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学術講演会

京都府医師会理事 上田 朋宏先生
ガッテンドクターのエビデンスレシピ
診断名は…

この患者さんは、「間質性膀胱炎(※1)」 でした。

現在、「間質性膀胱炎」のガイドラインには、
『膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱痛などの症状を呈する疾患』と書いてあります。

このガイドラインは私が作りました。患者さんのデータをフォローしていると、ある日突然、解決策に出会います。例えば大学院で研究中、全く関係のない病理の染めものをしている時・・・ハイテクでmRNAを調べている時・・・。大学に限らず、一般病院でも、地方の病院でも出会えます。
大切なのは、出会って解決出来なかった症例を頭の片隅に置いておくこと、忘れ去ってしまわないことです。

洛和会音羽病院赴任後は、
1991年 東京の財団法人癌研究会附属病院 泌尿器科、
1993年 京都大学医学部 泌尿器科病態学、
そして、1994年 公立甲賀病院 泌尿器科副部長 として赴任しました。

間質性膀胱炎の発見

私にもその日は突然やってきました。
ある文献と出逢ったのです。
公立甲賀病院に勤務していた当時、私は高齢者の排尿障害を専門にしていました。

ある日、排尿障害に関する抄読会の為に「NIDDK Data base study」の「criteria(判定基準)」をスタッフに訳してもらい紙で受け取ったところ、手違いで裏面の、NIH(アメリカ国立衛生研究所)のコンセンサス会議(consensus conference)の内容が訳してありました。偶然にも、間質性膀胱炎に関するNIHコンセンサス会議の結果でした。目を通してみると、『膀胱痛が6か月継続し、抗生物質、抗コリン剤の投与効果無し』と記載されています。私の診ていたあの患者さん達と同じ症状です!

その中にハイドロディステンション(hydrodistention)という記載を発見しました。
これは、「膀胱水圧拡張術」といい「全身麻酔をかけ膀胱を膨らます」と記載されています。

間質性膀胱炎患者さんは、内視鏡で、膀胱の中を検査しても「異常なし」としか診断されません。

麻酔下膀胱水圧拡張術~hydrodistention~

 

 


しかし「膀胱水圧拡張術」で、膀胱を拡張していくと、とんでもないものが見てとれます。それは炎症で出来るコイル状の血管です。それを過剰伸展ディステンションすると、新しくできた血管は潰れ易く出血する。このことをNIDDK criteriaに照らし合わせてみると、「点状出血 (glomerulation)」と記載されていました。

私が当時勤めていた病院で、第1例目の「麻酔下膀胱水圧拡張術」を行いました。
内視鏡で見ると「正常」だった膀胱が、水を抜いていくと膀胱の粘膜からポンポン・・・と出血し、先程までとは全く違う景色になったのです。

「一体何がおこってるんや!!」
と衝撃をうけました。

これこそ、NIDDKのcriteriaにある「グロメルレーション(glomerulation)」であり、間質性膀胱炎だと証明されたのです!

しかし、当時「点状出血(glomerulation)」の本態は誰も証明していませんでした。

認めてもらうための孤独な闘い。そして世界へ…
さて、ここからが大変です。
診断はついた。しかし臨床はここで終われない!

点状出血~glomerulation~
40年のキャリアのある泌尿器科医でさえ、「一例も診たことが無い!」と断言していました。もちろん国が認可した検査法も薬もありません。

間質性膀胱炎と診断をつけても、保険認可の診断法も治療法も無い!

しかし我々医師は、医師法上患者に適切な医療を提供する義務がありますし、20数年前のあの日から、患者さんの「苦しい苦しい」と言っていた訴えを、救えなかった自分を想い出し・・・「そうだ!間質性膀胱炎の患者さんのために、保険適用の医療を施せないか」と考えました。

公立甲賀病院は、滋賀県南西部の水口町にある地域基幹病院です。水口町は、山間の自然豊かなところで、かつては城下町、また東海道の宿場町として栄えていました。この地方の病院から、私が日本いや世界にアピールするにはどうすればいいのか?

先ずは、国の認可を得るため厚生省(現在の厚生労働省)に赴きました。
それも直接、厚生大臣(現在の厚生労働大臣)に面会しました。大臣室で、 私は大臣の椅子に座らされ、「先生も末は厚生大臣です!」と記念撮影させられた後、一言も話を聞いてもらえず、「お帰り下さい」と丁重に帰されました。愕然としながらも「俺は、記念撮影をしに来たんじゃない~!」と吠えましたが、そのまま外へ出されたお恥ずかしい記憶があります。
次に訪ねたのが、厚生省医政局の局長です。彼は「先生、これはアメリカで発表した後、日本で国際会議を開催したら、良い方向に向かうと思います。舶来に弱い日本人には効果的ですよ。」とアドバイスをしてくれました。
残念ながら、金銭面での補てんはなく、アイデアだけを頂戴しました。

さて、私はアメリカの泌尿器科学会でどうやってアピールするか作戦を練りました。
普通に学会発表でプレゼンするだけでは、相手にされません。
間質性膀胱炎の病態を提示し、新しい治療法を自ら開発し発表してやろう!と考えました。
世界の中で、間質性膀胱炎を牛耳っているのは、NIHのUrologyのプログラムのトップDr. Lee Nybergと、ペンシルバニア大学教授Dr. Philip Hannoの二人でした。Dr. Hannoは「Campbell-Walsh Urology」(米国泌尿器科学テキスト)の間質性膀胱炎のチャプターの著者です。
この2人に会えば世界を動かせる!

この日から、米国での発表に向けての研究活動に着手しました。

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上田先生の熱い研究の日々が始まります!

 

 

(※1)間質性膀胱炎・・・慢性膀胱炎の一種。上皮と筋肉の間にある間質が慢性的に炎症を起こし、膀胱の筋肉が萎縮してしまい、そのため、膀胱が膨らまず、常時の半分以下の尿量しか溜めることが出来なくなる。また、尿が膀胱に貯まってくると痛みが出る。膀胱炎の中でも、症状が重く、非常につらい病気。文章に戻る

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