)Night Up Bra [BRA155]、(右)重力に負けないバストケアBra [BRB424]

 

―ご受賞のテーマやお仕事の進め方について、ご説明いただきありがとうございました。
 ここからは、少し個人的な面をお伺いして行きたいと思います。まずは、ものづくりや開発関係の分野へ進もうと思ったきっかけなど、教えてください。

小林) 昔からものづくりに興味があり、立体物のものづくりが特に好きだったことからワコールに入って、ものづくりや開発に興味を持つようになったという感じです。

福永) 子供のころから、常に母が洋服や小物を作ってくれていたので、ものづくりに興味を持ち、自然とこの分野に進んでいました。

ワークライフバランス

―開発業務は勤務時間が長くなってしまうことも多いと思いますが、仕事と家庭の両立などについてお聞かせいただけますか。

福永) 2人とも結婚していてパートナーがいますが、結婚前とあまり変わっていないと思います。もちろん、最近はテレワークが推奨されたりなど、なるべく業務の効率化にも取り組んでいますが、私たちは、今はパートナーの力が一番大きいと感じています。夫婦で協力しながら対応しています。

小林) 2人とも仕事が好きなので、今は仕事の比重が高めと感じています。開発の仕事は、時間が読めなかったり、急に商談が入ってそちらの対応が必要となったりなど、なかなか計画通りに時間の計算ができない業務だと思っています。そのため、業務中は、いかに効率化を図れるか、今までやってきた中で本当にその業務は必要なのか、過剰になってないかというところを確認しながら進めています。
 社内の商品企画業務においてもお客様の満足度は高めつつ、効率化を進める方向にシフトしてきています。

 

―会社のサポート体制など、働きやすい環境整備などの面は、どうですか。

福永) 開発チームも子育て中の社員がいますが、女性が働きやすい制度が充実しています。みなさん時短制度やフレックスタイム制度を活用し、柔軟な出社が可能なので、生活に合わせて仕事を進めることができています。

今後の目標

―それでは、今後の目標をお聞かせいただけますか。

福永) 下着とはいえ、様々なテクノロジーが入ってきています。さらに、SDGsといった環境面のこともメーカーの責任として考えていく必要がある時代になっています。
 地球環境という大きな話になるかもしれませんが、今後は、環境との共存を図りながら会社として成り立つという方向を目指すことになると、それがメーカーの使命になると考えています。

小林) 私は、「ワコールサイズオーダー」というブランドの開発兼パタンナーの仕事に携わっています。ワコールサイズオーダーは、カップのボリューム・ワイヤー・バックの長さを、体形やお好み合わせて組み合わせ、よりお客様にぴったりフィットするブラジャーを提供するブランドです。これから、もっとワコールサイズオーダーを広めていくために、例えば店頭で3D計測機が設置されていますが、その3Dデータを元に、お客様にぴったりフィットするブラジャーを提供できるサービスやシステムの構築を進めたいと考えています。

 

―最後に、モットーなどあれば教えてください。

小林) 「臨機応変」ですかね。型にはめられたものやルールに縛られたものがあると、開発する上で邪魔になることが多いと思います。課題や様々な壁が現れたときに、それを超えていくための発想を得るには、臨機応変さが必要だと感じています。

福永) 私もいろいろと考えましたが、「今日が一番若い」かな(笑)。何をするにも、明日は今日より年を取っているので、善は急げじゃないですけど、やりたいと思ったことは今日やりたいですし、また、先延ばしをするのも嫌ですから。といっても先延ばししてしまいますが(笑)。それを肝に命じながらこれからも生活していけたらと思っています。

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常にポジティブに挑戦を続けるお二人から、今後も目を離せません!これからのさらなるご活躍を期待しています。

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