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文化・教育常任委員会管内調査(平成28年7月19日~20日)

京都府立鳥羽高等学校(京都市南区)

スーパーグローバルハイスクールの取組等について

京都府立鳥羽高等学校は、明治33年創立の京都府第二中学校を起源としています。定時制の起源は昭和10年開校の京都府立夜間中学校です。これは働く少年のための京都府で初めての夜間中学校であり、全国でも最も初期にできたものです。現在、同校には、全日制、定時制共に普通科が設置されています。平成29年4月には、全日制にグローバル科が設置される予定です。

また、同校では部活動が盛んで、全日制では体育会系、文化系併せて36の部があり、水球部が過去10回全国大会で優勝し、相撲部が全国大会にたびたび出場するなど、多くの部が活躍しています。定時制には8つの部と同好会がり、陸上競技で全国大会に出場するなどの活躍をしています。

同校は、平成27年4月に、文部科学省からSGH(スーパーグローバルハイスクール)として5年間の指定を受け、理数人文コースの中にSGH事業の対象となるクラスを設けています。1年生は3クラス、2年生で2クラスの合計5クラスが対象となっています。研究開発テーマを「ソーシャルイノベーションで挑むグローバルリーダーの育成」と掲げ、グローバルリーダーを育成するための、価値創造力、協働力、突破力、寛容力、教養力の5つの力を育む教育方法を開発しています。

研究開発の中心となる課題研究では、従来のものの見方、考え方とは異なる新たな価値観を創造しようとする探求型の授業「イノベーション探求」を3年間実施する計画を立てています。課題研究の第1年次「イノベーション探求1.」では地域再発見プログラムとして、京都フィールドワークなどを行い、京都の価値を再発見することをねらいとしています。第2年次「イノベーション探求2.」では、伝統・文化、地域研究、サイエンスの3つの領域で価値観が対立する事象を扱い、様々な意見があることを知り、解決策を見出す活動を行います。一方で、台湾や上海など海外に赴き、現地の学生とのワークショップや、企業でのインターンシップを行います。さらに、海外から大学生を招いたワークショップなども行い、これらの様々な体験を通して英語力を磨かせます。第3年次では、これまで日本語でまとめていた研究の成果を、英語で論文としてまとめる作業を行います。また、3年間の学習の到達点として、「鳥羽グローバルサミット」を開催し、海外の大学生と討論会を行います。

研究開発の1年目の成果として、国際交流に参加する生徒数が過去3年間で飛躍的に増加し、国際的に活躍したいと考える生徒の割合も増加しているとのことでした。また、国外の研修旅行に参加する人数も増加しているとのことです。

一方、課題は英語の4技能の向上がさらに必要なので、授業の改善を含め推進し、課題研究の発表機会の増加やTA(ティーチングアシスタント)のより積極的な採用も行って行きたいとのことでした。

また、今後の予定として、中国から長期の留学生を受け入れるほか、上海の高校での研修や、研究成果全国発表会への参加等に取り組まれます。

主な質疑

  • グローバル科設置の周知について
  • 普通科のなかのグローバルコースを専門学科にしたことについて
  • 入学者選抜の方式について
  • 鳥羽高校の目指すリーダー像について
  • 生徒と地域のつながり及び、生徒による地域でのボランティア活動について
  • グローバル科設置に係る教員の動向について など

鳥羽高校説明聴取

鳥羽高校施設視察

説明聴取した後、施設を視察

京都府立丹後郷土資料館(宮津市)

丹後地域における文化財の概要と天橋立の世界遺産登録に向けた取組について

文化財の調査等から指定に至る経過は次のとおりです。まず、府の教育委員会が未指定の文化財の規模、価値、年代、保存状態等を詳細に調査し、図や写真で記録し、場合によっては報告書を刊行します。そして、府が定めた指定の基準に適した案件を学識経験者で構成される府の文化財保護審議会に諮問して答申を受けるなどの手続きを経て指定されます。

一方、各文化財の所有者の方の同意も必要です。指定を受けると、指定時の状態を長く保護していくために、現状を変更することが規制されます。また、展示や公開の要請がある場合もあります。そうした場合は、所有者の負担軽減のため、文化財の修理や防災設備の整備等に対して、京都府が予算の範囲内で助成を行うことができます。

丹後地域では最近、金剛心院、木造地蔵菩薩立像等が府の文化財の指定を受けました。

丹後地域の文化財の特徴は、まず古代史を象徴する貴重な遺跡(史跡)と考古資料が多いことです。古代、大陸や朝鮮半島の窓口でありました丹後半島は東アジア地域と交流し、玉や鉄の交易で富を蓄え、海上交通に携わって繁栄しました。弥生時代中期から古墳時代前期まで約400年以上丹後地域に大きな政治勢力が繁栄し、この勢力を示す、多くの遺跡や鏡や玉等の出土品があり、その多くが文化財指定を受けています。2つめの特徴として、地域の風俗慣習、民俗芸能が数多く伝承されていることです。現在28件の府指定登録無形民俗文化財があります。これらが多く伝承されている理由は、丹後地域が当時非常に発展していたことや古代、中世以来の地域のまとまり、絆が良好に保存されていることなどが考えられます。3つめの特徴は、琴引浜等の美しい自然、天橋立等の名勝地や景観、伊根町等の歴史的な町並みが保存されていることです。

また、京都府は地元市町と連携し、特別名勝である天橋立の世界遺産登録に向けて取り組んでいます。この取組は平成19年に天橋立世界遺産登録可能性検討委員会が設置され始まりました。平成19年9月に文化庁へ世界遺産暫定一覧表記載資産候補提案書を提出したところ、「提案書の基本的主題を基に準備を進めるべきもの」と位置づけられる「カテゴリ1.a」に区分されました。以降、検討委員会では、学識者ワーキング、府立大学への調査研究委託、国内外の専門家との意見交換会、国際シンポジウム等を継続して実施することで、天橋立が国際的に認められる価値を検討してきました。

平成26年3月、「宮津天橋立の文化的景観」が国の重要文化的景観に選定されるなどの成果も出ており、同年7月には、「天橋立・信仰の対象と芸術の源泉」と「天橋立の文化的景観」の2本の柱を併記した提案書を改めて文化庁に提出しました。

今後も、天橋立の普遍的価値について学術的調査・研究を進め、地元市町等と連携しながら、世界遺産暫定一覧表への記載を当面の目標として取り組んでいきたいとのことでした。

主な質疑

  • 文化財や資料館を活用した教育について
  • 学芸員の人数について
  • 資料館のリニューアルに係る方針等について
  • 天橋立の世界遺産登録に向けた取組の見通しについて
  • 京都府北部と南部の文化交流方法について など

丹後郷土資料館説明聴取

丹後郷土資料館館内視察

天橋立視察

説明聴取した後、郷土資料館館内及び天橋立を視察

京丹後市役所〔於:京丹後市久美浜庁舎〕(京丹後市)

東京オリンピック・パラリンピックでのホストタウン登録に向けた取組とホストタウンとしての予定事業について

京丹後市は2016年1月に、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに向け、自治体が参加国や選手と交流を図る「ホストタウン」に登録されました。

同市は、カヌー競技を通じて韓国、オーストラリアとの交流を図ります。

同市では、久美浜湾が昭和63年の京都国体でカヌー競技の会場となったことを機にカヌー競技が盛んになりました。特に、府立久美浜高等学校ではカヌーの強化が進み、学校をあげてカヌー実習が行われています。また、同校では、2004年から韓国ソサン市の瑞寧高等学校とカヌーを通じた国際交流も行われています。この交流は、京都府の「未来のトップアスリート育成事業」を活用し、京丹後市にカヌーの講師として、瑞寧高等学校教師であり元大韓民国オリンピック選手を招聘されたのが始まりです。現在は、カヌー部員だけの交流ではなく、一般生徒や地域の方との交流もあり国際交流の輪が広がっているとのことです。

この久美浜高等学校でのカヌーを通した国際交流の縁も活かして、同市では、ホストタウンによる交流事業や事前合宿の誘致に取り組まれる予定です。

交流事業は、相手国、相手国若しくは国内のトップアスリートとの競技交流会や、トップアスリートによる講演会の実施をイメージしています。その他にも、相手国と市民を交えた文化・歴史交流や、中学校、高等学校生徒との学習交流の実施をイメージしています。

交流事業実現に向けて、カヌーの1,000メートルコースの設置や、宿泊施設の整備、カヌーマラソンコースの設置といった基盤整備の検討もされているとのことでした。

また、2020年の大会終了後も、トップ選手を招いた体験ツアーの実施や、地域特性のジオパークを活かしたジオカヌーの活用、2021年開催の関西ワールドマスターズゲームズ等の大会の会場として誘致することを目指しているとのことでした。

同市は、こうした取組により地域の競技力向上や語学向上を図り、また多くの人を呼び込むことで、地域活性化につなげていきたいとのことでした。

主な質疑

  • カヌー競技にかかる費用について
  • 久美浜湾での1,000メートルコースの設置方法について
  • 東京オリンピック・パラリンピックが終わった後の取組について など

京丹後市説明聴取

久美浜町浜公園視察

説明聴取した後、久美浜町浜公園でカヌー競技場などを視察

京都暁星高等学校(宮津市) 

丹後地域における私立高校の役割について

京都暁星高校は1907年にフランス人宣教師ルイ・ルラーブ師が女子教育の場として、教会敷地内に宮津裁縫伝習所を創立されたのが始まりです。その後、2003年に宮津市獅子崎に移転し、京都暁星高等学校に校名変更しました。また同時に、男女共学普通科総合選択制を導入し、現在に至ります。

生徒数は、近年は約200名程度で推移しており、男女比はほぼ同じです。また、今年度は宮津・与謝から59.1%、京丹後から33.3%、管外から7.6%の生徒が登校しています。

同校の特色は、どの生徒の学力も伸ばすという考えのもと、1994年から習熟度別の授業を取り入れており、小規模、少人数の授業を展開していることです。

2年次からは、習熟度授業の充実とともに、生徒の進路を見据えて、進学、福祉、情報の3類に分けた授業を展開されています。福祉系については、介護職員初任者研修のプログラムを導入しています。今年在籍している61名の3年生のうち13名が福祉系を選択しています。現在は、福祉系を希望する生徒が減少し、経営的にも苦しいが、少子高齢化が著しい丹後地域の実情を踏まえ、福祉の授業を守っていきたいとのことです。また、卒業生は教育や福祉の分野に進むことが多いとのことです。さらに、進学等で丹後を離れた後、丹後に戻ってくる卒業生の割合も高いため、卒業生のよりどころとなれるよう、経営的に努力して、同校を守っていきたいとのことです。

もう一つの特色としては、広域からの登校者が多く、また、小規模校であることから部活動に力を入れていくことが難しいため、体験教育を大切にしていることです。特に力を入れているのが、フィリピンへの支援や、東日本大震災以降は復興支援のために、全校生徒・教員・有志の保護者が参加し、加悦教会堂から同校までの26kmの道のりを募金を募りながら歩くウォーカソンという取組です。その他にも、国際ボランティア活動として、現地でマングローブの植林活動を行うフィリピンワークキャンプ等の取組もしています。

同校の魅力は、実際に同校に入学してみないと分からないと言われます。そのため、ホームページで魅力を発信するだけでなく、同校に来て観てもらう取組に力を入れていきたいとのことです。

主な質疑

  • 京都府のあんしん修学支援制度を受けている生徒の割合について
  • 少人数のクラス編成をいつから実施しているかについて
  • 高校入学以前に不登校を経験した生徒の割合について
  • 学校を経営する上での苦労について
  • 教員の採用について など

京都暁星高等学校説明聴取

京都暁星高等学校施設視察

説明聴取した後、施設を視察

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京都府議会事務局委員会課調査係

京都市上京区下立売通新町西入

ファックス:075-441-8398