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更新日:2017年7月12日

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農商工労働常任委員会管外調査(平成29年7月11日から12日)

岐阜県議会(岐阜県岐阜市)

EC企業支援の取組について

岐阜県では、国内市場の縮小や価格競争激化に対応するために海外市場開拓を目指す企業を支援するため、産業政策の基本方針である『岐阜県成長・雇用戦略2017』のなかで「海外展開・販路拡大支援プロジェクト」を掲げ、様々な取組を実施されています。

越境EC[Electronic Commerce](国際間の電子商取引)を活用した海外販路拡大の取組は、この「海外展開・販路拡大支援プロジェクト」のなかに位置付けられており、中小企業の海外展開チャレンジを支援する目的で、平成29年度から新たに開始された事業です。

事業の内容は、中小企業にとって海外市場の開拓が、言語や商習慣の違い、決済・配送方法が分からないことなどからハードルの高いものとなっているため、県が事業者に代わって、越境ECを活用し、優れた県産品を海外市場に売り込むための支援をするというものです。

具体的には、県から委託を受けた事業者が、英語による販売ページの作成及び販売、海外からの問い合わせ対応、海外決済、海外への配送を実施するとのことです。そのため、出品者である県内事業者が行うことは、県内倉庫への商品配送と、委託事業者との「円」による決済のみとなります。

出品までの流れは、県内事業者からインターネットや郵送により出品申込書の提出を受けて県が審査を行い、県内事業者と委託事業者が販売対象国、販売方法などについて契約を締結した後、委託事業者による商品ページの作成、商品の販売開始となるとのことです。

販売は世界の2大ECプラットフォームとされる「Amazon」と「eBay」を利用して実施されますが、今年度の販売対象国はアメリカ、カナダ、メキシコ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアの8カ国となるとのことです。

平成29年5月より販売商品の募集を開始し、平成29年9月末まで募集を行うとのことです。また、その間、事業説明会や越境ECについてのセミナーも実施し、随時商品の選定、販売ページの作成を行い、販売も開始していくとのことです。

一社あたり3商品までの申し込みが可能とされており、50商品以上の出品を目指しているとのことでした。

主な質疑

  • 販路拡大支援の対象となる県産品の範囲について
  • 決済時においてトラブルが発生した場合の手当について
  • 販売商品の認定状況について
  • 販売対象国における県のサポート体制について
  • 県内企業の海外進出に係る支援について など

関係者から概要等について説明を聴取

東白川村議会(岐阜県加茂郡東白川村)

「フォレスタイル」プロジェクトについて

東白川村は、総面積の90%が森林ということもあり、木材関連産業が村の基幹産業です。特に地域の木材を利用した住宅建築が盛んです。

村の工務店での住宅建築受注量は最盛期には年間約70棟ありましたが、平成15年以降下降し、平成21年には年間14棟にまで減少しました。この受注量が激減した理由としては、平成15年以降にインターネットが普及したことによる購買プロセスの変化や、メーカー住宅の台頭といった社会の変化に対応できなかったことがあげられます。また、受注量の激減は、村にある事業所の営業所得や村民の平均所得の減少にまで影響したとのことです。

こうした状況を改善するために、同村では地方工務店の注文住宅が選択されない原因を整理したところ、「購買顧客層が若い世代に移った」、「インターネット検索に変わった」、「木材価格が分からない」、「高いと思われている」、「倒産の不安がある」、「デザイン能力がない」といった原因があると考えました。

そこで、同村では、これらの原因を解決するために、総務省の地域ICT利活用モデル構築事業を活用し、インターネットを利用して村の工務店と街の顧客を繋ぎ、地元産ひのきの現代的な注文住宅を販売する「フォレスタイル」事業を始めました。

同村が、平成22年から運用している注文住宅受注サイトでは、自由に間取を描画することができ、リアルタイムで概算の建築費が表示されます。また、村役場の職員が公的代理人として契約までをサポートすることで、顧客に安心感を持ってもらうことができ、建築士と連携することで顧客のニーズにあったデザインを取り入れることができるようになりました。

その結果、平成21年には年間14棟にまで落ち込んだ受注棟数が、現在は年間約30棟にまで回復しており、また、総務省の試算によると同事業開始前と比較して建設業の売上は約114%増加し、村民1人当たりの所得も約16%増加したとのことです。

主な質疑

  • 大手ハウスメーカーとの連携について
  • 顧客の地域について
  • 地元産木材を使用した場合のコストについて
  • 希望する自治体へのフォレスタイルシステムの提供について
  • 同プロジェクトの全国への発信について など

概要説明を聴取後現地を視察

飛騨市議会(岐阜県飛騨市)

アニメを活用したインバウンド事業について

飛騨市では、平成28年度に大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」の「聖地」として市のPR活動に取り組み、国内外から多くの観光客を集めた結果、観光入れ込み客数が前年より3.6%増え、3年ぶりに100万人を超えたとのことです。

飛騨市によるPR活動は、平成28年7月7日に行われた同映画の全国一斉試写会に、市の職員が出向いた際にヒットを予感したことからはじめられました。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した情報発信に取り組むほか、映画公開日の平成28年8月26日までに、版元等と交渉の上、ポスターやチラシ、パネルを制作されました。映画公開後は、飛騨市美術館において「君の名は。」の絵コンテなどを展示した展覧会の開催や、観光サイト、聖地マップの制作にも取り組みました。こうした取組は多くのメディアに取り上げられ、市の試算によると広告効果は100億円以上と推定されるとのことです。

こうした成果もあり、内閣府の「クールジャパン拠点実証プロジェクト」に周辺の高山市、下呂市、白川村とともに同市も参加することができました。

このプロジェクトでは、台湾やタイから情報発信力の高いインフルエンサー(SNSを媒体とした情報発信手段で多くのフォロワーを有する者)やアニメファンを招聘し、映画のイメージとなった飛騨エリアなどを巡るモニターツアーが実施されました。これらの活動により、映画公開後には多くの観光客が飛騨市を訪れたとのことです。外国からの観光客は、台湾や香港からの個人客が最も多いほか、中国で同映画が公開された後は、春節も相まって同国からの団体客が多く訪れたとのことです。

今後の課題としては、継続したプロモーションを実施するための財源確保や版権処理の徹底があげられるほか、インフルエンサーやメディアによる発信の効果を実感したことから、情報発信力の強化や、アニメを活用した広域観光を実現するための環境整備が課題になるとのことでした。

主な質疑

  • 「君の名は。」撮影時の市への連絡について
  • 上映が予定されている市民向け啓発映画の内容について など

関係者から概要等について説明聴取後、現地を視察

一般社団法人ふるさとけものネットワーク(岐阜県郡上市)

ふるさとけものネットワークの取組について

一般社団法人ふるさとけものネットワークは、野生動物による被害で悩む地域の対策支援を行う4つの民間団体によって構成されるネットワーク組織です。

同法人では、獣害対策の現状や問題点を明らかにするため、平成27年3月に全国の市町村区にアンケート調査を実施されました。アンケート結果によると、56%の自治体が地域内で獣害対策の担い手が育成できておらず、「地域の支援組織は必要か」という問いについては、7割近い自治体が「必要である」と回答したとのことです。そのため、同法人では地域に根ざした獣害対策の支援組織や専門家の育成が必要と考え、そういった役割を担う人材の育成に取り組んでおられます。

具体的には、獣害対策の3本柱とされている野生動物の個体管理、被害防除、生息地管理の3つの対策を、地域の実情によってバランス良くコーディネートできる人材が必要と考え、自治体職員や地域おこし協力隊を対象に、各地で「けもの塾」と題した研修を開催しています。自治体職員に対しては、各地で行われている最先端の獣害対策技術に基づき、地域の特性に合った施策を考える内容にするとともに、地域おこし協力隊や学生に対しては、獣害対策の基礎知識や獣害対策を仕事にするためのノウハウなどを公開されています。

平成27年度以降現在までに、年に4回のけもの塾が開催され、卒業者の延べ人数は約250名になっていますが、卒業者の中には既に獣害対策の担い手として活動を始めている人もいるとのことです。

しかし、こうした活動を通して、地域の支援組織が育っても、当事者である農家がそこに仕事を依頼し、費用を負担することが難しいという課題が見えてきたことから、その解決のために、行政から地域の支援組織に仕事を依頼してもらうなど、支援組織を活用する方法などについても、行政担当者研修で教えているとのことです。こうして、行政担当者と地域の支援組織が連携して獣害対策に取り組むことで、効果的な獣害対策ができると考えているとのことでした。

主な質疑

  • 防護柵の設置等に係る行政との連携について
  • 行政と地域住民とのネットワーク構築について
  • 自治体担当者の研修の実施状況について
  • 「集落環境診断」実施の重要性について など

関係者から概要等について説明を聴取

お問い合わせ

京都府議会事務局委員会課調査係

京都市上京区下立売通新町西入

ファックス:075-441-8398