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更新日:2017年2月24日

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環境・建設交通常任委員会管外調査(平成28年11月7日~11月9日)

島原半島ジオパーク協議会(長崎県島原市)

ジオパークの環境保全と活用状況について

ジオパークは「地球」や「大地」を意味する「ジオ」と「公園(パーク)」をつなぎあわせてつくられた造語で、2004年にヨーロッパと中国で始まりました。ジオパークの目的は認定されたエリア内にある学術的価値を持つ地球活動の産物(化石や岩石、美しい景色など)を保全しつつ、それらを教育や観光に活用し、持続可能な方法で地域社会を維持・発展させることにあります。

ジオパークには日本ジオパーク委員会が認定する「日本ジオパーク」と、世界ジオパークネットワーク及びユネスコが認定する「ユネスコ世界ジオパーク」があり、どちらも平成27年11月に制定されたユネスコプログラム「国際地質科学ジオパーク計画」のガイドラインに基づき審査・認定されています。

島原半島ユネスコ世界ジオパークは雲仙火山を中心とした3つの市(島原・雲仙・南島原)で構成され、エリア内には約15万人が暮らしています。ユネスコ世界ジオパークには、平成21年度に日本で初めて加盟が認められました。同ジオパークを推進する島原半島ジオパーク協議会では、「教育・保全」「観光運営」の分野において、さまざまなジオパーク活動を実施されています。特に「教育」の分野では地域の小中学校に出向き、地域の資源について教えたり、体験してもらったりする機会を増やしているとのことです。調査に伺った時は、まさに4年に一度の日本ジオパーク委員会による再審査(2回目)を受けておられる最中であり、その審査の内容は、本当に地域が持続可能な形で発展しているか、また地域住民がジオパークをどれくらい理解し、さらに主体的に地域づくりに関わっているかが真に問われている厳しいものであるとのことでした(※)。

同協議会では、ジオパークの認知度を国内外に広めるために、海外との交流事業として韓国の済州島、香港のジオパークと協定を結んでジオパーク同士の情報交換や交流事業を行っておられ、こうした機会を通じて両国間の観光客の行き来も増えているとのことです。

同協議会ではジオパークのさらなる認知度のアップと保全・有効活用のため、地域住民と協働してジオパーク活動を強化していかれるとのことでした。

主な質疑

  • ジオパークの審査期間について
  • 地域住民等への啓発計画について など

(※)平成28年12月9日、日本ジオパーク委員会が発表した「日本ジオパーク再認定審査結果」によると、同ジオパークは条件付き再認定となっています。

島原半島ジオパーク協議会概要説明

島原半島ジオパーク協議会施設視察

概要説明を聴取した後、展示されているジオパークの概要を視察

国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)

熊本地震による被災及び復旧状況について

平成28年4月に発生した熊本地方を中心とする地震は、震度6弱以上の地震が7回(うち、震度7が2回)、また、震度1以上を観測する地震が1,909回発生(※)し、同県を中心に、多数の家屋倒壊や土砂災害等により、死者64名、重軽傷者約1,816名の甚大な被害をもたらしました。電気、ガス、水道等のライフラインへの被害のほか、空港、道路、鉄道等の交通インフラにも被害が生じ、今もなお、住民生活や中小企業、農林漁業や観光業等の経済活動にも大きく支障を来しています。

今回視察しました阿蘇大橋地区では、長さ約700メートル、幅200メートルにもわたる大規模な斜面崩落や阿蘇大橋の落橋により、国道57号や国道325号が寸断。住民の方をはじめ、観光産業にも大きな影響が出ています。工事を担当する国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所では、国道をはじめ、県からの要請を受けた崩落斜面の安定化対策に取り組んでおられました。斜面崩落現場では、約20億円の事業費で斜面上部に残る多量の不安定土砂を除去する法面対策工事や落石・土砂の崩落対策として土留盛土を設置する工事が実施されていました。この現場は急勾配で二次災害の危険を伴うことから、工事はネットワーク型無人化施工システムが採用され、斜面の作業エリアでは無人の工事車両による工事が施工されていました。このシステムは作業箇所周辺のカメラ映像を見ながら、ラジコン化した建設機械を安全な場所から遠隔操作して施工を行うもので、実際、阿蘇大橋地区では700メートルほど離れたところから操作が行われていました。こうした技術は災害時の緊急対応や危険な建設現場などで活用されているとのことです。

国土交通省は9月に熊本市方面と南阿蘇村とを結ぶメインルートとして、「長陽大橋ルート」(南阿蘇村道栃の木~立野線)を、2017年夏をめどに応急復旧すると発表しました。阿蘇大橋が完成するまでの代替ルートとして、その南側に位置する阿蘇長陽大橋を通るルートを早期に開通させ、阿蘇観光の玄関口となる経路を確保するとしています。

同事務所では、熊本地震後の豪雨や台風、阿蘇山の噴火、また余震などの影響もあり、工事の稼働率にも影響がでていますが、重要な産業である観光を支える早急な交通インフラの整備に引き続き取り組まれていくとのことでした。

主な質疑

  • 被害状況について
  • 道路等の復興状況及び今後の見通しについて
  • 工事の手法について
  • 復興予算について
  • ネットワーク型無人化施工システムについて など

(※)平成28年7月19日現在

熊本県南阿蘇村崩落現場

熊本県南阿蘇村被災状況説明

熊本県南阿蘇村遠隔操作

阿蘇大橋地区の現場で、工事の施工状況及び操作室を視察

みやま市議会(福岡県みやま市)

みやまスマートエネルギーの仕組みについて

平成28年4月からの電力小売り全面自由化を受け、自治体が電力会社を立ち上げる動きが広がっています。そうした中で、みやま市は全国に先駆け、自治体による家庭等の低圧電力売買(太陽光余剰電力買い取り・電力小売り)を主な目的とする「みやまスマートエネルギー株式会社」を設立し、電力の地産地消の取り組みを進めておられます。

同社は、みやま市(55%)、株式会社筑邦銀行(5%)、九州スマートコミュニティ株式会社(40%)の出資によって設立され、地域のエネルギーである「みやまでんき」を販売するほか、市民サービスを充実させることを大きな目的としている会社です。

みやま市は人口が4万人弱、基幹産業は農業、ほかに核となる産業がないとのことですが、市の総面積のうち約75%が平坦な地形で、十分な日照量を確保できる恵まれた地域であることから、2013年に市と民間事業者が協力し、5メガワットの太陽光発電設備(メガソーラー)を設置しました。現在では60メガワット以上の発電が可能な太陽光設備が設置されています。この発電量は、市民が使う電力の8割近く(昼間に電力を蓄電するという条件)に達しており、こうした恵まれた条件を活かしてエネルギーの地産地消を積極的に進めることを市の戦略として位置付けました。同市では、現在も市独自の太陽光発電設置補助金があり、毎年100件程度、太陽光発電設備が設置された住宅が増加しています。

また、小中学生を対象に温暖化防止、再生可能エネルギーについて出前授業を実施し、同社が取り組むエネルギー政策について、子どもたちに伝える取り組みにも力をいれておられます。

しかしながら、同社への電力の切り替えが思うように進まないことや、再生可能エネルギーの不安定要因(天候や夜間電力の確保)、価格競争や電源調達の安定化などエネルギーの地産地消に向けての課題はまだまだあります。そのため同社は、こうした事業体をもつ近隣自治体と手を結び、広域自治体連合の共同購買によるコスト削減・管理コストの分担を目指しています。こうした連携より、水力や地熱といった他の自治体が得意とする再生可能エネルギーの調達も可能となり、24時間安定的な電源の調達も可能になります。

この取り組みはエネルギーの地産地消事業として、2015年のグッドデザイン金賞にも選ばれました。今後も、電力とセットで提供する高齢者の見守りや買い物サービスといった生活総合支援サービスの実現を目指してさらに取り組んでいかれるとのことでした。

主な質疑

  • 会社構成について
  • 収支の状況について
  • 福岡県との連携について
  • 既存の電力会社との関係について
  • HEMS(ヘムス)とBEMS(ベムス)の活用状況について
  • タブレット端末を活用した事業について
  • 電力事業を実施する上での自治体の適正規模について
  • メガソーラーの初期投資について など

みやま市概要説明

みやま市施設視察

概要説明を聴取した後、みやま(HEMS)でんき体感ショールームを視察

北九州次世代エネルギーパーク(福岡県北九州市)

響灘地区における風力発電及びLNG施設の概要について

北九州次世代エネルギーパークは、経済産業省からエネルギーパークとして第1号認定を受け、北九州市若松区に平成21年7月に開設した施設です。当該地区には石炭、石油、天然ガスのほか、風力、太陽光、小水力等の自然エネルギー、バイオマスエネルギーなどの施設が集積し、さらには西日本最大級の水深を擁するコンテナターミナルなど充実した港湾インフラが整備され、風力発電産業の集積が可能な広大な産業団地としても可能性を秘めている地区です。

中でも、株式会社エヌエスウィンドパワーひびきが運営する10基の風力発電施設は、風況が良いことから、総出力15,000kw(1,500kw×10基)、年間供給予定量3,500万kwh(約1万世帯分の年間電力消費分に相当)の電力を発電。また、国内ではまだ珍しい着床式の洋上発電施設も設置され、1基で約2,000kwが発電されているとのことでした。

さらにパーク内には、市制50周年記念事業の一つとして市民公募債や寄付金を活用して建設された北九州市市民太陽光発電所があり、発電により得られた収入の一部を利用して、緑化事業などの市民還元事業を実施している全国的にも例のない公設公営のメガソーラーも設置されています。

こうしたさまざまな再生可能エネルギーの拠点を設けることで、子どもから大人まで環境の取り組みを楽しく体験することができ、教育施設としても充実させながら運営されていくとのことでした。

続いて、視察しました「ひびきLNG基地」は、LNGタンカーによって運ばれてきた液化天然ガスを巨大なタンクに貯蔵し、パイプラインやタンクローリーによって北部九州の各地へ供給している施設です。タンクの構造などには津波や地震などの災害に備え、安全にLNGの保管・供給が行われるよう、対策が講じられているとのことでした。

京都府においても北近畿唯一の日本海側拠点港である京都舞鶴港を、北近畿のLNG基地として整備する計画が進んでおり、LNGの供給とともに南海トラフ巨大地震を想定した阪神地域(太平洋側)へのLNG供給バックアップルートの役割を担うことが期待されています。

当該地区は水深や立地など恵まれた港湾の条件がそろい、施設も充実していますが、太陽光や風力・水力などの再生可能エネルギーの誘致をさらに進め、LNGを含めた総合エネルギー基地としてさらに拡大するよう、取り組みを進められていくとのことでした。

主な質疑

  • 風力発電の投資効果について
  • 風力発電の発電量について
  • LNG貯蔵タンクの構造について
  • LNGの受け入れについて
  • 港の水深について
  • 施設の津波対策について など

北九州次世代エネルギーパーク概要説明

北九州次世代エネルギーパーク施設視察

北九州次世代エネルギーパーク現地視察

概要説明を聴取した後、エネルギーパーク内を視察

お問い合わせ

京都府議会事務局委員会課調査係

京都市上京区下立売通新町西入

ファックス:075-441-8398