ここから本文です。

株式会社吉田生物研究所(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

京都企業紹介(業種別) 京都企業紹介(五十音順) 京都府の産業支援情報

京都品質QOL向上支援新商品サービス提供企業群

ジンベイザメの顎骨格標本完成!

(掲載日:令和3年1月26日追記、文:ものづくり振興課 宮﨑)

 独自のプラスティネーション技術(内臓や骨格に含まれる水分と脂肪分を、プラスチックなどの合成樹脂に置き換える技術)で世界初のハモの骨格標本や、メガマウスの全身骨格標本を製作された吉田生物研究所様が、今回はジンベイザメの顎骨格標本を製作されました。今までの骨格標本にはなかった、軟骨魚類特有の「唇褶軟骨(しんしゅうなんこつ)」が観察できます。現在、沖縄県本部町の沖縄美ら海水族館で常設展示されていますので、ご興味のある方はぜひ実物をご覧ください!

世界初!メガマウスの『全身骨格標本』製作に成功!

(掲載日:平成30年12月11日追記、文:ものづくり振興課 倉橋)

写真:メガマウスザメの骨格

 

 独自のプラスティネーション技術で世界初のハモ(画像)の骨格標本を製作された吉田生物研究所様が、今回は同じく世界初のメガマウス(※)の骨格標本を北海道大学の仲谷一宏名誉教授の協力を受けて製作に成功されました。ちなみに、メガマウスは軟骨魚のため魚体が柔らかく形の再現と固定に苦心されたとのことです。現在、千葉県鴨川市の「鴨川シーワールド」に展示中とのことですので、ご興味のある方はぜひ実物をご覧ください!

 

注※メガマウス: 熱帯から温帯の水深200メートル (m) 付近のやや浅い深海に生息し、最大で全長710センチメートル程の幻のサメです。世界でも非常に希少なため、生態は未だ不明とされています。メガマウスザメの捕獲記録は世界で135例、日本では23例あり、本標本は日本で22例目の個体です。

標本化から医療用シミュレータまでを手掛ける多能企業

(掲載日:平成29年2月24日、聞き手・文:ものづくり振興課 倉橋)

 

 平成28年度経営革新企業の株式会社吉田生物研究所の吉田浩一取締役様にお話を伺いました。

標本化・保存化処理のスペシャリスト

御社の概要について教えてください。

吉田) 当社は昭和38年に山科で創業し、当初は教育機関向けの顕微鏡標本の作製を中核事業として行っていました。その後、標本断面を観察するために透明な樹脂中に標本を埋め込む樹脂包埋技術や、標本中の水分をアルコール試薬で置き換えて長期保存を行えるようにする水分置換技術を当社独自に確立して事業を拡大し、動植物などの生体標本の作製を行う教材製作部門、出土した土器や鉄器などの文化財の修復・保護を行う文化財部門、医療用シミュレータなど新規商品の開発を行う研究開発部門、遺伝子解析などの受託分析・研究を行うバイオ情報研究部門の4部門で業務を行っています。

標本作製から受託分析まで本当に幅広い取組をなさっていますね。

吉田) 例えば、顕微鏡標本の作製の中で確立した樹脂包埋技術を生体標本の作製に応用し、生体標本の取り組みの中で確立した水分置換技術を文化財保護に応用するといったように、当社が持つ技術を少しずつ異なる分野への応用を繰り返した結果として、分野が拡がってきたというのが実態です。今後もチャンスがあれば新しい分野に挑戦していきたいと考えています。

化学から文化まで幅広い専門家の協業で新たな価値を創造

分野を超えて技術を応用することはかなり難しいことのようにも思えますが。

吉田) 確かに難解なことが多いですが、当社には化学から美術に至る様々な分野の専門家が多数在籍しており、新たな分野に技術の応用を考えるときには部門を越えて気軽にアドバイスをし合えるような環境となっています。そして、現状の当社技術力を正確に理解したスタッフからのアドバイスなので、開発過程にもブレが少なくスピーディに進めることができます。ですので、これまでの取り組みにおいても特に大きな困難を感じたことはないですね。

専門家を多数抱えてらっしゃるその心は?

吉田) 技術の応用こそ当社の強みだからです。応用を考える場合には必ず基礎に立ち返る必要があり、この部分が疎かだと結果として失敗に終わることとなります。近年は技術課題の解決にあたり外部に委託する風潮がありますが、当社としては外部への依存は技術蓄積に繋がらず、長期的な視点で考えれば得るものが少ないと考えています。そのため、平素から基礎研究の取り組みに力を入れており、様々な大学とも共同で研究を行いながら学会等への発表も精力的に行ってきました。

なるほど。

吉田) また、文化財の保護について言えば、単純に考えると考古学に精通した人材だけで完結出来そうにも思えるのですが、例えば出土した土器の当時の色を再現するような場合には、考古学的な見地に加えて色彩に関する知見を持った美術分野の人材の手助けが必ず必要となります。このように、文化財保護に限らず、当社にご依頼頂く案件については様々な要素を含む学際的なものが多いことから、様々な分野の専門家を揃える必要があるのです。

世界初のハモの骨格標本も―誰も出来ないような仕事に挑戦 

顧客はどのような方なのでしょうか?

吉田) 当社が取り扱う分野が多岐に渡ることから必然的に顧客層も幅広く、生物教材や標本は教育機関からのご依頼が多くなりますし、文化財の修理・保護となると美術館や博物館などからのご依頼が大半となります。ほかにも受託分析については官民問わずにご依頼を頂いています。

写真:ハモの骨格標本

御社が選ばれる理由についてはどのようにお考えでしょうか?

吉田) 当社では、これまでの様々な分野における経験やノウハウを活かす場として、他社様では引き受けないような難しい仕事を敢えてお受けしてきました。例えば、ハモの骨格標本を作りたいというご依頼をお受けしたのですが、ハモは細かな小骨を無数に持った魚であり、今まで誰も作ったことが無いものでした。そこで、当社ではハモのレントゲン撮影や身を透明化した上で骨を染色するなどして3500もの骨の位置を一つ一つ特定しながら、2年あまりを掛けて世界初となる骨格標本を完成し、このご依頼に応えることができました。このように、どんな難題であっても、まずは取り組んでみる姿勢を持ち続けてきたことが、お客様からの信頼や選ばれる理由に繋がっているのかもしれません。

より人間の皮膚感やがん症状の再現性が高いフタル酸フリー乳がんシミュレータ「GN500」

写真:乳がんジュミレータ

最近ではどのような取り組みをされているのでしょうか?

吉田) フタル酸フリーの乳がんシミュレータ 「GN500」を川崎医科大学付属病院の園尾先生と共同開発をしました。一般に乳がんシミュレータは軟質塩ビ樹脂で出来ているのですが、塩ビ樹脂を柔らかくするための軟化材としてフタル酸という化学物質が使用されてきました。しかし、使用すると樹脂中のフタル酸が浸出し、べたついたり、堅くなったりすることが問題となっています。また、近年では欧米を始め使用規制も進んでおり、今後国内でもフタル酸への忌避意識は高まってくるものと考えています。

なるほど

吉田) このことから、当社ではフタル酸に替わる塩化ビニル樹脂の軟化材について研究を進めたところ、その代替となる軟化剤の開発に成功しました。この軟化材を用いた乳がんシミュレータは、既存品よりも人間の皮膚に近い感触を再現しているだけでなく、既存品に比べて悪性腫瘍特有の表面突起やひきつれ症状の再現性が非常に高いと好評をいただいています。乳がんは自己発見できる唯一の癌とも言われており、このシミュレータの普及により早期発見に役立てて頂ければ何よりと考えています。

今後の展望についてはいかがでしょうか?

吉田) 今回、塩ビ樹脂の代替軟化剤の開発に成功したことで、無害なだけで無く肌に近似した触感を持つ製品を作ることが出来るようになりました。この乳がんシミュレータを切掛けとして、今後も当社の蓄えた知見と組み合わせながら、医療分野にも展開を進めていきたいと考えています。

 

オンリーワンの技術の応用で成長を図る同社の今後が楽しみです

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp