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株式会社もり(京都企業紹介)

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ギフト漬物から、食産業の未来を提案

(掲載日:令和3年3月29日、ものづくり振興課 足利・星)

漬け物のもり

株式会社もり(外部リンク)(京都市)の森義治代表取締役社長にお話をおうかがいしました。

「ギフト漬物」のリーディングカンパニー

--有名なお漬物屋さんでらっしゃいますが、改めて概要を教えてください。

森)1962年に私の父が創業し、現在14店舗、100名超の体制で、千枚漬、うり関連商品、青味大根、青しそ大根など自家製漬物を中心に販売しています。自家農園を有し、素材となる野菜から、製造、販売まで一貫対応を行っています。

--一貫対応ですか?!それについて詳しくお聞きしたいと存じますが、まず商品ラインナップの観点についてはどうでしょうか?

森)そうですね。当社は、漬物のギフト・お土産にいち早く取り組んできました。

みぶな漬 白菜ぬか漬 ブルーベリー大根
左から「みぶな漬」「白菜ぬか漬」「ブルーベリー大根」

--ギフト漬物ですか。

森)父が時代の波を読むのが上手かったんですね。創業した当初、寿司屋さんにガリ(ショウガ)を卸していましたが、台湾からの輸入の道を切り拓き、安くご提供することができたため、多くの寿司屋さんを開拓することができました。さらには、忙しい寿司屋さんに配慮し、当社でガリをスライスして納品する工夫もしましたので、さらに顧客が増えました。

--まさにかゆいところに手が届く、素晴らしい感性ですね。

森)そして、当時、百貨店で販売する事が主流となりつつあり、当社は、ギフト化しようと考えたのです。大映通り商店街にあった本店近くの東映太秦映画村に開村当初から販売を始め、ものすごく売れました。当時は高雄や清滝、二条城にもお土産物屋さんが多くあり、そうしたところでも取り扱っていただき、盛況でした。やがて清水や宇治にも広げていきましたが、そうこうしているうちに自社で店舗を持とうということになり、先ほど申しましたように、現在14店の直営店を展開するに至っております。

店舗その1 店舗その2 店舗その3

--そうでらっしゃったのですね。

森)コロナで観光が直撃を受けていますから、お土産需要の厳しい面が出ているとも言えますが、一方で、通販は1.5倍ほどに伸びており、ギフトでファンになっていただいている全国のお客様からご支持いただき、大変感謝しています。

京都おりーぶ

「白ごはんに」だけではない!-- 多彩な料理レシピ

--お漬物を用いた料理レシピもすごく充実されていますね!とても美味しそうです!

森)プロの料理人に毎月メニューを提案いただいています。

メニューその1

--そうなのですね!

森)もはや「白ごはんのお供に」というだけではなく、パンやパスタなど様々な料理の組み合わせを提案しています。

メニューその2 メニューその3

野菜のビタミン豊富、発酵による長期保存、さらにはGABAによる機能

--野菜の栄養を採れるという点でも、漬物はいいですね。

森)はい。野菜に含まれるビタミンの中には熱に弱いものがありますが、漬物ならばビタミン類も破壊される事なく摂取する事ができます。

--近年「発酵」もブームですね。

森)そうですね。まず、野菜の洗浄・下漬・カット・本漬というのが漬物の基本的な製造工程です。「浅漬」が代表例ですね。

工場 亀岡工場

--カット一つとっても、歯ごたえなどに関わる重要な工程だと聞きます。

森)はい。そして時間をかけて、野菜や工場内に住みつく乳酸菌を用いて「発酵」させるのが「しば漬」「すぐき漬」「千枚漬」などですね。

京都の三大漬物(参考:京都府漬物協同組合ウェブサイト)
  • しば漬
    平安後期から。壇ノ浦の合戦で生き残った建礼門院徳子様が、大原の寂光院に御閑居されていた折に、里人が夏野菜を漬け込み献上したところ、たいそうお喜びになられ「紫葉漬け」と命名されたという歴史ある漬物。大原の特産である紫蘇の葉とともに茄子やミョウガなどを塩漬けしたものが起源と言われ、大原の家では古くから保存食とされていた。
  • すぐき漬
    桃山時代から。すぐき菜が土を選ぶカブラの一種で、栽培地域が松ヶ崎より西、北山通りより北部という上賀茂の狭い地域に限られていた中、上賀茂神社に奉仕する社家が種子を手に入れ、珍しい高級品として上層階級の贈答用に栽培したのが始まり。
  • 千枚漬
    幕末から。孝明天皇の宮中大膳寮に仕えていた大藤藤三郎が、漬物屋が尾花川漬として売っていたかぶらの漬物にひらめきを得て、宮中での料理の経験を生かし、漬け方、調味料、風味はもとより、良いかぶらを求め訪ね回り、ようやく聖護院の里のかぶらに出会い、職を退いた大藤藤三郎氏が「大藤」という店を起こして売り出したその漬物こそが、千枚漬の起源。

 

京もの伝統食品

京都府では、伝統的な原材料を用い、伝統的な技術技法等により製造される食品を「京もの伝統食品」として指定しています。

京つけものは、厳選された素材と伝統的な製法により漬けられ、長い歴史の中で古くから人々に親しまれてきました。京もの伝統食品には、伝統的な三大京つけものの、千枚漬・すぐき・しば漬が指定されています。

例えば「すぐき」の場合、(1)京都市産のすぐきかぶらを使用すること、(2)伝統的な技法として、長さ3〜4メートルの棒の先に重石をくくり、圧力をかけて漬ける「天秤押し」(天秤棒の代用でコンプレッサーも可)、その後、室(むろ)で乳酸発酵させる「室入れ」を行うこと等が指定要件となっています。

京もの伝統食品

 

--京都の三大漬物ですね。奈良時代に僧侶の食用であった漬物が、平安時代に副食として広く普及し始め、さらには、味覚や嗅覚を一新する効果があったことから、鎌倉・室町時代に茶の湯や聞香の発達で盛んに食されるようになったとお聞きします。

森)そうですね。当社の「千枚漬」は、1枚ずつ丁寧に漬け込むとともに、粘りととろみ、甘さやコクが強く、高級料亭でも用いられている北海道産利尻昆布も併せて漬け込んでいます。

畑 カット つけ込み 昆布

--そうなのですね!

森)「ぬか漬」は、時間をかけて乳酸発酵させることによる伝統的な漬物です。

ぬか漬

--なるほど。

森)乳酸菌は、野菜に含まれる糖分を分解しアルコールや有機酸などを作り出し、一方、人間にとって有害な腐敗菌は塩分が苦手ですし、乳酸菌が作り出す酸が苦手であったりしますので抑え込まれます。

--pHが下がって酸性になって長期保存が可能となり、独特の酸味や風味が生まれてくるわけですね。

森)漬物には、こうした栄養たっぷりの野菜をおいしく採れるという利点があるのですが、「塩分が多く、血圧が上がるのでは?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。そこで、当社は、大学との共同研究により、漬物の持つ本来の力を科学的に証明し、機能性表示食品“「森の恵み」GABA(ギャバ)”シリーズを開発しました。

GABA

--ほう!

森)乳酸菌がGABAを多量に生成するのです。GABAは、血圧低下やストレス緩和の効果があるとされるアミノ酸の一種(γ-アミノ酪酸)です。例えば当社の“「森の恵み」GABA(ギャバ)ぬか漬”には、そのGABAが、10gあたり20mg含まれていることが判明しました。ひと切れ食べれば、1日の推奨摂取量の半分以上が摂れることとなります。

自社農場はまさしく6次化成功モデル

--さて、一貫対応に関し、ここまで「商品」「製造」についてお伺いしてまいりましたが、最後に「材料」である野菜についてお伺いしたいのですが、自社農園があるのですか?

森)はい。亀岡に農場を有しています。漬物製造業で自社農場まで持っているところは、大変珍しいと思います。

農場

--自社農場を抱えることのメリットは?

森)漬物に適した品質の野菜を狙って作ることができますし、そのために土づくり、たい肥など様々な面で工夫してますね。

土づくり 収穫その1 収穫その2

--なるほど。

森)例えば「青味大根」は伝統京野菜の中でも収穫量が少なく希少で、通常の大根より香りも歯ごたえも優れ、昔はご祝儀用として重んじられていましたが、栽培も難しく、もはや使い方も分からないといった状況でしたので、当社自ら種採りし、栽培を始めたのです。独自製法で漬け上げています。

青味大根 たくわん1 たくわん2

--素晴らしいですね。

森)あるいは、食品ロスの対策にもなります。消費期限が過ぎた食品廃棄物を焼却するのではなく、肥料や飼料にリサイクルし、再生して有効利用するのです。

食品ロスリサイクル

--いいですね。

森)いわゆる「6次産業化」だと思いますが、私どものように活用ルートを持っているところが行うのが成功の秘訣だと思います。漬物として高付加価値の活用方法があるからこそ、コストをかけて栽培するのに見合うわけです。

野菜

--なるほど。では、最後に今後の展望について、いかがでしょう。

森)まずは、漬物を食べるという習慣を改めて増していきたいですよね。その一環として、食育活動にも力を入れてきました。

食育

--野菜を採れるという意味でも、私ども親にとってもとても良いことだと思います。

森)そして、ここまで散々漬物の話をしてきましたが、究極を言えば「もりさんって、昔、漬物を作ってはったんやで」と言われるようになっていいと思っています。従業員・暖簾を守ることが第一であるということなのですが、これまでも、新たな漬物の開発、さらには漬物の枠に囚われない開発を進めてきましし、今ある「漬物のカタチ」だけに拘ることなく、絶えることのない「食」全般に視線を広げてどんどん新たなチャレンジを続けていきたいと思っています。

本社工場

 

今後の展開がますます楽しみですね!

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商工労働観光部産業振興課

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