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AC Biode株式会社(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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様々な化学プロジェクトを展開

(2024年2月11日更新、ものづくり振興課 足利・石飛)

AC Biode株式会社(外部リンク)(本社:京都府)は、その化学の知見を活かして、様々なプロジェクトを展開中です。

愛玩動物用AI搭載グルコース測定システムの開発

(2023年5月16日更新、ものづくり振興課 足利・小高)

グルコースセンサーで愛玩用動物の血糖値を測定し、インスリン投与の最適なタイミング・量をAIが助言するシステムを開発中です(次世代地域産業推進補助金活用)。

  • なぜAIか?それは個体ごとに状態は異なるからです。つまり、個体ごとの状態をAIが学習すればするほど、より最適さが向上するわけです。
  • 海外製の既存製品があるのになぜ開発するのか?海外製だからデータを自由に確保できず、AIが学習できないからです。

飼い主がうれしいだけでなく、自ら管理できるため、医療費削減にもつながる可能性を秘めています。将来はヒト用も視野に入っていることでしょう!

世界初!独立型交流電池によるエネルギー革命

(令和3年4月5日、ものづくり振興課 足利・中原・浦出) 

AC社

AC Biode株式会社(外部リンク)(本社:京都府)の久保代表取締役CEOにお話をお伺いしました。

「交流」によって高電圧・大容量充放電を安全に

--まずは御社の事業について教えてください。

久保)2019年に日本と欧州で同時に立ち上げ、現在5名のメンバーで、世界初の独立型交流電池と付随する回路の開発、プラスチック化学分解触媒の開発等を進めています。

--独立型交流電池というのは何ですか?

久保)世の中にある電池は全て直流ですが、これは交流のリチウムイオン電池です。

--どうして交流なんでしょう?電力網では、高電流だと発熱すなわちロスが大きいため、高電圧で送り出し、後で変圧を行うため、変圧が可能な交流が用いられていますし、電圧の変化にも柔軟性がある掃除機や照明等の家電でも交流のものが多いようですが。

久保)既に直流で動いているパソコンやスマホのような小さな家電機器ではなく、交流は高電圧・大容量(電力(電圧×電流)×時間)に適しているので、電気自動車や空飛ぶ車、ドローン、電動飛行機に適しています。せいぜい30分しか飛べないドローンの飛行時間を伸ばすニーズもありますね。

--近未来的ですね!リチウムイオン電池ということですから、放電だけでなく充電も、ですよね?!

久保)はい。太陽光発電は直流なので使えませんが、風力発電や水力発電のようにタービンを回して発電するものは交流なので、それらの蓄電に使えます。電車や車ではブレーキをかけるときに電気の回収している回生ブレーキも交流なので使えますね。

「リチウムイオン電池」故に高速開発を実現

--なるほど、脱炭素社会の構築のためにも大変有意義ですね!

久保)交流故にこういった高電圧、大容量を安全に、寿命も長く、かつ、リチウムイオン電池ですから既存の材料や電池・回路生産ラインで作れるとともに、全体のコストの削減も実現できるといった、様々なメリットがあります。

--リチウムイオン電池であるのはどうしてですか?

久保)既存の電池には、容量不足や安全性などの問題があり、それを克服するために新材料による電池を開発するには莫大な時間とコストがかかります。現にリチウムイオン電池が開発されてから約30年間、原理原則が変わっていません。そこで、逆に既存の電池をベースにすることで、既存の材料や生産ラインを使って、迅速に開発、実証を進めているのです。通常だと5~10年、費用も何億、何十億円という単位でかかるところ、当社では数年という短期間で進めています。尚、我々の発想は、蓄電に多く使われている鉛蓄電池、将来の全固体電池等にも応用が可能となっています。

電池と回路の分野横断による「両極性」の実現

--安全性が弱手と言われるリチウムイオン電池ですが、交流にすることでそれを補い、かつ高電圧・大容量にするという発想が画期的ですね。普通は、有機溶媒の電解質を中心に、片方にコバルト酸リチウムなどのリチウム還移金属酸化物の正極を、もう片方にグラファイトの負極を配置しますが、御社は電解質を中心に、正極・負極それぞれを両サイドに並べて、電気回路でスイッチさせることで両極性を実現しているという理解でだいたい合っていますか。

久保)おおまかにはそういうことです。電池を複数並べたものを電池1個の中にコンパクトに工夫して並べたようなもので、イオンの流れに応じて、プラスにもなればマイナスにもなるような仕組みにしています。社名のBiodeは、Anode(負極)とCathode(正極)の間(Bi)なので、両性電極(Biode)ということなのです。Biodeの材料も既存のものを活用しています。加工方法に肝があります。

--なるほど!しかし、電池内の化学反応のスピードや、スイッチ回路の制御はうまく機能するものでしょうか?

久保)はい、おかげさまで性能は実現できてきており、現在データ取りを進めているところです。普通の電池メーカーだと電池に特化されていて電気回路の開発はしていないし、逆に回路メーカーも回路に特化し電池の開発はしません。しかし、当社は交流電池に適した回路の作り方をしています。当社のCTOがもともとつくばで粒子加速器の研究をしていたため、電池、回路の両方を横断的に工夫できたのです。これにより電池・回路全体でのトータルコストを削減することができます。既に電池直列接続による内部抵抗を減らせるデータは取れており、近いうちにデータを公表していきたいと思います。

環境問題にストイックに

--起業された経緯について教えてください。

久保)もともと商社で12年間、アフリカ・中南米向けの機械、プラント、再エネ等の営業・ファイナンスを担当していました。当時から大気汚染や気候変動などの環境問題に興味があり、商社では、天然ガスや石油などの大型のエネルギー関係などの伝統的な利益率が高いものにどうしても事業が偏りがちですので、自分の手で、と起業を決意し、イギリスのケンブリッジに留学しました。

--そうなのですね。

久保)起業を前提に留学したので、CTOの水沢と共同で、在学中にイギリスと日本で起業し、チームにはイギリス人などヨーロッパの人もいるので国際色豊かですよ。

--日本だけでなく欧米でも資金調達ができますよね。

久保)私は100社ほどのVC・投資家に会いましたが、その大半が最初からお断りという感じでした。そもそも、サイエンス系を対象にしていないというところがほとんどです。

--どうしてなんでしょうか?

久保)内容が難しいし、初期投資が大きく、事業化まで時間、コストがかかります。さらに、サイエンス系を対象にしている投資家でも、シード期は敬遠されがちで、シリーズA、B以降じゃないと投資しない傾向が強いです。

--事業が動き出すアーリー期のシリーズA、安定期(ミドル期)のシリーズBからというのは残念ですね。日本はともかく欧米でもですか?

久保)そうですね。日欧米かかわらず、本当にシードから最先端のサイエンス系、特に我々のような世界初といったスタートアップに投資するところは、個人的な経験上1割以下です。当社は大学のスピンアウトではないので大学系のVCや大学の研究費も使えないので、最初は大変でした。

--そうなのですね。

久保)出資いただいている中には、EU傘下の、エネルギー系では世界最大級の投資会社(EIT InnoEnergy)があります。この関係もあり、欧州の拠点をルクセンブルクに移しているのですが、ヨーロッパは電池など再生可能エネルギー系にかなり力を入れています。電気自動車は世界一進んでいるのに、電池については東アジアが強く輸入に頼るので、そのギャップを埋めるために必死ですね。InnoEnergyは欧州電池連合をリードしているので、商品化した際のマーケティングがしやすくなります。

--そんな中で、多くのピッチ会で優勝を総ナメにされていますね。

久保)大学発でないというハンデもあり、また今はコロナで人と会いにくい中、こうしたピッチ会は貴重な機会であり、積極的に出ています。電池事業で16件、触媒事業で9件、合計25件国内外で優勝できました。海外のピッチ会は、決勝に残ると旅費を出してくれるものもあるんですよ。

--そうなんですね。元アマチュアボクシングフェザー級全日本3位とのこと、すごいですね。何か起業と共通することはありますか?

久保)今は環境問題の解決に“ストイックに”取り組んでいますね(笑)。今日ご紹介しました電池だけでなく、冒頭で申しましたように、プラスチックの分解にも取り組んでいます。この分野は、大きく3つ、すなわち、リサイクルしてペットボトルを作るような、「粒」にして別のものを作る「マテリアル」、燃やして熱や電気などのエネルギーに転換する「サーマル」、そして当社が取り組んでいる、触媒によって化学的に分解する「ケミカル」があります。ケミカルリサイクルでは、低温低圧で、ほぼ半永久的にプラスチックをリサイクルできます。こちらは、研究室レベルではデータが取れており、引き続き開発中です。1年以内の実証実験を目指しています。

--なるほど。最後に今後の展望についてはいかがでしょうか。

久保)まずは目の前のデータ取りを進め、更なる資金獲得を図って、事業化へと進みたいと考えています。

--はい。

久保)まだまだ、スタートアップ企業と言えばIT系が多い中、当社のようなサイエンス系のスタートアップ企業が活躍していくことが、ものづくりが強い日本にとっても大事なことだと思っています。そのためにも、当社のテクノロジーで世界の環境問題の解決に寄与してまいります。

 

今後、ますます楽しみですね!

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