更新日:2026年10月9日

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【インタビュー記事】世界・国・地域をつなぎ、気候変動に立ち向かう ―認定NPO法人気候ネットワーク―

※このページでは、認定特定非営利活動法人として認定された団体については、「認定NPO法人」と記載しています。

気候ネットワークイメージ図 

 

近年、強大化する台風や豪雨、熱波による異常な暑さなど、気候変動の影響が年々色濃くなっています。国内では、海水温の上昇による漁獲量の著しい減少や農作物への影響に加え、暑さによる健康被害など、さまざまな問題が生じています。

また、海外に目を向けると、まちをのみ込むほどの洪水や、干ばつに伴う大規模な森林火災、飢饉、海面上昇といったニュースが後を絶ちません。気候変動の影響によると考えられる自然災害によって、故郷を離れることを余儀なくされる人々の数は、年間数千万人にも上るといわれています。もはや気候変動は、世界全体で取り組まなければならない課題となっています。

今回のインタビューでは、こうした気候変動の問題に、地域・国・世界という3つのアプローチから取り組む認定NPO法人気候ネットワーク(以下「気候ネットワーク」という)を訪ね、事務局長の田浦健朗さんにお話を伺いました。

事務局長の田浦さん

【事務局長の田浦健朗さん】

団体の成り立ち

気候ネットワークは、地球温暖化を防止するために、市民の立場から「提案×発信×行動」に取り組むとともに、全国の市民や環境NGO・NPOをつなぐネットワークとして活動しています。

気候ネットワークの前身となる「気候フォーラム」が活動を開始したのは、平成8(1996)年のことです。翌年に開催が予定されていた地球温暖化防止京都会議(COP3)を成功させるため、環境問題に関わる市民や有識者によって結成された市民団体のネットワークで、外国から帰国したばかりの田浦さんも、メンバーとして関わることになったそうです。

COP3は、先進国に対して法的拘束力のある温室効果ガスの削減目標を、世界で初めて定めた「京都議定書」が採択された会議です。この画期的な成果によって、京都の名は環境を象徴する都市として世界に知られるようになりました。市内のさまざまな場所で目にする「DO YOU KYOTO? 環境にいいことしていますか?」というキャッチコピーも、この京都議定書に由来します。

COP3の成功を受けて、気候フォーラムは発展的に解散しましたが、引き続き地球温暖化問題に取り組むため、平成10(1998)年4月に気候ネットワークが設立されました。その後、特定非営利活動促進法の施行に伴って法人化、京都府を所轄庁とするNPO法人としては2番目に認証を受けた、長い歴史を持つ法人です。

世界・国・地域をつなぐ

国際的な取組

気候ネットワークの活動は、多岐にわたります。

国際的な取組の一つが、環境に関する国際会議への参加と、その内容や世界の動向についての情報発信です。外国語で行われる専門的な会議の内容を翻訳・整理し、国内の人々に分かりやすく伝えています。

また、海外の環境活動団体と草の根レベルでつながり、国際的な連携の仕組みをつくることも、大きな柱の一つです。150カ国・2,500以上のNGOからなるCAN(気候行動ネットワーク)と連携し、各国政府への働きかけを行っています。

 これまでのこうした活動により、気候ネットワークの存在は国際的に認められるようになり、何か起こった際には海外のメディアから意見を求められることもあるそうです。

COP30への参加

国際的なしくみつくる_COP30でのアクション
【COP30での様子】

コラム1 気候変動と地球の気候サイクルの関係は?

いろいろとお話をお聞きする中で、地球の気候サイクルと人為的な気候変動とがどのように違うのか気になり、調べてみました。

これまで地球は、約10万年の周期で、寒冷期と温暖期を繰り返してきました。その変化は、地球が受け取る太陽エネルギー量(日射量)の変動がきっかけとなると考えられており、約1万年かけて4~7℃程度という、非常にゆっくりとしたペースです。

ところが、令和6(2024)年には、産業革命以前と比べて地球の平均気温が1.55℃上昇したことが報告されました。この気温上昇は、地球の周期的な変化と比べて約10倍の速さといわれています。工業化によって大量に排出された温室効果ガスが、本来は寒冷期に向かうはずの地球の周期を大きく狂わせていると考えられています。

さらに、これまでに排出された温室効果ガスの影響によって、次の寒冷期の始まりが5万年ほど遅れ、このまま進むことで、さらに遅くなる可能性を示した研究結果も出ています。

【参考】国立環境研究所 地球環境研究センターHP
温暖化の科学 Q14 寒冷期と温暖期の繰り返し|ココが知りたい地球温暖化 | 地球環境研究センター

 

国や企業への働きかけ

気候ネットワークが掲げるもう一つの活動テーマは、国や企業への働きかけです。

省エネルギーや再生可能エネルギーを推進し、温室効果ガスの大幅な削減を実現するには、国の政策転換と、多くのエネルギーを利用する企業の取り組みが不可欠です。そのため、法律やエネルギー・気候変動に関する計画の動向を追い、その実効性や課題を分析しています。さらに、調査・研究に基づいて有効と考えられる対策のシナリオを示し、政策に反映されるよう提言も行います。

また、企業による温室効果ガスの排出や情報発信についての、評価やモニタリングを実施しています。例えば、「グリーンウォッシュ」の問題。「エコ」「グリーン」「サステナブル」といった言葉が社会に肯定的なものとして認知されるにつれ、実態が伴っていないにもかかわらず、こうした言葉を用いて環境への配慮をうたい、自社や商品のイメージを高めようとする企業が世界的に増えてきました。このような、消費者に誤解を与える広報手法は「グリーンウォッシュ」と呼ばれ、ヨーロッパを中心に規制が強化されています。日本では、規制はまだ十分に整備されていませんが、気候ネットワークでは、早くからこうした観点で企業の情報発信をモニタリングし、啓発活動を行っています。

その他にも、平成16(2004)年には、省エネ法の情報公開制度を活用し、事業所ごとの温室効果ガス排出データを分析・公表しました。それまで見えにくかった日本の排出量の大部分を占める大規模事業所の実態を明らかにし、その後の排出量取引制度の検討や企業評価にもつながる基礎資料となったことは、気候ネットワークの大きな成果です。

脱炭素地域・人づくりを広げる_中間支援交流フォーラム

【脱炭素地域・人づくりを広げるための中間支援交流フォーラムの様子】

脱炭素地域づくり

気候ネットワークが掲げるもう一つの柱が、「脱炭素地域づくり」です。

「脱炭素社会」という言葉はよく耳にしますが、「脱炭素地域」と聞いても、まだ具体的にイメージしにくいかもしれません。現代の日本社会は、日々、膨大な電気エネルギーを消費しながら成り立っています。電気が止まれば社会の機能が停止してしまうほど、私たちの暮らしは電力に依存していますが、日々の暮らしの中で、そのエネルギーが何に由来するのかを気にする機会はあまり多くないようにも思います。

現在、日本で供給される電力の7割近くは火力発電によるものです。火力発電は、石炭・石油・天然ガス等の化石燃料を燃やすことで電力を生み出します。安定的な発電や、需要に応じて出力を調整できるというメリットがある一方で、多くのCO2を排出することが避けられません。

気候ネットワークでは、そうした社会の状況を変えていくために、地域で必要なエネルギーを、地域の再生可能エネルギーによって賄う「市民・地域共同発電所」の普及に取り組んでいます。

再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど、自然の働きによって生み出され、繰り返し利用できるエネルギーのことです。地域住民が少しずつ出資し、地域の特性に合った再生可能エネルギーによる地域のための発電所をつくり、地域で使う電力を賄うことを目指します。

ヨーロッパでは、こうした取組が広がっており、地域発電の導入による住民の課題意識の向上や、新たな雇用の創出、余剰電力を近郊に提供した収入による地域の活性化など、さまざまな好循環が生まれた事例も報告されているそうです。

気候ネットワークでは、国内でこれからこうした取組を始めようとする自治体や地域住民にノウハウを提供し、必要な情報や資源につなぐ中間支援組織としての役割にも、力を入れていく予定です。

「脱炭素に取り組むことで、生活の質が下がるようではいけないと思っています。今の暮らしの水準を保ちながら、また向上させながら脱炭素を実現し、なおかつ社会がより幸せになる。そんな方法を探っていく必要があります」

と田浦さんは話します。

「市民・地域共同発電所」に取り組む地域はまだ限られていますが、脱炭素、地域の活性化、地場産業の振興を同時に実現する可能性を秘めたモデルとして期待されています。

 

コラム 何でもよいわけではない「再生可能エネルギー」

多くの可能性を秘めた再生可能エネルギー。一方で、メガソーラーや風力発電所の建設による環境破壊のニュースを耳にすることもあります。

「再生可能エネルギー」とどのように向き合えばよいのか。その疑問を田浦さんに投げかけたところ、再生可能エネルギーであれば何でもよいわけではない、との回答をいただきました。

気候ネットワークでは、その判断基準として「地域や環境との調和」「地域への利益還元」「持続可能性」を挙げており、無批判に再生可能エネルギーを導入することに警鐘を鳴らしています。

運営主体は誰なのか。周囲の自然が傷つけられていないか。地域の人々が心地よく共存でき、地域に利益が還元されているか。そうした点に目を向けることで、再生可能エネルギーのさまざまな側面が見えてきそうです。

風力発電

市民への啓発活動

気候ネットワークは、一般の人々に向けた草の根の啓発活動にも、さまざまな角度から取り組んでいます。

その一例が「省エネラベル」です。家電製品を購入する際、販売価格だけでなく、省エネ性能を判断材料にする方も多いのではないでしょうか。実は、その仕組みの普及にも気候ネットワークが関わっています。

平成14(2002)年から、気候ネットワークを含む複数の市民団体が、省エネ性能の高い家電製品を消費者が選択できるよう、情報を提供する「省エネ製品グリーンコンシューマーキャンペーン」を展開しました。

「グリーンコンシューマー」とは、環境を大切にする消費者のことです。一定の基準を満たした家電製品に「省エネ」と表示して販売したところ、購入につながる割合が高まることが分かり、この取組は全国へと広がりました。その結果、家電製品の省エネ性能の比較や、店頭表示の改善を促し、省エネラベルの普及にもつながりました。

さらに、京都市との協働によって、京都市立の全小学校を対象に環境学習を行い、その期間中に、各家庭でエコライフに取り組んでもらうプログラムも実施するなど、広く環境への意識を育む活動にも取り組んでいます。このプログラムは海を渡り、マレーシア・イスカンダル地域で取り入れられ、250を超える全小学校でも実施されるようになっているそうです。

小学校での授業

【小学校での授業の様子】

今、できることを考える

世界の巨大なエネルギーの流れを変えるため、海外のNGOと連携して国や企業に働きかける一方で、地域や個人という身近な単位から、一人ひとりの意識と行動を変えていく。それが気候ネットワークの活動です。

何気ない日常の中にも、気候変動の影響を強く感じる場面が年々増えています。暮らし方や意識を転換する必要性が差し迫っていることを、誰もが少なからず感じているのではないでしょうか。

気候変動は、もはや「いつか解決すればよい問題」ではなく、今、直ちに取り組まなければならない問題となっています。

今回の気候ネットワークへのインタビューは、私たち一人ひとりが環境について改めて考え、自分にできることを見つめ直す機会となりました。

気候ネットワークの活動をこれからも継続していくために、ぜひ寄附によるご支援をお願いいたします。

(取材:青山)

 

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