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更新日:2017年7月11日

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文化・教育常任委員会管外調査(平成29年7月10日から11日)

湯沢学園(新潟県南魚沼郡湯沢町)

同学園(保・小・中一貫教育)の概要について

同学園は、平成26年4月に5つの小学校と1つの中学校を統合して、小中一貫教育を開始しました。また、平成28年4月には、4つの保育園を統合した認定こども園が開園したことから、保・小・中一貫教育が始まりました。同学園の現在の園児及び児童・生徒数は、認定こども園181名、小学校313名、中学校164名となっています。

また、学園内に町の施設(教育委員会、総合子育て支援センター、地域交流センター)を設置していることや、「オール湯沢」で地域の方々から学園を支援してもらっているという特色があります。総合子育て支援センターでは、関係機関と連絡調整を密にしながら、入園前の乳幼児だけでなく、同学園の園児及び児童・生徒をはじめ18歳までの支援を必要とする子どもとその家庭に対する総合的な支援に取り組んでいますが、学園内に設置されていることにより、タイムリーに対応できるとともに、保育士、教職員がケースを抱えるといった負担軽減にもつながっているとのことでした。

小一プロブレムや中一ギャップを生まない学園を目指し、認定こども園から小学校への円滑な接続を図るために、年長児にはひとり用の机と椅子が用意されており、統合される前から、保育士と小学校教諭が検討して、小学校入学後の生活がスムーズに送れるように、年長児の後半期を徐々に小学校の生活に近づけながら保育するアプローチカリキュラムを作成されています。さらに、入学後3カ月は、緩やかに小学校生活に慣れていくことができるよう、スタートカリキュラムも用意されており、4月当初から落ち着いて学習する姿が見られるとのことでした。

中学校の教員が教科の専門性を活かして小学校への乗り入れ授業を単発的に実施していますが、多くの実施は困難であるため、今年度は試行的に中学校の家庭科担当教諭が、6年生の家庭科の授業を年間を通して担当されており、教科の専門性を活かした授業を広げていくことができないか模索されているとのことでした。

保・小・中の12年間を一貫して教育されることから、確かな学力の形成、やさしさや思いやりをはじめとする心を育てる、体力をつけることについて、統合前より高い結果として示すことができるようにしていくことを最大の課題として捉え、取り組まれています。さらに、遠距離通学の園児及び児童・生徒が多く、スクールバス等の利用に伴い、徒歩通学時と比べて体力の低下が生じないか今後分析し、もし体力面での心配が見られるようであれば対策を立てていかなければいけないことも課題であるとのことでした。

主な質疑

  • 小学校統合後の学園と地域との連携について
  • 障害のある子どもたちへの対応について
  • 保小の教員の資格問題について
  • 通学に伴う交通手段及び費用負担について
  • 将来的な展望及びビジョンについて
  • 小学校統合による子どもたちの変化について  など

説明聴取後、施設を視察

東京文化財研究所(東京都台東区)

文化財の保存及び活用に向けた取組について

東京文化財研究所は、1930年に洋画家黒田清輝の遺言により開設された施設で、有形文化財の美術工芸品、演劇・音楽・工芸技術等の無形文化財、無形の民俗文化財について対応されるとともに、無形の選定保存技術についても研究され、文化庁と連携をとりながら活動をされています。

保存科学研究センターでは、文化財を取り巻く環境の研究や文化財の性質や製作技法、環境調査、新しく開発された修復材料を用いて、より文化財にダメージが少なく、なるべく長く文化財の命が保てるよう修復材料・手法の研究・開発をされています。

また、絵画を初めとする文化財の材質の調査をされていますが、本研究所は、博物館や美術館とは異なり作品は一切所持されておらず、基本的には文化財をなるべく傷つけない、リスクをかけないために、調査機材を現場に持ち出して顔料や彩色を測定することを基本的な考えとされています。平成11年から16年にかけて、宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する伊藤若冲の「動植綵絵(さいえ)」全30幅の修理が行われた際には、全作品について蛍光X線分析による彩色材料調査をされました。全ての作品が絹に描かれており、絹地の後ろに灰色から茶色に近い色の和紙をおいて裏彩色を施すことで、現物を見ると金色に見える部分が、全く金が使われておらず高度なテクニックで描かれていることがわかったとのことでした。

文化財情報資料部では、美術史学的な文化財の調査研究や文化財アーカイブズの形成、資料閲覧室の公開、同研究所のホームページの運営をされています。資料閲覧室には、文化財関連の文献資料や画像資料など美術文化財に関する図書15万冊、雑誌16万冊を収集整理されており、文化財や美術に関する専門的アーカイブとして利用されています。週3日の公開で利用者は年間1,000名程度ですが、現在は所蔵資料のデジタル化やデータベース化を行い、インターネットを通じて公開もされており、アメリカやイギリスの国際機関とも協力しながら文化財の情報の収集発信をされています。

また、昨年度から京都府が所有する文化財に関する所蔵資料(昭和10年代の京都府全体の社寺の広範な文化財に関する悉皆調査等)を、京都府教育委員会と共同でデジタル化して保存するとともに山城郷土資料館で保管するガラス乾板の写真のデジタル化複製に取り組まれています。地域の資料を「デジタルアーカイブ」として保存することで、地域の情報を後世に引き継いでいける資料として、全国、世界で活用してもらえるよう取り組まれているとのことでした。

主な質疑

  • 海外の優れた修復技術への依存するケースについて
  • 国宝修理を実施する技術者について
  • 美術工芸品修理に要する経費及び期間について
  • 修理の理念について
  • 美術工芸品と建造物の修理の相違点について
  • デジタルアーカイブに関する自治体との連携事例について
  • 外部研究機関への委託について など

関係者から概要等について説明を受けました。

NPO法人 楠の木学園(神奈川県横浜市)

学校とフリースクール等の連携による不登校児童・生徒の支援について

神奈川県教育委員会では、不登校の児童・生徒のための居場所づくりや活動支援を行っているフリースクールやフリースペース等と、学校や教育機関とが相互理解と連携強化を図り、不登校児童・生徒の社会的自立や学校生活の再開に向けた支援を充実させるために、2006年2月に「神奈川県学校・フリースクール等連携協議会」を設置し、全国に先駆けてフリースクール等との連携を始められました。

その一環として、不登校児童生徒・高校中退者等のための不登校相談会・進路情報説明会や教育委員会とフリースクール等による不登校相談会、フリースクール見学会を開催されています。

フリースクールの一つである楠の木学園は、不登校や対人関係・コミュニケーションが不得手であるなど、さまざまな理由から中学校卒業後の進路選択が困難であった子どもたちを対象に1993年に設立され、翌年から生徒の受入を始められました。豊かな人間性を育成するシュタイナー教育を取り入れながら生徒を幅広くサポートし、生徒本人が持っている具体的な力を見極め、「できる」という実感を日々積み重ねられています。

当初は中学校卒業後の生徒を受け入れる高等部の12名でスタートしました。その後、就職や卒業後の進路を考え、さらに2年間が必要であることから3年後に、専攻科を設置。また、中等部開設の要望もあり、2004年からは中学生の受入を始めました。一人ひとりにていねいな教育をしたいとの思いから、どんどん受け入れるのではなく、職員の力量にあった数で受け入れをされており、現在は、中学生6名、高校生12名、専攻科9名が在籍されています。

受け入れは、学校やスクールカウンセラーから依頼があるケースもあり、学校や行政との連携により、つながりができたことを実感されていますが、フリースクールがどういうところか広く浸透していないこともあり、現場の教員の中にもフリースクールに対する理解に温度差があるとのことでした。

今の学校現場は、生徒の状況が多様化しており、担任の教員が不登校生徒を含め全てに対応をすることが難しく、受け止め切れていない現状があり、もう少し連携がスムーズに進めば、また学校に通える生徒が増えるのではないかとの思いを持たれていました。

また、フリースクールは、公的な支援がなく経営基盤が脆弱であり、学費収入に頼らざるをえない現状では、どうしても学費が高くなり、希望があっても応えられない現状があるとのことでした。

主な質疑

  • 県内フリースクールの生徒数及び収容定員について
  • フリースクールの財政面への県のサポートについて
  • 財政面での今後の見通し及び展望について(双方の立場から)
  • 学園説明会及び体験授業への参加者数について
  • 卒業生の関与(手伝い等)について
  • フリースクールに対する国の動向について など

関係者から概要等について説明聴取後、施設を視察

お問い合わせ

京都府議会事務局委員会課調査係

京都市上京区下立売通新町西入

ファックス:075-441-8398