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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(2023年6月、ものづくり振興課 足利)
(掲載日:平成28年9月21日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)
平成21年度経営革新企業、サンエー電機株式会社(外部リンク)(京都市南区)の牧野代表取締役様にお話をおうかがいしました。
―まず、事業の概要について教えてください。
牧野) 従業員約100名で、トンネル内照明、道路灯、スタジアム照明、屋外看板照明などの屋外LED照明用電源、X線画像診断装置、内視鏡、生体情報モニター、人工心肺装置、CT・MRIなどの医療機器用電源など、各種電源装置の開発・設計から製造までを行っています。
―「電源」ですか?
牧野) ごく単純な機器を除けば、電気製品はコンセントから供給される電力をそのままは使うというわけにはいきません。機器内部の電源回路で電圧・周波数・力率・波形等を変換・コントロールして活用しています。身近な例で言えば、コンセントからの交流を直流に変換する「ACアダプタ」がありますよね。トランスを使って電圧をコントロールする「電圧変換」、ダイオードで交互に流れる交流を直流への「整流」、そして、それだけだと電圧の波形の凹凸差が大きいので、コンデンサにより、凸で充電、凹で放電を行う「平滑」などで電力をコントロールしているわけです。当社では、この様な電気動作をより高精度にアナログ制御回路で実現する「スイッチング電源」を得意としています。
―携帯電話充電用のACアダプタなどは、従前の家電のものに比べて小さいですもんね。
牧野) 電源には他にも、平滑化された直流をトランジスタで交流にし、周波数と電圧をコントロールする「インバータ」、一層の効率性が求められる「LED電源」など、様々なものがあります。
―なるほど。そんな中で御社の特長はいかがでしょう。
牧野) 当社は、1969年創業以来、電源専業メーカーとして、産業機器、照明、医療機器向けに独自の電源を開発していました。中でも、屋外LED照明用電源については、業界シェア6割のNo1企業です。
(左から、LED電源、医療用電源、高圧電源)
―すごいですね。具体的にはどういう製品優位性があるのですか?
牧野) まず1つは、有効に活用する電力を表す「力率」が0.99、出力を生み出す能率を表す「効率性」が約93%という、業界でもトップクラスを誇る高い力率、効率性を有し、電力ロスを限りなくゼロに近づけ、消費電力を削減できるという点です。効率がいいので、当然、熱も発生しにくいということでもあります。京都の大手企業からSiCや優れたコンデンサを調達するなど、材料もよいものを使っていますし、当社が培ってきたスイッチング電源の設計技術が随所に活かされています。
―なるほど
牧野) もう1つは、モールド技術です。屋外LED照明は、例えばトンネルの中であれば、振動が激しい環境です。あるいは道路灯スタジアム照明であれば、風雨にさらされ直射日光や積雪など温度変化も激しい環境です。そこで、電子部品などを組み立てたボードに樹脂を充填することで防水、防塵、耐雷性など高い耐久性と長寿命を実現しているのです。樹脂自身も温度変化で収縮しますので、電子回路の設計もそれを想定したものにするなど、様々な工夫を施しています。
―医療機器用電源にも注力されていますね。こちらの優位性はいかがでしょう。
牧野) 低リップル、低ノイズの電源を開発しています。「平滑」で電圧の波形の凹凸を均一にしても、どうしても微妙な凹凸が残り、その電圧差をリップルと言いますが、周波数を上げ波の幅を狭めれば、低リップル化は進むのですが、逆にノイズは増えてしまいますので、このバランスが難しいわけです。コイル及びトランスそのものを自社で設計してきた知見を活かしています。
―素晴らしい。
牧野) これにより、EMI(電磁妨害)対策部品を用いずに小型化を実現しています。こうして、小型で機器の操作性も高く、医療現場で重視される、低リップル・低ノイズによる安定性も実現しているのです。おかげで、京都の大手企業をはじめとする多くの医療機器で採用されています。
―それにしても、機器ごとに使用される環境も用途も違うため、カスタマイズが必要なのですね。
牧野) はい。LED照明用電源も、屋内と屋外など設置する場所、器具の大きさにより一つひとつ違います。ニーズに合わせた最適な製品デザイン、納期スピード、コストをコミュニケーションの中で見つけ出し、提案、実現していきます。また、医療現場においても、機器の不具合一つが人命にかかわる可能性もあります。だからこそ、開発・設計から製造までを一貫体制で行い、製品一つひとつに豊富な試験設備を使用し、多角的な解析・評価が欠かせません。
―なるほど。
牧野) 幅広いアナログ制御技術が必要ですので、専門性のある中小企業が活躍している業界でもあります。トップでも売上数百億円であり、2、3番手グループは数十億円クラスで当社もここに位置しています。電源を作るといっても、その周辺のことが分からないと最適化できないのが、難しさでもあり、おもしろさでもあります。
―ということは、人材確保は難しい?
牧野) 正直そこは苦労しています。最近はこの分野の学生も少ないようで困っています。国内外のメーカーから技術照会などの引き合いが増えていますし、それに対応する技術、営業人材の確保をもっと進めたいと思っています。逆に入社後の定着はすごく良いです。良い意味で自由ですし、周辺のことも探りながら、自分達で考え設計し社会に貢献できるパワーソリューションをお客様と共に実現していくという面白さがあります。隠れた社会貢献を日々支えている点在する電源が我々の誇りです。
―良いですね!今後の展望はいかがでしょう。
牧野) 医療や介護など「人の自立化」を手助けするような、QoLに役立つ製品開発にチャレンジしていききたいと思っています。そのためにも、様々な異業種とコラボレーションを進めていきたいです。異業種の方には馴染みの薄い業界だと思いますが、ぜひ、様々な出会いを通じてイノベーションを生み出していきたいと思います。
今後の展開がますます楽しみです!
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