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京都の撮影所で継承されてきた時代劇制作技術の基礎調査

 

京都はかつて日本のハリウッドと呼ばれ、現在でも多くの時代劇制作のための資産を保有しています。しかし、現在においては、撮影本数の減少、製作の担い手不足や技術の伝承問題等により、時代劇の存続が危ぶまれている状態にあります。

そのため、京都府では、京都の撮影所等において伝承されてきた美術や殺陣、さらに編集・制作等の技術を継承・保持する専門家の皆様へ聴き取りによる基礎調査を実施し、貴重な時代劇映画の制作過程を記録・報告書として取りまとめました。

報告書(PDF:3,708KB)

京都の時代劇制作の現場では、「低コストで量産するためのスタジオ・システム」「トータルに深く技術ノウハウを習得するために、チーフ、セカンド、サードなどといった難易度別・段階別修行システム」をベースにしつつ、創造性が求められ、正解がない映画づくりの本質に近づくために、マニュアルではなく「見て、覚えて、自分で考える徒弟制度的な育成手法」が導入されてきました。時代劇を支える専門技術は次のとおりです。

  • 企画(プロデューサー)、脚本家
    プロデューサーは、脚本(骨子)を書いて会社を説得し、脚本家、監督、俳優等の選定を行います。企画の自由度はテレビより映画の方が大きいです。
  • 演出(監督、助監督)、制作・進行
    助監督は、かつての投影ではチーフ(俳優その他全般の調整)、セカンド(衣装との連携など)、サード(小道具との連携など)という分担で、幅広い時代劇の知識ノウハウを習得できるシステムが構築されていました。
    監督になるには、テクニックではなく、描きたいものを掴めているか、その嗅覚のようなものがあるか、自分の特色が明確であるか、強い覚悟があるかが問われると言われます。
    制作・進行は、脚本に基づいて予算を組み、ロケ交渉、宿舎手配、交通手配などを効率的かつ効果的(単に効率だけでなく俳優の心理に配慮した撮影スケジュールの設定など)に進めます。チーフ、セカンド、サード、見習いがあり、見て、覚えて、考えながらランクアップしていきます。
  • 美術(美術監督・デザイナー、装置(大道具)、背景・塗装、装飾(小道具))
    美術デザイナーが脚本から描くイメージを、装置で立体化します。大映が本物志向であったのに対し、東映は合理的な方式を編み出しました。時代や東西の建物の違い、監督の撮り方の個性の違い(下から撮るなら天井も丁寧に作る)を反映させるため、やはり見て、覚えて、考える必要があると言います。
    塗装は、下地の塗装、仕上げの汚し・エイジングを行います。東映では約840種類もの色があるそうで、一人前になるのに10年かかると言われます。木目や年輪をつけるための独自治具などそれぞれ工夫しているそうです。
    装飾は、出道具(家具、調度品などセット飾り)、持道具(刀、笠、鎧など役者回りの小道具)、現場スタッフの3名体制で担当するそうです。同じ「床の間」でも、戦国時代は家紋の前に鎧や矢で作った屏風を立てますが、元禄時代は掛け軸を飾らない場合もあるとか、同じ「竹光(竹製の刀)」の柄でも、殿様は白、家老は茶色、武士は黒、若い人は浅黄色など、時代背景に応じた道具が必要ですが、酒樽や提灯、ひな人形などを作れる職人の不足が課題となっています。
  • 演技(鬘・美粧、衣装、演技・所作(俳優)、殺陣)
    (かつら)・美粧では、かつらを作る「かつら師」、役柄に合った髪型に結い整える「床山」が協力して役者に被せていきます。アルミの土台に、人毛(女性のものが多い)を付け、熱いコテで焦げる寸前までまっすぐに伸ばして作られています。役者に最も近いポジションに居るため、台本から積極的に提案するなど、撮影に向けて役者の気持ちを盛り上げる駆け引きも重要な仕事です。近年は4Kなど映像の鮮明化によって、かつらの境目を目立たないようにする工夫が難しくなっています(撮影側で、目頭より下をアップする工夫等を編み出されています)。
    衣装では、着付けができない役者が増える中で、東西で異なる帯の結び方など着物の知識はもちろん、紙やすりや軽石でこする、わざと糸をほつれさせるなどの、風合いを出すための「汚し」や生活感を出すための「やらし」などの工夫を施します。
    俳優には、男性ならば、15kgもする鎧を着て、刀を二本差しで、馬を乗りこなすテクニックが必要です。女性ならば、配膳の所作が必要です。籠を担ぐ、番傘の持つ、巻き割りをする、火を焚く、竹筒で火を噴く、七輪を内輪で仰ぐなど、現代ではなじみがない所作を体得する必要があるのです。
    殺陣は、歌舞伎の舞踊としての立ち回りにスピード感を出したものとも言われます。時代背景などの基礎的な知識、舞踊、歌舞伎、武道の動きの習得、芝居の成立と安全性の確保のために「振りかぶり」「斬りかかり」のテクニックの習得、勝つだけでなく負け方の技術の習得など必要です。
  • 技術・仕上げ(撮影、照明、録音、音響効果、記録)
    撮影は、映画ではチーフ(ライティング対応等)、セカンド(ピント調整、芝居対応等)、サード(カメラメカニック)、フォース(カメラセッティング)の4名体制、テレビではチーフ、セカンドの2名体制が一般的です。広角レンズだと映り込む範囲が広がり多くの大道具、小道具が必要となるため、狭い画角で望遠(俳優の表情もよくわかる)で撮影することが多いです。
    録音では、時代劇で用いる効果音はライブラリで管理されています。効果音はアイデア勝負でもあり、刀を構えた際の「カチャ」という音は、将軍などの手入れされた刀には、本来隙間ができないため鳴らない音だが、セオリーとして定着しています。

 

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