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xorium(京都企業紹介)

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デザイナーとエンジニアのクリエイティブユニット

(令和4年1月26日、ものづくり振興課)

xorium(外部リンク)(京都市)のデザイナー 竹川様、エンジニア 中矢様、エンジニア 中村様にお話をおうかがいしました。

 

--みなさまのユニット名 活動内容を教えてください。

竹川)エクソリウムという名前で3人で活動しております。僕が中ではデザイナーという役割で竹川と申します。

中矢)エンジニアの中矢と申します。

中村)私も同じエンジニアで、中矢がソフト系、私が電気・ハード系という割り振りで、中村と言います。

よろしくお願いします。

 

--エクソリウムの意味は何ですか?

竹川)例えばプラネタリウムなどもそうなんですけど、「〇〇オリウム」のオリウムというところが、何かの場所をつくるとか居場所というか、そういうワードなんです。それにエックスと「何かの場所を僕らが作り出します」という想いを込めて、「エクソリウム」という名前をつけました。

 

--エクソリウムとして活動を始めたきっかけは何ですか?

中矢)まずこの3人は、同じ会社の同期入社のメンバーで「この人たちはこういうことを色々とできそうだな」っていうのは、もともと分かっていました。また、関西の色々な会社に属しているインハウスのデザイナーが集まって「サイドデザインプロジェクト」というグループ展を1年に1回実施しており、課外活動として作品を出すというものがあったんです。

竹川がデザイナーなので、作品を作ろうとする中で、作りたいものがアイデアだけだと実現できないということで、僕や中村に話しかけてくれました。3人で集まれば、デバイス製作であったり、色々なことができるので、そこで結成してやっていこうということになりました。

 

--XR技術の活用事例やXR技術を活用するきっかけを教えてください。

竹川)「味憶」という作品が一番最初にエクソリウムとして作った作品なんですけど、日本酒を飲むときの体験を拡張するというものでした。大きな杯に日本酒を注ぎ始めるところから、注がれて飲んで飲み終わるまで一連の体験をプロジェクションや音や振動、日本酒の香り、味など五感をフルに使って、日本酒をよりおいしく飲むために「拡張」するという、そういう体験を目指した作品となっています。


--「味億」というプロダクトで表現したかったものは何ですか?

竹川)僕らがそもそも味憶を作った基点としては、酒造さんに伺って、酒蔵見学をさせてもらったことでした。僕らも全然日本酒の知識はなかったのですが、日本酒がどのように作られて、手間ひまかけられたという話を聞いた上で、最後に飲んだ日本酒がめちゃくちゃおいしかったという経験がきっかけです。

そのへんの瓶を出して、飲んだものよりも、めちゃくちゃ美味しかった記憶があって、それってやっぱりこの目の前にあるものを「深く知ってる状態」というか「情がある状態」になっていると、すごく美味しく感じるんじゃないかなって思いました。
店の雰囲気といった場の空気などとはまた別のアプローチで「そのもの」に対して情がある状態を作り出したら、一つの「ものを美味しくさせる解決方法」かなと思いました。そこで、器の上にその日本酒が持っている記憶を表現するというコンセプトで、日本酒が育ったお米の農場の空気や風景が出るとか、手間暇かけられている工程をエモーショナルに映像で感じてもらいながら、「この日本酒」だけの演出というのを見て、飲んでもらうために作ったデバイスです。
中矢)日本酒の記憶を知って気持ちが高まって、よりおいしく感じ、第六感的なところで気持ちよくなるっていうところを目指してやってました。

竹川)だけど、デジタルに騙されている感覚、「違和感」はありましたね。

 

--デジタルとアナログの境界線がなくなったら「違和感」はなくなると思いますか?

中村)そうですね。僕らって、ありもので表現して、解決しているんですけど、それはもしかしたら僕らのアイデアや技術が足りないのかもしれないですし、もしくは世の中にある技術が足りていないのかもしれなくて、結局は(デジタルでもアナログでも)届いていないにすぎない、とは思っています。
でも、自分たちの体験・体感を表現したくて作った作品なので、今後も表現できるように目指して作っていきたいですね。

竹川)一番新しい僕らの作品として[Ziː]という名前のデバイスがあります。

透明のディスプレイを3層を重ねて、奥行き方向に別々の絵を出すことによって、立体視する映像を作ることができるというものです。

 

--XRなど先端技術を活用する理由を教えてください。
中村)テクノロジーって、どんどん新しいテクノロジーが開発されていて、僕らも「新しいテクノロジーをすごく使ってやってますよね」と言われることがあるんですが、実際にはそうじゃなくて、テクノロジー側が進んでいく中で、研究者は色々なことを考えているんですけど、実際に残っていくものってやはり利益が出るものが残っていて、利益が出ないからという理由で犠牲にされているものがあると思うんです。だから既にリリースされた一般化した技術なども、改めて見てみると「ここって違和感あるよね」というものが出てきます。例えば、VRとかでいうとやっぱり「ずっとVRゴーグルをかけてるのってしんどいよね。そしたらもっと自然な3Dってないのかな」と考えたときに、テレビのモニターってずっと見ることができるから、何層にも重ねたら、立体を感じられるんじゃないかという発想で、[Ziː]っていうデバイスを作りました。そういった、利益を追求しないからこそできることを意識して作品を作っています。


--XRについて現状の課題に感じていることはありますか?

中矢)障壁としては、VRゴーグルをかけないといけないなどという技術的な問題だと思っています。最近だとグラスが少しずつ出てきて、開発者は楽に開発ができるようになってきて、そういう人たちがコンテンツを作って、それがどこかで展示会なりイベントで出されたら、それを体験した人たちにとっては「身近なもの」になってくると思うんです。だから、結局は体験環境を加速してもらわないと困るということかなと思ってます。

中村)iPhoneにLIDARが搭載されたことは一つの機会だなと感じていて、それがもう少しローエンドの機種にも搭載されていくようになるともっと身近になると思います。最近だと「これをARで表示」といった機能が実装されているようなケースも増えてきたので、徐々にXRが浸透してきている印象はあります。


--現在の技術で注目しているものはありますか?

中矢)最近バズワードになっているデジタルツインやメタバースの話ともリンクする話ですけど、ロケーションを完全に一致させるだとかワールドをいろいろな人が見ているところをシェアしているとか、デジタルの中の挙動を現実にIoTを使って相互作用させるといったことに注目しています。

今はどうしても、調査して実装してという手順がないと、1つ1つのモジュールを簡単に動かせないですが、あまりレベルが高くない実装者でも簡単にできるようになったら開発する側のプレーヤーがたくさん増えて、それだけ提供できるコンテンツが増えるのでそこは期待したいと思っています。


--XRの市場が広がり、多くの消費者へXRが普及するためにはどうしたらよいと思いますか?

竹川)今僕の中ではARの表現ってすごい日本の文化と親和性がすごく高いなと思っています。これまで作品作りをわりとしてきたのかなというのがありまして日本の街並みとか「間」の文化ですね。
モノとモノの間に「間」を見いだすとか間があるから美しいという文化があると思うんです。その間がいっぱい日本にはあることによってARという拡張表現がしやすいのかなと感じています。
今は、ARという技術がiPhoneを使っているときだけ体感する一時的なものであるからこそ、投入すると「感覚的にもちょうどいい表現」ができています。ただ、どんどんXR技術が浸透して、常にゴーグルをかけたり、コンタクトレンズをしている状態で、電脳コイルみたいな世界観で「拡張された世界が常になった場合」は、またARの表現が変わってくるのかなと思ってます。

間が常にARで埋まった状態になってくるとそれはどんどん息苦しい感じになってきますし、ARが街中にいっぱい溢れ出している世界観みたいな、ディストピアの映像のような世界観になってしまうと思います。「iPhone等をかざしてARを見る」という行為自体、一時的なものであるからこそ受け入れられているARの表現なのかなと。常にARというのが身の回りにまとっている状態になった時は、また次の表現になるのかなということを思っていて、また違う進化や日本ならではのARの表現の仕方がそこから生まれてくるんじゃないかと僕は感じています。


--現在 世の中にある製品の進化に対しても「違和感」を感じることはありますか?

中村)自動車ですね。ガソリン車から電気自動車にどんどん変わって、将来そうなってしまうんだと思うんです。それも僕は別にダメなことだとは思ってなくて、お互いにいいところがあるんですけど、やっぱり最近の車って電気自動車に限らず様々な機能が付いていて、昔ながらのエンジンが載ってて、その他の機能が何もないような車は「運転する楽しみ」みたいなものがあったんですけど、最近の車を運転するとあまり情報が伝わってこないので、運転を楽しんでいるっていうよりは「ツールを使ってる」という感覚が強いです。やはりそういった面白さは失われてしまったな、と感じますね。

 

--どのような作品を次回は作られますか?

竹川)悩んでいるところなんですけど、まだ何かもわからない作品なので・・・。先ほどの「違和感」としての話なんですが、僕は最近「スピーカーに対しての違和感」を強く持っていて、どこまで行っても人間が聞こえる音域でしか出ない音を膜の信号だけ出している物体に対して違和感を感じています。

例えば町中を歩いたときや、大きなショッピングモールへ行ったときに流れる生音の演奏って明らかにスピーカーと違うなとか、何か情緒が震えるような感覚があります。あとは水がシャボンとはじける音のような、その物体自体がちゃんと震えて何か出してくる音であったり、生のオーケストラを聴いたときのような生の音というのは明らかに何か違いがあって、感動する価値の差は何だろうって気になったりしていました。

スピーカーも、ある意味完成されているものじゃなくて、また次の形があるのかなということを思ったりもします。以前スピーカーメーカーの展示を見に行ったときに、1スピーカーで1楽器しか鳴らさないというオーケストラのような展示をやっていたんですけど、そういうものはいつもの一個のスピーカーで全ての音を聴くよりも、何か感動するものがありました。
もしかしたら振動とかではなくて、一個一個の音の粒が聴こえているのを別々にある状態がいいのか、その辺はまだ僕も全然答えがわからないんですけど、今のスピーカーという状態がいいのか?正解なのか?ということを疑問に持って、新しい作品づくりをしています。


--xoriumさんがテクノロジーに対して積極的なのは、何かの影響があるのでしょうか?

中村)それはこの活動を通して我々が成長しているところが大きいとは思いますね。
中矢)僕で言うとやはり単純に技術的なところはもともと好きだったというか、いろいろなガジェットとかにしてもクラウドファンディング新しいのが出たら、この活動する前からチェックしたりしてはいましたが、やはり中村が言ったように、作品作りみたいな観点であったり、きれいな表現をしていくという発想でいくと、この活動を通してインプットしないと僕らは何も作れないので、いろいろな展示会とか作品を見たりすることが習慣化しています。僕も中村もエンジニアなので、美的センスがあるわけではないんですけど、この活動を始めてからそういう意識が向いてキャッチアップするようにしてるところが大きいと思います。

竹川)エクソリウムの活動を始めて、3人でお互いの感じる「違和感」など、思っていることとかを付箋でアイデアを出していく中で、「ああそうか、こういう気づきあるのか」って学びがあります。

エンジニアとがっつり触れることが今までなくて、ずっとデザイナー界隈しかいなかったので、「ああ そうか そういう考えでちゃんと物を作るのか」とか「エンジニア的な思考はそういうものなのか」と新しい発見もしながら、かつ自分の違和感と照らし合わせたりとかもしながら、ちゃんとその違和感を具現化していくことができていると思っています。デザインという枠組みを超えて、もっと視野を広くして伝えないととどんどん活動の幅こことかに収まらず、全然関係ないようなところも意識的にやっていくことで視野も広がってきているのかなと感じています。広がっているかは、わからないですですが(笑)

 

--ありがとうございました!今後の活動も応援しております!

 

 

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