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田中さん(みんなの京都)

グローバル・エコシステム形成プロジェクトの一環で、京都で住まう、働く海外出身の皆さんの実情を紹介する「みんなの京都」です。

みんなの京都 京都府の産業支援情報

医療通訳

(2024年3月18日、ものづくり振興課 足利)

現在、再生医療(自己脂肪細胞由来幹細胞治療)に着手されている医療法人ひかり会「とみえクリニック」の国際事業部長として、医療通訳のお仕事もされています。

キャッシュレスサービス代理店

(2024年3月18日、ものづくり振興課 足利)

2023年8月に開催しました「隣の外国人コミュニティ」参加をきっかけに、「WeChatPay」「Alipay+」「銀聯国際」などの日本1次代理店・日本環球支付株式会社(略称GlobalPay)の代理店業務もされています。

工場現場改善アドバイザー 兼 医療現場外国人患者サポーター

(2023年4月10日、ものづくり振興課 足利)

現在、工場現場改善アドバイザーと医療現場での外国人患者支援を営む田中さんにお話をおうかがいしました。

憧れの日本へ

--中国から日本にいらっしゃったそうですね。

田中さん)約20年前、高校卒業後、大阪の日本語学校に入学しました。

--どうして日本を選択されたのですか?

田中さん)当時の日本は、中国よりもずっと所得の高い、みんなが憧れる国だったのです。一人っ子政策のため、妹が生まれた私の両親は国にお金を払い、母は仕事を辞めなくてはなりませんでしたから、貧乏だったのです。

大阪にあって京都にないもの

--そうだったのですね。では、大阪を選択されたのは?

田中さん)親戚が大阪に居たからです。大阪や神戸は、中華街があってコミュニティがあるのです。

--中華街がコミュニティ?

田中さん)食事したりお酒を飲んだりしていたら、知らない人どうしでも、自然と声を掛け合いますからね。中国人どうしで群れたいわけではないのですが、日本のことが分からないことだらけなので、どうしても中国人のコミュニティに頼らざるを得ないのです。それはそれで時には人間関係がややこしくなることもありますが。

--そうなのですね。

田中さん)だから、インバウンドにおいても、京都で観光はしても、買い物は大阪でという外国人観光客が多いと思いますよ。京都は外国人が買い物をしても、お店の人があまり喜んでくれているように見えないのですが(笑)、大阪だとコミュニティがあって情報も得やすいですし、中国人の場合、気質というかノリも大阪に近いですから。

製造業を支える

--なるほど、京都の改善点が見える気がします。ところで、学校時代、収入はどうされていたのですか?

田中さん)食品関係の企業でアルバイトをしていました。

--就職は?

田中さん)高校では工業系の勉強をしてきましたから、大手電機メーカーでアルバイトの仕事を始め、やがて正社員に抜擢されました。そこで10年以上、生産管理、品質管理の仕事をしてきました。とても忙しい日々を送ってきました。今も当時の繋がりで、中小企業さんから現場改善の指導を求められて、おうかがいすることがありますよ。

日本国籍

--すごいですね。お仕事の話は後ほどお聞きするとします。現在は日本国籍を取得されていますね。

田中さん)はい、メーカー勤務時代、日本に馴染んできましたし、もっと日本で普通に暮らしたいと思ってですね。それまでは、何かあったら必要となるパスポートを肌身離さず持っていたりしましたしね。

--そうだったのですね。

田中さん)ただ、中国籍ではなくなりますので、逆に実家に帰るにもビザが2週間しか出ないという制約もあります。実際、母が危篤になり実家に帰った時も2週間たって、やむなくいったん日本に帰国したタイミング、たった1日のズレで母を看取ることができなかったことは、今でも後悔しています。

--手続は大変でしたか?

田中さん)そうですね、役所に何度も通いましたね。新聞を渡されて、書いてあることが分かるかなどもチェックされたりしましたね。もちろん、交通違反をはじめあらゆることに違反がないかも。

--なんとなく京都は海外の人にやや冷たい町かもしれませんが、どうですか?

田中さん)そういう面はありますが、でも、自然は美しいですし、文化も素敵ですし、とても好きな街です。だから、京都の文化や風習などの発信に力を入れて取り組んでまいります。

工場現場改善と医療現場外国人患者支援

--さて、ここからお仕事の話をお聞きします。工場現場改善のアドバイスって、あれですよね?

田中)先ほど言いましたように、長年、大手電機メーカーで生産管理、品質管理に携わってきましたので、その経験を中小企業に還元しています。

--例えば?

田中)本当に単純なことも多いですよ。出荷待ちの製品倉庫で、重さやパレットの大きさで区別して置いているから、出荷に時間がかかるようなケースでは、置き場を出荷順に変えるとか、製品を傷つけないように用いるパッキンのつけ方も、ワンタッチでできるように治具を作るとか。「改善」には「標準化」が重要ですね。

--ふむ。

田中)また、改善して重要なのは、それを「継続」することです。3Sはしていても、5Sはできていないケースが多い気がしますが、組織内でしっかり「監査」する仕組みを作ることですね。簡単なのは責任者が確認するチェックシートを作ることです。

--ほう。田中)そして、「生産性」を上げるために重要なのは、従業員の「納得」です。目標値等を上の人だけで決めているケースが多いと思いますが、従業員も心の準備が必要ですから、きちんと理解、納得できるように「見える化」することが重要です。

医療現場での通訳

--一方、外国人支援とは、どういったことをするのですか?

田中)ビザの申請を手伝って一緒に役所に赴いたり、仕事や家探しも一緒になって手伝ってあげたり、具合が悪い時には病院の紹介や付き添いもしますね。白衣を着て手術室にも入ったことがありますよ。

--手術室に?!

田中)麻酔を打って手術が始まるまでの間ですね。日本語がわからない外国人に「麻酔だから、しばらくしたら眠くなるけど大丈夫よ」と声をかけてあげたりするのです。

--そうか・・・、言葉が通じないから、患者さんも何がなされているかもわからないわけですもんね。

田中)そうなんです。言葉が通じる人(私)がいると安心されます。特に、医療の現場では、コミュニケーションは重要です。

--と、おっしゃいますと?

田中)お互い言葉が通じないと、本当はわかっていなくても、面倒くさいのか、わかったような顔をして済ましてしまうことがありますよね。しかし、医療は命にかかわりますから、患者は十分に理解しておくべきです。

--たしかに。

田中)お医者さん側も、言葉が通じない場合は、どうしても情報が少なくなります。タバコを吸っているか、常用している薬はあるか、どんなものを食べているかなど、生活習慣の情報は時には重要です。なので、お医者さんが聞いてなくとも、私が頑張っていろいろ話を聞くように努めます。

工場現場改善と医療現場外国人支援はシナジー

--ああ、「言葉」ってやっぱり大事なんですね。

田中)そうですね。でも、なにより理解しようとする「気持ち」ですよ。ネパール人の支援をしていますが、言葉はわかりません。でも理解しようとしてくれていると伝われば、信頼感が芽生え、そうすれば言葉はいらないくらいです。

--まあ、例えがおかしいかもしれませんが、赤ん坊と親も、言葉が通じずとも、気持ちがわかりますからね。

田中)まずは褒めてあげる、「すごいね」と。そして気にしてあげる、「大丈夫?」「どうしたの?」と。

--コーチングですね。工場改善アドバイザーのノウハウも活かされているのですね。

田中)そうですかね。でも、工場現場での外国人の支援もしています。気になっていることがあります。それは、日本人は真面目です。でも、真面目過ぎて、仕事では「鬼」のように映るんです。

--なっ、なるほど。

田中)もちろん、外国人も、日本人の真面目さを学びに来ているのですが、もっと根本的には、なぜ日本に来ているかと言えば、母国での暮らしが大変だからでしょう。なんとか自分を変えたいと思って来ている人が多いわけです。家族と離れて寂しく思っている人もいるでしょうし、気持ちも暗くなりがちです。だから温かくしてあげてほしいですね。

--そうですね。

田中)先ほど工場改善の話の中で、「見える化」や「標準化」に言及しましたが、外国人の場合、特にそうだと思います。例えば動画でわかりやすく伝えてあげるとか、感想を聞いてあげて一緒に取り組んでいる感を出してあげるなどすれば、納得するし、生産性は上がります。また日本人は「言わずともわかれ」かもしれませんが、そこをしっかり標準化して、ルール化することが大事なんです。

一見全く関係のないように思えた「工場改善」と「外国人支援」を、見事にシナジー効果を生んでいるようです!

<概要>

  • チーム名:華花
  • 連絡先:love.111reina@gmail.com

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

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